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43 本国へ

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 さしあたって夜までには時間があるので、料理人として雇うコウヤの母親の手料理を食べてみたいと思って、昼食を任せてみることにしました。


「では、サト。私と旦那様の分と自分たちの分のお食事をお願いね」

 コウヤの母親の名前はサトと言う。黒髪に黒い瞳の痩せた女性です。

「はい、奥さま」
「母ちゃん、がんばれ」

 サトは厨房に立ち、腕をふるってくれました。

 湯気が立ち、艷やかに炊きあがった白米、美味しそう!
 メインのおかずにはナスと蒟蒻の入った味噌炊きを作ってくれた。

 それと揚げだし豆腐と茶碗蒸しと茹でた枝豆。

 どれも……美味しい。
 美味しいです!

 彼女、サトの腕には何も問題なかった。
 あとは言葉を少しずつでも覚えてくれたら異国でも順応できるのではと思っています。

 夜になって、今度は旦那様と光る川を見に行きました。

 旦那様が手を差し伸べてエスコートをしてくれます。
 旦那様の手……大きいです。
 あなたの手に触れていると……心が……震えるかのようです。


「エリアナ、暗いから足元、気をつけるんだぞ」
「はい、旦那様……」


 旦那様を見上げると、美しい金色の瞳が輝いていて、どうやら川の煌めきが、瞳に宿っています。
 その川はホタルが舞ってるわけではなく、本当に川が光ってました。


「わぁ……」
「おお、これは綺麗だな、本当に川底が光ってる」
「はい……」

 川底にある石が光を放つらしく、幻想的で素敵です。

「旅行がとんだことになったが、明日はもう本国に帰らねばな」
「そうですね、でも味噌と醤油と米の交易が叶うので、目的は達しました」


 公爵家の嫁として、覚えなければならないことは、まだまだあります。
 遊んでばかりではいられません。

 今度は領地内を一緒に廻れたらと、思います。
 頼めば連れて行ってくださるかしら?
 そう思ってイッテはみましたが、


「私が主に領地内を見回るのは、市井の暮らしぶりをみるものではなく、魔獣が暴れて被害を出してるところだ、討伐に行くから、エリアナがついてくるのは危ないな」

「そ、そうですか……私もがんばって強くなるようにがんばります」
「ん? 強く?」
「剣とか魔法とか……」
「無理をするな」


 そこでその話は打ち切りになりました。
 私を心配して言ってくださってるんでしょう。
 そうでなければ、度々迷惑をかける私に呆れてしまったか……となってしまいます。


 一抹の不安を残しながら、翌朝の出発で帰路につきます。
 帰りはもう地元は分かってますし、魔法の転移スクロールでの集団転移が可能です。

 ほぼ一瞬で本国、ヴィルシュテッター帝国の皇都の神殿に帰り着きました。
 それから皇太子殿下と別れて、我々はクリストロ公爵領へ転移です。


 * * *

 クリストロの城に戻るなり、家令にコウタとサトのお部屋を手配してもらい、公爵夫妻、いえ義父様と義母様に挨拶をしました。


「二人共、旅はどうだったかしら?」
「母上、嵐のような海難には遭いませんでした」
「まあ。良かったこと」

「楽しかったです、交易もかないましたし」
「それはよかったな、二人共、疲れてるだろうから、よく休むといい」

 我々がお二人に報告しているとケビン様が勢いよく階段を駆け下りてきました。


「姉上! 兄上! お帰りなさい! お土産は!?」
「はい、ケビン様、反物とか果物とか竹とかありますよ。バニラビーンズは無くてごめんなさい」
「やっぱりかー。でも2人が無事で良かったよ」


 皆さん、温かく迎えてくださいました。


 そういえばコウヤは私が作った漁具を持ってきていました。宝物だと言って。
 そして公爵領でもお魚を獲ってみたいそうです。
 それは楽しそう。


 そして帰るなり旦那様はと言うと、お風呂に入ってそれからお一人でお酒を飲んで……ベッドの上で倒れるように眠ってしまいました。

 お酒を飲んだのは、私が心配と迷惑をかけたせいでしょうか?

 やはり呪いなどない普通の妻の方がいいのでは?
 そう言えば猫化騒ぎの際に、下着を触られたくない、見られたくないあまりに猫パンチまでしてしまっていた事を、今更思い出しました。

 隠したドレス一式を夜中に暗い中、わざわざ探し出してくださったのに、私はなんという事を……。





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