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46 「宝探しと約束」

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 さあ、パーティーの始まりですよ!

「今日は皆、私の誕生祝いの為に集まってくれてありがとう。
無礼講なので、好きに飲み食いして楽しんでくれ! 乾杯!」

「「ギルバート様! お誕生日おめでとうございます! 乾杯!」」

 祝杯と共に、楽師の奏でる賑やかな音楽がパーティー会場に流れた。

 会場には美しい花々が飾られている。

 春のうちからインベントリで大事にしまわれ、今日の日にまたお披露目となっている。
 まるで今が盛りのように。


 パーティー用に正装したカーティス様が目の前に現れた。
 いつもかっこいいけど、通常の三倍かっこいい。


「そのアイスブルーのドレス、涼しげでよくお似合いですね。とても……綺麗です」
「ふふ、汚さないように気をつけます」

「リナさん、一曲踊っていただけますか?」
「は、はい」
 

 カーティス様のエスコートでダンスを踊った。

 目の端にギル様と踊る華麗なティア様の姿と、辺境伯夫妻も姿までチラッと見えた。

 どこを注目していいか分からないくらい豪華なメンツだけど、今はカーティス様と踊ってる。
 目の前のパートナーに集中!!


 多分ティア様達のダンスは誰かが記録のクリスタルで撮影してくれているはず!

「リナさん、今、別の人の事を気にしていますか? 妬けますね」
「え!? 主の事ですけど!?」


 妬く必要ないですよね!?
 って、言うか……焼き餅!? 私の為に!?

 今、手を取るパートナー以外の事をちょっと確かに考えたけど、主人たるセレスティアナ様の事だし、そんな……大袈裟な……。


「フフ、セレスティアナ様相手では怒れませんね」
「そ、そうですよ。ティア様は仕方ないです。美し過ぎるので」


 ダンスの最中にカーティス様が聞いて来た。

「リナさんの描いたお宝石の図柄をお聞きしても?」
「花が10、リボン10と……め、眼鏡、1です」

 何故、こちらの世界では珍しい、眼鏡というモチーフをわざわざ選んで描いてしまったのか……。

 私の手は……。

「分かりました」

 でも、それを聞いた時、カーティス様はそう言って、嬉しそうに笑ってくれた。
 なんだか、胸がギュッとなる。
 
 曲が変わった。

 ファーストダンスを一曲踊り終えたので、少し休憩。

 ご馳走やケーキを食べる。

 そう、ケーキですよ、二人で夜に作ったんです!
 ギルバート様にアピールする。

「このケーキはギルバート様の誕生を祝って、カーティス様と一緒に作りました」
「美味しそうだ。二人とも、ありがとう」

「切り分けました、どうぞ」

 他のメイド仲間が切り分けてくれたケーキを、ギル様とティア様が口に運んだ。

「……うん。とても美味しい」
「本当、美味しいわ。ふわふわのスフレケーキ!」
「口の中で柔らかく消える……本当に無限に食べれそうな美味しいケーキだ」

「え!? ギルバート様、僕の分も残しておいて欲しいな!」


 ウィル坊ちゃまが慌てている。
 でも、大丈夫。同じ物を三個は作っておりますよ。

「ウィル坊ちゃん、こちらをどうぞ」

 メイド仲間がすかさずケーキを出してくれた。

「やった! ……美味しい!!」
「ギルバート、ウィル、生クリームの苺のケーキもありますよ」
「……うむ。こちらも美味しい」
「こちらは料理長が私のレシピを忠実に再現していますから、当然美味しいですね」

 ティア様もしっかりと自分の分を確保して美味しく二種のケーキを堪能してる。

「そうだな」

 ギルバート様も上機嫌のようだ。

 * * *

 一通り、ダンスや食事を楽しんだ後で、いよいよ絵付きの石探しイベントがスタートした。

「見つけたお宝石によって貰える品が変わるそうだ。
立ち入り禁止区域には石は隠されていないから、それ以外で皆、楽しく宝探しをしてくれ!」

「「はい!!」」


 パーティー会場から蜘蛛の子を散らすように人々が散開した。


 城内の立ち入り可能な場所を探す者。
 庭園を探す者。
 様々だ。


 カーティス様も会場から移動した。

 無事、私が隠した石が見つかるかしら?
 見つからなかったら、ガッカリしちゃうかな?

 しばらくして、捜索組に発見者が出て来た。


「お花の石、かわいいね、私のリボンのと交換しない?」
「良いよ~」

「ウィル様の石どこ!?」
「セレスティアナ様の石と交換できないか? 金なら出す!」
「そんな事を言われても、どれか分からない」

「絵が上手いやつだろう」
「画家二人も絵描きに協力してるらしいぞ」
「ええ!?」

「おかーさん! 可愛い猫ちゃんの石見つけた!」
「良かったわね」

「セレスティアナ様はもしかして猫を描いたのでは!? 猫がお好きなんだろう!?」
「子供からは奪えないぞ! 探せ!」

 
 うーん、みんな頑張ってるな。

 私の描いた石……カーティス様より、もしかしたら他の人が先に見つけちゃうかも……。


 そんな心配をしたのだけど──


 無事、カーティス様はピンポイントでメガネを描いた石を見つけて来た。


「鰻の生け簀の水瓶を持った女性の像の頭の上にありました」
「あはは、頭の上なので、背の高い人以外には見つけにくいと思ったんですよ。お見事です」

「見つけましたので、約束通り、願いは叶えていただけますか?」

「で、では……願い事を聞かせて下さい」


「次に……新しい年を迎える時は、私と一緒に山へ行って下さい。
私の竜に乗って、山頂にお連れし、新年の朝日を一緒に見ましょう」


 ……え?

「そんな……ささやかな願いで良いんですか?」
「はい、実は私はあの時点では空を飛べなかったので、無理でしたが、今なら、私が自分でお連れ出来るので」


 本当は自分が連れて行きたかったの?
 他ならぬ私を?

 ちょっと感動で目頭が熱くなって来たわ。
 そんな可愛らしい願いを持っていたなんて。


「自由に空を飛べる翼を得る機会を下さったセレスティアナ様には、とても感謝しています」


 それは、とても、自由を渇望していた人みたいな目をしていた。
 過去に何かあったのかな? 
 家が武門系ならとても厳しかったとか?


「そうですね。セレスティアナ様は多くの尊いものを与えて下さいます」


 同意しかない。

 そんな訳で、私とカーティス様は、冬にご来光を見に行く約束をした。
 まだ夏なので、約束の日はだいぶん、遠いなって、私は少し笑った。


 宝探し終了時刻になって、集めた石をセレスティアナ様の所に持って行くと、景品の交換となった。
 石は確認だけしてそのまま貰える。

 みんな色んな景品を貰って楽しそうに、幸せそうに笑っていた。
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