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06 「戦勝パーティーと私」
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ヴィジナード浄化行脚の旅の後、ティア様は三日も疲れてほぼ気絶状態で寝込んでしまった。
皆、すっごく心配しました。
ティア様が目が覚めた数日後には、パーティーがあると言われた。
国境防衛戦に参加した人達を労う為に。
それと昔リリアーナに恋心を抱いていたロルフ殿下は大公の爵位を賜るそうだ。
おめでとうございます!!
私の分まで、ヴィジナードを守ってくださいませ!
私と違い、生まれながらに支配者側の教育を受けておられるはず!
何しろ大国の第二王子だもの!
*
ティア様によって、私はライリー城内のサロンに招かれた。
メイドや執事は人払いで出してあり、側近の騎士達だけがサロン内に残っている。
お茶やお茶菓子は、既にテーブルの上。
ティア様とギル様の側近には、もう私の事を話してくれているらしい。
中身がリリアーナとは別人で庶民だと。
私はサロンのソファに座ってるのだけど、ちゃっかりティア様の右隣をキープした。
逆サイドの左隣にはギル様が座っている。
「リリアーナ王女」
「はい、ティア様」
まだ一応王女って呼ぶのですね。
「ゲースリ戦の戦勝記念パーティーがあるのですが、私の騎士かギルバート様の騎士から貴女のエスコートをする相手を選んで下さいませんか?」
なんと、ティア様は私の目の前にイケメン騎士達をずらりと並ばせて訊いた!
「え!? 庶民の私が!? パーティーに!?」
「中身はともかく表向きはリリアーナ王女じゃないですか、パーティーにエスコート無しでは格好がつかないので」
「ひえ……眩しい……こ、この中から私が選ぶなんて……」
並んでるイケメン達が眩しくて、直視しにくい。
先日魔法訓練をして下さったカーティス様もいるけど、別に友達になった訳でもないし、頼みにくい。
「じゃあ、好みのタイプとか無いですか? パッと見て選びにくいなら性格でも良いです」
「あ、あえて二次元的な好みで言うと、見るだけなら、参謀タイプと言いますか、主人公を影日向で支える二番手、腹心タイプ、しかも忠誠心の高い方とかかっこいいと……思います」
恥ずかしいのでリアルよりも二次元的な好みを持ち出してみた。
「今のが観賞用、見るだけの好みのタイプなら、実際に付き合いたいとか夫にしたいタイプとは別という事ですか?」
「は、はい」
「実際にお付き合いしたいとか、結婚するなら温厚タイプとかそういう感じ?」
「そ、そうです、それはやはり一緒にいて安心出来るおおらかな方が良いというか」
「忠臣タイプなら、ギルバート様の最側近のエイデン卿がおすすめです。
おおらか系なら、えっと、騎士系だとどちらかと言うと勇猛な方が多い気もしますが、人あたりが良く、平民にも気さくに接する優しい方ならチャールズ卿あたりですか」
「えっ……っ、究極の……二択……」
「私に姫君のエスコートは荷が重いです、エイデン卿、お願いできますか?」
チャールズさんは自分から辞退した。
何もしないうちに振られた気分。あはは。
「チャールズが辞退した。エイデン、どうだ?」
「私でよろしければ」
エイデン様は温かみのある、にこやかな笑顔を浮かべている。
てか、騎士様は名前に卿を付けて呼べばいいみたいね。
「よ、よろしくお願いいたします、エイデン卿」
エイデン卿、庶民ですが、よろしくお願いします。
「ユリナ嬢、そう言えば男性恐怖症だった理由は何だったのか聞いても良いですか?」
私のソファの背もたれ越しの背後に今まで静かに立っていた女性護衛騎士のリーゼ卿が突然、思い切りよく切り込んで来た。
えっと、脳内情報検索によればですね……
「リリアーナ姫は昔から可愛くて綺麗だったので、色んな男性から想いを寄せられていました。
休憩室で待ち伏せていた男から怖い思いもさせられた事があり、恋のライバル達の言い争いから決闘まで発展して、その決闘でも人が死んだりして、大変ショックを受けたようです」
「決闘……」
皆様、あちゃーみたいな表情になった。
さもありなん。
「決闘の他も恋のライバル同士が不審な死を遂げる事もありました」
「そ、それは確かに男性が怖くなるでしょうね。パーティーのダンスの相手はどうしていたんでしょう?」
「弟、もしくは背の高い女性の護衛騎士が男装してパートナーになってくれていた事も有ります」
「まあ! 男装の麗人!」
急にソファから立ち上がるティア様。
「セレスティアナ、ダメだぞ。座っていろ」
ギル様に腕を引っ張られて着席するティア様。
「ちょっと感激しただけですよ」
「それでなんでわざわざ立ったんだ」
「い、勢いです、ただの」
「そうか、ならば良いのだがな」
ギル様はティア様を疑うような目でじーっと見てる。
……はて?
