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第七章 微笑む神薙
第114話:ポルポルなんとか??
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◇◆◇
「リアは美味い牡蠣に興味あるか?」
陛下の言葉に、わたしの食いしん坊アンテナが立った。
「十三条」の影響で表向き疎遠になっている王宮に、コッソリと遊びに来ていた。
ヴィルさんと二人で陛下のプライベート用の入り口からコソコソと入り、王宮で働いている人達と一切顔を会わせず、抜き足差し足でイケオジ陛下のもとへやって来たのだ。
陛下とは毎週お食事を共にしていたけれども、お互いに色々あって、かれこれ一か月以上会っていなかった。
わたしがお見合いでバタバタしている間、陛下は陛下で大陸会議なる大イベントがあったのだ。
それは同じ大陸にある数か国の首脳が集まる、いわゆるサミットだ。最も国土の広いオルランディアは議長国なので責任重大だった。
ただ、それが少なからず神薙人質事件を引き起こす要因になっていたため、陛下のハグはいつもよりキツめだった。
「辛い思いをさせてすまなかった」と陛下は言った。
ヴィルさんが不機嫌そうに「はい、そこまで。それ以上は延長料金を頂きます」と言って間に割って入る(お約束)
「おのれ若造。叔父の唯一の楽しみを毎度邪魔しおって」
「この若造に不満があるなら、とっとと神薙法を改正してください。私が作った案そのままでも大丈夫なはずですよ? なにせアレンと私が考え、フィデルが確認をしたのですから」
「やっとるわ。毎日毎日!」
「頑張ってくださいねぇ、陛下♪」
「リアの口真似をするな!」
「彼女の真似はアレンのほうが上手いのですよ。やはり器用さでは彼に敵いませんね」
「何をやっとるのだ、お前たちは……」
十三条のせいで険悪なムードになっていたらと心配していたけれども、叔父と甥の関係が相変わらずでホッとする。
ヴィルさんいわく「父親が二人いるようなもの」だそうだ。彼は父親のように陛下を慕っていた。
メインディッシュの美味しいお肉に舌鼓を打ち、デザートが運ばれてきたところで飛び出したのが冒頭の牡蠣の話だった。
牡蠣と聞くと目の色が変わる。
日本にいた頃は、行きつけのオイスターバーがあった。
「はい、大す……」
「大嫌いです。食べたこともない」
ヴィル太郎さんがワンワンしたせいで、わたしの「大好き」がかき消されてしまった。
このアツい牡蠣愛を語らせてほしいのに(泣)
「ヴィルさん、どうして食べたことがないのに大嫌いなのですか?」
「この子は昔からこうだ。知りもしないで嫌いだ嫌いだと騒ぐ」
てっきり「牡蠣を取り寄せて一緒に食べよう」という話なのかと思ったらそうではないようだ。
ヴィルさんは「相変わらず下心しか感じられませんね」と言った。
「今度はリアに何をさせようというのですか。つい先日まで毒のような薬を飲んでいたのですよ? どこぞの国王のせいで、この可憐で小さな口に緑色の美味しくないものが何度も入ったのです。しかも芝生みたいな匂いがしていた。冗談じゃない」
プンスカする彼に向かって呆れ顔の陛下が言った。
「バカモン。お前だ、お前。お前に用があるのだ」
「はい?」
陛下はお茶を一口飲むと、「国際港の様子が少し妙だと聞いた」と言った。
そして、ヴィルさんをジロリと見たので、わたしもつられて彼を見てしまった。
「国際港? どこのですか?」
「ポルト・デリング」
「うちの領地じゃないですか!」
「だからお前に言っておるのだ」
「いや父上に言ってくださいよ。あの人が領主なのですから」
「兄は辺境の件で手が離せん。お前もそろそろ父の仕事を手伝え」
「それなら私一人に行ってこいと言えば良いことでしょう。なぜリアに聞くのですか」
陛下は、ぴっ、ぴっ、と二か所を指差した。
動く陛下の指を目で追っていくと、最初はヴィルさんのタイ、そして次はわたしの襟元にあるリボンを指差していた。
ヴィルさんが「何か一つお揃いにしたい」と言うので、同じブルーだった。
「たいそう、仲が、良いようだから、だが? 文句あるか若造!」
ウーン。
確かに仲は良いかも知れませんが……婚約しているわけではないですしね(汗)
「お前をリアから無理やり引き離して、また王宮に火でも点けられたら困るのだ」
「子どもの頃ならいざ知らず、さすがに大人になってからは、火など点けたことはありませんよ」
「普通は子どもの頃でもやらん!」
「ははっ、優秀すぎてすみません」
「リアが嫌でなければ、一緒に行って美味いものでも食べてくると良い。気分転換にも良いだろう」
「リア、どうする?」と、ヴィルさんが言った。
さあ、困った。
ポルポルナントカと言われても、一体どこのことだか分からない。しかし、そこには海があり、牡蠣が採れるのだろう。
牡蠣は食べたい。とても食べたい。物凄く食べたい。
よし。
ポルポルについて聞くのは後回しだ。
「もし機会を頂けるのなら行ってみたいです」
「無理をしていないか? 叔父上の言うことなんて断っても大丈夫だぞ?」
「もともと旅好きですし、なにせ島国育ちなので牡蠣には目がなくて」
「うげ。そ、そうなのか……」
うげって言わないで。泣きますよ?
