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第六章 淑女の秘密
第106話:殿方には言えない問題
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この国のおぱんつ問題は根が深い。
男子は乗馬用ズボンに合わせたフィット感のあるステテコおぱんつと、ブリーフ型の選択肢があるらしい。
男女差別なのかと思いきやそうではない。単に服の機能性の違いが影響しているだけだった。
「ズボンがこうなのだから、こういうパンツが求められる」という合理的発想の産物がそれなのだ。
その証拠に、男子も「白一択」だという。
これはもはや悲劇である。
ヴィルさんを見た。
イケメンである。
しかし、ズボンを脱いだら彼も白おぱんつなのだ。
百年の恋も冷めかねない。
アレンさんを見た。
神々しいイケ仏様である。
しかし、彼もズボンを脱いだら白おぱんつだ。
目を合わせるのも勿体ないくらいなのに、毎日が白おぱんつなんて残念すぎる。
こんなイケメンですら白おぱんつ一択なのだ。
女子のおぱんつが白ステテコなのも無理はない。
「どうせドレスで見えないのだし、これでいいじゃねぇか」という色気のない合理主義が当たり前になっている。
国民すべてが「おぱんつは白い綿で作られたものだ」と思い込まされていて、それに不満を抱いてすらいない。
この国のおぱんつが抱える最大の問題は、人々がファッションとしての関心を持っていないことなのだ。
どうか目を覚ましてください、オルランディアの皆さま。
レースを使いましょう?
フリフリやおリボンを付けましょう?
色と柄にもこだわってください。
見えないからいいじゃんという話ではないのですよーっ。
このままお嫁になんて行けない……。
はあああ、不安です。
ヴィルさん達には何でも話してきているけれども、さすがに「おぱんつがダサくて生きるのがツラい」という話はできない。
恥ずかしいし情けないし、口に出したら感極まって泣くかもしれない。
そうなるとお天気問題に発展し、おぱんつのせいで災害が起きる(ダメ、絶対)
話すにしても、解決策が見つかった後が良いだろう。「今だから話せるけれど」のノリで、笑い話として伝えることにしたい。
「すみません。殿方にはお話しできないのです」と返事をすると、ヴィルさんはお預けを食らった子犬のように悲しげな瞳でわたしをジトっと見つめた。
アレンさんは再び動きが止まり、置物になってしまった。
ごめんなさい。
おぱんつ問題は女子だけで解決しますから、しばらくお待ちくださいねと、心の中でお詫びをした。
そもそも露出の高いドレスを着ていた先代はどうしていたのだろう?
おっぱいすらも放り出しそうな勢いだったのに、そんな人が白ステテコを装備するだろうか。
まさか神薙様はノーパンが正解なのですか?(いやです。泣)
「リア様、発注して作って頂きましょう。わたくし達も興味がございます。個人としても最大限の協力をさせて頂きますわっ」
男子を追い出したリビングで、侍女長がキリッと言った。
外出していたイルサが戻ると、わたし達四人はひざを突き合わせた。
「もし、リア様のご要望に叶うものが作れたなら、それはいずれ民間へも広まるでしょう。すなわち、わたくし達が革命を起こすということですわ」
頼もしい侍女長の言葉に侍女二人は目を輝かせ、すっくと立ち上がった。
あああっ、いつものやつが始まる予兆。
「これは革命のともしび!」
「わたくし達の希望!」
「王国のぉ~ 未来ぃ~~~」
何かのミュージカルと似たような状況だったのだろう。侍女が歌いながらクルクル回り、ピタッとポーズを決めた。
「ブラボー!」
劇団侍女はさておき、侍女長の言うとおりだ。ないのなら作ればいい。
いや、耐えられないのだから作るしかない。
当然だけれども費用がかかる。
一着では済まないので、かなりの予算を使うことになるだろう。
しかし、わたしは考えた。
一度起こした型紙を使ってまとまった数を作り、それを商品として売ることができるのなら、費用の一部を回収できると。
会社を興すには誰かにコンサルタントをお願いしなくてはならないが、開業資金はある。
手付かず状態で「頼むから使ってくれ」と言われている神薙様用お小遣いだ。これを初期費用としてお借りする形になるだろう。
選ぶ生地やパーツ次第で、品質と原価をコントロールできる。つまり、貴族相手だけでなく、庶民もターゲットにして勝負ができるはず。
ライバル企業は当面ない。
間違いのない仲間を得て、正しく努力ができれば儲かる気がする(そこが一番難しいのだけど)
商売で成功することをゴールとするなら、わたし個人のおぱんつは単なる「試作品」であり通過点になる。
もしかして、わたしは今、巨大ビジネスのスタート地点に立っている……?
