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16 (閑話)「 娘からの手紙」
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~ 日本にいるユリナの母親視点 ~
──夢を見た。
通り魔に刺されて死んだ、可哀想な私の娘、ユリナの夢を。
なんであの子があんな死に方をしなければいけなかったのか、今でもわからない。
ただ、私達家族は、真面目に生きていた。
家族経営のカフェをやって、何の犯罪も犯していない。
普通の家庭だった。
* *
──泣きながら、目が冷めた。
私は布団から出て、無意識に仏壇に向かった。
そこには娘の写真が飾ってある。
その写真の前に、急に現れた。
手紙が……!
──何、これ!?
私は震える手で封筒を手に取った。
差出人の名前が、娘の名前で、宛先は家族宛て。
つまり、母親である、私も読んでいい。
私は居間に有るハサミを探して、恐る恐る封を開けた。
私は……まだ夢を見ているのかしら。
死んだ娘から手紙が来て、今は異世界にいるとか、幸せだから心配しないで、私達には明るく、前向きに生きて欲しいとか。
先に死んでしまって、申し訳ないだとか。
そんな内容が書かれていた。
とても綺麗な……神様の寵愛を受けた天使のようなお嬢様にお仕えして、魔法の使える世界だから、奇跡を願って、一か八かで手紙を送ってみたらしい。
こんなの荒唐無稽過ぎるのだけど、眼の前に突然手紙が現れたのだから、信じるしかない気がして来た。
私は寝ている主人を起こして、寝室から居間に連れて行き、手紙を見せた。
「お前、自分でこんな手紙書いたんじゃないだろうな?」
夫には私が自分で書いたのではと、疑われた。心外。
「そんな訳ないでしょ!」
と、うっかり声を荒げていたら、息子が起きて来た。
「お父さん、お母さん、何の騒ぎ? 今、深夜二時、真夜中だよ」
私は手紙を息子にも見せた。
「これは……姉ちゃんの字だよ」
「そうなの!? あんた分かるの!?」
「宿題とか、勉強教わった事あるし、読書感想文も姉ちゃんが俺の代わりに……いや、何でもない」
「ちょっと、あんた、宿題自分でやってなかったの?」
「そ、それは今、どうでも良くない? とっくに時効だよ、小学校卒業してるし、もう成人してる」
ユリナの3つ下の弟の健司は慌ててそう言った。
「ユリナの使っていたノートでも探して、筆跡鑑定してみれば分かるかもしれんが」
夫はもう一度、手紙を見てそう言った。
息子の筆跡鑑定能力を疑っている。
「でもさ、姉ちゃんが銀髪の美少女王女様の体に入って、美少女に仕えてイケメンに囲まれて生活してるなんて、漫画か夢みたいだな」
健司はへらりと笑って言った。
確かに冗談みたいな内容だけど。
その時、不意にザザッと、ノイズ音のようなものが聞こえたと思ったら、
け、消したはずの……居間にあるテレビがついた!!
家族全員、体が強張った。
え!? 何これ? ホラー!?
画面には、銀髪の美しいお姫様が映っていた。
最初はリリアーナ、その後は自分は美園ユリナだとか周囲に言って、後にリナとか、呼ばれていた。
「手紙の……内容と同じじゃん……」
息子も画面に釘付けになったまま、そう呟いた。
そして、びっくりするような、黒髪眼鏡のイケメン騎士が、リナを慰めて、手紙を書くように勧めて、その後、天使のように綺麗なお嬢様と、一緒に祭壇に供えたではないか。
これは、本当に奇跡が、起こっている。
本当に届いているのだ、私達の手元に。
これは神様の……温情だろうか。
あの子の決断で、リリアーナ王女の国の完全なる滅亡は、回避された。
と、言ってもいいだろう。
あの子はそのために王女様の体に入って、新しい命と人生を得たと言うこと……なんだろうか?
「と、とにかく、今は、姉ちゃん、幸せなんだな?」
──ブツン。
勝手についたテレビはまた急に消えた。
でも既に、さっきまで胸にあった恐怖心は、不思議と消えた。
私は娘の手紙をもう一度開いて読んだ。
うっかり涙で手紙が滲んだ。
でも、元から手紙の文字が滲んでいる箇所はあった。
あの子があちらでこれ以上、私達を心配して泣かなくていいように、私も、もっと元気を出さないと。
そう思った。
「明日は、手作りのチーズケーキでも供えようかしら」
「そうだな」
「良いんじゃない?」
──その手作りのチーズケーキは、うちのカフェの人気メニューで、あの子の好物だったから。
──夢を見た。
通り魔に刺されて死んだ、可哀想な私の娘、ユリナの夢を。
なんであの子があんな死に方をしなければいけなかったのか、今でもわからない。
ただ、私達家族は、真面目に生きていた。
家族経営のカフェをやって、何の犯罪も犯していない。
普通の家庭だった。
* *
──泣きながら、目が冷めた。
私は布団から出て、無意識に仏壇に向かった。
そこには娘の写真が飾ってある。
その写真の前に、急に現れた。
手紙が……!
