上 下
25 / 52

25 隠し事

しおりを挟む
 私はティータイムの後に現公爵夫人たるお義母様のお部屋をお訪ねしました。


「あの、お義母様。私も遊んでばかりも申し訳ないので公爵家の仕事のことで私が覚える必要のありそうなことなど、船の中でも勉強しますので何かいい本とかがあればと」

「でも、エリアナ。船の上で下を向いて本を読んで勉強などしたら、船酔いをしていまうわよ」

 なんと、そんなとこまで気を使ってくださってます! 
 お優しいです!

「ええと、一応酔い止めのお薬は持参しますが」
「でも、せっかくの旅行だし、仕事の本を読むより楽しんでほしいわ。
 新婚旅行の代わりでもあるのでしょう?」

「あっ」

 そういえば、旦那様がそんなことをおっしゃっていたような!
 新婚旅行!!
 それは心が震えるようなフレーズです。


「それでね、こちらに素敵な贈り物があるのよ。良ければ使ってちょうだい。さあ、開けてみて!」

 お義母様はそれでねと、軽い口調で何やらピンクのオーラを感じる箱を指し示しました。

 メイドがすかさずテーブルの上にあったリボン付きの箱を私の元に運んできます。
 お義母様の表情はウキウキといった風情です。

 開けてみてと言われたので、若干不安になりながらも早速開けてみます。
 すると、なんということでしょう!


「こ、この布地、だいぶ涼しげ……というか、透けていますが!」


 予想的中! スケスケのセクシーナイトウエアです!
 美しいレースの装飾もありますが!
 お腹のあたりとか、めちゃくちゃ透けています!


「現地についてから、もし予想以上に盛り上がったら必要になるかもしれないでしょう? なにしろ新婚旅行だから念の為ね!」


 そうして私はお義母様からスケスケセクシーネグリジェを朗らかに押し付けられて部屋を出ることになりました。


 旦那様に見つからないように衣装室に隠し……いえ、そこはメイドが整理したりしますから、ベッドの下にでも……箱ごと入れたら埃問題は大丈夫でしょう。

 私は箱を抱え、早足で自室に戻りました。
 そして人が来る前にセクシーネグリジェの入った箱をベッドの下に押し込もうと思ます。

 いざ、床に膝をついて、よいしょっと!
 箱を押し込むその瞬間!


「エリアナ、何をしているんだ?」
「きゃああっ」
「え、そんなに驚くか?」


 急に背後から旦那様が来られたので思わず悲鳴を上げてしまいました!
 まさに今、以前夢の図書館の本で読んだベッドの下にえちちな本を隠す男の子のような気持ちです!
 旦那様の方に体を向け、なんとか背中で背後の物は隠し通します!

「きゅ、急に背後に来られたので! 驚いただけです!」


 よく考えたらここは夫婦の寝室でもあるのだから旦那様だけはノック無しでも入れるのでした!


「聞き忘れてたが、そのヒイズル国のある地方は暖かいのか? 寒いのか?」
「同じ夏だと思ます! こちらより湿気が多いので蒸し暑いかと思われます!」

「なるほど」
「でも、何か涼しくする工夫をされてる可能性はありますから、長袖や羽織りものはあったほうが無難です」

「なるほど、わかった。着替えは薄手の物を多めに、ミカドへの謁見用の礼服と長袖も少しはいるな」
「は、はい!」


 旦那様の質問に答えつつも、ワタシの目は落ち着きなく泳いでしまいます。

「どうした? 顔色が悪いな?」
「え? そんな事はありませんけど」
「やや青白いような」

 そう言って旦那様が距離を詰めてきました!
 顔が近い! 良すぎる顔が近いです!

「あれ? 今度は赤くなったな?」

 これは以前読んだ本に出たので知ってます!
 リトマス試験紙みたいだって知ってる人ならいうところ!

「急に男前なお顔が近くなったので! 仕方ないのです!」
「なに!? そ、そうか、それなら仕方ないな!」

 セーフです!
 褒められてまんざらでもないって顔をされています!

「では、旦那様も準備を進めてくださいませ!」

 早くベッドから離れてください!!

「その前にエリアナ、手を……床に座り込んだままではないか」

 そっと手を差し伸べてくださいました。
 確かに今は床に座り込んでいて、貴族の夫人らしくない姿ですね。

「ありがとうございます……」


 恥ずかしくなって目を伏せて手を重ねると、旦那様の大きな手が私の手を包みこみ、起き上がらせてくださいました。

 箱のある方向から旦那様の視線をそらすために私はベッドではなく、テーブルセットの椅子まで移動してそちらに座りました。

 これから私は決してベッドの方を気にしてはなりません!
 そこに何かあるのか? と思わせないように!

 そしてなんとか旦那様は部屋を出て、旅の準備に向かってくださったようです。
 セーフです! 
 ひとまずアレは隠し通しました!









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。 時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。 「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」 「ほう?」 これは、ルリアと義理の家族の物語。 ※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。 ※同じ話を別視点でしている場合があります。

転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています

平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。 生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。 絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。 しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

処理中です...