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02 「見つけた」
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神殿で寝ていると、夢の中で精霊に会った。
──流石神殿、不思議な事が起こる。
『危ないよ、危ないよ、主様』
「なあに? あなたは誰?」
目の前に飛んでいるのは、小さくて透き通る羽根を持つ、妖精のような存在だった。
『風の精霊、あなたの精霊』
「な、何が危険なの? まさか、また魔物が来るの?」
私はギクリとして身を震わせた。
『ゲースリという悪い国が沢山の武器を集めて、この国に攻め入ろうとしているよ』
「え!? 今度は……人間の……国が敵?」
『そう。魔王信仰者の多い、悪い人間の国。
もし侵略されたら多くの人が囚われ、奴隷にされたりすると思う。
攫った旅人や孤児を生贄にしたりするような所だから』
な、次から次へとそんな不幸が!!
「ゲースリなどに滅ぼされては、このヴィジナードの国民が皆、奴隷扱いをされて、酷い目にあわされてしまうという事ね?」
『そう』
あああああっ!!!!
「だ、誰かに助けを乞わないと、この国は魔物の攻撃で騎士団が崩壊して、もはや機能しない。
強国に、助けを求めて……ねえ、どこが良いと思う?」
私はすがるような気持ちで精霊に意見を求めてみた。
『グランジェルドに大地と月の女神様の寵愛を受けている方がいるよ、隣国だし、大きな国だから、そこが良いと思う』
「グランジェルドのどなたが神様の寵愛を受けているの?」
『ライリーのセレスティアナという、プラチナブロンドで、新緑の瞳の美しい方だよ。歌がとても上手いんだ』
ライリーのセレスティアナ様!!
ライリーは転生者か転移者がいる気がする領地!
「そうね、この国がゲースリなんかに支配されるくらいなら、もっと真っ当な治世を行ってくれる人がいるだろう、グランジェルドの方に……」
私は朝に目覚めてから、精霊から御告げを受けたと巫女に告げ、ライリーのセレスティアナ様に至急面会希望のメッセージを送って欲しいと願い出た。
神殿を通せば、何とか届くのではないかな?
お隣さんの国らしいし。
*
祈りの間にて必死に面会が許されるようにと、膝をついて祈っていた私の前に、神官がやってきた。
「何とかライリーの領主様から転移陣の使用許可をいただけたそうです」
「なるほど、神殿って、簡易メッセージを送れる魔法の転移陣とやらが、あるのだったわね」
それはリリアーナの肉体の記憶にある情報だった。
凄いわ。
「はい。そしてリリアーナ様、他国に緊急で向かわれる際は、敵意が無い証に、お供は最小人数で行った方が良いと思いますので、神殿の護衛騎士を一人だけお貸しします」
神官の言う通りにしよう。
「分かったわ、騎士一人とメイド一人だけ連れて行きます。
ソフィー、いいかしら?」
「はい、どこまでもお供いたします」
見上げた忠誠心である。
いざ、ライリーへ! 待ってて! 地球出身の方! 今、会いに行きます!
* *
魔法陣が光って、不思議な力で転移しました!
凄い! 魔法凄い!!
「弾かれずに来られたようで、何よりです」
家令と言われる方のお話によれば、ライリーに悪意ある人は弾かれる結界があるらしい。
はっ! ライリーの家令の後方から背の高いイケメンがマントを靡かせて歩いて来た。
オーラが凄い!
「ライリーへようこそ、リリアーナ王女殿下。
私が領主のジークムンドです。
転移陣のメッセージが短文しか送れないせいで2回に分けて来ましたが、どうも我が娘との面会を求めておられるとか?」
目の前で赤い髪の背の高い、精悍な顔立ちのイケメンが超イケボで喋ってる!
この方がドラゴンスレイヤーの領主様!!
「はい、是非ともセレスティアナ嬢と、お話をさせていただきたく存じます」
「いいでしょう、リリアーナ王女殿下をサロンへお通ししておいてくれ」
「はい、旦那様」
サロンで待っていたら、来た!
圧倒的オーラを放つ美少女が!!
プラチナブロンドに新緑の瞳、素晴らしい美貌とスタイル!
この方がセレスティアナ様だ!!
一目見てファンになるわ、こんなの! 超可愛い! 好き!
はやる気持ちをどうにか抑えて、私のお供はメイド一人、護衛騎士一人のみだけど、秘密のお話があるので、下がっててもらう事にしよ。
「貴方達は、部屋の外で待っていて下さい。
できればセレスティアナ様とごく僅かな護衛騎士のみにしていただきたいのです」
「人払いですね、分かりました。ガーディアンのギルバート様のみ残して、他者は扉の外へ」
ガーディアンだって! なんかカッコイイ!!
