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27 「誕生日パーティーと美味しいワッフル」

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 ティア様は少し目が赤い状態でパーティー会場に戻って来た。
 今回は別荘にいる身内だけの小規模パーティーだ。

 そんなに悪目立ちはしないだろうけど、やはり少しだけ泣いてしまわれたのかも。

 今はケーキなどを食べられているから、きっと大丈夫よね。


「これは、辺境伯とシルヴィア様からの贈り物です」
「私に……?」
「はい」

 自国からついて来てくれたメイドのソフィーが騎士様と一緒にプレゼントを持って来てくれた。

 二つの箱を開けたら見事なドレスと靴が入っていた。

「わあ、素敵なドレス!!」

 でも、どこに着て行けばいいんでしょう?
 今日はひとまず綺麗目のワンピースを着ているのだけど。

「リナ、せっかく誕生日なのだから、そのドレスに着替えて来たら?
更衣室にあるアクセサリーも自由に使っていいし、私の渡したワンピースは外出着にすれば? 
ほら、デートの時とか」

「で、デートの予定はありません」
「これからあるかもしれないでしょう。あ、もうすぐ、弟の誕生日があるし、その時でも、私と外出する時でもいいわ」

「分かりました! 
坊ちゃまのお誕生日パーティーやお外でティア様のお供をする時に着させていただきますね」

「ひとまずシルヴィア様の選んでくださったドレスにお着替えを致しましょう? 私がお手伝いします」
「あ、ありがとう、ソフィー」

 ソフィーはどうしても本日、私にドレスを着せたいらしい。
 圧に負けた。


 私はソフィーに手伝われて更衣室で着替えた。
 とても綺麗なドレスだった。

 ソフィーの見立てで髪には紫の布花を飾り、アメジストのイヤリングをお借りした。


 贈り物のドレスを着て、私はパーティー会場に戻った。


「淡いスミレ色はシルヴィアお母様の好きな色よ、軽やかなチュールレースが花びらみたいに重なっていて、優雅で綺麗でとても素敵よ」

「うむ、いいと思う。流石我が妻の母君のセンスだ」

 ティア様とギル様が褒めてくださった。

「とてもお似合いです」
「本当にお綺麗です」

 騎士様達も褒めてくれた。

 あはは。お色直しして来た花嫁さんの衣装のように華やかなドレスなのよ。
 凄い。
 王城のパーティー会場でもいけるレベル。


 その後、パーティーでカーティス様にダンスを誘われてしまった。

 照れるけど、リリアーナの体がダンスを覚えていたので、断るのも失礼なので、お受けした。

 私達の隣ではティア様とギル様も華麗に踊っている。

 ラナン卿は騎士様達にダンスに誘われても美少女なのにクリスタルを構えて撮影係があるのでと、断ってティア様の撮影をしていた。
 クール!

 リーゼ卿は同僚の騎士達と楽しくダンスを踊っていた。
 黒髪ポニテの快活系美女の騎士様だ。こちらも映える!


 ダンスが終わって、いよいよお酒の時間。


「このライリー産のブランデーもとても美味しいですねぇ」


 今私は、グランジェルドの国王陛下と同じお酒を飲んでいるのか~~。
 凄いなあ。

「リナ、ダンスの前に強いお酒を飲まなくて良かったわね」
「飲んだ後にダンスでくるくる回ると、目まで回ったかもしれませんね」
「ふふふ」

 推しの笑顔、最高に可愛い~~。


 本日のパーティーは眼福な美男美女の集まりだし、美味しい物もいっぱいで、とても楽しかった!


 * * *

 ティア様の弟君のウィルバート様の誕生日も夏にあるという事で、今からプレゼントの用意をしないと。

 子供の、少年の喜ぶプレゼントって……何?
 カブト虫なんか貰っても、坊ちゃま付きのお世話係のメイドが泣くだろうし……。

 色々考え事をしつつも、私はパーティーの翌日、厨房にお気に入りのメイド服を着て作業をしていた。

 お茶の時間用にワッフルメーカーでワッフルを作っている。
 バターの香りがふんわりと広がって、とても美味しそう。

 仕上げにバニラアイスクリームやブルーベリーとカットした苺も付ける。
 可愛い!


 プレゼントと言えば、カーティス様がくださったリボンが黒地の上品な物だったので、仕事着でもあるメイド服の時にも合わせてみた。
 ポニーテールにして髪を纏め、リボンで飾っているのだ。

 メイドの同僚にもエレガントで素敵と褒められた。


 そしてそのリボンを見たティア様の反応が……。


「まあ……家紋の百合入りな上に銀糸の刺繍リボン」
「え?」

 ティア様が私のリボンの刺繍を見て言った。

「百合の花ですよね。私の名前に百合が入っているせいでは?」

「カーティスの家の家紋には百合が入っているの。
黒は彼の髪、彼の印象に基づく色よ、更に銀糸を使っているリボンを贈るのは、その、想い人に贈る物と言われているの。紐やリボンは結ぶ物でしょう? 縁を結びたいとかそういう感じで」

「え!?」

「それで既に婚約者とか両思い状態になれば金糸の刺繍になったりするそうなのよ。最近お母様に聞いたお話」


「銀糸で家紋の図柄入りで想い……人!? たまたまじゃありませんか!?」
「ええ~~そうかしら……」

 ティア様はまだ納得してないようだけど、たまたまって事もあると思います!

「それよりも、ワッフルをどうぞ」
「そうだわ! この可愛いワッフルをいただきましょう。
アイスまで添えてあって最高では?」

「ああ」

「外側がカリっとして生地にも甘味があって、とても美味しいわ」

「本当だ、二種の色の違うベリーが散らしてあって見た目も華やかだし、でこぼこの所はカリッとしてて中身は柔らかく、美味しい。
令嬢の間で流行りそうだな」

「ワッフルメーカーを量産したら王都に有るライリーのカフェのメニューにも追加しましょう! さあ、リナも一緒に食べましょう」

 本当はメイドは主と一緒に食べないと思うけど、主人の命令なら仕方ないよね。


「はい、いただきます。……我ながら美味しくできたと思います!」
「ね、ワッフルメーカー作って貰って良かったわ」
「ドワーフはまたジークの所のお嬢ちゃんが武器じゃない物頼んで来たってぼやいていたぞ」

「う、でも私のお陰で時魔法使いの手で最高の熟成状態の蒸留酒も飲めてるはずだし、後で機嫌は治ってるはず!」

「まあ、そうなんだけどな」

 ドワーフってやっぱりお酒が大好きなんだわ。
 ここにはエルフもいるし、ファンタジーな世界は凄いな。などと思った。
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