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56 「雷神召喚」
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完全に覚悟完了みたいな顔で神下ろしを決断なさったカーティス様の件を、私はティア様に相談に行った。
「ティア様からカーティス様をお止めしてくだませんか?」
流石に自分の主人が止めろというなら諦めるかも、そう思ったので。
「でも、守りたい者を守れずして騎士の矜持は……私には止められないわ。気持ちが分かるから」
「セレスティアナはな、家族や領民守る為に自分の命を捧げるような女だから、カーティスの方に共感してしまうぞ。
其方はもう無事と勝利を祈るほかあるまい」
ティア様の隣にいたギル様までそんな事を……。
「私も手を貸す。エテルニテにあのような魔女が住み着いていてはこちらとしても困る」
「もちろん私も何か有れば回復魔法でサポートするつもりよ」
「ギルバート様とティア様まで現場に行かれるという事ですか?」
「海の魔女が貴女を狙って来るなら、貴女が囮役になってしまうでしょう。
私は私の部下を守る責任があるので当然そうなるわ」
あ、そう言えばそうだわ……。
なんとか早めに倒してしまわないと、私はティア様の側にもいられないし、エテルニテの海にあんな危険な魔女を野放しにしておけない。
*
カーティス様はライリー内の神殿へ向かう事になった。
私も神殿へ駆けつけた。
さっきから巫女達の歌う聖歌が聞こえて来る。
「カーティス様」
「リナさん、今から私は神下ろしの為の禊の儀式です」
強い瞳だった。
彼のその意思は、揺るぎそうにない。
「……はい。
その時が来たら、私の御守りを、代わりに持っていて下さい、私が囮になります。
魔女は、外した時に来る気がします」
「分かりました」
禊の儀式の後に、私とカーティス様は転移陣でエテルニテの海へ向かった。
海岸で、私はカーティス様に、自分で作ったお守りのブレスレットを渡した。
私は白い衣装の下に、水着を着ている。
万が一、魔女に海に引きずり込まれた時に備えて。
私は砂浜に立ち、足元に寄せて来る波に足を浸した。
晴れていた空が急激に雲を呼び、暗雲が立ち込める。
ティア様やカーティス様達は姿を隠す妖精の粉を自らにかけて、姿を消した状態で、ティア様の祈りを込めた剣を持って待機。
その剣の刀身と、カーティス様の背中には雷神召喚の呪文があらかじめ仕込まれている。
私が海辺で風を操る。
前も海で魔法の練習をしていた時に魔力を感知してあの魔女は現れたから。
水面が不自然に揺らいだ。
邪悪な気配がする。
水が渦を作って立ち上がり、魔女が姿を現した。
「おやおや、こんな所で一人で、犠牲になる覚悟でも決めたのかしらね、こちらとしてはちょうどいいけど」
狙い通り、魔女が来た!
「さあ、もっとこちらへ、海へおいでなさい……」
私は今、足先が寄せて来る波に触れるくらいの場所にいる。
「海の魔女よ、私が体を渡せば、故郷に津波は起こさないって約束してくれるんでしょうね?」
「ああ、もちろんさ、魔女は契約を守るもんだからね」
『いざ、我が身に降り来たれ! 雷神!! 招来!!』
突如天から雷が降って来る。
その下には姿を隠していたカーティス様が!
顕現!!
「何!? お前は!?」
神聖なる気を纏った青銀の髪の男性が立っている。
黒髪のカーティスさまの色が変化している。
半裸の背中には呪文が消えて、代わりに雷神の聖痕が浮き上がっている。
ふわりと私の体が宙に浮いた!
海から急速に遠ざかる!
『滅べ』
雷を纏う雷神は静かにそう言うと、剣の切先を魔女に向け、雷撃を放った。
圧倒的な力が、雷が魔女を襲った。
私は魅入られたように、動けないままだった。
「ぎゃあああああああっっ!!」
その断末魔を最後に、魔女は灰塵となった。
神の攻撃の一撃で死んだ。
カーティス様の髪色が青銀から黒に戻って行く。
雷神が帰った!?
ギル様の風の魔法で砂浜に運ばれていた私は慌てて駆けだした。
「カーティス様!!」
カーティス様に渡したブレスレットが、目の前でブツンと切れ、灰になったのが見えた。
鳥肌が立った。
走っていた私の足はもつれて、私は砂浜に倒れた。
すぐさま顔を上げた。
「カーティス様ぁ!」
もはや涙声になっていた私がそう叫んだ後に、カーティス様はそのまま砂浜に倒れた。
やはり人の身で雷神召喚は体に負担が多すぎたんだ!
私は大切な人を失うかもしれない恐怖に体が震え、喉がひりつき、胸がぎゅっと締め付けられた。
無事でいて!
「「リナ! カーティス!」」
姿を消して待機していたティア様とギル様が姿を現し、叫んで駆け寄って来てくれた。
ティア様は、転んだ私を助け起こし、ギル様はカーティス様の体を起こした。
「おい! カーティス卿! しっかりしろ! 大丈夫か!?」
「カーティス! 生きているなら返事をなさい!」
「ティア様、私は大丈夫です、ちょっと腰が抜けたくらいですから、カーティス様の方を!」
「リーゼ! リナをお願い!」
「はい!」
ティア様といつの間にかいたラナン卿がカーティス様の方に駆けつけた。
女騎士のリーゼ卿が私を支えてくれた。
『癒しの光よ!!』
ティア様がカーティス様に癒しの魔法をかけてくださった!
これで助かる!