「はい。ギルバート様、お嬢様をよろしくお願いいたします」
「もちろんだ、任せるがいい」
セレスティアナ様はグランジェルドの第三王子たるギルバート様以外を、部屋から出してくれた。
単刀直入に言おう。
より切迫した事情を察してくれると信じて。
「実は、グランジェルドとは反対側の隣国が、我が国に侵略準備をしているようなのです」
まずは国の窮状を訴える。
「えっ!?」
「どうやってそれを知ったのだ?」
「この身に宿る加護が風の精霊で、危機を知らせてくれたのです。どうも精霊との親和性が高いらしく」
「む。風の精霊が……」
ギルバート様にも同じ精霊が見えるのか、目を凝らして空中を見てる。
「我が国は既に魔族の侵攻でぼろぼろです。グランジェルドに保護をお願い致したく」
「見返りは?」
売国奴と言われても、国を救う手立てが、私には他に思いつかない。
「我が国の支配権を」
相手側から、私の爆弾発言に思わずゴクリ、と生唾飲んだ気配を察知。
「隣国ゲースリの支配を嫌がるのに、我がグランジェルド国に従属するのは構わないと?
更に、それでは其方が売国奴と言われると思うが」
銀髪に小麦色の肌、蒼穹の瞳、夏の申し子のようなカラーリングのイケメン王子様が、私に厳しい眼差しを向けてくる。
「ゲースリなどに滅ぼされては、国民が皆、奴隷扱いをされて、酷い目にあわされてしまうと思うのです!
あそこは攫った人や孤児などを魔王信者が生贄に捧げるとも精霊に聞きました!!
どうせ国が吸収合併されるなら、もっと真っ当な治世を行ってくれる所の方が」
「なるほど、しかし、解せないのはそんな話をグランジェルド王でなく、何故、セレスティアナに? こんな時まで男性恐怖症か?」
隣国のギルバート様にまでリリアーナの男性恐怖症はバレてる。
そう言えば兄君の第二王子はリリアーナ姫に夢中だったんだわ。
その恋はリリアーナ姫の男性恐怖症のせいで実らなかったけど。
私は一回深呼吸した後、思いきって、切り札のネタをぶっこむ事にした。
「ポンプやハンドミキサー、精米機、挽き肉製造機、ミシン、馬車の座面のスプリング。
比較的最近出て来たこれらの便利な発明品は、このライリー産だと聞いております。
当国にも、商人からそれらを入手しております」
何故、今、その話が!? と、いう風にセレスティアナ様が美しい双眼を見開いた。
「ええ、まあ、それが何か?」
セレスティアナ様は冷静を装っておられる。
「このライリーのどこかに、私と同じ、同郷の方がおられるかと」
セレスティアナ様の肩がビクリと揺れた。
今の小さな反応、私では無いと見逃しちゃうかもね。
「同郷だと……」
ギルバート様がさらに眼差しを鋭くして私を見た。
「地球、この言葉の意味をご存知の方がここにおられるのでは?」
私は祈るような気持ちで言った。
「まさか、あなたは……」
「この体の本来の持ち主、リリアーナ姫の魂は実は死んでいます」
ぶっちゃけた!!
「え!?」
「何だと!?」
「目の前でリリアーナの弟が魔物との戦いで死んだ時に、ショックであの世に飛び去ってしまったのか、何故か地球の日本人の私の魂が入り込んでしまいました!
私がわざと乗っ取った訳じゃありません!
何故かそうなったとしか言いようがないのです!
前世の私は通り魔に刺されて死にました!」
とんでも展開過ぎるけど、事実なので仕方ない。
『どうも、その話は本当らしいね』
「「リナルド!」」
「え!? エゾモモンガのぬいぐるみが喋った!?」
サロンに置かれていたカゴの中から急に出て来たのは、リナルドと呼ばれた白いモモンガの愛らしいぬいぐるみ!
しかもエゾモモンガそっくり!! それが喋った!
「エゾモモンガを知っているなんて、確かに、この方は……」
セレスティアナ様に反応有り!! よし! たたみかけるぞ!
「同郷の方ですよね!? お助け下さい!
この体に残る記憶を見れば、リリアーナ姫の国を思う気持ちも分からないでもないのですが、この身が唯一の王家の生き残りでも、私に女王として立つのは無理です!
私は日本で家族とカフェを営んでいた、ただの一庶民です! 重いです!」
リリアーナ姫のガワを被った私は、セレスティアナ様に向かってガバッと土下座した!
必殺! ジャパニーズ土下座!!
憐れみを、御慈悲をください!!
──流石神殿、不思議な事が起こる。
『危ないよ、危ないよ、主様』
「なあに? あなたは誰?」
目の前に飛んでいるのは、小さくて透き通る羽根を持つ、妖精のような存在だった。
『風の精霊、あなたの精霊』
「な、何が危険なの? まさか、また魔物が来るの?」
私はギクリとして身を震わせた。
『ゲースリという悪い国が沢山の武器を集めて、この国に攻め入ろうとしているよ』
「え!? 今度は……人間の……国が敵?」
『そう。魔王信仰者の多い、悪い人間の国。
もし侵略されたら多くの人が囚われ、奴隷にされたりすると思う。
攫った旅人や孤児を生贄にしたりするような所だから』
な、次から次へとそんな不幸が!!
「ゲースリなどに滅ぼされては、このヴィジナードの国民が皆、奴隷扱いをされて、酷い目にあわされてしまうという事ね?」
『そう』
あああああっ!!!!
「だ、誰かに助けを乞わないと、この国は魔物の攻撃で騎士団が崩壊して、もはや機能しない。
強国に、助けを求めて……ねえ、どこが良いと思う?」
私はすがるような気持ちで精霊に意見を求めてみた。
『グランジェルドに大地と月の女神様の寵愛を受けている方がいるよ、隣国だし、大きな国だから、そこが良いと思う』
「グランジェルドのどなたが神様の寵愛を受けているの?」
『ライリーのセレスティアナという、プラチナブロンドで、新緑の瞳の美しい方だよ。歌がとても上手いんだ』
ライリーのセレスティアナ様!!
ライリーは転生者か転移者がいる気がする領地!
「そうね、この国がゲースリなんかに支配されるくらいなら、もっと真っ当な治世を行ってくれる人がいるだろう、グランジェルドの方に……」
私は朝に目覚めてから、精霊から御告げを受けたと巫女に告げ、ライリーのセレスティアナ様に至急面会希望のメッセージを送って欲しいと願い出た。
神殿を通せば、何とか届くのではないかな?
お隣さんの国らしいし。
*
祈りの間にて必死に面会が許されるようにと、膝をついて祈っていた私の前に、神官がやってきた。
「何とかライリーの領主様から転移陣の使用許可をいただけたそうです」
「なるほど、神殿って、簡易メッセージを送れる魔法の転移陣とやらが、あるのだったわね」
それはリリアーナの肉体の記憶にある情報だった。
凄いわ。
「はい。そしてリリアーナ様、他国に緊急で向かわれる際は、敵意が無い証に、お供は最小人数で行った方が良いと思いますので、神殿の護衛騎士を一人だけお貸しします」
神官の言う通りにしよう。
「分かったわ、騎士一人とメイド一人だけ連れて行きます。
ソフィー、いいかしら?」
「はい、どこまでもお供いたします」
見上げた忠誠心である。
いざ、ライリーへ! 待ってて! 地球出身の方! 今、会いに行きます!
* *
魔法陣が光って、不思議な力で転移しました!
凄い! 魔法凄い!!
「弾かれずに来られたようで、何よりです」
家令と言われる方のお話によれば、ライリーに悪意ある人は弾かれる結界があるらしい。
はっ! ライリーの家令の後方から背の高いイケメンがマントを靡かせて歩いて来た。
オーラが凄い!
「ライリーへようこそ、リリアーナ王女殿下。
私が領主のジークムンドです。
転移陣のメッセージが短文しか送れないせいで2回に分けて来ましたが、どうも我が娘との面会を求めておられるとか?」
目の前で赤い髪の背の高い、精悍な顔立ちのイケメンが超イケボで喋ってる!
この方がドラゴンスレイヤーの領主様!!
「はい、是非ともセレスティアナ嬢と、お話をさせていただきたく存じます」
「いいでしょう、リリアーナ王女殿下をサロンへお通ししておいてくれ」
「はい、旦那様」
サロンで待っていたら、来た!
圧倒的オーラを放つ美少女が!!
プラチナブロンドに新緑の瞳、素晴らしい美貌とスタイル!
この方がセレスティアナ様だ!!
一目見てファンになるわ、こんなの! 超可愛い! 好き!
はやる気持ちをどうにか抑えて、私のお供はメイド一人、護衛騎士一人のみだけど、秘密のお話があるので、下がっててもらう事にしよ。
「貴方達は、部屋の外で待っていて下さい。
できればセレスティアナ様とごく僅かな護衛騎士のみにしていただきたいのです」
「人払いですね、分かりました。ガーディアンのギルバート様のみ残して、他者は扉の外へ」
ガーディアンだって! なんかカッコイイ!!
