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18 「お礼に」
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「とりあえずギルバートには謝っておきます」
「な、何をだ?」
ティア様がギル様をテラスに呼び出した。
テラスにはテーブルと椅子があるので、お二人はサイダーを飲みつつ、そこに対面で座っている。
そしてこの場には今、ティア様とギル様と私と妖精のリナルド氏しかいない。
リナルド氏はテーブルの上に愛らしく、ちょこんと座っている。
「以前、神様が下さったアルバムの写真、ギルバートが私の写真が欲しいと言った時、せっかく綺麗な本になってるからダメだって断ったのに、私、自分で剥がして使ってしまいました」
「使った?」
「祭壇から、日本に時空、次元を超えて手紙を送れる事に気がついて、前世の家族に……今は、幸せにやってると、家族を紹介したくて」
「今は幸せに……そうか、あちらの家族に知らせたかったのか。
それで私が怒る訳もないから、謝罪も必要ないぞ。そもそも私も専用のアルバムを貰えているからな!」
ギル様はニッコリと笑った。
「……専用?」
ティーセットを乗せたワゴンに飲み物やお菓子のお代わりを用意をして、近くで待機していた私の、小さな呟き声を拾ったギル様はドヤ顔で言った。
「セレスティアナの小さい頃からのアルバムを、私は神様から貰っているのだ」
え!? 推しの幼少期の写真!?
「す、すっごく見たいのですが!? ギルバート様!
決して汚したりしないので、見せていただけないでしょうか!?」
「む。仕方ないな。ちょっとだけだぞ」
「はい!」
ギル様は風呂敷みたいな布を取り出し、それには魔法陣が描いてあった。
あ、魔道具の亜空間収納布だ。
アルバムが出て来た。
「ほら」
「ありがとうございます!」
サイダーの入っていたグラスを端っこに避けて、テーブルの上に私は手持ちのハンカチを敷き、その上からアルバムをそっと置いた。
ゆっくりと表紙からめくっていった。
……あ!!
きゃあああああっっ!!
か! 可愛いいいいいいいいいっ!!!!
4、5歳くらいのティア様がいる!!
「かわいい!」
「だろう? セレスティアナは昔から天使のように可愛いくてな」
「髪色が茶色のもありますね」
「市場へ行く為にお忍び中だ。
魔導具で色を変えているから、そうなっている」
「ティア様は茶髪になっててもかわいい~~!!」
「ふふふ、そうだろう」
「何故ギルバートがドヤ顔なんですか」
ティア様が呆れている。
「俺の嫁なので」
んまあ~~っ!! お熱い! でも確かに自分の自慢の嫁ですものね!
「お、おめでとうございます」
「フ……」
「もーいつまでドヤ顔なんです。
もう寝ましょう、行きますよ、リナとリナルド」
おそらくは照れ隠しだろう、顔を赤くしたティア様はリナルド氏を抱っこして席を立った。
「セレスティア、用事はもう終わったのではないのか? まだ温泉地の別荘に戻らないのか?」
「ん? えーと、ああ……今夜まで、城にいます」
別荘に戻らないと、お二人の寝室が別になってしまうのかも。
ギル様は肩を落とした。
新婚さんなのにいいのかしら? 少し、責任を感じる。
私が日本の家族へ手紙を届けたくて、少しの時間、祭壇のあるお城へ戻りたいと言ってしまったので。
「あの、ティア様、私の用事ももう、終わりましたし、向こうの冷蔵庫にも明日の分の食材が入っているので、戻りませんか?」
「あ、冷蔵庫の食材! それは無駄に出来ないわね、じゃあ別荘へ戻りましょう」
ティア様の言葉に、ギル様はあからさまに嬉しそうな顔をした。
素直な人だ。
王族とか貴族がそんな表情に出して大丈夫ですか?
今は三人しかいないので、気を許して油断してるだけかな?
ともかく、我々は温泉地のギル様の別荘へ戻った。
カーティス様のマントも洗って返却しないと!