私はそう思った。
──でも、カーティス様は目を醒さなかった。
目の前が暗くなった。冷たい汗が流れた。
胸が……苦しい。
「ティア様からカーティス様をお止めしてくだませんか?」
流石に自分の主人が止めろというなら諦めるかも、そう思ったので。
「でも、守りたい者を守れずして騎士の矜持は……私には止められないわ。気持ちが分かるから」
「セレスティアナはな、家族や領民守る為に自分の命を捧げるような女だから、カーティスの方に共感してしまうぞ。
其方はもう無事と勝利を祈るほかあるまい」
ティア様の隣にいたギル様までそんな事を……。
「私も手を貸す。エテルニテにあのような魔女が住み着いていてはこちらとしても困る」
「もちろん私も何か有れば回復魔法でサポートするつもりよ」
「ギルバート様とティア様まで現場に行かれるという事ですか?」
「海の魔女が貴女を狙って来るなら、貴女が囮役になってしまうでしょう。
私は私の部下を守る責任があるので当然そうなるわ」
あ、そう言えばそうだわ……。
なんとか早めに倒してしまわないと、私はティア様の側にもいられないし、エテルニテの海にあんな危険な魔女を野放しにしておけない。
*
カーティス様はライリー内の神殿へ向かう事になった。
私も神殿へ駆けつけた。
さっきから巫女達の歌う聖歌が聞こえて来る。
「カーティス様」
「リナさん、今から私は神下ろしの為の禊の儀式です」
強い瞳だった。
彼のその意思は、揺るぎそうにない。
「……はい。
その時が来たら、私の御守りを、代わりに持っていて下さい、私が囮になります。
魔女は、外した時に来る気がします」
「分かりました」
禊の儀式の後に、私とカーティス様は転移陣でエテルニテの海へ向かった。
海岸で、私はカーティス様に、自分で作ったお守りのブレスレットを渡した。
私は白い衣装の下に、水着を着ている。
万が一、魔女に海に引きずり込まれた時に備えて。
私は砂浜に立ち、足元に寄せて来る波に足を浸した。
晴れていた空が急激に雲を呼び、暗雲が立ち込める。
ティア様やカーティス様達は姿を隠す妖精の粉を自らにかけて、姿を消した状態で、ティア様の祈りを込めた剣を持って待機。
その剣の刀身と、カーティス様の背中には雷神召喚の呪文があらかじめ仕込まれている。
私が海辺で風を操る。
前も海で魔法の練習をしていた時に魔力を感知してあの魔女は現れたから。
水面が不自然に揺らいだ。
邪悪な気配がする。
水が渦を作って立ち上がり、魔女が姿を現した。
「おやおや、こんな所で一人で、犠牲になる覚悟でも決めたのかしらね、こちらとしてはちょうどいいけど」
狙い通り、魔女が来た!
「さあ、もっとこちらへ、海へおいでなさい……」
私は今、足先が寄せて来る波に触れるくらいの場所にいる。
「海の魔女よ、私が体を渡せば、故郷に津波は起こさないって約束してくれるんでしょうね?」
「ああ、もちろんさ、魔女は契約を守るもんだからね」
『いざ、我が身に降り来たれ! 雷神!! 招来!!』
突如天から雷が降って来る。
その下には姿を隠していたカーティス様が!
顕現!!
「何!? お前は!?」
神聖なる気を纏った青銀の髪の男性が立っている。
黒髪のカーティスさまの色が変化している。
半裸の背中には呪文が消えて、代わりに雷神の聖痕が浮き上がっている。
ふわりと私の体が宙に浮いた!
海から急速に遠ざかる!
『滅べ』
雷を纏う雷神は静かにそう言うと、剣の切先を魔女に向け、雷撃を放った。
圧倒的な力が、雷が魔女を襲った。
私は魅入られたように、動けないままだった。
「ぎゃあああああああっっ!!」
その断末魔を最後に、魔女は灰塵となった。
神の攻撃の一撃で死んだ。
カーティス様の髪色が青銀から黒に戻って行く。
雷神が帰った!?
ギル様の風の魔法で砂浜に運ばれていた私は慌てて駆けだした。
「カーティス様!!」
カーティス様に渡したブレスレットが、目の前でブツンと切れ、灰になったのが見えた。
鳥肌が立った。
走っていた私の足はもつれて、私は砂浜に倒れた。
すぐさま顔を上げた。
「カーティス様ぁ!」
もはや涙声になっていた私がそう叫んだ後に、カーティス様はそのまま砂浜に倒れた。
やはり人の身で雷神召喚は体に負担が多すぎたんだ!
私は大切な人を失うかもしれない恐怖に体が震え、喉がひりつき、胸がぎゅっと締め付けられた。
無事でいて!
「「リナ! カーティス!」」
姿を消して待機していたティア様とギル様が姿を現し、叫んで駆け寄って来てくれた。
ティア様は、転んだ私を助け起こし、ギル様はカーティス様の体を起こした。
「おい! カーティス卿! しっかりしろ! 大丈夫か!?」
「カーティス! 生きているなら返事をなさい!」
「ティア様、私は大丈夫です、ちょっと腰が抜けたくらいですから、カーティス様の方を!」
「リーゼ! リナをお願い!」
「はい!」
ティア様といつの間にかいたラナン卿がカーティス様の方に駆けつけた。
女騎士のリーゼ卿が私を支えてくれた。
『癒しの光よ!!』
ティア様がカーティス様に癒しの魔法をかけてくださった!
これで助かる!
私はそう思った。
──でも、カーティス様は目を醒さなかった。
目の前が暗くなった。冷たい汗が流れた。
胸が……苦しい。
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