「はい。ギルバート様、お嬢様をよろしくお願いいたします」
「もちろんだ、任せるがいい」
セレスティアナ様はグランジェルドの第三王子たるギルバート様以外を、部屋から出してくれた。
単刀直入に言おう。
より切迫した事情を察してくれると信じて。
「実は、グランジェルドとは反対側の隣国が、我が国に侵略準備をしているようなのです」
まずは国の窮状を訴える。
「えっ!?」
「どうやってそれを知ったのだ?」
「この身に宿る加護が風の精霊で、危機を知らせてくれたのです。どうも精霊との親和性が高いらしく」
「む。風の精霊が……」
ギルバート様にも同じ精霊が見えるのか、目を凝らして空中を見てる。
「我が国は既に魔族の侵攻でぼろぼろです。グランジェルドに保護をお願い致したく」
「見返りは?」
売国奴と言われても、国を救う手立てが、私には他に思いつかない。
「我が国の支配権を」
相手側から、私の爆弾発言に思わずゴクリ、と生唾飲んだ気配を察知。
「隣国ゲースリの支配を嫌がるのに、我がグランジェルド国に従属するのは構わないと?
更に、それでは其方が売国奴と言われると思うが」
銀髪に小麦色の肌、蒼穹の瞳、夏の申し子のようなカラーリングのイケメン王子様が、私に厳しい眼差しを向けてくる。
「ゲースリなどに滅ぼされては、国民が皆、奴隷扱いをされて、酷い目にあわされてしまうと思うのです!
あそこは攫った人や孤児などを魔王信者が生贄に捧げるとも精霊に聞きました!!
どうせ国が吸収合併されるなら、もっと真っ当な治世を行ってくれる所の方が」
「なるほど、しかし、解せないのはそんな話をグランジェルド王でなく、何故、セレスティアナに? こんな時まで男性恐怖症か?」
隣国のギルバート様にまでリリアーナの男性恐怖症はバレてる。
そう言えば兄君の第二王子はリリアーナ姫に夢中だったんだわ。
その恋はリリアーナ姫の男性恐怖症のせいで実らなかったけど。
私は一回深呼吸した後、思いきって、切り札のネタをぶっこむ事にした。
「ポンプやハンドミキサー、精米機、挽き肉製造機、ミシン、馬車の座面のスプリング。
比較的最近出て来たこれらの便利な発明品は、このライリー産だと聞いております。
当国にも、商人からそれらを入手しております」
何故、今、その話が!? と、いう風にセレスティアナ様が美しい双眼を見開いた。
「ええ、まあ、それが何か?」
セレスティアナ様は冷静を装っておられる。
「このライリーのどこかに、私と同じ、同郷の方がおられるかと」
セレスティアナ様の肩がビクリと揺れた。
今の小さな反応、私では無いと見逃しちゃうかもね。
「同郷だと……」
ギルバート様がさらに眼差しを鋭くして私を見た。
「地球、この言葉の意味をご存知の方がここにおられるのでは?」
私は祈るような気持ちで言った。
「まさか、あなたは……」
「この体の本来の持ち主、リリアーナ姫の魂は実は死んでいます」
ぶっちゃけた!!
「え!?」
「何だと!?」
「目の前でリリアーナの弟が魔物との戦いで死んだ時に、ショックであの世に飛び去ってしまったのか、何故か地球の日本人の私の魂が入り込んでしまいました!
私がわざと乗っ取った訳じゃありません!
何故かそうなったとしか言いようがないのです!
前世の私は通り魔に刺されて死にました!」
とんでも展開過ぎるけど、事実なので仕方ない。
『どうも、その話は本当らしいね』
「「リナルド!」」
「え!? エゾモモンガのぬいぐるみが喋った!?」
サロンに置かれていたカゴの中から急に出て来たのは、リナルドと呼ばれた白いモモンガの愛らしいぬいぐるみ!
しかもエゾモモンガそっくり!! それが喋った!
「エゾモモンガを知っているなんて、確かに、この方は……」
セレスティアナ様に反応有り!! よし! たたみかけるぞ!
「同郷の方ですよね!? お助け下さい!
この体に残る記憶を見れば、リリアーナ姫の国を思う気持ちも分からないでもないのですが、この身が唯一の王家の生き残りでも、私に女王として立つのは無理です!
私は日本で家族とカフェを営んでいた、ただの一庶民です! 重いです!」
リリアーナ姫のガワを被った私は、セレスティアナ様に向かってガバッと土下座した!
必殺! ジャパニーズ土下座!!
憐れみを、御慈悲をください!!
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