「それより、港の様子がおかしいというのは? 先日の週刊誌に港は穏やかだと書いてありましたよねぇ?」
「それもそうだ。リアがこうして微笑んでいるのに荒れるはずがない」
「現地から入った情報は二つだ」と、陛下は言った。
一つ目は、風が強くて着岸に苦労している船が多いこと。
二つ目は、病人が増えていて病院が混雑していること。
「領主に連絡してくるほどですか」とヴィルさんが確認すると、陛下は頷いた。
「これから最盛期を迎える牡蠣漁に大きな影響が出るのは避けたいと兄は言っている」
「それはそうでしょう。牡蠣目当てに来る観光客も多い。飲食店、加工業者、それに宿泊施設も。周辺の商店なども含め大打撃です」
「大事になる前に視察してこい。しっかり聞き取りをしろ。その間、リアはオーディンスとのんびりと観光でもして、美味いものを食べてくると良い。名物の揚げた白身魚も良いし、エビも美味い。ホタテも大きいのが採れるぞ?」
わぁ♪ よろしいのでしょうか。
旅行なんて久々です。
二度と帰れない壮大な旅行をしているような気もしますけれども、それでもやっぱり楽しみですねぇ♪
口をへの字にするヴィルさんに、陛下は「頼むぞ、未来の領主殿」と言って口角を上げた。
「リアは美味い牡蠣に興味あるか?」
陛下の言葉に、わたしの食いしん坊アンテナが立った。
「十三条」の影響で表向き疎遠になっている王宮に、コッソリと遊びに来ていた。
ヴィルさんと二人で陛下のプライベート用の入り口からコソコソと入り、王宮で働いている人達と一切顔を会わせず、抜き足差し足でイケオジ陛下のもとへやって来たのだ。
陛下とは毎週お食事を共にしていたけれども、お互いに色々あって、かれこれ一か月以上会っていなかった。
わたしがお見合いでバタバタしている間、陛下は陛下で大陸会議なる大イベントがあったのだ。
それは同じ大陸にある数か国の首脳が集まる、いわゆるサミットだ。最も国土の広いオルランディアは議長国なので責任重大だった。
ただ、それが少なからず神薙人質事件を引き起こす要因になっていたため、陛下のハグはいつもよりキツめだった。
「辛い思いをさせてすまなかった」と陛下は言った。
ヴィルさんが不機嫌そうに「はい、そこまで。それ以上は延長料金を頂きます」と言って間に割って入る(お約束)
「おのれ若造。叔父の唯一の楽しみを毎度邪魔しおって」
「この若造に不満があるなら、とっとと神薙法を改正してください。私が作った案そのままでも大丈夫なはずですよ? なにせアレンと私が考え、フィデルが確認をしたのですから」
「やっとるわ。毎日毎日!」
「頑張ってくださいねぇ、陛下♪」
「リアの口真似をするな!」
「彼女の真似はアレンのほうが上手いのですよ。やはり器用さでは彼に敵いませんね」
「何をやっとるのだ、お前たちは……」
十三条のせいで険悪なムードになっていたらと心配していたけれども、叔父と甥の関係が相変わらずでホッとする。
ヴィルさんいわく「父親が二人いるようなもの」だそうだ。彼は父親のように陛下を慕っていた。
メインディッシュの美味しいお肉に舌鼓を打ち、デザートが運ばれてきたところで飛び出したのが冒頭の牡蠣の話だった。
牡蠣と聞くと目の色が変わる。
日本にいた頃は、行きつけのオイスターバーがあった。
「はい、大す……」
「大嫌いです。食べたこともない」
ヴィル太郎さんがワンワンしたせいで、わたしの「大好き」がかき消されてしまった。
このアツい牡蠣愛を語らせてほしいのに(泣)
「ヴィルさん、どうして食べたことがないのに大嫌いなのですか?」
「この子は昔からこうだ。知りもしないで嫌いだ嫌いだと騒ぐ」
てっきり「牡蠣を取り寄せて一緒に食べよう」という話なのかと思ったらそうではないようだ。
