30 / 36
『第三十話』
しおりを挟む
ようやく出された水に口をつけていると、おかめは目の前のまな板でネギの千切りを始めた。
エプロンをきつく締め直して包丁を握る姿は真剣そのもので、小刻みに揺れるお団子テールに合わせて、ものすごい勢いでネギを細切れにしていく。
普段テレビでしか見られないようなワザに、思わずおぉーと声を漏らす。
「……変わったね」
「え? 私?」
「他に誰がいるの」
手元で丁寧に仕事をこなしながら、おかめは続ける。
「昔はおちょくったりなんてしてこなかった」
「そうだっけ」
「……ていうか、"仕事中の"わたしのところに押しかけてきたりなんてしなかった」
「……」
返す言葉も無かった。
「似てきたんじゃない? 彼氏に」
「えっ」
「違うの?」
手を止め、見つめかえされる。
その顔は、少しだけ目を丸くしている以外、普段とほとんど変わらなかった。
耳元まで真っ赤になっている気がして、私は、たまらず目をそらしたくなってしまった。
エプロンをきつく締め直して包丁を握る姿は真剣そのもので、小刻みに揺れるお団子テールに合わせて、ものすごい勢いでネギを細切れにしていく。
普段テレビでしか見られないようなワザに、思わずおぉーと声を漏らす。
「……変わったね」
「え? 私?」
「他に誰がいるの」
手元で丁寧に仕事をこなしながら、おかめは続ける。
「昔はおちょくったりなんてしてこなかった」
「そうだっけ」
「……ていうか、"仕事中の"わたしのところに押しかけてきたりなんてしなかった」
「……」
返す言葉も無かった。
「似てきたんじゃない? 彼氏に」
「えっ」
「違うの?」
手を止め、見つめかえされる。
その顔は、少しだけ目を丸くしている以外、普段とほとんど変わらなかった。
耳元まで真っ赤になっている気がして、私は、たまらず目をそらしたくなってしまった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
温度
さいこ
恋愛
ごく普通の会社員として生きるアラサー女・柏木 慶は恋愛に疲れていた
年々男性に対する期待も薄くなり恋愛することを諦めかけている一方で、
このまま女としての幸せを掴めずに20代を終えてしまうのでは、というリアルな焦りもある
そんな中、流れで顔見知りの年下男子に手を出してしまった
色々な気まずさから彼を避けるようになったはずだが…
恋愛をこじらせ素直に受け取れない大人の女性と、それをぶち壊したい年下男子の攻防戦
彼女と彼は、果たして幸せを手に入れることが出来るのか
窓際の交錯
K.N.
恋愛
成瀬康汰(なるせ こうた)、27歳。
都内のIT企業で働く彼は、今年1月から虎ノ門の本社勤務となり、静かな日常を過ごしていた。
ビルの10階で働く康汰は、仕事以外に大きな刺激もなく、昼食を取ることも稀だった。ただ、時折1階のカフェに足を運び、窓際の席で小説を読みながらコーヒーを楽しむことが、珠の息抜きになっていた。
一方、同じビルの6階で働く23歳の小牧月香(こまき るか)。
彼女もまた、同じカフェで時折パニーニを頬張っていた。普段は週末に作り置きしたお弁当を持参する彼女だったが、うっかり忘れてしまった時には、カフェに足を運んでいた。
ある日、混雑するカフェの中、窓際の席に腰掛け小説を読んでいた康汰の前に一人の女性がふと現れた。
見覚えのある彼女に驚きながらも、康汰は気づかぬふりをしていたが、彼女は微笑みかけながら言った。
「こんにちは!」
それが、康汰と月香の初めての会話だった。日常の中で交差する二人の人生が、静かに動き始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる