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43 「夏の日の課外授業のように」
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夏の日差しが眩しい川辺。
鮮やかな緑の影が水面に映る。
透き通る水の流れが涼やかだ。
私は今日、子供達と騎士様と一緒に、ライリーのお城から近い川に来ている。
ティア様は本日、エテルニテの方に用事があり、ギルバート様は王都に用事があるそうで、今日はバラバラに行動している。
でもティア様ったら、カーティス卿はご自分の騎士なのに私につけてどうするのですかと言っても、前回海賊に狙われたからって返されるし……。
女性騎士と他の護衛騎士はティア様についてるから、まあ、大丈夫でしょうけど。
私はライリーのお城から、川に一緒に来ている子供達に声をかけた。
「今日は皆で石に絵が描けるように、手のひらで握れるくらいの大きさの石を探してもらいます!
でも川の深い所や、流れの早い所には危ないから行かないでね!」
「はーい」
今日の川辺の石拾いはウィル坊ちゃまも参加している。
城の使用人達の子と仲良くなってしまったそうだ。
本来なら上位貴族の子なので、騎士の子か乳母の子くらいしか相手にしてはいけないと、辺境伯夫妻もおっしゃっておられたのだけど……。
それじゃお友達少なくて寂しいものね。
私は新鮮なミルクの入った瓶やトマトや、キュウリなどをカゴに入れ、川で冷やした。
以前見た、記録のクリスタルの映像でティア様がやっていたので、こういうのがお好きなんだろうと思う。
キラキラと陽光を反射する様と、冷やされるミルクや野菜の映像をクリスタルの記録に新たに収める。
石を拾う子供達の微笑ましい姿も、一緒に。
「石はなるべく握っても痛くない角が取れた石にするんだぞ。
ほら、このように平べったく、丸っこいのだと、かなり良い」
「「はーい」」」
騎士様が見本になりそうな石を拾って、子供達の先生のように教えてくれている。
あの騎士様は、確か、レザーク卿。
本日、ライリーの城から助っ人で護衛に来てくれてる騎士様だ。
今日はウィル坊ちゃまも来ているから。
……と、ウィル坊ちゃまの姿を探すとカーティス様の広い背中を追いかけて歩いていた。
……何やら眩しい。
「カーティスはどこに行くの?」
「エイデン卿に頼まれていまして、ウナギの仕掛けを見に行きます」
ウナギ!!
「僕もウナギ見に行く!」
「そうですか、ウィル様、足元に気をつけてくださいね」
「はーい」
カーティス様は坊ちゃまの歩調に合わせて、かなりゆっくりめに歩く事にしたようだ。
私も一緒に行きたい気もするけど、他にも複数の子供達がいるし、水場で危険に晒されないように気を配る必要がある。
ウナギも気になるけど、ウィル坊ちゃまにはカーティス様もついている。
任せておこう。
「リナお姉さん、描くのはどんな絵ですか?」
すぐ側で石を探しながらも、一人の男の子に質問された。
この子は確か、騎士様の子供だ。
「お手本が一つここにあるわ、ほらお花の絵の石」
私はポケットから石を一つ出して見せた。
「かわいいですね、でも描くのはお花だけですか?」
「他にはお星様、王冠、剣、猫、うさぎ、リボンなどの見本の石がお城の方にあるわ」
ティア様が自ら見本を描いて下さっている。
「馬は描いちゃダメですか?」
「いいわよ、好きな動物や物を描いても」
「じゃあ馬にします!」
「ええ、良いわよ」
ああ、騎士様の子だから、馬が好きなのかも。
でも馬って描くのは難しくない? まあ上手く描く必要は無いけど。
「じゃあ僕は魚を描く」
「私は鳥さん」
「あ、ねえ、アタシの見て、すごく良い石があったよ!」
「僕の石もツルツルでキレイだよ」
微笑ましい。
子供って形の良い石を集めるの、好きよね。
ゆるやかで優しい時間が流れる。
しばらくしてカーティス様とウィル坊ちゃまが戻って来たので、私はどうなっていたか、聞いてみた。
「ウナギは仕掛けにかかっていましたか?」
「うん!! 五匹いたよ!」
「はい、ウィル様のおっしゃるとおりです。エイデン卿に良いお土産が出来ました」
カーティス様の手にある蓋付きのカゴにゲットした鰻が入っているのだろう。
そしてカーティス様の隣にいたウィル坊ちゃまの姿を見るやいなや、駆け寄る二人の女の子が右手を突き出した。
「ウィル様! 石を見つけておきました!」
「ウィル様には私が石をあげるの!」
二人の女の子の手の平の上にはつるりとした石があった。
「アタシの石の方がキレイだもん!」
まずい、ウィル坊ちゃまに自分の石をあげたい女の子が二人いる!
