13 / 16
13 暗雲
しおりを挟む
◆◆◆ ウィステリア実家のベルターニ伯爵家タウンハウス◆◆◆
夜半には皇都の空は雨となっていた。
ゴロゴロと不吉な雷鳴が響く。
伯爵家の上空でも、ひときわ不吉な黒い雲が広がっていた。
雷鳴と共に、伯爵の怒号がサロンに響いた。
「なんだと!? 化け物公爵の怒りをかっただと!?」
「だってお父様、ウィステリアのくせに高級衣装室にいて綺麗なドレスを着て、姉である私を侮辱したんですよ!」
「あれでも今は一応、公爵夫人だぞ! どうして我慢できないんだ!」
「あの子、ウィステリアは無能のくせにあまりにも生意気になっていたから!」
「どうしましょう、私のかわいいイレザが化け物公爵に呪われたら、死と破滅を呼ぶと言われているんですよ」
母親たる女は長女のイレザの心配しかせず、出来損ないと言い放つ下の娘にはほどんど情らしきものが見えない。
自分の人生の汚点であるとしか思っていなかった。
長女のイレザは、その目に暗い怨念の炎を宿し、ついに口にする。
血のように赤い唇で、
「……ねぇ、いっそあの二人を殺してしまえばいいのではないの? 噂によれば公爵はあちこちで恨みをかってるそうよ」
死を招く言葉を。
「ああ、私も聞いたことがありますわ。あの公爵、普段は他者にかかわらず引きこもりであるにもかかわらず、皇城に出向いた後にほぼ必ずと言ってもいいほど、汚職貴族の誰かが罪を暴かれて粛清されるから、皇帝に密告をしているのではないかと」
「どのようなやり方で横領、脱税等の汚職貴族を見つけ出しているのか分からないけど、なにしろ化け物らしいから」
「化け物なら退治するしかないな、このままでは被害者が増える、縁戚まで何かあっては遅い。ちょうど他国の賓客を招いての狩猟大会がある」
伯爵はまるで正義の為に戦うとでも言いたげだった。
化け物退治をする英雄だと思い込もうとするが如くに。
「そこでなら……魔物もいるし、事故があってもおかしくはないわね」
イレザは不吉に笑った。
「でも社交しないブラード公爵が出てくるかしら?」
母親は首を傾げた。
「そこは他国の賓客の前で誘って断われなくすればいいかもしれないわ、ウィステリアの方も呼び出して……そうすれば」
イレザは社交界で仕入れた知識と情報で策をねる。
「大人しくウィステリアが出てくるかしら?」
「そうだ、お母様、うちの乳母よ」
「当家の乳母は病気で死んだでしょう」
「だからね、昔あの子がただ一人優しくしてくれて懐いていた乳母の形見を返してあげると言えば、来るんじゃないかしら」
「ああ、そう言えば……乳母には心を開いていたせいで、あれが亡くなった時はたいそう泣いていたわ」
「私が嫌がらせで形見を一つもあげなかったから、余計に泣いていたわ」
その時、落雷の大きな音が響いた。
「きやっ、凄い音がしましたわね、あなた。近くで落ちたのかしら?」
「まあ、うちは大丈夫だろ。ではウィステリアに狩猟大会への招待状を送らねば」
「私が誘いの手紙を書くわ、乳母の形見を餌にして」
イレザはメイドを呼んで筆記用具と手紙を用意させた。
空に暗雲は立ち込め、次はどこに落ちるだろうか。
苛烈なる雷は。
◆◆◆ウィステリアサイド◆◆◆
買い物デートから四日後。
エドはまた朝から城に呼ばれてたので、慌ただしく出かけて行った。
なのでまだ私もタウンハウスにいたし、そこで彼の帰りを待つことにした。
北部への帰還用転移スクロールは高価なので、一緒に使うのだ。
「今日は雨が止んでよかったわ」
数日間は雨だった。
その間はほのかの物語を思い出しながら原稿を書いていた。
そしてようやく晴れて、まだ少し庭がぬかるんではいたけど、お陰で穴は掘りやすくなっただろうと、私は使用人にお願いして木の棒をタウンハウスの芝生の庭に立ててもらった。
藁を巻き付けたカカシのようなものを作ったのだ。
それはつまり剣士などが訓練に使うものと同じようなもので、棒を差し込んだ後は土魔法が得意な騎士に頼んで棒の根本をしっかりと固めてもらった。
そしてその間、買ってきたズボンに着替えた私はしばらくは雨の影響のない渡り廊下をダッシュ&ジャンプをしていたが、困難に気がつき、庭の芝生の上に移動した。
「やはり飛び蹴りは難易度が高いから、普通に蹴りにしましょう。とうっ!」
バシッ!
