上 下
41 / 58

41 「夜の共同作業」

しおりを挟む
 わりと思いつきで動く人間なので、後で恥をかくんです。私。


 * * *

 ひまわり畑のピクニックお茶会はつつがなく終了し、我々はライリーの温泉地の別荘へと戻った。
 ティア様は新婚さんなので、城には一瞬帰ってもすぐに愛の巣に戻るのだ。

 美しい景色とティア様の姿を記録のクリスタルで撮影もちゃんとできたし、後でじっくりと鑑賞しよう。


 翌日の事。
 日課の早朝鍛錬中のカーティス様にタオル的な布を差し入れるついでに、私はある提案をする。


「カーティス様、今度一緒に、指輪を見に宝石店に行きませんか?」
「え!?」


 カーティス様は珍しく動揺した顔をした。
 しまったな、これって逆プロポーズに聞こえたかも。


「あの、例のベルトの石よりはグレードが落ちる可能性はありますが、小さくても綺麗な婚約指輪はあるはずで、あれが下げ渡された宝石の指輪だと、後で弟さんの婚約者さんが知る事になれば、いわく的にこう……複雑な気持ちになる可能性が」


「ああ、セレスティアナ様から弟の婚約指輪の石の話を聞いて、気にされているのですね。
あの話ですが、実は指輪用の石を探してると言うより、ギャンブルで負けた弟が金目の物を欲していたから、私にそんな言い訳を作っていたようなのですよ……。家の恥です」


 きゃあああああ! 藪蛇!


「な、なんで弟さんはギャンブルなんかに手を出してしまったのでしょう?」


 お金に困って一攫千金狙い!?


「実は、婚約者でもない幼馴染の女の子が難病で……婚約者なら普通に家の金を使えば良かったのですが、ただの幼馴染の平民なので、自力でどうにかしようとしたらしいのです。
しかし助けてやりたいけど、治療代が高く、それで自分の小遣いをギャンブルで増やして、助けになろうとしたようです」

 なんと!
 弟さんって、ギャンブルでお金を増やそうとするような、ちょっとおバカさんだけど、友達思いの根は良い子みたいな感じかぁ。


「と、とにかく下げ渡された指輪を贈られる女性は居なくて、難病で苦しむ平民女性がいるんですね! 
私、ティア様からエクストラポーションを売っていただけるよう頼んでみます! 
先日出張で金貨をいただいたし、買えるかもしれません! 
きっとティア様製のお薬なら効果があるんじゃないかと!」


「それならもう、私が竜騎士就任のお祝いとして、エクストラポーションをいただいた物が有るので、送ることにしました」

「え!? あ、もう?? 私、遅かったですね!」


「ありがとうございます、貴女の優しい真心は伝わりました」
 

 カーティス様は少し、困ったような笑顔を浮かべた。……これは……苦笑?

 わ、私は一人で空回りしてる気がする……っ!
 

「あ、では、結局ベルトの宝石はどうなったんですか?」
「弟がギャンブルで負けた分の補填に使ったそうです」

 ────……。

 諸行無常。


「弟の事より、私は今、ギルバート様の誕生祝いの品に悩んでいまして、私にはリナさんのようにケーキを作る才能もありませんし」

「え!? ケーキで良ければ、私と一緒に作りませんか?」
「私が?」
「あ、騎士様は料理など、しません……よね?」


 私はチラッと上目遣いでカーティス様のお顔を見たりした。
 嫌そうな顔はしていない。


「いいえ、教えていただけるなら、手伝い程度なら私にも出来ると思います」
「じゃあ、一緒にケーキを作りましょう」


 プライドの問題で出来ないとかではないのなら、きっと問題ないでしょう!
 イケメンクッキング!
 良いと思います。


 私は主のティア様の旦那様のギルバート様の誕生日は形が残る物よりケーキとか料理の消え物にしようと思っていた。
 変な誤解をされないように。

 そんな訳で、夜に仕事が終わった時間に、別荘の厨房の方で、私はカーティス様と一緒にケーキを作る事になった。

 ちなみに作ったケーキはティア様に頼んでインベントリに入れて貰えば、傷むこともなく、安心である。
 ティア様の許可はすんなり貰えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈 
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

処理中です...