上 下
25 / 27

25 隠し事

しおりを挟む
 私はティータイムの後に現公爵夫人たるお義母様のお部屋をお訪ねしました。


「あの、お義母様。私も遊んでばかりも申し訳ないので公爵家の仕事のことで私が覚える必要のありそうなことなど、船の中でも勉強しますので何かいい本とかがあればと」

「でも、エリアナ。船の上で下を向いて本を読んで勉強などしたら、船酔いをしていまうわよ」

 なんと、そんなとこまで気を使ってくださってます! 
 お優しいです!

「ええと、一応酔い止めのお薬は持参しますが」
「でも、せっかくの旅行だし、仕事の本を読むより楽しんでほしいわ。
 新婚旅行の代わりでもあるのでしょう?」

「あっ」

 そういえば、旦那様がそんなことをおっしゃっていたような!
 新婚旅行!!
 それは心が震えるようなフレーズです。


「それでね、こちらに素敵な贈り物があるのよ。良ければ使ってちょうだい。さあ、開けてみて!」

 お義母様はそれでねと、軽い口調で何やらピンクのオーラを感じる箱を指し示しました。

 メイドがすかさずテーブルの上にあったリボン付きの箱を私の元に運んできます。
 お義母様の表情はウキウキといった風情です。

 開けてみてと言われたので、若干不安になりながらも早速開けてみます。
 すると、なんということでしょう!


「こ、この布地、だいぶ涼しげ……というか、透けていますが!」


 予想的中! スケスケのセクシーナイトウエアです!
 美しいレースの装飾もありますが!
 お腹のあたりとか、めちゃくちゃ透けています!


「現地についてから、もし予想以上に盛り上がったら必要になるかもしれないでしょう? なにしろ新婚旅行だから念の為ね!」


 そうして私はお義母様からスケスケセクシーネグリジェを朗らかに押し付けられて部屋を出ることになりました。


 旦那様に見つからないように衣装室に隠し……いえ、そこはメイドが整理したりしますから、ベッドの下にでも……箱ごと入れたら埃問題は大丈夫でしょう。

 私は箱を抱え、早足で自室に戻りました。
 そして人が来る前にセクシーネグリジェの入った箱をベッドの下に押し込もうと思ます。

 いざ、床に膝をついて、よいしょっと!
 箱を押し込むその瞬間!


「エリアナ、何をしているんだ?」
「きゃああっ」
「え、そんなに驚くか?」


 急に背後から旦那様が来られたので思わず悲鳴を上げてしまいました!
 まさに今、以前夢の図書館の本で読んだベッドの下にえちちな本を隠す男の子のような気持ちです!
 旦那様の方に体を向け、なんとか背中で背後の物は隠し通します!

「きゅ、急に背後に来られたので! 驚いただけです!」


 よく考えたらここは夫婦の寝室でもあるのだから旦那様だけはノック無しでも入れるのでした!


「聞き忘れてたが、そのヒイズル国のある地方は暖かいのか? 寒いのか?」
「同じ夏だと思ます! こちらより湿気が多いので蒸し暑いかと思われます!」

「なるほど」
「でも、何か涼しくする工夫をされてる可能性はありますから、長袖や羽織りものはあったほうが無難です」

「なるほど、わかった。着替えは薄手の物を多めに、ミカドへの謁見用の礼服と長袖も少しはいるな」
「は、はい!」


 旦那様の質問に答えつつも、ワタシの目は落ち着きなく泳いでしまいます。

「どうした? 顔色が悪いな?」
「え? そんな事はありませんけど」
「やや青白いような」

 そう言って旦那様が距離を詰めてきました!
 顔が近い! 良すぎる顔が近いです!

「あれ? 今度は赤くなったな?」

 これは以前読んだ本に出たので知ってます!
 リトマス試験紙みたいだって知ってる人ならいうところ!

「急に男前なお顔が近くなったので! 仕方ないのです!」
「なに!? そ、そうか、それなら仕方ないな!」

 セーフです!
 褒められてまんざらでもないって顔をされています!

「では、旦那様も準備を進めてくださいませ!」

 早くベッドから離れてください!!

「その前にエリアナ、手を……床に座り込んだままではないか」

 そっと手を差し伸べてくださいました。
 確かに今は床に座り込んでいて、貴族の夫人らしくない姿ですね。

「ありがとうございます……」


 恥ずかしくなって目を伏せて手を重ねると、旦那様の大きな手が私の手を包みこみ、起き上がらせてくださいました。

 箱のある方向から旦那様の視線をそらすために私はベッドではなく、テーブルセットの椅子まで移動してそちらに座りました。

 これから私は決してベッドの方を気にしてはなりません!
 そこに何かあるのか? と思わせないように!

 そしてなんとか旦那様は部屋を出て、旅の準備に向かってくださったようです。
 セーフです! 
 ひとまずアレは隠し通しました!