足の脛部分でカカシに蹴りを入れた。
そして二回、三回と蹴りを入れた。
「お、奥様! おやめください! そんな事をして、足に痣などできたら」
「痣……棒に藁は巻いてるけど?」
「でもそんなに何度も蹴ればできますよ!」
乙女の柔肌と言えど、私の足に痣ができたところで……私の寝所にて裸を見にくる夫はいない。
エドとはずっと白い結婚のままなのだ。
とはいえ、この体は元はウィステリアのものだ。
少しは気を使うべきなのかも?
「うーん、だとすると靴の裏で蹴るのがいいのかしら」
踵があるのと無いのはどちらが蹴りやすいかしら。やはりぺたんこ?
でも尖ったヒールはそれはそれで攻撃力ありそう。刺さるから。
「蹴りを諦めませんか? 足を上げるのは淑女の行動ではありませんし、護衛騎士もいますし」
「でも私には魔力がないし、いざというときの護身にもなるし」
「だからそのための護衛騎士ですよ!」
その護衛騎士はエドがいるとなかなか近寄って来ないしなぁ。
御守りはあるけど、連続使用はできないかもしれないし、あの後も公爵がまた魔力を石に注いで充電みたいな事をしていたし。
そんな事を考えてると、執事が手紙を手にして近寄って来た。
「奥様、ベルターニ伯爵家からお手紙が届きました」
確かに手紙の封蝋は伯爵家のものだった。
「ベルターニの実家から……私宛か」
渡された手紙の宛名の筆跡は姉のものだ。
私はなんだか胸さわぎがして、手紙の封を乱暴に手で開けた。
夜半には皇都の空は雨となっていた。
ゴロゴロと不吉な雷鳴が響く。
伯爵家の上空でも、ひときわ不吉な黒い雲が広がっていた。
雷鳴と共に、伯爵の怒号がサロンに響いた。
「なんだと!? 化け物公爵の怒りをかっただと!?」
「だってお父様、ウィステリアのくせに高級衣装室にいて綺麗なドレスを着て、姉である私を侮辱したんですよ!」
「あれでも今は一応、公爵夫人だぞ! どうして我慢できないんだ!」
「あの子、ウィステリアは無能のくせにあまりにも生意気になっていたから!」
「どうしましょう、私のかわいいイレザが化け物公爵に呪われたら、死と破滅を呼ぶと言われているんですよ」
母親たる女は長女のイレザの心配しかせず、出来損ないと言い放つ下の娘にはほどんど情らしきものが見えない。
自分の人生の汚点であるとしか思っていなかった。
長女のイレザは、その目に暗い怨念の炎を宿し、ついに口にする。
血のように赤い唇で、
「……ねぇ、いっそあの二人を殺してしまえばいいのではないの? 噂によれば公爵はあちこちで恨みをかってるそうよ」
死を招く言葉を。
「ああ、私も聞いたことがありますわ。あの公爵、普段は他者にかかわらず引きこもりであるにもかかわらず、皇城に出向いた後にほぼ必ずと言ってもいいほど、汚職貴族の誰かが罪を暴かれて粛清されるから、皇帝に密告をしているのではないかと」
「どのようなやり方で横領、脱税等の汚職貴族を見つけ出しているのか分からないけど、なにしろ化け物らしいから」
「化け物なら退治するしかないな、このままでは被害者が増える、縁戚まで何かあっては遅い。ちょうど他国の賓客を招いての狩猟大会がある」
伯爵はまるで正義の為に戦うとでも言いたげだった。
化け物退治をする英雄だと思い込もうとするが如くに。
「そこでなら……魔物もいるし、事故があってもおかしくはないわね」
イレザは不吉に笑った。
「でも社交しないブラード公爵が出てくるかしら?」
母親は首を傾げた。
「そこは他国の賓客の前で誘って断われなくすればいいかもしれないわ、ウィステリアの方も呼び出して……そうすれば」
イレザは社交界で仕入れた知識と情報で策をねる。
「大人しくウィステリアが出てくるかしら?」
「そうだ、お母様、うちの乳母よ」