「おぱんつを作りなさい」 (※腹話術)
はっ、誰かの声がします。
「白ステテコに囚われた同胞たちを救い出すのです」 (※腹話術です)
こ、これは神のお告げでは?
この世界に来るとき、わたしは何ひとつ啓示をもらえなかったけれども、おぱんつの神はわたしに微笑んでくれている。
これは旧約聖書の出エジプト記ならぬ「脱ステテコ記」だ。
おぱんつ界のモーセに、わたしはなる。
皆でステテコから解き放たれ、約束の地へゆくのだぁぁ。
うおー、オルランディアに勝負おぱんつをー!!
「よしっ、やりましょう」
「リア様! そうでなくては!」
「素晴らしいですわっ」
「まずは試作品ですねぇ~」
実益を兼ねて試作品を作ろう。
ただ、その前にやらなければならないことがある。
仲間の教育だ。
わたしはたっぷりと時間をかけて三人に説明をした。
乙女である彼女たちは新婚初夜に対してひとかたならぬ興味があるため、勝負下着について根掘り葉掘り聞いてくる。わたしが答えるたび、彼女たちは真っ赤になって黄色い歓声を上げた。
「わたくし達にもいずれ特別な日が……」
「これは決してリア様だけの問題ではありませんわ」
「皆で一丸となり手に入れなくてはっ」
壮大なるおぱんつプロジェクトは、こうして幕を開けたのだった。
男子は乗馬用ズボンに合わせたフィット感のあるステテコおぱんつと、ブリーフ型の選択肢があるらしい。
男女差別なのかと思いきやそうではない。単に服の機能性の違いが影響しているだけだった。
「ズボンがこうなのだから、こういうパンツが求められる」という合理的発想の産物がそれなのだ。
その証拠に、男子も「白一択」だという。
これはもはや悲劇である。
ヴィルさんを見た。
イケメンである。
しかし、ズボンを脱いだら彼も白おぱんつなのだ。
百年の恋も冷めかねない。
アレンさんを見た。
神々しいイケ仏様である。
しかし、彼もズボンを脱いだら白おぱんつだ。
目を合わせるのも勿体ないくらいなのに、毎日が白おぱんつなんて残念すぎる。
こんなイケメンですら白おぱんつ一択なのだ。
女子のおぱんつが白ステテコなのも無理はない。
「どうせドレスで見えないのだし、これでいいじゃねぇか」という色気のない合理主義が当たり前になっている。
国民すべてが「おぱんつは白い綿で作られたものだ」と思い込まされていて、それに不満を抱いてすらいない。
この国のおぱんつが抱える最大の問題は、人々がファッションとしての関心を持っていないことなのだ。
どうか目を覚ましてください、オルランディアの皆さま。
レースを使いましょう?
フリフリやおリボンを付けましょう?
色と柄にもこだわってください。
見えないからいいじゃんという話ではないのですよーっ。
このままお嫁になんて行けない……。
はあああ、不安です。
ヴィルさん達には何でも話してきているけれども、さすがに「おぱんつがダサくて生きるのがツラい」という話はできない。
恥ずかしいし情けないし、口に出したら感極まって泣くかもしれない。
そうなるとお天気問題に発展し、おぱんつのせいで災害が起きる(ダメ、絶対)
話すにしても、解決策が見つかった後が良いだろう。「今だから話せるけれど」のノリで、笑い話として伝えることにしたい。
「すみません。殿方にはお話しできないのです」と返事をすると、ヴィルさんはお預けを食らった子犬のように悲しげな瞳でわたしをジトっと見つめた。
アレンさんは再び動きが止まり、置物になってしまった。
ごめんなさい。
おぱんつ問題は女子だけで解決しますから、しばらくお待ちくださいねと、心の中でお詫びをした。
そもそも露出の高いドレスを着ていた先代はどうしていたのだろう?
