【完結】風渡る丘のリナ 〜推しに仕えて異世界暮らし〜

長船凪

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45 「謎の約束」

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 竜騎士達が朝焼けの中、お空の散歩から竜と共に城に戻って来た。

 丘の上にあるこのライリーのお城には、今日もいい風が吹いていて、気持ちが良かっただろう。

「おはようございます、リナさん」
「おはようございます、カーティス様、これ、弟さんからの手紙です」

 私はさっき預かった手紙をカーティス様に手渡した。

「エクムントが来ていたんですね」

 手紙を受け取ったカーティス様はその場では読まずにポケットに入れた。


「ええ、弟さんはレインボーパールの事を教えたら水着を買って海へ行くと走って行きました」
「ああ、そうか、あの色とりどりの真珠がありましたね」
「ええ、婚約者候補に贈る石があれでどうにかなると思います」

「石と言えば、リナさんも石に絵を描いていましたよね」
「はい、お花とか」
「あの石達をギルバート様の誕生日に、隠して宝探しをするんですよね」
「はい」

「隠す係は決まっているのでしょうか?」
「お嬢様がご自分でされるなら、私も手伝うと思いますが」

「もし、あなたの絵の描いた石を私が見つけられたら、ひとつ、お願いを叶えて下さいますか?」
「え!? な、内容にもよりますけど、私で出来る事であれば……」
「ありがとうございます」


 カーティス様は一瞬笑みを浮かべ、背を向け、城の方へ去って行った。

 一体私に、な、何をお願いしたいのかしら!?

 * *

「さて、人の少ない時間に石を隠しておきますか」

 夜になって、外は暗い時間にティア様が城の周辺に石を隠しに行くらしい。
 城の中はラナン卿とローウェ卿、ナリオ卿などが既にいくつか隠したらしい。


 私達は今、庭園にいる。
 月明かりと手元にランプはあるけど、暗い。

「大丈夫ですか? 
だいぶん暗いですよ、石を隠すのは明日の早朝の方が良くないですか?」

「私は視覚強化の魔法で暗視も可能にしたわ」

「え!? そんな事が出来るんですね、凄いです」

 便利!

「リナは無理せずに、魔道具のランプを使って」
「は、はい」
『石隠し、僕も手伝うよ~~』


 リナルド氏! 飛んでる!


 植え込みの中などに石を隠して行った。

 ちなみに絵を描いた石は全てクリスタルで撮影済みなので、自分で後から描いた石を見つけたと嘘を言っても無効になる。


「絵付きの石を見つけて貰えるのは、ほぼお菓子なんですよね?」

「そうだけど、でも王冠やドラゴンの絵を見つけたらエクストラポーションや宝石が貰える事もあるのよ。
お姫様の絵なら服、王子様の絵なら靴、リボンの絵なら綺麗なリボン、魚の絵なら、食べられるお魚、ご飯の絵ならお米、麦の穂なら小麦粉を袋で貰えるの」

「宝石やエクストラポーションまで貰えるのですか! 
それは本気になりますね」

「多少は本気になってもらわないと面白くないでしょうし。
子供はともかく、大人も参加出来るやつだから」

「カーティス様は私の描いた石を探すと言ってました」
「あら、あなたの絵のついた石が欲しいのかしら? 可愛いわね」
「いえ、あの、見つけられたら、私に何かお願いを聞いて欲しいのだとか」

「あら、あら、あら! 何かしら!? 
ときめきイベントの気配を察知したわ!」

「そ、そうでしょうか?」
「ふふふ、何か分かったら、ぜひ報告して欲しいわ」

「わ、私の事より、日付けが変わる前にお部屋に戻らないと、ギルバート様が寂しく思われるかもしれませんよ」
「そうね、そろそろ戻るわ」


 城内のティア様のお部屋の前まで戻って来た。
 多分、ギルバート様がお部屋の中でお待ちなのだろう。

「おやすみなさいませ、セレスティアナ様、良い夜を」
「おやすみ、リナ」
 
 ティア様は扉を開けて中に入って行った。

 私は自屋に戻ると、翼猫のアスランがベッドの上で丸くなって待っていてくれた。

 城内にアスランと寝たい人は多いのだけど、優しいこの子はたまに悪夢を見る私を気使って、最近私の寝床に来てくれる事が多い。

 寝巻きに着替えて私もふわふわの猫ちゃんを撫でてから、横になった。
 おやすみなさい。


 * * *

 また新しい朝が来た。

 今日がギルバート様のお誕生日だから、私もドレスを着る日だわ。

 水色のパールのイヤリングと、カーティス様が選んでくれたアイスブルーのドレスを着る。

 ティア様は本日光沢のあるシルクの白いドレスを着て、白と銀糸のリボンを飾る。
 イヤリングと首飾りと指輪はサファイア。

 宝石はギルバート様の瞳の色であり、銀色のリボンは……ギル様の髪の色だ。
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