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30 困った皇太子殿下
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「ところでエリアナはわざわざワイバーン便で何を頼んだんだ?」
「ひ、秘密です」
「秘密?」
う、旦那様が何やら不審げな目を向けています!
サプライズプレゼントだとまだバレたくはないのですが!
「その……下着です」
恥を忍んで……ヤケクソです!
旦那様は途中から来たのでヴェローナ時計店からの発送と言うところはきっと聞いてません。
……わざわざ私に問うくらいですし。
「え!? 下着を持ってくるのを忘れたのか? そ、それは大変だったな」
「わ、忘れたのではなく、旅が予想以上に長いから足りなくなって! 伝書鳥を飛ばして注文したのですわ!」
「ああ、そうなのか、足りなくなったなら仕方ないな」
「くっ、 あははははっ!」
皇太子殿下は時計店から預かったのを知ってるはずなので私の苦し紛れの言い訳に笑っています。
ちょっと黙ってて欲しいです!
「皇太子殿下、失礼でしょう。笑いすぎです」
「あー、すまなないな、君達は本当に面白いから」
「殿下、面白くなどありません」
「あの、私は用事がありますので御前を失礼します」
私はその場を離脱するために適当に挨拶をしてその場を去ります。
とりあえず下着と言っておけば男性は中を改めないはずだし、私は箱を抱えて船室に戻りました。
下着や寝間着類を入れたバッグの中にプレゼントの箱を隠せば……多分大丈夫。
──いえ、待って。
いくら隠したいからと言って、下着の中にプレゼントの箱を入れられるのは……不愉快では?
うーん、暑くてあまり出番のなさそうな上着の入ったカバンにしましょう。
* * *
食事の時間になり、私が甲板のテーブル席のある場所に出てくると、突然の皇太子出現に船の中は騒然としてしまいました。
なんとか権力者に取り入ろうと様々な人が話しかけようとしているようです。
「エリアナ! こちらだ!」
「はい!」
旦那様が手を振っているテーブル席に向かいます。
すると皇太子殿下まで私達のテーブルまで来てしまいました。
「いやー、沢山話しかけられて大変だよ」
「それはそうでしょうね、ところで新婚夫婦の席に堂々と殿下が混ざるのは何故ですか?」
「まあ、そうツンケンするなよ、小公爵」
「新婚旅行……」
重要性事項を忘れるなと言わんばかりにボソリと新婚旅行と呟いて睨みをきかせる旦那様ですが、皇太子殿下は全く悪びれる様子もなく、
「先ほどの挨拶地獄から救ってくれよ。権力者で固まった食事の席なら遠慮してくれるだろう」
などど、言って笑っています。
このテーブルを去るつもりはないと言う意思表示です。
「はぁ~~……」
旦那様は盛大なため息をついて諦めの表情になりました。
「ここは流石に新鮮な魚料理が出るな」
パンと焼き魚や魚介のスープなどが出ています。
「碇泊中に漁もしてますしね」
仕方ないから旦那様も皇太子殿下の食事中の話し相手になっています。
「今度海にマグロが見えたらモリを撃つとかも聞きましたよ」
私も旦那様が食事をしっかりと食べられるように少しは会話に混ざります。
「ほう、では今度マグロが見えたら私と小公爵でどちらが仕留めるか勝負しようか?」
「何故そこで勝負になるのですか?」
「買ったほうがミズ・エリアナからキスがもらえるとかな」
「殿下、私の妻からキスを貰おうとするのはおやめください」
ギロリと殺気を感じる眼差しを皇太子殿下に送る旦那様。
「おや、小公爵は自信がないのかな?」
「妻のキスを賭けの対象にしてほしくないだけですとも。闘えば私が勝ちますし」
「ハハハハ、勝てると思ってるならいいじゃないか。退屈な船旅にはたまに新鮮なイベントがあった方が盛り上がるだろう?」
「私は退屈なんて一言も言ってませんが」
「まあまあ」
旦那様の言葉を全部のらりくらりと躱す皇太子殿下には困ったものです。
私のキスに勝者のご褒美のような……そんな価値はないというのに。
「ひ、秘密です」
「秘密?」
う、旦那様が何やら不審げな目を向けています!