おっぱいすらも放り出しそうな勢いだったのに、そんな人が白ステテコを装備するだろうか。
まさか神薙様はノーパンが正解なのですか?(いやです。泣)
「リア様、発注して作って頂きましょう。わたくし達も興味がございます。個人としても最大限の協力をさせて頂きますわっ」
男子を追い出したリビングで、侍女長がキリッと言った。
外出していたイルサが戻ると、わたし達四人はひざを突き合わせた。
「もし、リア様のご要望に叶うものが作れたなら、それはいずれ民間へも広まるでしょう。すなわち、わたくし達が革命を起こすということですわ」
頼もしい侍女長の言葉に侍女二人は目を輝かせ、すっくと立ち上がった。
あああっ、いつものやつが始まる予兆。
「これは革命のともしび!」
「わたくし達の希望!」
「王国のぉ~ 未来ぃ~~~」
何かのミュージカルと似たような状況だったのだろう。侍女が歌いながらクルクル回り、ピタッとポーズを決めた。
「ブラボー!」
劇団侍女はさておき、侍女長の言うとおりだ。ないのなら作ればいい。
いや、耐えられないのだから作るしかない。
当然だけれども費用がかかる。
一着では済まないので、かなりの予算を使うことになるだろう。
しかし、わたしは考えた。
一度起こした型紙を使ってまとまった数を作り、それを商品として売ることができるのなら、費用の一部を回収できると。
会社を興すには誰かにコンサルタントをお願いしなくてはならないが、開業資金はある。
手付かず状態で「頼むから使ってくれ」と言われている神薙様用お小遣いだ。これを初期費用としてお借りする形になるだろう。
選ぶ生地やパーツ次第で、品質と原価をコントロールできる。つまり、貴族相手だけでなく、庶民もターゲットにして勝負ができるはず。
ライバル企業は当面ない。
間違いのない仲間を得て、正しく努力ができれば儲かる気がする(そこが一番難しいのだけど)
商売で成功することをゴールとするなら、わたし個人のおぱんつは単なる「試作品」であり通過点になる。
もしかして、わたしは今、巨大ビジネスのスタート地点に立っている……?
「おぱんつを作りなさい」 (※腹話術)
はっ、誰かの声がします。
「白ステテコに囚われた同胞たちを救い出すのです」 (※腹話術です)
こ、これは神のお告げでは?
この世界に来るとき、わたしは何ひとつ啓示をもらえなかったけれども、おぱんつの神はわたしに微笑んでくれている。
これは旧約聖書の出エジプト記ならぬ「脱ステテコ記」だ。
おぱんつ界のモーセに、わたしはなる。
皆でステテコから解き放たれ、約束の地へゆくのだぁぁ。
うおー、オルランディアに勝負おぱんつをー!!
「よしっ、やりましょう」
「リア様! そうでなくては!」
「素晴らしいですわっ」
「まずは試作品ですねぇ~」
実益を兼ねて試作品を作ろう。
ただ、その前にやらなければならないことがある。
仲間の教育だ。
わたしはたっぷりと時間をかけて三人に説明をした。
乙女である彼女たちは新婚初夜に対してひとかたならぬ興味があるため、勝負下着について根掘り葉掘り聞いてくる。わたしが答えるたび、彼女たちは真っ赤になって黄色い歓声を上げた。
「わたくし達にもいずれ特別な日が……」
「これは決してリア様だけの問題ではありませんわ」
「皆で一丸となり手に入れなくてはっ」
壮大なるおぱんつプロジェクトは、こうして幕を開けたのだった。
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