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第一話
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「ステファニィー、ステファニィーっ!! どこだ?」
城内の薄暗い廊下、そこに一人の男が居た。切れ切れになった吐息で婚約者の名を叫び、もう何時間も城内を駆け回っている。彼が最後に彼女のそのブロンズの髪を目にしたのは、二日も前の晩のことだ。
『西……サンフロントの洞窟……そこに………力……〝創世の石〟が……』
通りかかった扉の向こうから、年老いた老婆の声が漏れ聞こえて来た。――――呪術師だ。その特徴的なしゃがれ声には男にも覚えがあった。
『……それを用いれば、………力、…滅の石〟をも鎮められ…か?』
今度は先程よりも近い。扉のすぐ向こうからだ。老婆のものより幾分か若く、雑音の少ない、良く通る低声。この声にもまた、彼には聞き覚えがあった。
「ここにいらっしゃったのですか、国王!! ステファニィーを、姫を見かけませんでしたか!? 一昨日の晩から姿が見えないのです!」
扉を開け放ち尋ねると、廊下よりもさらに暗い部屋の中で、痛んだブロンズの髪がゆっくりと振り返る。精気のない青い瞳の中で、机上の蝋燭が揺れていた。
「あぁ、スティーブンか。婚約は、無しになった。あれのことは、……忘れろ」
「何をおっしゃっているのです! 式も間近だと言うのに――――」
「黙れ!!」
スティーブンの声を遮って、王の激しい怒声が飛ぶ。その濁った白眼は異様なまでに血走り、点のようになった瞳孔が絶え間なく震えていた。
「貴様、誰に口を利いていると思っているのだ! 今ここで、首を刎ねてやっても良いのだぞ!!」
鬼気迫る形相で立ち上がり、帯剣に手を掛ける王。鞘から抜き出た刃が闇の中で煌めき、スティーブンは狭い部屋の中であっという間に壁際まで追いやられてしまう。そして、振り上げられた刃先に今まさに切りつけられようと言う時、真横の扉が勢いよく開いた。
城内の薄暗い廊下、そこに一人の男が居た。切れ切れになった吐息で婚約者の名を叫び、もう何時間も城内を駆け回っている。彼が最後に彼女のそのブロンズの髪を目にしたのは、二日も前の晩のことだ。
『西……サンフロントの洞窟……そこに………力……〝創世の石〟が……』
通りかかった扉の向こうから、年老いた老婆の声が漏れ聞こえて来た。――――呪術師だ。その特徴的なしゃがれ声には男にも覚えがあった。
『……それを用いれば、………力、…滅の石〟をも鎮められ…か?』
今度は先程よりも近い。扉のすぐ向こうからだ。老婆のものより幾分か若く、雑音の少ない、良く通る低声。この声にもまた、彼には聞き覚えがあった。
「ここにいらっしゃったのですか、国王!! ステファニィーを、姫を見かけませんでしたか!? 一昨日の晩から姿が見えないのです!」
扉を開け放ち尋ねると、廊下よりもさらに暗い部屋の中で、痛んだブロンズの髪がゆっくりと振り返る。精気のない青い瞳の中で、机上の蝋燭が揺れていた。
「あぁ、スティーブンか。婚約は、無しになった。あれのことは、……忘れろ」
「何をおっしゃっているのです! 式も間近だと言うのに――――」
「黙れ!!」
スティーブンの声を遮って、王の激しい怒声が飛ぶ。その濁った白眼は異様なまでに血走り、点のようになった瞳孔が絶え間なく震えていた。
「貴様、誰に口を利いていると思っているのだ! 今ここで、首を刎ねてやっても良いのだぞ!!」
鬼気迫る形相で立ち上がり、帯剣に手を掛ける王。鞘から抜き出た刃が闇の中で煌めき、スティーブンは狭い部屋の中であっという間に壁際まで追いやられてしまう。そして、振り上げられた刃先に今まさに切りつけられようと言う時、真横の扉が勢いよく開いた。
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