「ドレスの用意が有りますね、一からの仕立てだと時間がかかりますので一緒にグランジェルドの王都のドレスショップに行きましょう」
え!? ティア様とお買い物デートは嬉しいですが!
ぶっちゃけお金がほぼ無いです!
宝物庫の宝石達は遺体収集と焼却の手当てや食料支援用に使いまくったので。
「王都陥落でうち、多分財源が有りません」
隠しても仕方ないので暴露した。
「大丈夫です、今後ユリナに関する費用は全てこちらで持ちます。
基本的に私の従者と言う事になっていますから」
「あ、ありがとうございます。ティア様は三日も倒れていたのに、パーティーとか大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。三日も寝ていたので流石に回復しましたよ」
* *
私のドレスは黒にしていただいた。
ヴィジナードでは沢山人が亡くなったから、戦勝パーティーでもとりあえず喪服っぽい黒を選んだ。
華やかなドレスを着る気分では無かった。
ティア様は女神の使徒っぽさをアピールする為に白を着る事になった。
そしてパーティーではヴィジナードの婚約者や夫を亡くした令嬢や夫人が多いせいか、独りになってしまった女性貴族達からグランジェルドの貴族やティア様の騎士とかギル様の騎士がめっちゃモテてた。
エイデン様のエスコートで会場へ来たはいいけど、私はパーティーではダンスも踊らずに、未だ男性恐怖症のふりをしたままにした。
そしてこれ幸いとばかりに、スイーツの並べられたテーブルへ向かった。
元カフェ店員として、研究がてら食べるのも悪くない。
カヌレに手を伸ばしかけたところで、自国の貴族女性が私に話しかけて来た。
「リリアーナ様、他国に救いを求める為に、神の使徒様の元とはいえ、自らの身分を捨て、お仕えするなんて、なんという献身でしょう」
いえ、別に! 好き好んで美女に仕える事にしたので、お気になさらず!
「ところで、あのグランジェルドの素敵な騎士様方ですが、ご紹介いただけませんか?」
は? リリアーナを気の毒がって声かけたとかじゃなくて、そっちが本命!?
「あの、竜騎士様とか……」
竜騎士様に紹介して欲しくて、わざわざ私に声かけたんですかー!
「申し訳ないのですが、まだ全然親しく有りませんので」
「あら、そうでしたの。失礼いたしました」
戦勝記念パーティーが……婚活の戦場になっていた件。
ヴィジナードの女性陣から
「男性達が亡くなってとっても心細いですわ」風に縋られるグランジェルドの殿方達……。
高位貴族の場合は次男以降がモテているみたい。
家督を継げる長男等は既にほぼ同国内で婚約者が決まっているものね。
あんまり高望みをするとグランジェルドの女性貴族陣から睨まれそうで怖いからか、とりあえず騎士クラスがモテているっぽいな。
ほーん。
そういえば、リリアーナの年齢は今19歳だけど、来年の夏には20歳で少女時代が終わるのね。
いえ、こっちの成人は15歳だから実は既に大人なんだけど。
こちらの……世間的には男性恐怖症のせいでそろそろ行き遅れの女になるわね。
別にいいけど。
だって、見た目ならリリアーナはまだ余裕でピッチピッチなんだもの!