「当家の乳母は病気で死んだでしょう」
「だからね、昔あの子がただ一人優しくしてくれて懐いていた乳母の形見を返してあげると言えば、来るんじゃないかしら」
「ああ、そう言えば……乳母には心を開いていたせいで、あれが亡くなった時はたいそう泣いていたわ」
「私が嫌がらせで形見を一つもあげなかったから、余計に泣いていたわ」
その時、落雷の大きな音が響いた。
「きやっ、凄い音がしましたわね、あなた。近くで落ちたのかしら?」
「まあ、うちは大丈夫だろ。ではウィステリアに狩猟大会への招待状を送らねば」
「私が誘いの手紙を書くわ、乳母の形見を餌にして」
イレザはメイドを呼んで筆記用具と手紙を用意させた。
空に暗雲は立ち込め、次はどこに落ちるだろうか。
苛烈なる雷は。
◆◆◆ウィステリアサイド◆◆◆
買い物デートから四日後。
エドはまた朝から城に呼ばれてたので、慌ただしく出かけて行った。
なのでまだ私もタウンハウスにいたし、そこで彼の帰りを待つことにした。
北部への帰還用転移スクロールは高価なので、一緒に使うのだ。
「今日は雨が止んでよかったわ」
数日間は雨だった。
その間はほのかの物語を思い出しながら原稿を書いていた。
そしてようやく晴れて、まだ少し庭がぬかるんではいたけど、お陰で穴は掘りやすくなっただろうと、私は使用人にお願いして木の棒をタウンハウスの芝生の庭に立ててもらった。
藁を巻き付けたカカシのようなものを作ったのだ。
それはつまり剣士などが訓練に使うものと同じようなもので、棒を差し込んだ後は土魔法が得意な騎士に頼んで棒の根本をしっかりと固めてもらった。
そしてその間、買ってきたズボンに着替えた私はしばらくは雨の影響のない渡り廊下をダッシュ&ジャンプをしていたが、困難に気がつき、庭の芝生の上に移動した。
「やはり飛び蹴りは難易度が高いから、普通に蹴りにしましょう。とうっ!」
バシッ!
足の脛部分でカカシに蹴りを入れた。
そして二回、三回と蹴りを入れた。
「お、奥様! おやめください! そんな事をして、足に痣などできたら」
「痣……棒に藁は巻いてるけど?」
「でもそんなに何度も蹴ればできますよ!」
乙女の柔肌と言えど、私の足に痣ができたところで……私の寝所にて裸を見にくる夫はいない。
エドとはずっと白い結婚のままなのだ。
とはいえ、この体は元はウィステリアのものだ。
少しは気を使うべきなのかも?
「うーん、だとすると靴の裏で蹴るのがいいのかしら」
踵があるのと無いのはどちらが蹴りやすいかしら。やはりぺたんこ?
でも尖ったヒールはそれはそれで攻撃力ありそう。刺さるから。
「蹴りを諦めませんか? 足を上げるのは淑女の行動ではありませんし、護衛騎士もいますし」
「でも私には魔力がないし、いざというときの護身にもなるし」
「だからそのための護衛騎士ですよ!」
その護衛騎士はエドがいるとなかなか近寄って来ないしなぁ。
御守りはあるけど、連続使用はできないかもしれないし、あの後も公爵がまた魔力を石に注いで充電みたいな事をしていたし。
そんな事を考えてると、執事が手紙を手にして近寄って来た。
「奥様、ベルターニ伯爵家からお手紙が届きました」
確かに手紙の封蝋は伯爵家のものだった。
「ベルターニの実家から……私宛か」
渡された手紙の宛名の筆跡は姉のものだ。
私はなんだか胸さわぎがして、手紙の封を乱暴に手で開けた。
230
お気に入りに追加
299
あなたにおすすめの小説
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。


記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる