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07 「推しと温泉」
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「リリアーナ様、戦勝パーティーはいかがでしたか?」
「ヴィジナードの貴族令嬢が頑張って婚活をしていたわ。
騎士様が人気みたい」
私はメイドのソフィーの質問に対して、簡潔に答えた。
「ああ……、魔物襲撃戦で婚約者を亡くされた令嬢が多いのですね」
「グランジェルドの騎士様を紹介して欲しそうだったけど、私もそんなに親しい訳ではないから、断ったけれど」
「お名前を教えて差し上げるだけでも良かったのでは?
姫様が不親切だとか言って、恨まれないか心配です」
「ああ、確かに、そういう恨まれ方もあるわね」
でも完璧メイドになったら、もうパーティー行きも減るだろうし、スルーでいいかな。
「ところで私はもう、姫ではなく、ティア様の下僕の……メイドのようなもの。様なんて付けなくてもいいのよ、言わば……同僚のようなものだもの」
「ど! 同僚!? 姫様と!?」
「だから姫ではなく、リリとかリナとか呼んでくれていいのよ」
「それは……大変難しいですね……」
ソフィーにリリアーナの中に入っているのが、別人だと言ったら、きっとガッカリするだろうけど、それだけで済むかな?
下手に忠誠心が高いと、後追い自殺とか怖いな。
でもわざわざついて来てくれたのに国に送り返すのも可哀想だし。
うーん。
「私の呼び方に違和感があって辛いなら、そう、辺境伯夫人たる奥様付きのメイドにして貰えるように私から頼んでみるわ」
「え!? シルヴィア様のメイドにですか?」
「そうよ、美しい方だし、仕え甲斐は有ると思うわ。
基本的にティア様もこの城にいる事が多いという事は、つまり私もここにいる事が多い。
比較的近くにもいれるから、何かあったら助け合いも可能だと思うの」
「セレスティアナ様が春にご結婚されたら、新婚時は温泉地のギルバート様の別荘に行かれるそうですが」
「それは仕方ないわよ、新婚さんになるのだし、ご両親のいるお城ではイチャイチャもしにくいでしょうし」
「あの……思ったのですが、私もティア様付きメイドに推してくださる所では?」
ソフィーがジト目で私を見た。
「わ、私の名を親しげに呼びにくいのでしょう?
近すぎると呼ぶ機会も多くなるし、何よりティア様の1番近いメイドは私がなりたい訳ですし」
「あ、それが本音なのですね、リリアーナ様ったら」
「おほほほほ!」
笑って誤魔化そうとする私。
「分かりました、では、奥様付きになれるか、聞いて下さるという事で」
「ええ、早速今からお願いして来ます」
*
ライリーのお城の一階の祭壇の間という所で、シルヴィア夫人をお見かけしたとの執事の言葉を聞いて、私はそこへ向かった。
「え? 私のメイドにリリアーナ殿下付きだったメイドを?」
「私の身分が変わっても、親しげに名を呼ぶのは気が引けるようで、さりとて国に送り返すのも可哀想ですし、できれば、それなりに私に近い場所で働けると、あの子、ソフィーも安心でしょうし」
「そうですか、そういう事なら私は構いません」
「ありがとうございます! シルヴィア様。
あ、ところで、この祭壇に飾られているステンドグラス、とても綺麗ですね」
祭壇の美しいステンドグラスっぽいものが私の目を惹いた。
「ああ、これは娘が、ティアが作った物よ」
「わあ! ティア様は芸術の才能までお持ちなのですね」
「本当に色んな事が出来る子で、驚くのよ」
「仕え甲斐があります! では私はソフィーに奥様の承諾が得られたと、報告に行きます」
「ええ」
それにしても、とても子供を二人産んだとは思えないな。
スタイル抜群で美しいままの辺境伯夫人、凄い。
*
「あら、お母様に自分のメイドを譲ってよかったの?」
「はい」
既にティア様にも情報がいっていたようで、私はすぐに肯定した。
その後、夕食の時間。
私は元王女でも従者ポジションなので、ティア様とは、一旦別れ、ソフィーを宜しくとばかりに、シルヴィア様付きの侍女さんや女騎士のラナン卿、リーゼ卿とお食事をご一緒してお話をした。
あ、デザートにプリンが出た。
美味しい! カラメルもちゃんと有る! 嬉しい!
*
その後、ティア様のお風呂の準備。
火の魔石を使ってお湯の用意と着替えやタオル的な布地を用意する。
お着替えのパンツは……紐! 紐パン!
ゴムが流通して無いなら、やはり紐になるか。
でもあの関節の動く球体人形のゴム?は……どうなっているのかしら。
風呂上がりにエアリアルステッキとやらの魔道具をドライヤー代わりにして髪を乾かすと、先輩メイドに聞いて、仕事を引き継いだ。
美女の髪に触れる素敵なお仕事。
ティア様のサラサラのプラチナブロンドは本当にキラキラと綺麗で素敵。
「明日の私の予定ですが、浄化ツアーの疲れを癒す為に温泉地、ギルバート様の別荘で二、三日ゆっくりします。
リリアーナ、あなたも連れて行こうと思うの」
「はい! 喜んでお供します!」
温泉地ですって! 晴れるといいなぁ。
* * *
私とティア様と護衛騎士達は朝食後に別荘へ転移陣を使って移動した。
天気も見事に晴れてる!
そんな中、まったりと温泉に入る事が出来る!
「ユリナ、まず水着を選んでね」
「ここの温泉は水着なんですね」
「知らない人に裸を晒すのが苦手な人が多いでしょうから」
「なるほど、確かに助かります。ティア様の水着はどのような?」
「この花柄ですよ」
ティア様がインベントリから出して見せてくれた。
「わあ、可愛い~~」
「私は……えっと、この黒で良いです」
戦勝パーティーと同じく、出来るだけ地味な色を選んだ。
「ユリナの好みは黒水着ですか、セクシーで良いですね」
「え、セクシーですか!? じゃ、じゃあ青にします」
「何故……」
「く、黒なら地味かと思ったんです」
「何を言っているんですか、黒の水着と下着はセクシー系ですよ」
「あああっ」
私は結局青い水着を選んで着ることにした。
ちなみに水着の種類は多分伸縮性とか生地の問題で全部、ビキニだった。
あ、パレオ付きは存在した。
* *
「わあ~~温泉に入れるなんて嬉しいです」
温かい温泉に浸かっていると、じんわり、効く~~!と、いう感じがする。
何がどう効いているかはよくわからないけど、多分筋肉とか解れてる。
「ふふ、良かったわ、リラックスしてね」
「はい!」
パチャパチャと、自分の体にお湯をかけてみた。
……リリアーナのお肌……お湯弾く。まだ若いみたい。
は~~。
推しの素敵な水着姿も見れて、ここは極楽である。
*
お昼には溶岩プレートまで出て来た。
ジュワーと、肉が焼ける音を聞きながらのBBQ。
「目の前でステーキ肉が焼ける音が! この臨場感が最高ですね!」
「お分かりいただけたかしら、さすがね、ユリナ」
本日はギルバートの別荘の庭にて護衛騎士達も一緒にBBQランチ。
「昼食の後で川、渓谷の紅葉スポットも有るから、船で行きましょう」
「わあ! 紅葉を船から見るなんて素敵ですね」
「あ、良い感じに焼けたようです」
「はい」
リーゼ卿が肉の焼け具合を真剣に見ていて報告してくれた。
湯気の立つ美味しそうなステーキ肉が眼前にある。
ワクワクが止まらないわね。
刃物なら任せろとばかりにイケメン騎士様達がナイフで肉を切り分けてくれた。
「これはまず、シンプルに塩で、その後、このステーキソースでどうぞ。
プレートは熱いから火傷しない様に気をつけて」
ティア様の仰せのとおりに!
「「はい!!」」
「……美味しいです!」
「本当に!」
リーゼ卿も、皆も、圧倒的同意だった。
溶岩プレートで焼いたステーキに、ついつい、テンションが上がって、はしゃいでしまう。
「さもありなん……」
ティア様も満足そう。
「シンプルに美味い……」
「ステーキ肉最高だな」
「肉汁が……ジューシーだ」
ギル様や騎士様達も美味しそうにステーキを食べている。
「ライリーには溶岩プレートでステーキを食べる文化まで有るんですね」
こっちの国の食文化素敵!
「実はギルバート様やお父様や騎士達が溶岩を取って来てくれて、溶岩プレートで食べたのは今日が初なのよ」
「ええ!? そうだったんですね」
「本当は結婚祝い品は何が良いか聞かれて、色々リストに書いて、その中の一つに溶岩プレートを入れたのだけど、結婚前にお試しで作った分を今日使ってしまったの。待てずに」
「あら、でも成功ですね」
「そうなの、良かったわ」
ティア様はほっくほくでご満悦である。
「ん? 結婚祝いなら、ギルバート様も貰う側では?」
「そのはずだけど、珍しい要求物だったから、自分で探しに行ってくれたみたいなの」
ティア様はそう言ってギルバート様をチラ見した。
私はギル様を讃えてみた。
「まあ、ギルバート様は頑張り屋さんですね」
ギル様は黙ってステーキを食べている。
照れているようだ。
「そうね」
ティア様はふふっと笑った。
可愛い!
* *
溶岩プレートのBBQの後に、我々は紅葉の渓谷を眺めながら船で優雅に川を渡る。
透明な川の水にも赤と黄色の美しい紅葉が映り込む。
は~~癒される。
こっち来て戦争だの魔物やゲースリの襲撃だの、ハードだったけど、温泉に浸かれて、今は美女と小旅行。
ティア様は記録のクリスタルという魔道具を構えて、紅葉の渓谷の景色を記録するそうで、スマホ代わりの便利な代物だなあと感心する。
でも、ちょっともったい無いので、物申す。
「むしろティア様と紅葉の背景を撮影させてください」
「そう? 構えて視覚に入れたら良いのよ。念写みたいに」
私はクリスタルを借りてティア様の撮影にチャレンジしてみた。
ティア様の本日の装いはゴスロリ系のクラシカルなドレス姿。色はボルドー。
ヘッドドレス付きでとても可愛い。
私は白いレースの付け襟が可愛い、黒いワンピースを着させて貰っている。
しばらく服は、なるべく黒いのを着たいと自分から申し出たから。
メイド服でいいと言ったのだけど、お出かけの時はお仕着せでなくともいいだろうとティア様に言われた。
後でクリスタルの映像を確認したら、綺麗に撮れていた。モデルが良いからね!
でも、とても嬉しい。
──うん、可愛いティア様と温泉とバーベキューと紅葉ツアー、最高だった!
「ヴィジナードの貴族令嬢が頑張って婚活をしていたわ。
騎士様が人気みたい」
私はメイドのソフィーの質問に対して、簡潔に答えた。
「ああ……、魔物襲撃戦で婚約者を亡くされた令嬢が多いのですね」
「グランジェルドの騎士様を紹介して欲しそうだったけど、私もそんなに親しい訳ではないから、断ったけれど」
「お名前を教えて差し上げるだけでも良かったのでは?
姫様が不親切だとか言って、恨まれないか心配です」
「ああ、確かに、そういう恨まれ方もあるわね」
でも完璧メイドになったら、もうパーティー行きも減るだろうし、スルーでいいかな。
「ところで私はもう、姫ではなく、ティア様の下僕の……メイドのようなもの。様なんて付けなくてもいいのよ、言わば……同僚のようなものだもの」
「ど! 同僚!? 姫様と!?」
「だから姫ではなく、リリとかリナとか呼んでくれていいのよ」
「それは……大変難しいですね……」
ソフィーにリリアーナの中に入っているのが、別人だと言ったら、きっとガッカリするだろうけど、それだけで済むかな?
下手に忠誠心が高いと、後追い自殺とか怖いな。
でもわざわざついて来てくれたのに国に送り返すのも可哀想だし。
うーん。
「私の呼び方に違和感があって辛いなら、そう、辺境伯夫人たる奥様付きのメイドにして貰えるように私から頼んでみるわ」
「え!? シルヴィア様のメイドにですか?」
「そうよ、美しい方だし、仕え甲斐は有ると思うわ。
基本的にティア様もこの城にいる事が多いという事は、つまり私もここにいる事が多い。
比較的近くにもいれるから、何かあったら助け合いも可能だと思うの」
「セレスティアナ様が春にご結婚されたら、新婚時は温泉地のギルバート様の別荘に行かれるそうですが」
「それは仕方ないわよ、新婚さんになるのだし、ご両親のいるお城ではイチャイチャもしにくいでしょうし」
「あの……思ったのですが、私もティア様付きメイドに推してくださる所では?」
ソフィーがジト目で私を見た。
「わ、私の名を親しげに呼びにくいのでしょう?
近すぎると呼ぶ機会も多くなるし、何よりティア様の1番近いメイドは私がなりたい訳ですし」
「あ、それが本音なのですね、リリアーナ様ったら」
「おほほほほ!」
笑って誤魔化そうとする私。
「分かりました、では、奥様付きになれるか、聞いて下さるという事で」
「ええ、早速今からお願いして来ます」
*
ライリーのお城の一階の祭壇の間という所で、シルヴィア夫人をお見かけしたとの執事の言葉を聞いて、私はそこへ向かった。
「え? 私のメイドにリリアーナ殿下付きだったメイドを?」
「私の身分が変わっても、親しげに名を呼ぶのは気が引けるようで、さりとて国に送り返すのも可哀想ですし、できれば、それなりに私に近い場所で働けると、あの子、ソフィーも安心でしょうし」
「そうですか、そういう事なら私は構いません」
「ありがとうございます! シルヴィア様。
あ、ところで、この祭壇に飾られているステンドグラス、とても綺麗ですね」
祭壇の美しいステンドグラスっぽいものが私の目を惹いた。
「ああ、これは娘が、ティアが作った物よ」
「わあ! ティア様は芸術の才能までお持ちなのですね」
「本当に色んな事が出来る子で、驚くのよ」
「仕え甲斐があります! では私はソフィーに奥様の承諾が得られたと、報告に行きます」
「ええ」
それにしても、とても子供を二人産んだとは思えないな。
スタイル抜群で美しいままの辺境伯夫人、凄い。
*
「あら、お母様に自分のメイドを譲ってよかったの?」
「はい」
既にティア様にも情報がいっていたようで、私はすぐに肯定した。
その後、夕食の時間。
私は元王女でも従者ポジションなので、ティア様とは、一旦別れ、ソフィーを宜しくとばかりに、シルヴィア様付きの侍女さんや女騎士のラナン卿、リーゼ卿とお食事をご一緒してお話をした。
あ、デザートにプリンが出た。
美味しい! カラメルもちゃんと有る! 嬉しい!
*
その後、ティア様のお風呂の準備。
火の魔石を使ってお湯の用意と着替えやタオル的な布地を用意する。
お着替えのパンツは……紐! 紐パン!
ゴムが流通して無いなら、やはり紐になるか。
でもあの関節の動く球体人形のゴム?は……どうなっているのかしら。
風呂上がりにエアリアルステッキとやらの魔道具をドライヤー代わりにして髪を乾かすと、先輩メイドに聞いて、仕事を引き継いだ。
美女の髪に触れる素敵なお仕事。
ティア様のサラサラのプラチナブロンドは本当にキラキラと綺麗で素敵。
「明日の私の予定ですが、浄化ツアーの疲れを癒す為に温泉地、ギルバート様の別荘で二、三日ゆっくりします。
リリアーナ、あなたも連れて行こうと思うの」
「はい! 喜んでお供します!」
温泉地ですって! 晴れるといいなぁ。
* * *
私とティア様と護衛騎士達は朝食後に別荘へ転移陣を使って移動した。
天気も見事に晴れてる!
そんな中、まったりと温泉に入る事が出来る!