負け惜しみとかじゃない!
皆、すっごく心配しました。
ティア様が目が覚めた数日後には、パーティーがあると言われた。
国境防衛戦に参加した人達を労う為に。
それと昔リリアーナに恋心を抱いていたロルフ殿下は大公の爵位を賜るそうだ。
おめでとうございます!!
私の分まで、ヴィジナードを守ってくださいませ!
私と違い、生まれながらに支配者側の教育を受けておられるはず!
何しろ大国の第二王子だもの!
*
ティア様によって、私はライリー城内のサロンに招かれた。
メイドや執事は人払いで出してあり、側近の騎士達だけがサロン内に残っている。
お茶やお茶菓子は、既にテーブルの上。
ティア様とギル様の側近には、もう私の事を話してくれているらしい。
中身がリリアーナとは別人で庶民だと。
私はサロンのソファに座ってるのだけど、ちゃっかりティア様の右隣をキープした。
逆サイドの左隣にはギル様が座っている。
「リリアーナ王女」
「はい、ティア様」
まだ一応王女って呼ぶのですね。
「ゲースリ戦の戦勝記念パーティーがあるのですが、私の騎士かギルバート様の騎士から貴女のエスコートをする相手を選んで下さいませんか?」
なんと、ティア様は私の目の前にイケメン騎士達をずらりと並ばせて訊いた!
「え!? 庶民の私が!? パーティーに!?」
「中身はともかく表向きはリリアーナ王女じゃないですか、パーティーにエスコート無しでは格好がつかないので」
「ひえ……眩しい……こ、この中から私が選ぶなんて……」
並んでるイケメン達が眩しくて、直視しにくい。
先日魔法訓練をして下さったカーティス様もいるけど、別に友達になった訳でもないし、頼みにくい。
「じゃあ、好みのタイプとか無いですか? パッと見て選びにくいなら性格でも良いです」
「あ、あえて二次元的な好みで言うと、見るだけなら、参謀タイプと言いますか、主人公を影日向で支える二番手、腹心タイプ、しかも忠誠心の高い方とかかっこいいと……思います」
恥ずかしいのでリアルよりも二次元的な好みを持ち出してみた。
「今のが観賞用、見るだけの好みのタイプなら、実際に付き合いたいとか夫にしたいタイプとは別という事ですか?」
「は、はい」
「実際にお付き合いしたいとか、結婚するなら温厚タイプとかそういう感じ?」
「そ、そうです、それはやはり一緒にいて安心出来るおおらかな方が良いというか」
「忠臣タイプなら、ギルバート様の最側近のエイデン卿がおすすめです。
おおらか系なら、えっと、騎士系だとどちらかと言うと勇猛な方が多い気もしますが、人あたりが良く、平民にも気さくに接する優しい方ならチャールズ卿あたりですか」
「えっ……っ、究極の……二択……」
「私に姫君のエスコートは荷が重いです、エイデン卿、お願いできますか?」
チャールズさんは自分から辞退した。
何もしないうちに振られた気分。あはは。
「チャールズが辞退した。エイデン、どうだ?」
「私でよろしければ」
エイデン様は温かみのある、にこやかな笑顔を浮かべている。
てか、騎士様は名前に卿を付けて呼べばいいみたいね。
「よ、よろしくお願いいたします、エイデン卿」
エイデン卿、庶民ですが、よろしくお願いします。
「ユリナ嬢、そう言えば男性恐怖症だった理由は何だったのか聞いても良いですか?」
私のソファの背もたれ越しの背後に今まで静かに立っていた女性護衛騎士のリーゼ卿が突然、思い切りよく切り込んで来た。
えっと、脳内情報検索によればですね……
「リリアーナ姫は昔から可愛くて綺麗だったので、色んな男性から想いを寄せられていました。
休憩室で待ち伏せていた男から怖い思いもさせられた事があり、恋のライバル達の言い争いから決闘まで発展して、その決闘でも人が死んだりして、大変ショックを受けたようです」
「決闘……」
皆様、あちゃーみたいな表情になった。
さもありなん。
「決闘の他も恋のライバル同士が不審な死を遂げる事もありました」
「そ、それは確かに男性が怖くなるでしょうね。パーティーのダンスの相手はどうしていたんでしょう?」
「弟、もしくは背の高い女性の護衛騎士が男装してパートナーになってくれていた事も有ります」
「まあ! 男装の麗人!」
急にソファから立ち上がるティア様。
「セレスティアナ、ダメだぞ。座っていろ」
ギル様に腕を引っ張られて着席するティア様。
「ちょっと感激しただけですよ」
「それでなんでわざわざ立ったんだ」
「い、勢いです、ただの」
「そうか、ならば良いのだがな」
ギル様はティア様を疑うような目でじーっと見てる。
……はて?
