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第五話
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スティーブンが湿った色の壁に無造作に備え付けられた木の扉に手を掛けると丁度出て来た人影とぶつかりそうになる。
「お前は……!」
呪術師だった。声色から察したのか、足早に逃げ出そうとする。スティーブンがそのローブの裾を咄嗟に掴んで引き止めると、呪術師は一瞬の抵抗の後足を止めて、半身で振り返った。
「なんじゃ?――――うっ!!」
スティーブンはしらを切ろうとする呪術師に激昂し渾身の一撃で殴り飛ばすと、起き上がろうとする細い肩を掴んで地面に押し倒し、馬乗りになって問い詰めた。
「お前、ステファニィーに何をした!! 石とは何だ!? 言えっ!!」
枝のような四肢を激しく揺さぶられ噎せ返りながらも、呪術師は笑みを絶やさない。
「……そうかお主、何も聞かされとらんのか。――――ならば教えてやろう。あの石には、破壊の力が宿っておる。この世界をも終焉に導く、強大な力が! あの封印師ホミでさえも、あれを無力化することはできなかった。なにせ封印するには、王族を一人犠牲にせねばならんからなぁ!! ――――アハハハハハハァッ!!」
裏返った耳障りな声で一頻り笑い、呪術師は流れ出した涎を拭うこともせずに続ける。
「ホミはあの破滅の石と創世の石を互いの傍に置くことで力を抑え込んでいたようじゃが、それではいつ破滅が始まるとも知れん。だからわしが、破滅の石と王族の娘とを融合させ、国王にもう一つの石の在処を教えてやったのじゃ。あの愚弄のことだ、国の未来もろくに考えずに迷わず命を投げ打つじゃろう。そうして世界は救われ、わしは英雄として称えられる! どうだ!! 貴様ごときに、わしの計画が止められるかぁ!?」
目ヤニに埋もれた眼を見開き、呪術師は試すような視線を投げかけてくる。だがスティーブンはもう、呪術師など見てはいなかった。激情に駆られ瞬きを忘れた彼の瞳は、静かなる決意の炎に打ち震えていた。
*
地下二階。地下牢の鉄扉が視界の端で重苦しい音を立てて開き、ステファニィーは胴を鎖に繋がれたまま顔を上げた。
「お前は……!」
呪術師だった。声色から察したのか、足早に逃げ出そうとする。スティーブンがそのローブの裾を咄嗟に掴んで引き止めると、呪術師は一瞬の抵抗の後足を止めて、半身で振り返った。
「なんじゃ?――――うっ!!」
スティーブンはしらを切ろうとする呪術師に激昂し渾身の一撃で殴り飛ばすと、起き上がろうとする細い肩を掴んで地面に押し倒し、馬乗りになって問い詰めた。
「お前、ステファニィーに何をした!! 石とは何だ!? 言えっ!!」
枝のような四肢を激しく揺さぶられ噎せ返りながらも、呪術師は笑みを絶やさない。
「……そうかお主、何も聞かされとらんのか。――――ならば教えてやろう。あの石には、破壊の力が宿っておる。この世界をも終焉に導く、強大な力が! あの封印師ホミでさえも、あれを無力化することはできなかった。なにせ封印するには、王族を一人犠牲にせねばならんからなぁ!! ――――アハハハハハハァッ!!」
裏返った耳障りな声で一頻り笑い、呪術師は流れ出した涎を拭うこともせずに続ける。
「ホミはあの破滅の石と創世の石を互いの傍に置くことで力を抑え込んでいたようじゃが、それではいつ破滅が始まるとも知れん。だからわしが、破滅の石と王族の娘とを融合させ、国王にもう一つの石の在処を教えてやったのじゃ。あの愚弄のことだ、国の未来もろくに考えずに迷わず命を投げ打つじゃろう。そうして世界は救われ、わしは英雄として称えられる! どうだ!! 貴様ごときに、わしの計画が止められるかぁ!?」
目ヤニに埋もれた眼を見開き、呪術師は試すような視線を投げかけてくる。だがスティーブンはもう、呪術師など見てはいなかった。激情に駆られ瞬きを忘れた彼の瞳は、静かなる決意の炎に打ち震えていた。
*
地下二階。地下牢の鉄扉が視界の端で重苦しい音を立てて開き、ステファニィーは胴を鎖に繋がれたまま顔を上げた。
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