サプライズプレゼントだとまだバレたくはないのですが!
「その……下着です」
恥を忍んで……ヤケクソです!
旦那様は途中から来たのでヴェローナ時計店からの発送と言うところはきっと聞いてません。
……わざわざ私に問うくらいですし。
「え!? 下着を持ってくるのを忘れたのか? そ、それは大変だったな」
「わ、忘れたのではなく、旅が予想以上に長いから足りなくなって! 伝書鳥を飛ばして注文したのですわ!」
「ああ、そうなのか、足りなくなったなら仕方ないな」
「くっ、 あははははっ!」
皇太子殿下は時計店から預かったのを知ってるはずなので私の苦し紛れの言い訳に笑っています。
ちょっと黙ってて欲しいです!
「皇太子殿下、失礼でしょう。笑いすぎです」
「あー、すまなないな、君達は本当に面白いから」
「殿下、面白くなどありません」
「あの、私は用事がありますので御前を失礼します」
私はその場を離脱するために適当に挨拶をしてその場を去ります。
とりあえず下着と言っておけば男性は中を改めないはずだし、私は箱を抱えて船室に戻りました。
下着や寝間着類を入れたバッグの中にプレゼントの箱を隠せば……多分大丈夫。
──いえ、待って。
いくら隠したいからと言って、下着の中にプレゼントの箱を入れられるのは……不愉快では?
うーん、暑くてあまり出番のなさそうな上着の入ったカバンにしましょう。
* * *
食事の時間になり、私が甲板のテーブル席のある場所に出てくると、突然の皇太子出現に船の中は騒然としてしまいました。
なんとか権力者に取り入ろうと様々な人が話しかけようとしているようです。
「エリアナ! こちらだ!」
「はい!」
旦那様が手を振っているテーブル席に向かいます。
すると皇太子殿下まで私達のテーブルまで来てしまいました。
「いやー、沢山話しかけられて大変だよ」
「それはそうでしょうね、ところで新婚夫婦の席に堂々と殿下が混ざるのは何故ですか?」
「まあ、そうツンケンするなよ、小公爵」
「新婚旅行……」
重要性事項を忘れるなと言わんばかりにボソリと新婚旅行と呟いて睨みをきかせる旦那様ですが、皇太子殿下は全く悪びれる様子もなく、
「先ほどの挨拶地獄から救ってくれよ。権力者で固まった食事の席なら遠慮してくれるだろう」
などど、言って笑っています。
このテーブルを去るつもりはないと言う意思表示です。
「はぁ~~……」
旦那様は盛大なため息をついて諦めの表情になりました。
「ここは流石に新鮮な魚料理が出るな」
パンと焼き魚や魚介のスープなどが出ています。
「碇泊中に漁もしてますしね」
仕方ないから旦那様も皇太子殿下の食事中の話し相手になっています。
「今度海にマグロが見えたらモリを撃つとかも聞きましたよ」
私も旦那様が食事をしっかりと食べられるように少しは会話に混ざります。
「ほう、では今度マグロが見えたら私と小公爵でどちらが仕留めるか勝負しようか?」
「何故そこで勝負になるのですか?」
「買ったほうがミズ・エリアナからキスがもらえるとかな」
「殿下、私の妻からキスを貰おうとするのはおやめください」
ギロリと殺気を感じる眼差しを皇太子殿下に送る旦那様。
「おや、小公爵は自信がないのかな?」
「妻のキスを賭けの対象にしてほしくないだけですとも。闘えば私が勝ちますし」
「ハハハハ、勝てると思ってるならいいじゃないか。退屈な船旅にはたまに新鮮なイベントがあった方が盛り上がるだろう?」
「私は退屈なんて一言も言ってませんが」
「まあまあ」
旦那様の言葉を全部のらりくらりと躱す皇太子殿下には困ったものです。
私のキスに勝者のご褒美のような……そんな価値はないというのに。
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