この歳で既に、このモテっぷり!
「僕は金魚とドラゴンを描くから、二人ともから貰うよ、ケンカしないで、仲良く」
「「はい!」」
両方貰うという冷静沈着な宥め方! なかなかですねえ。
程よい時間になって、ひと休み。
子供達には川で冷やしておいたミルクを配った。
皆、美味しそうに飲んでいる。
大人は絞ったレモンを入れた水を飲んだりきゅうりやトマトを齧ってる。
実に爽やか。
お昼の時間に水辺のランチ。
石で囲んだカマドには、騎士達が川で獲ったお魚を串に刺した塩焼き。
……情緒がある。
更に城で焼いて来たピザにビスケットも持参している。
石や荷物はギルバート様から借りて来た魔法の収納布があるので、それで持ち運び出来る。
* *
城に戻ってからはお絵かき教室の開催。
子供達と一緒に川で拾って来た石に絵を描いた。
色塗りの画材は筆とアクリル絵の具のような絵の具だ。
ウィル坊ちゃまがご自分の石に金魚を描いてくれたのは、私の誕生日の贈り物を気にいってくれたのかもって思うと、嬉しかった。
鮮やかな緑の影が水面に映る。
透き通る水の流れが涼やかだ。
私は今日、子供達と騎士様と一緒に、ライリーのお城から近い川に来ている。
ティア様は本日、エテルニテの方に用事があり、ギルバート様は王都に用事があるそうで、今日はバラバラに行動している。
でもティア様ったら、カーティス卿はご自分の騎士なのに私につけてどうするのですかと言っても、前回海賊に狙われたからって返されるし……。
女性騎士と他の護衛騎士はティア様についてるから、まあ、大丈夫でしょうけど。
私はライリーのお城から、川に一緒に来ている子供達に声をかけた。
「今日は皆で石に絵が描けるように、手のひらで握れるくらいの大きさの石を探してもらいます!
でも川の深い所や、流れの早い所には危ないから行かないでね!」
「はーい」
今日の川辺の石拾いはウィル坊ちゃまも参加している。
城の使用人達の子と仲良くなってしまったそうだ。
本来なら上位貴族の子なので、騎士の子か乳母の子くらいしか相手にしてはいけないと、辺境伯夫妻もおっしゃっておられたのだけど……。
それじゃお友達少なくて寂しいものね。
私は新鮮なミルクの入った瓶やトマトや、キュウリなどをカゴに入れ、川で冷やした。
以前見た、記録のクリスタルの映像でティア様がやっていたので、こういうのがお好きなんだろうと思う。
キラキラと陽光を反射する様と、冷やされるミルクや野菜の映像をクリスタルの記録に新たに収める。
石を拾う子供達の微笑ましい姿も、一緒に。
「石はなるべく握っても痛くない角が取れた石にするんだぞ。
ほら、このように平べったく、丸っこいのだと、かなり良い」
「「はーい」」」
騎士様が見本になりそうな石を拾って、子供達の先生のように教えてくれている。
あの騎士様は、確か、レザーク卿。
本日、ライリーの城から助っ人で護衛に来てくれてる騎士様だ。
今日はウィル坊ちゃまも来ているから。
……と、ウィル坊ちゃまの姿を探すとカーティス様の広い背中を追いかけて歩いていた。
……何やら眩しい。
「カーティスはどこに行くの?」
「エイデン卿に頼まれていまして、ウナギの仕掛けを見に行きます」
ウナギ!!
