【完結】風渡る丘のリナ 〜推しに仕えて異世界暮らし〜

長船凪

文字の大きさ
上 下
4 / 58

04 「黒髪眼鏡イケメンと魔法訓練」

しおりを挟む
 私達はゲースリの侵略攻撃に備えて、戦力補充の為、転移陣で騎士の多いライリーに一旦戻った。

 私はライリーのお城の廊下でキョロキョロと周囲を見渡した。
 魔法使いっぽい人はいないかしら? と。

 うーん、慌ただしく廊下を行き交う騎士やメイドや執事はそれなりにいるけど……

「リリアーナ様、いかがなさいました?」

 ティア様の黒髪のイケメン護衛騎士さんが親切にも声をかけて下さった。

 こっちでは眼鏡は高級な物で、かけてる人はほとんど見ないけど、この方は珍しく眼鏡をかけている知的な雰囲気の有る人だ。

「ええと、私、今度ティア様のお手伝いで、歌を拡散するのに風の魔法を使う事になったのですが、一体どうすれば良いのかと、私には実践経験がなくて、魔法使いの方がいたら指導していただけたらと」

「ああ、私で良ければお教えします。風の魔法スキル持ちなので」
「ありがとうございます、ええと……」

 あなた様のお名前は何て? 

「失礼、申し遅れました、我が名はカーティス。カーティスとお呼び下さい」
「はい、カーティス様ですね、よろしくお願い致します」
「訓練の為に、少しの間、城外へ参りましょう」
「はい」

 私達の近くに美しい女騎士が通りかかった。

「あ、ラナン殿! 魔法訓練の為にリリアーナ様を城外に連れて行くと、我が君にお伝え願いますか!?」
「はい! 確かに伝えます!」
「わ、とても綺麗な女騎士様ですね」

 亜麻色の髪の美少女騎士だ。

「はい、ギルバート様を除けばセレスティアナ様に一番近しい騎士です」

 へー! 信頼されているんだろうな、良いな! 私も信頼されたい!
 その為にもスキルを使いこなしたい!

 城の外へ向かう。
 しかも馬で二人乗りである! デートみたい! 訓練だけど!

「いいですか、リリアーナ様、馬で走っている間は喋らないで下さい、舌を噛みますので」
「はい!」

 城外へ出た。

 ライリーのお城は丘の上に有る。
 少し下った所に有る林の入り口付近に来た。
 木々の下には落ち葉の絨毯。秋の風景である。

「リリアーナ様、あそこに落ち葉が見えますね?」
「はい、沢山見えます」
「風で歌声を拡散するお手伝いという事で、あの落ち葉を移動させてみましょう」
「ぐ、具体的にどのように?」

「あの落ち葉を視界に入れ、風よ、巻き上がれと、脳内で命じるか、言の葉に乗せて、風で葉が飛んで行くイメージをするんです。精霊が望みを汲み取ってそのように動かしてくれます」

「脳内で命じてイメージするだけで良いのですか?」
「そうです、大事なのはイメージする力です」

「やってみます」
「風よ! 木の葉を運べ、舞い上がれ!!」

 ふわりと風がまき起こり、木の葉を運んだ。
 やった!!

「お上手です、さらにもっと遠くまで運ぶイメージを!」
「はい! 風よ! もっと、もっと遠くまで!」

 さらに強い風が吹き、木の葉を遠くまで運んで行った。

「良く出来ました。その要領でその時がきたら、お嬢様の歌声を遠くまで運びましょう」

わりとあっさりできたのは、元からリリアーナの魔力量が多いとか、優秀だったとか、そういう理由かしら?

「ともかく、これでティア様のお手伝いが出来そうで嬉しいです!
カーティス様! ご指導ありがとうございました!」

「いえいえ、これしきの事」

「ところであの、魔法訓練と関係ない話で恐縮ですが、眼鏡されてる方って、珍しいですね?」

 インテリ風がカッコいいので、ちょっと気になった。

「はい、この眼鏡はダンジョンで入手した鑑定鏡のフレームを加工して使っています」
「わあ! ダンジョン産! ん? 鑑定鏡? 
視力補助の物では無いのですか?」

「いいえ、危険な毒物や呪物などがあったらすぐに見抜けるようにかけているだけで、視力は悪くありません」
「そうだったんですね!」

 なるほど、便利な物が有るのね。

「では、城へ戻りましょう。ゲースリの侵攻が有るという事で皆、準備が有りますからね」

「はい、お忙しいなか、お付き合い下さってありがとうございます!」

 城に戻った。

「お帰りなさい、ユリナ。騎士と一緒に馬で城外に出たとか聞いたわ。
騎乗服、あげておけば良かったわね」

 ティア様、本日もお優しい!

「え、あ、急いでいたものですから、でもありがとうございます!」
「今度、貴女用に用意しておくわね」

「ありがとうございます。ズボンがあると動きやすいので、助かります。が、中古とかで良いですので」
「そうなの? 
でも中古の方が気兼ねなく汚せるっていうのは確かにあるわね」

 ティア様の中には私と同じく庶民感覚がお有りになるようで、親しみも持てる。
 好き!

「明日には浄化の為に準備を完了させてヴィジナードへ向かうわ、今夜はゆっくり休んでね」

『この世界では戦争などで、死者も多く、また多くの魔物の血で大地が穢されると、作物の実りもとても悪くなったりするから、特別な浄化が必要になる。
その浄化を歌にて出来る特殊能力者が、ティアなんだ』

「リナルド! とラナン。またリナルドがどこぞで日向ぼっこをしていたのを見つけて連れて来てくれたのね」
「はい、我が君」

 美しい女騎士のラナン様に抱っこされて登場したのは、喋るエゾモモンガのぬいぐるみ!

「えっと、ティア様がガチで尊いお方なのは理解しました!」
「え!? な、中身は、そんな、たいしたやつじゃないので……」

 ティア様は謙遜をなさる。

「ともかく、隣国の為に色々とありがとうございます。
よろしくお願いします」

 ティア様はラナン様からリナルドを引き取ってから、私の方を見つめ、慈愛に満ちた美しい笑顔を見せて下さった。

 尊い!! 美しい!!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました

21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。 理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。 (……ええ、そうでしょうね。私もそう思います) 王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。 当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。 「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」 貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。 だけど―― 「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」 突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!? 彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。 そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。 「……あの、何かご用でしょうか?」 「決まっている。お前を迎えに来た」 ――え? どういうこと? 「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」 「……?」 「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」 (いや、意味がわかりません!!) 婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、 なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

私の知らぬ間に

豆狸
恋愛
私は激しい勢いで学園の壁に叩きつけられた。 背中が痛い。 私は死ぬのかしら。死んだら彼に会えるのかしら。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

処理中です...