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したらダンジョンコアだった件

葉月+(まいかぜ)
BL
神約・異世界ダンジョン生活   ※かみにやくそくされたいせかいだんじょんせいかつ。 ※主人公は男寄りの無性生物ですがメインの相手(受け)が男なので一応BLとしてあります。 ※主人公は無性なのでTS、リバ風のシチュエーションがあったとしても厳密には違います。イメクラです。 ※主人公は人間ではないので倫理観がちょっとどうかしていますがわりと善良な化け物です。理由もなく街を滅ぼすのはちょっとな~と思いつつ、犯罪者をモルモット扱いすることには抵抗がない程度の天・混沌・善。 ※シリルさまのお楽しみ履歴:昏睡レイプ/睡姦/NTR/視姦/スライムオナホ/種付け(サセ)/

翠帳紅閨 ――闇から来る者――

文月 沙織
BL
有名な役者一家に生まれそだった竹弥は、美しいが、その春、胸に憂いを秘めていた。事情があって大学を休学し、古い屋敷で一人暮らしをはじめた。 そこには蔵があり、蔵の整理にやとわれた杉屋という男に、竹弥は手酷い凌辱を受ける。 危険な魅力を持つ杉屋から逃れられず、竹弥は夜毎、調教され、翻弄される。 誇りたかい梨園の貴公子が、使用人の手によって嬲られ、秘めていた欲望に火をつけられる、というお話です。 激しい性描写があります。ご注意ください。 現在では好ましくな表現も出てきます。苦手な方はご遠慮ください。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

淫獄桃太郎

煮卵
BL
鬼を退治しにきた桃太郎が鬼に捕らえられて性奴隷にされてしまう話。 何も考えないエロい話です。

「優秀で美青年な友人の精液を飲むと頭が良くなってイケメンになれるらしい」ので、友人にお願いしてみた。

和泉奏
BL
頭も良くて美青年な完璧男な友人から液を搾取する話。

【完結】呪われ王子は生意気な騎士に仮面を外される

りゆき
BL
口の悪い生意気騎士×呪われ王子のラブロマンス! 国の騎士団副団長まで上り詰めた平民出身のディークは、なぜか辺境の地、ミルフェン城へと向かっていた。 ミルフェン城といえば、この国の第一王子が暮らす城として知られている。 なぜ第一王子ともあろうものがそのような辺境の地に住んでいるのか、その理由は誰も知らないが、世間一般的には第一王子は「変わり者」「人嫌い」「冷酷」といった噂があるため、そのような辺境の地に住んでいるのだろうと言われていた。 そんな噂のある第一王子の近衛騎士に任命されてしまったディークは不本意ながらも近衛騎士として奮闘していく。 数少ない使用人たちとひっそり生きている第一王子。 心を開かない彼にはなにやら理由があるようで……。 国の闇のせいで孤独に生きて来た王子が、口の悪い生意気な騎士に戸惑いながらも、次第に心を開いていったとき、初めて愛を知るのだが……。 切なくも真実の愛を掴み取る王道ラブロマンス! ※R18回に印を入れていないのでご注意ください。 ※こちらの作品はムーンライトノベルズにも掲載しております。 ※完結保証 ※全38×2話、ムーンさんに合わせて一話が長いので、こちらでは2分割しております。 ※毎日7話更新予定。

ブラックマンバ~毒蛇の名で呼ばれる男妾

BL
ブラックマンバ。 上半身に刻まれた毒蛇のTATTOOからそう渾名された青年。 抱くものを執着させ、魔性と言われるその青年の生い立ち、、、 義父、警察官、、、 彼の上にのった男達、、、 拙作『The King of Physical BABYLON』登場人物のスピンオフとして書き始めましたが、こっちの方がメインになりつつあります。

[R-18] 奴隷のレッスン:騎士団所属の末っ子王子は、イケメン奴隷に身も心も奪われる

山葉らわん
BL
【縦読み推奨】 ■ 第一章(第1話〜第9話)  アラディーム国の第七王子であるノモクは、騎士団長ローエの招きを受けて保養地オシヤクを訪れた。ノモクは滞在先であるローエの館で、男奴隷エシフと出会う。  滞在初日の夜、エシフが「夜のデザート」と称し、女奴隷とともにノモクの部屋を訪れる。しかし純潔を重んじるノモクは、「初体験の手ほどき」を断り、エシフたちを部屋から追い返してしまう。 ■ 第二章(第1話〜第10話)  ノモクが「夜のデザート」を断ったことで、エシフは司祭ゼーゲンの立合いのもと、ローエから拷問を受けることになってしまう。  拷問のあと、ノモクは司祭ゼーゲンにエシフを自分の部屋に運ぶように依頼した。それは、持参した薬草でエシフを治療してあげるためだった。しかしノモクは、その意図を悟られないように、エシフの前で「拷問の仕方を覚えたい」と嘘をついてしまう。 ■ 第三章(第1話〜第11話)  ノモクは乳母の教えに従い、薬草をエシフの傷口に塗り、口吻をしていたが、途中でエシフが目を覚ましてしまう。奴隷ごっこがしたいのなら、とエシフはノモクに口交を強要する。 ■ 第四章(第1話〜第9話)  ノモクは、修道僧エークから地下の拷問部屋へと誘われる。そこではギーフとナコシュのふたりが、女奴隷たちを相手に淫らな戯れに興じていた。エークは、驚くノモクに拷問の手引き書を渡し、エシフをうまく拷問に掛ければ勇敢な騎士として認めてもらえるだろうと助言する。 ◾️第五章(第1話〜第10話)  「わたしは奴隷です。あなたを悦ばせるためなら……」  こう云ってエシフは、ノモクと交わる。 ◾️第六章(第1話〜第10話)  ノモクはエシフから新しい名「イェロード」を与えられ、またエシフの本当の名が「シュード」であることを知らされる。  さらにイェロード(=ノモク)は、滞在先であるローエの館の秘密を目の当たりにすることになる。 ◾️第七章(第1話〜第12話)  現在、まとめ中。 ◾️第八章(第1話〜)  現在、執筆中。 【地雷について】  「第一章第4話」と「第四章第3話」に男女の絡みシーンが出てきます(後者には「小スカ」もあり)。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。  「第二章第10話」に拷問シーンが出てきます。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。

処理中です...