【完結】猫化の呪い持ちを隠して嫁がされたのに何故か溺愛されています!

長船凪

文字の大きさ
上 下
48 / 52

48 急展開

しおりを挟む
 恐る恐る皇女殿下の勧めてこられたお茶を飲みましたが、とりあえず濃くて渋いだけで毒ではないようでした。
 生きてます!!


 そしてちゃんと飲み終えたので交渉決裂で解散です。
 私は本来なら怯えて俯くところを胸をはって堂々と、毅然としてお茶会の場をあとにしました。

 旦那様への思いが、私をだいぶん強くしてくれたようです。

 さあ、護衛騎士と合流して旦那様の元へ参りましょう。

 でも、調査部ってどこでしょうね?
 私はキョロキョロと周囲を見渡しつつ皇城の廊下を歩き、近くにいたメイドに声をかけて旦那様の居場所を見つけました。

 旦那様と合流し、捜査の件を聞きました。

 お茶の出どころは例の伯爵令嬢の家の使用人らしい。
 お嬢様を心酔しててなんでも言うことを聞く系の。

 「あの女を懲らしめるいい薬を手に入れてちょうだい。うまくいったら私の足にキスさせてあげるわ」

 なんてSM女王様みたいなことを言われて釣られたらしいです。
 足にキスごときで!?
 唇ですらないのに!?
 けれどいくらなんでも高位貴族の令嬢が平民に唇にキスなど許すはずがないですね。

 令嬢のほうが惚れてるならともかく。
 本当に……変わった嗜好の方がいるものです。


 「その執事は惚れ薬だとか怪しいものを扱う闇の商人から買ったらしいが、すでにその商人はトンズラして捜索は難航しているとのことだ」

「そうなんですね」
「それにしても皇女とのお茶会は随分早い解散だったな?」
「お茶会というか、交渉の場でしたね」
「交渉とはなんの?」

 私は小声になって、

「それは、タウンハウスに帰ってからお話します」

 と、お話しました。

「せっかくだから皇都の名所見物でもして行くか?」

 優しい旦那様は実家生活時代に遊びに出れなかった私を楽しませる為に、このように提案して下さってくれてるのだと推察されます。


「それは楽しそうですが、旦那様のお仕事の方は大丈夫でしょうか?」

「父が現役の公爵だ。書類仕事は頑張ってくれているし、今は補佐たる私の仕事は主に戦闘だ。魔獣等が現れたら討伐に行く的な」

「そうですか、じゃああの時計塔に登ってみたいです」


 皇都のシンボル的な時計塔が城下街にそびえ立っているのが皇城の窓からも見えます。

「分かった、オペラや芝居にも興味があれば劇場に行ってもいい、あるいは美術館とか」
「はい、楽しみです」


 まるで新婚旅行の続きのようですね。

 * * *

 とりあえず私達はハウスタウンに戻りました。

 そして人目がなくなったところで、私は本日のお茶会での出来事を話ました。

 皇女殿下が旦那様との結婚を望んでいて、更に私を皇太子殿下の側妃にという申し出があったと伝えましたら……

 夏だというのに応接室の空気が一気に冷えました。

「結婚式をまだ挙げてないだけで随分と好き勝手言われるものだな」


 旦那様は激怒の表情だと思います。

「既に籍は入れてあると言ってもそれなので、皇女殿下はよほど旦那様の事が……」
「私は皇女の事は特に何も思ってなかったが、今は嫌いになった。他国の王の次妃にと望まれてるのが不満で私を使って逃げたいだけだろう」


 しょ、正直に話しすぎたでしょうか?
 皇家との仲が不穏になりすぎな気が……。
 反乱とか戦争は流石に回避したいのですが。


「で、でも、お綺麗な方ですよね」
「関係ないな。エリアナの方が綺麗とかわいいの両方揃っているぞ」

 あ、ありがとうございます! お世辞でも嬉しいです!
 で、でもとりあえず意識を反らせましょう!


「明日は塔に登るのですよね、暑くなるといけないので人の少ない早朝にしましょうか」
「そうか、分かった。でも塔を見たら芝居はまた今度にして、ドレスショップにでも行こう」
「何故ですか?」 


 急にドレスショップ?
 お茶会用に新しいドレスを購入したばかりですが。


「式を挙げてないだけでこうも言われるなら、さっさとウェディングドレスを仕立て、式を挙げようじゃないか!」

「そ、それはそうかもしれませんが、結婚式はそんなに怒りながらやるものでも……」
「!! そえいえばそうだな、すまない。あまりのことに……我を忘れたようだ」

「い、いいえ」
「それはそれとしてドレスは買おう、主治医もそろそろいいのではと勧めてきたことだし」
「そ、そうですか、主治医が」


 なんか、恥ずかしいです。
 月のものの話がおそらく伝わったのでそういう流れになったと思われますので。

 でも、ドレスが仕上がるまでしばらくはかかるでしょうし、その間に心の準備をしましょうか。
 そもそも式は飛ばしても籍はもう入ってるのですからそんなに緊張することもないはずなのですが、心臓がうるさくなっています。


「私は招待客はいらないのですが、やはり公爵家としては華やかに豪華にやるものですか?」

 本国の貴族のお友達は今のところ、虫害に悩んでいたウーリュ男爵家の令嬢一人くらいな上に、実家の家族は嫌いですし。
 更に高貴な皇家の方の交渉を蹴ったばかりで他の貴族を招待するのも大変気まずいです。
 誰がどう皇家と強く繋がってるとか、考えるのもうんざりしてきます。


「エリアナが招待客を呼びたくないなら神父の他は家族だけでひっそりやろう。普通の貴族令嬢の結婚式となると豪華にやるものだが」
「公爵家の方だけいてくだされば私は幸せです」



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

小石だと思っていた妻が、実は宝石だった。〜ある伯爵夫の自滅

みこと。
恋愛
アーノルド・ロッキムは裕福な伯爵家の当主だ。我が世の春を楽しみ、憂いなく遊び暮らしていたところ、引退中の親から子爵家の娘を嫁にと勧められる。 美人だと伝え聞く子爵の娘を娶ってみれば、田舎臭い冴えない女。 アーノルドは妻を離れに押し込み、顧みることなく、大切な約束も無視してしまった。 この縁談に秘められた、真の意味にも気づかずに──。 ※全7話で完結。「小説家になろう」様でも掲載しています。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様

岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです 【あらすじ】  カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。  聖女の名前はアメリア・フィンドラル。  国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。 「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」  そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。  婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。  ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。  そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。  これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。  やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。 〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。  一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。  普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。  だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。  カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。  些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

今日は私の結婚式

豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。 彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...