「ユリナ、まず水着を選んでね」
「ここの温泉は水着なんですね」
「知らない人に裸を晒すのが苦手な人が多いでしょうから」
「なるほど、確かに助かります。ティア様の水着はどのような?」
「この花柄ですよ」
ティア様がインベントリから出して見せてくれた。
「わあ、可愛い~~」
「私は……えっと、この黒で良いです」
戦勝パーティーと同じく、出来るだけ地味な色を選んだ。
「ユリナの好みは黒水着ですか、セクシーで良いですね」
「え、セクシーですか!? じゃ、じゃあ青にします」
「何故……」
「く、黒なら地味かと思ったんです」
「何を言っているんですか、黒の水着と下着はセクシー系ですよ」
「あああっ」
私は結局青い水着を選んで着ることにした。
ちなみに水着の種類は多分伸縮性とか生地の問題で全部、ビキニだった。
あ、パレオ付きは存在した。
* *
「わあ~~温泉に入れるなんて嬉しいです」
温かい温泉に浸かっていると、じんわり、効く~~!と、いう感じがする。
何がどう効いているかはよくわからないけど、多分筋肉とか解れてる。
「ふふ、良かったわ、リラックスしてね」
「はい!」
パチャパチャと、自分の体にお湯をかけてみた。
……リリアーナのお肌……お湯弾く。まだ若いみたい。
は~~。
推しの素敵な水着姿も見れて、ここは極楽である。
*
お昼には溶岩プレートまで出て来た。
ジュワーと、肉が焼ける音を聞きながらのBBQ。
「目の前でステーキ肉が焼ける音が! この臨場感が最高ですね!」
「お分かりいただけたかしら、さすがね、ユリナ」
本日はギルバートの別荘の庭にて護衛騎士達も一緒にBBQランチ。
「昼食の後で川、渓谷の紅葉スポットも有るから、船で行きましょう」
「わあ! 紅葉を船から見るなんて素敵ですね」
「あ、良い感じに焼けたようです」
「はい」
リーゼ卿が肉の焼け具合を真剣に見ていて報告してくれた。
湯気の立つ美味しそうなステーキ肉が眼前にある。
ワクワクが止まらないわね。
刃物なら任せろとばかりにイケメン騎士様達がナイフで肉を切り分けてくれた。
「これはまず、シンプルに塩で、その後、このステーキソースでどうぞ。
プレートは熱いから火傷しない様に気をつけて」
ティア様の仰せのとおりに!
「「はい!!」」
「……美味しいです!」
「本当に!」
リーゼ卿も、皆も、圧倒的同意だった。
溶岩プレートで焼いたステーキに、ついつい、テンションが上がって、はしゃいでしまう。
「さもありなん……」
ティア様も満足そう。
「シンプルに美味い……」
「ステーキ肉最高だな」
「肉汁が……ジューシーだ」
ギル様や騎士様達も美味しそうにステーキを食べている。
「ライリーには溶岩プレートでステーキを食べる文化まで有るんですね」
こっちの国の食文化素敵!
「実はギルバート様やお父様や騎士達が溶岩を取って来てくれて、溶岩プレートで食べたのは今日が初なのよ」
「ええ!? そうだったんですね」
「本当は結婚祝い品は何が良いか聞かれて、色々リストに書いて、その中の一つに溶岩プレートを入れたのだけど、結婚前にお試しで作った分を今日使ってしまったの。待てずに」
「あら、でも成功ですね」
「そうなの、良かったわ」
ティア様はほっくほくでご満悦である。
「ん? 結婚祝いなら、ギルバート様も貰う側では?」
「そのはずだけど、珍しい要求物だったから、自分で探しに行ってくれたみたいなの」
ティア様はそう言ってギルバート様をチラ見した。
私はギル様を讃えてみた。
「まあ、ギルバート様は頑張り屋さんですね」
ギル様は黙ってステーキを食べている。
照れているようだ。
「そうね」
ティア様はふふっと笑った。
可愛い!
* *
溶岩プレートのBBQの後に、我々は紅葉の渓谷を眺めながら船で優雅に川を渡る。
透明な川の水にも赤と黄色の美しい紅葉が映り込む。
は~~癒される。
こっち来て戦争だの魔物やゲースリの襲撃だの、ハードだったけど、温泉に浸かれて、今は美女と小旅行。
ティア様は記録のクリスタルという魔道具を構えて、紅葉の渓谷の景色を記録するそうで、スマホ代わりの便利な代物だなあと感心する。
でも、ちょっともったい無いので、物申す。
「むしろティア様と紅葉の背景を撮影させてください」
「そう? 構えて視覚に入れたら良いのよ。念写みたいに」
私はクリスタルを借りてティア様の撮影にチャレンジしてみた。
ティア様の本日の装いはゴスロリ系のクラシカルなドレス姿。色はボルドー。
ヘッドドレス付きでとても可愛い。
私は白いレースの付け襟が可愛い、黒いワンピースを着させて貰っている。
しばらく服は、なるべく黒いのを着たいと自分から申し出たから。
メイド服でいいと言ったのだけど、お出かけの時はお仕着せでなくともいいだろうとティア様に言われた。
後でクリスタルの映像を確認したら、綺麗に撮れていた。モデルが良いからね!
でも、とても嬉しい。
──うん、可愛いティア様と温泉とバーベキューと紅葉ツアー、最高だった!
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