【完結】猫化の呪い持ちを隠して嫁がされたのに何故か溺愛されています!

長船凪

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39 ヴィルシュテッター帝国から飛んできた人

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 皇后とのお茶会の準備を終え、私は旦那様と宮内の庭が見える長い廊下をお茶会の会場に向かうために歩いていました。

 この廊下は赤く塗られた木製の手すりのようなものがある雅な雰囲気のものです。

 夢の中の本で見た日本の平安時代の建造物と似ています。

 眺めながら優雅に歩いていると、突如として反対側の廊下、皇太子殿下の周辺が騒がしくなっていました。

 なんと皇宮筆頭魔法使いを使ってまで転移魔法で皇太子殿下を座標にして飛んできた我が国、ヴィルシュテッター帝国の令嬢がいたとのこと。


「大国ヴィルシュテッター帝国の皇太子殿下がおつきの侍女の一人も連れずに異国に行くなんていけませんわよ」


 かと言って入国時の許可も取らずにいきなり権力者が他国の権力者の住まいたる宮に飛んできていいのかしら?

 皇太子の侍女ならそれなりの家門の令嬢だと思うのですが。


「伯爵令嬢たる君が手続きをすっ飛ばして直接他国の王の住まいに来るなんてどうかしてるぞ!」

「魔法使いがこの地に来たことがないので皇太子殿下を座標にするしかなかったのです!
 皇太子殿下も共も護衛も連れずに旅立つなんてどうかしてますわ!」


 まあ、それはそうですね。
 護衛なしでウロウロする皇太子は変です。
 ところであの方は伯爵令嬢なのですね。


 すったもんだしてましたけど、なんとかミカドにお許しをいただいたようです。
 現在地で王の居城にいるとは思わなかったとかなんとか言い訳をしたようです。


「ミズ・エリアナが皇后に親切にしてくれていたおかげでなんとかゆるされたよ、ありがとう」

 何故でしょう?
 皇太子殿下は私のおかげで助かったと御礼を言ってくださってますが、伯爵令嬢が私を睨んでいます。
 そして伯爵令嬢が皇太子殿下との会話に割り込んできて、


「これからは私が皇太子殿下に付き添いますから!」

 と、宣言なさいました。

「ぜひ、そうしてくださいませ」
「では、エリアナ、行こうか」

 ちょうど助けが欲しいところで旦那様がエスコートの為に手を差し出してくださいました。


 今回、渡しとの面会が会食ではなくお茶会なのは后が下手に匂いのある食べ物並べると吐いてしまう恐れがあるからです。

 冷たく冷えたお水に柑橘類を絞ったものを后は飲むようです。

 デザートにはアイス。
 フライドポテト。
 そしてスイカや柑橘系の果物が並べられています。


「アイスクリームは美味しいですが、お体を冷やすもので更に甘いものですから、食べすぎないようになさってください。フライドポテトも同様に太りやすい食べ物ですから、あくまで急場しのぎということで」

「残念だけれど、仕方ないですわね」

 そう、お茶会の場には早速取り入れたアイスとフライドポテトがありますのでよほど気に入られたようです。


「おお、この白いものは冷たくて美味しいな! これがミズ・エリアナが広めた甘味か、こちらのほくほくしたじゃがいも料理もとても美味しい!」


 皇太子殿下にまでアイスのことがバレてしまいました。
 アイスの方はケビン様がどうせ売っているとはいえ、今回はミカドはおらず、皇后だけのお茶会ゆえ女子会で良かったのについてきてしまいました。


「伝え聞いたエルフの知識ですから……」


 旦那様が私のために嘘をついてくれています。
 本当は異世界の人間が考案したものですけど。

 とりあえずお茶会の手土産にと用意した茶葉を皇后に渡すことにします。

「こちらはレモングラスとジンジャーをブレンドしたルイボスティーです。ノンカフェインで妊婦さんでも飲めるもので香りは甘く爽やかでリラックス効果も期待できます」

「まあ、ありがとうエリアナ夫人。
 うーん、とりあえず今、こちらの国で用意できるのは生姜ですわね」

 后の言葉を聞くにレモングラスが自生していないようです。


「おそらくですが、この国にありそうなノンカフェイン茶は、麦茶、黒豆茶、小豆茶、あたりかと思われますが、どうでしょうか?」

 私は本で見た日本に似てるならこのへんは有るだろうと思いつつ、例をあげてみました。


「麦茶ならありますわね、黒豆や小豆もお茶にするといいのね?」
「左様でごさいます」

「エリアナは本当に博学だな」


 皇太子殿下にまた褒められてしまいました。
 更にミズまで取られて何故かついに呼び捨てになりました。
 馴れ馴れしく人妻をファーストネームで呼ばないでいただきたい。


「よそからの知識ですわ……」
「でもちゃんと聞いた事をいちいち覚えているだろう?」
「旦那様のおかげですから」


 書き記した本のおかげと言うと本を貸せと言われそうなので言葉を曖昧に。

 何故か未だに伯爵令嬢の視線が刺すように痛いので、それから逃れるように后の方に視線を移すと先程の黒豆茶などの話を女官に書き写すように指示をされています。


 そうして私はなんとかお茶会を切り抜けました。
 このあと皇太子殿下や旦那様、男性達は外交の話をするみたいです。

 旦那様! 米と醤油と味噌の輸入の件頼みましたよ。
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