私は別荘に戻ってすぐに借りたマントを洗濯してからベランダに干し、エアリアルステッキを借りて乾かした。
翌日の朝の朝食後。
私は廊下を歩く長身の黒髪男性を見つけ、その背中に声をかけた。
もう彼の後ろ姿は覚えてしまったようだ。
「カーティス様!」
振り返ると、やっぱりカーティス様で間違いなかった。
「リナさん、おはようございます」
「おはようございます。
マントのお返しをお待たせしてしまいました。申し訳ありません」
「いいえ、予備があるので大丈夫ですよ」
「手紙は……届いたようです、目の前から消えましたし。本当に、勧めてくださって、ありがとうございます」
「それは、何よりでした」
カーティス様の眼鏡越しの切長の瞳が、ほっとしたように、優しく伏せられた。
私は不意に跳ねそうになる心臓を、宥めるように胸を押さえながら言葉を紡いだ。
「何かお礼をしたいのですが……」
彼の優しさに報いる為に、何かを贈りたいと思った。
甘い物とかお好きだったかしら?
騎士様達は何でも美味しそうに食べてくれるけど、大人だからお酒の方が良いのかな?
カーティス様は少し考えた後、ニッコリ笑って言った。
「……近々こちらの地域でお祭りがあるようです、一緒に行きませんか?
エスコートをさせて下さい」
お祭り!?
もしかしなくても、お祭りデートに誘われた!?
──いや、待って。
お祭りとか一人で行くのは寂しくて嫌だから、誘っただけ説ある。
「え!? ティア様の護衛をしなくていいのですか!?」
「お祭りは三日間ありますので、その中で一日は私の休日もあるのですよ。
お祭りの日に部屋の中で燻っているのはもったいないですし」
ああ、確かにもったいないですね! こんなイケメンが休日とはいえ、部屋に一人でとか。
「な、なるほど、ティア様の許可が出ましたら……」
「はい、では許可が出ましたら、一緒に行きましょう」
そして……。ティア様に確認をとってみたら……
「お祭りに行くのに許可が欲しいですって?
いいに決まってるでしょう!
私もギルバートと行くので、そちらも楽しんでいらっしゃい。
あ、何ならクリスタルで撮影もして来てくれていいのよ!?」
あっさり許可が出た。
「は、はい、撮影ですね。かしこまりました」
「よろしくね」
お祭り風景を撮影すれば良いのよね?
「な、何をだ?」
ティア様がギル様をテラスに呼び出した。
テラスにはテーブルと椅子があるので、お二人はサイダーを飲みつつ、そこに対面で座っている。
そしてこの場には今、ティア様とギル様と私と妖精のリナルド氏しかいない。
リナルド氏はテーブルの上に愛らしく、ちょこんと座っている。
「以前、神様が下さったアルバムの写真、ギルバートが私の写真が欲しいと言った時、せっかく綺麗な本になってるからダメだって断ったのに、私、自分で剥がして使ってしまいました」
「使った?」
「祭壇から、日本に時空、次元を超えて手紙を送れる事に気がついて、前世の家族に……今は、幸せにやってると、家族を紹介したくて」
「今は幸せに……そうか、あちらの家族に知らせたかったのか。
それで私が怒る訳もないから、謝罪も必要ないぞ。そもそも私も専用のアルバムを貰えているからな!」
ギル様はニッコリと笑った。
「……専用?」
ティーセットを乗せたワゴンに飲み物やお菓子のお代わりを用意をして、近くで待機していた私の、小さな呟き声を拾ったギル様はドヤ顔で言った。
「セレスティアナの小さい頃からのアルバムを、私は神様から貰っているのだ」
え!? 推しの幼少期の写真!?
「す、すっごく見たいのですが!? ギルバート様!
決して汚したりしないので、見せていただけないでしょうか!?」
「む。仕方ないな。ちょっとだけだぞ」
「はい!」
ギル様は風呂敷みたいな布を取り出し、それには魔法陣が描いてあった。
あ、魔道具の亜空間収納布だ。
アルバムが出て来た。
「ほら」
「ありがとうございます!」
サイダーの入っていたグラスを端っこに避けて、テーブルの上に私は手持ちのハンカチを敷き、その上からアルバムをそっと置いた。
ゆっくりと表紙からめくっていった。
……あ!!
きゃあああああっっ!!
か! 可愛いいいいいいいいいっ!!!!
4、5歳くらいのティア様がいる!!