──何、これ!?
私は震える手で封筒を手に取った。
差出人の名前が、娘の名前で、宛先は家族宛て。
つまり、母親である、私も読んでいい。
私は居間に有るハサミを探して、恐る恐る封を開けた。
私は……まだ夢を見ているのかしら。
死んだ娘から手紙が来て、今は異世界にいるとか、幸せだから心配しないで、私達には明るく、前向きに生きて欲しいとか。
先に死んでしまって、申し訳ないだとか。
そんな内容が書かれていた。
とても綺麗な……神様の寵愛を受けた天使のようなお嬢様にお仕えして、魔法の使える世界だから、奇跡を願って、一か八かで手紙を送ってみたらしい。
こんなの荒唐無稽過ぎるのだけど、眼の前に突然手紙が現れたのだから、信じるしかない気がして来た。
私は寝ている主人を起こして、寝室から居間に連れて行き、手紙を見せた。
「お前、自分でこんな手紙書いたんじゃないだろうな?」
夫には私が自分で書いたのではと、疑われた。心外。
「そんな訳ないでしょ!」
と、うっかり声を荒げていたら、息子が起きて来た。
「お父さん、お母さん、何の騒ぎ? 今、深夜二時、真夜中だよ」
私は手紙を息子にも見せた。
「これは……姉ちゃんの字だよ」
「そうなの!? あんた分かるの!?」
「宿題とか、勉強教わった事あるし、読書感想文も姉ちゃんが俺の代わりに……いや、何でもない」
「ちょっと、あんた、宿題自分でやってなかったの?」
「そ、それは今、どうでも良くない? とっくに時効だよ、小学校卒業してるし、もう成人してる」
ユリナの3つ下の弟の健司は慌ててそう言った。
「ユリナの使っていたノートでも探して、筆跡鑑定してみれば分かるかもしれんが」
夫はもう一度、手紙を見てそう言った。
息子の筆跡鑑定能力を疑っている。
「でもさ、姉ちゃんが銀髪の美少女王女様の体に入って、美少女に仕えてイケメンに囲まれて生活してるなんて、漫画か夢みたいだな」
健司はへらりと笑って言った。
確かに冗談みたいな内容だけど。
その時、不意にザザッと、ノイズ音のようなものが聞こえたと思ったら、
け、消したはずの……居間にあるテレビがついた!!
家族全員、体が強張った。
え!? 何これ? ホラー!?
画面には、銀髪の美しいお姫様が映っていた。
最初はリリアーナ、その後は自分は美園ユリナだとか周囲に言って、後にリナとか、呼ばれていた。
「手紙の……内容と同じじゃん……」
息子も画面に釘付けになったまま、そう呟いた。
そして、びっくりするような、黒髪眼鏡のイケメン騎士が、リナを慰めて、手紙を書くように勧めて、その後、天使のように綺麗なお嬢様と、一緒に祭壇に供えたではないか。
これは、本当に奇跡が、起こっている。
本当に届いているのだ、私達の手元に。
これは神様の……温情だろうか。
あの子の決断で、リリアーナ王女の国の完全なる滅亡は、回避された。
と、言ってもいいだろう。
あの子はそのために王女様の体に入って、新しい命と人生を得たと言うこと……なんだろうか?
「と、とにかく、今は、姉ちゃん、幸せなんだな?」
──ブツン。
勝手についたテレビはまた急に消えた。
でも既に、さっきまで胸にあった恐怖心は、不思議と消えた。
私は娘の手紙をもう一度開いて読んだ。
うっかり涙で手紙が滲んだ。
でも、元から手紙の文字が滲んでいる箇所はあった。
あの子があちらでこれ以上、私達を心配して泣かなくていいように、私も、もっと元気を出さないと。
そう思った。
「明日は、手作りのチーズケーキでも供えようかしら」
「そうだな」
「良いんじゃない?」
──その手作りのチーズケーキは、うちのカフェの人気メニューで、あの子の好物だったから。
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