「僕もウナギ見に行く!」
「そうですか、ウィル様、足元に気をつけてくださいね」
「はーい」
カーティス様は坊ちゃまの歩調に合わせて、かなりゆっくりめに歩く事にしたようだ。
私も一緒に行きたい気もするけど、他にも複数の子供達がいるし、水場で危険に晒されないように気を配る必要がある。
ウナギも気になるけど、ウィル坊ちゃまにはカーティス様もついている。
任せておこう。
「リナお姉さん、描くのはどんな絵ですか?」
すぐ側で石を探しながらも、一人の男の子に質問された。
この子は確か、騎士様の子供だ。
「お手本が一つここにあるわ、ほらお花の絵の石」
私はポケットから石を一つ出して見せた。
「かわいいですね、でも描くのはお花だけですか?」
「他にはお星様、王冠、剣、猫、うさぎ、リボンなどの見本の石がお城の方にあるわ」
ティア様が自ら見本を描いて下さっている。
「馬は描いちゃダメですか?」
「いいわよ、好きな動物や物を描いても」
「じゃあ馬にします!」
「ええ、良いわよ」
ああ、騎士様の子だから、馬が好きなのかも。
でも馬って描くのは難しくない? まあ上手く描く必要は無いけど。
「じゃあ僕は魚を描く」
「私は鳥さん」
「あ、ねえ、アタシの見て、すごく良い石があったよ!」
「僕の石もツルツルでキレイだよ」
微笑ましい。
子供って形の良い石を集めるの、好きよね。
ゆるやかで優しい時間が流れる。
しばらくしてカーティス様とウィル坊ちゃまが戻って来たので、私はどうなっていたか、聞いてみた。
「ウナギは仕掛けにかかっていましたか?」
「うん!! 五匹いたよ!」
「はい、ウィル様のおっしゃるとおりです。エイデン卿に良いお土産が出来ました」
カーティス様の手にある蓋付きのカゴにゲットした鰻が入っているのだろう。
そしてカーティス様の隣にいたウィル坊ちゃまの姿を見るやいなや、駆け寄る二人の女の子が右手を突き出した。
「ウィル様! 石を見つけておきました!」
「ウィル様には私が石をあげるの!」
二人の女の子の手の平の上にはつるりとした石があった。
「アタシの石の方がキレイだもん!」
まずい、ウィル坊ちゃまに自分の石をあげたい女の子が二人いる!
この歳で既に、このモテっぷり!
「僕は金魚とドラゴンを描くから、二人ともから貰うよ、ケンカしないで、仲良く」
「「はい!」」
両方貰うという冷静沈着な宥め方! なかなかですねえ。
程よい時間になって、ひと休み。
子供達には川で冷やしておいたミルクを配った。
皆、美味しそうに飲んでいる。
大人は絞ったレモンを入れた水を飲んだりきゅうりやトマトを齧ってる。
実に爽やか。
お昼の時間に水辺のランチ。
石で囲んだカマドには、騎士達が川で獲ったお魚を串に刺した塩焼き。
……情緒がある。
更に城で焼いて来たピザにビスケットも持参している。
石や荷物はギルバート様から借りて来た魔法の収納布があるので、それで持ち運び出来る。
* *
城に戻ってからはお絵かき教室の開催。
子供達と一緒に川で拾って来た石に絵を描いた。
色塗りの画材は筆とアクリル絵の具のような絵の具だ。
ウィル坊ちゃまがご自分の石に金魚を描いてくれたのは、私の誕生日の贈り物を気にいってくれたのかもって思うと、嬉しかった。
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