ヴィルさんは「相変わらず下心しか感じられませんね」と言った。
「今度はリアに何をさせようというのですか。つい先日まで毒のような薬を飲んでいたのですよ? どこぞの国王のせいで、この可憐で小さな口に緑色の美味しくないものが何度も入ったのです。しかも芝生みたいな匂いがしていた。冗談じゃない」
プンスカする彼に向かって呆れ顔の陛下が言った。
「バカモン。お前だ、お前。お前に用があるのだ」
「はい?」
陛下はお茶を一口飲むと、「国際港の様子が少し妙だと聞いた」と言った。
そして、ヴィルさんをジロリと見たので、わたしもつられて彼を見てしまった。
「国際港? どこのですか?」
「ポルト・デリング」
「うちの領地じゃないですか!」
「だからお前に言っておるのだ」
「いや父上に言ってくださいよ。あの人が領主なのですから」
「兄は辺境の件で手が離せん。お前もそろそろ父の仕事を手伝え」
「それなら私一人に行ってこいと言えば良いことでしょう。なぜリアに聞くのですか」
陛下は、ぴっ、ぴっ、と二か所を指差した。
動く陛下の指を目で追っていくと、最初はヴィルさんのタイ、そして次はわたしの襟元にあるリボンを指差していた。
ヴィルさんが「何か一つお揃いにしたい」と言うので、同じブルーだった。
「たいそう、仲が、良いようだから、だが? 文句あるか若造!」
ウーン。
確かに仲は良いかも知れませんが……婚約しているわけではないですしね(汗)
「お前をリアから無理やり引き離して、また王宮に火でも点けられたら困るのだ」
「子どもの頃ならいざ知らず、さすがに大人になってからは、火など点けたことはありませんよ」
「普通は子どもの頃でもやらん!」
「ははっ、優秀すぎてすみません」
「リアが嫌でなければ、一緒に行って美味いものでも食べてくると良い。気分転換にも良いだろう」
「リア、どうする?」と、ヴィルさんが言った。
さあ、困った。
ポルポルナントカと言われても、一体どこのことだか分からない。しかし、そこには海があり、牡蠣が採れるのだろう。
牡蠣は食べたい。とても食べたい。物凄く食べたい。
よし。
ポルポルについて聞くのは後回しだ。
「もし機会を頂けるのなら行ってみたいです」
「無理をしていないか? 叔父上の言うことなんて断っても大丈夫だぞ?」
「もともと旅好きですし、なにせ島国育ちなので牡蠣には目がなくて」
「うげ。そ、そうなのか……」
うげって言わないで。泣きますよ?
「それより、港の様子がおかしいというのは? 先日の週刊誌に港は穏やかだと書いてありましたよねぇ?」
「それもそうだ。リアがこうして微笑んでいるのに荒れるはずがない」
「現地から入った情報は二つだ」と、陛下は言った。
一つ目は、風が強くて着岸に苦労している船が多いこと。
二つ目は、病人が増えていて病院が混雑していること。
「領主に連絡してくるほどですか」とヴィルさんが確認すると、陛下は頷いた。
「これから最盛期を迎える牡蠣漁に大きな影響が出るのは避けたいと兄は言っている」
「それはそうでしょう。牡蠣目当てに来る観光客も多い。飲食店、加工業者、それに宿泊施設も。周辺の商店なども含め大打撃です」
「大事になる前に視察してこい。しっかり聞き取りをしろ。その間、リアはオーディンスとのんびりと観光でもして、美味いものを食べてくると良い。名物の揚げた白身魚も良いし、エビも美味い。ホタテも大きいのが採れるぞ?」
わぁ♪ よろしいのでしょうか。
旅行なんて久々です。
二度と帰れない壮大な旅行をしているような気もしますけれども、それでもやっぱり楽しみですねぇ♪
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