「かわいい!」
「だろう? セレスティアナは昔から天使のように可愛いくてな」
「髪色が茶色のもありますね」
「市場へ行く為にお忍び中だ。
魔導具で色を変えているから、そうなっている」
「ティア様は茶髪になっててもかわいい~~!!」
「ふふふ、そうだろう」
「何故ギルバートがドヤ顔なんですか」
ティア様が呆れている。
「俺の嫁なので」
んまあ~~っ!! お熱い! でも確かに自分の自慢の嫁ですものね!
「お、おめでとうございます」
「フ……」
「もーいつまでドヤ顔なんです。
もう寝ましょう、行きますよ、リナとリナルド」
おそらくは照れ隠しだろう、顔を赤くしたティア様はリナルド氏を抱っこして席を立った。
「セレスティア、用事はもう終わったのではないのか? まだ温泉地の別荘に戻らないのか?」
「ん? えーと、ああ……今夜まで、城にいます」
別荘に戻らないと、お二人の寝室が別になってしまうのかも。
ギル様は肩を落とした。
新婚さんなのにいいのかしら? 少し、責任を感じる。
私が日本の家族へ手紙を届けたくて、少しの時間、祭壇のあるお城へ戻りたいと言ってしまったので。
「あの、ティア様、私の用事ももう、終わりましたし、向こうの冷蔵庫にも明日の分の食材が入っているので、戻りませんか?」
「あ、冷蔵庫の食材! それは無駄に出来ないわね、じゃあ別荘へ戻りましょう」
ティア様の言葉に、ギル様はあからさまに嬉しそうな顔をした。
素直な人だ。
王族とか貴族がそんな表情に出して大丈夫ですか?
今は三人しかいないので、気を許して油断してるだけかな?
ともかく、我々は温泉地のギル様の別荘へ戻った。
カーティス様のマントも洗って返却しないと!
私は別荘に戻ってすぐに借りたマントを洗濯してからベランダに干し、エアリアルステッキを借りて乾かした。
翌日の朝の朝食後。
私は廊下を歩く長身の黒髪男性を見つけ、その背中に声をかけた。
もう彼の後ろ姿は覚えてしまったようだ。
「カーティス様!」
振り返ると、やっぱりカーティス様で間違いなかった。
「リナさん、おはようございます」
「おはようございます。
マントのお返しをお待たせしてしまいました。申し訳ありません」
「いいえ、予備があるので大丈夫ですよ」
「手紙は……届いたようです、目の前から消えましたし。本当に、勧めてくださって、ありがとうございます」
「それは、何よりでした」
カーティス様の眼鏡越しの切長の瞳が、ほっとしたように、優しく伏せられた。
私は不意に跳ねそうになる心臓を、宥めるように胸を押さえながら言葉を紡いだ。
「何かお礼をしたいのですが……」
彼の優しさに報いる為に、何かを贈りたいと思った。
甘い物とかお好きだったかしら?
騎士様達は何でも美味しそうに食べてくれるけど、大人だからお酒の方が良いのかな?
カーティス様は少し考えた後、ニッコリ笑って言った。
「……近々こちらの地域でお祭りがあるようです、一緒に行きませんか?
エスコートをさせて下さい」
お祭り!?
もしかしなくても、お祭りデートに誘われた!?
──いや、待って。
お祭りとか一人で行くのは寂しくて嫌だから、誘っただけ説ある。
「え!? ティア様の護衛をしなくていいのですか!?」
「お祭りは三日間ありますので、その中で一日は私の休日もあるのですよ。
お祭りの日に部屋の中で燻っているのはもったいないですし」
ああ、確かにもったいないですね! こんなイケメンが休日とはいえ、部屋に一人でとか。
「な、なるほど、ティア様の許可が出ましたら……」
「はい、では許可が出ましたら、一緒に行きましょう」
そして……。ティア様に確認をとってみたら……
「お祭りに行くのに許可が欲しいですって?
いいに決まってるでしょう!
私もギルバートと行くので、そちらも楽しんでいらっしゃい。
あ、何ならクリスタルで撮影もして来てくれていいのよ!?」
あっさり許可が出た。
「は、はい、撮影ですね。かしこまりました」
「よろしくね」
お祭り風景を撮影すれば良いのよね?
応援ありがとうございます!
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