「ドレスの用意が有りますね、一からの仕立てだと時間がかかりますので一緒にグランジェルドの王都のドレスショップに行きましょう」
え!? ティア様とお買い物デートは嬉しいですが!
ぶっちゃけお金がほぼ無いです!
宝物庫の宝石達は遺体収集と焼却の手当てや食料支援用に使いまくったので。
「王都陥落でうち、多分財源が有りません」
隠しても仕方ないので暴露した。
「大丈夫です、今後ユリナに関する費用は全てこちらで持ちます。
基本的に私の従者と言う事になっていますから」
「あ、ありがとうございます。ティア様は三日も倒れていたのに、パーティーとか大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。三日も寝ていたので流石に回復しましたよ」
* *
私のドレスは黒にしていただいた。
ヴィジナードでは沢山人が亡くなったから、戦勝パーティーでもとりあえず喪服っぽい黒を選んだ。
華やかなドレスを着る気分では無かった。
ティア様は女神の使徒っぽさをアピールする為に白を着る事になった。
そしてパーティーではヴィジナードの婚約者や夫を亡くした令嬢や夫人が多いせいか、独りになってしまった女性貴族達からグランジェルドの貴族やティア様の騎士とかギル様の騎士がめっちゃモテてた。
エイデン様のエスコートで会場へ来たはいいけど、私はパーティーではダンスも踊らずに、未だ男性恐怖症のふりをしたままにした。
そしてこれ幸いとばかりに、スイーツの並べられたテーブルへ向かった。
元カフェ店員として、研究がてら食べるのも悪くない。
カヌレに手を伸ばしかけたところで、自国の貴族女性が私に話しかけて来た。
「リリアーナ様、他国に救いを求める為に、神の使徒様の元とはいえ、自らの身分を捨て、お仕えするなんて、なんという献身でしょう」
いえ、別に! 好き好んで美女に仕える事にしたので、お気になさらず!
「ところで、あのグランジェルドの素敵な騎士様方ですが、ご紹介いただけませんか?」
は? リリアーナを気の毒がって声かけたとかじゃなくて、そっちが本命!?
「あの、竜騎士様とか……」
竜騎士様に紹介して欲しくて、わざわざ私に声かけたんですかー!
「申し訳ないのですが、まだ全然親しく有りませんので」
「あら、そうでしたの。失礼いたしました」
戦勝記念パーティーが……婚活の戦場になっていた件。
ヴィジナードの女性陣から
「男性達が亡くなってとっても心細いですわ」風に縋られるグランジェルドの殿方達……。
高位貴族の場合は次男以降がモテているみたい。
家督を継げる長男等は既にほぼ同国内で婚約者が決まっているものね。
あんまり高望みをするとグランジェルドの女性貴族陣から睨まれそうで怖いからか、とりあえず騎士クラスがモテているっぽいな。
ほーん。
そういえば、リリアーナの年齢は今19歳だけど、来年の夏には20歳で少女時代が終わるのね。
いえ、こっちの成人は15歳だから実は既に大人なんだけど。
こちらの……世間的には男性恐怖症のせいでそろそろ行き遅れの女になるわね。
別にいいけど。
だって、見た目ならリリアーナはまだ余裕でピッチピッチなんだもの!
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