【完結】猫化の呪い持ちを隠して嫁がされたのに何故か溺愛されています!

長船凪

文字の大きさ
上 下
24 / 52

24 お土産

しおりを挟む
 なんとか……無事に朝を迎え、私は人間の姿に戻る事が出来ました!
 神様に感謝を!

 あのまま猫の姿のままだと使用人の誰かにトイレの後始末を頼むことになります!
 それはとても辛いことです。
 砂場をトイレにする(未来の)公爵夫人なんていやしませんから!
 前代未聞です!

 そんなことをさせるくらいならいっそ野山に紛れて野生動物のようにこそこそしたいくらいです。
 己で砂をかけて……。

 いえ、トイレのことはもう考えないことにしましょう。
 私の尊厳はギリギリで守られましたので!

 しかし、目が覚めると旦那様の体の上で裸だったので、起こさないようにソロリソロリと離れて素早く下着と服を回収する必要がありました。

 でも旦那様は私が上に乗っていて、重く無かったのでしょうか?

 幸せそうな寝顔ですけれど。


 あ、でもずっと私が猫のままなら、公爵夫人ではなく、ペット枠になりそうですね……。

 とりあえず、せっかく手にした情報を無駄にはできません。
 ヒイズル国には行きます!!

 気晴らしも兼ねて!
 顔を洗って朝の身支度をしていたら、旦那様が起きてしまったようです。

「はっ!? エリアナ!? いない!?」

 ベッドをぱんぱん叩いて布団をめくったりして私を探しているようです。


「こちらでーす!」

 私が衝立の向こうにある洗面台の方からひと声かけたら、

「なんだ! いたな! その声が聞こえるということは人間に戻れたんだな! 良かったな!」
「はい! おかげさまで!」

 旦那様が顔を見る為か、駆け寄って来ました。
 まだ、身支度の途中なのであまり見られたくないのですが……。
 夫婦としては普通なのかもしれませんし、人の姿の私を見て、ほっとされているようです。


 ところで朝からお顔を見た旦那様にはおヒゲが微妙に生えています。
 そういえば成人男性なのでヒゲくらい生えますね。

 私は旦那様に洗面台を明け渡して、衣装室に行ってブラウスとスカートという1人で着れる簡単な服を着ようと思います。
 鞄に旅の荷物などを詰め込む作業もありますし。

 着替えた後に昨夜ケビン様がくださったお土産を確認しました。


「乾燥したローズヒップ!」
「エリアナ、私も実は遠征のお土産があるぞ」

 旦那様が髭剃りを終え、声をかけて来ました。

「まあ、そうなんですか!」
「あそこだ、布をかけた箱が壁の側にあるだろう?」

 私は飛びつくようにして、布の下にあった木箱を開けました。


「まあ! これは! 耐熱性のガラスの茶器! ありがとうございます!! とても素敵です!」
「喜んでもらえてよかったよ」


 ポットとティーカップがガラスのようです!
 色の綺麗なお茶を淹れると映えるでしょうね!



 ということで、朝餐の後に私は自らお茶を淹れました。
 せっかくいただいたので、お土産を使いたかったのです!

 淹れたのは公爵家の庭園にある桃とマンゴーのローズヒップティーです。

 ローズヒップの爽やかな酸味とそして豊潤なマンゴーと桃の風味が特徴です。
 さらにガラスの容器越しにも見える鮮烈で鮮やかな赤がとても美しいです。

「この美しい茶器は旦那様がお土産にくださいました、茶に使ったローズヒップはケビン様のお土産です」


 私がお茶を斈びたいと言っていたのをお二人共が覚えていてくださったことも、とても嬉しいです。


「あら、なんて美しい赤! そして……美味しいわね、初夏の朝にピッタリだわ」

「酸味がさっぱりさせてくれるな、朝から揚げ物を食べすぎたからちょうどいい」


 そう言えば、お義父様は朝から唐揚げを食べておられましたね。
 私のお弁当の料理が気に入ってまたシェフに作らせたようでした。

 旦那様やケビン様も朝から唐揚げを奪い合うように食べておられました。
 父上だけ先にエリアナの料理を食べたなんてずるいと言いながら……。
 でも私はレシピを出しただけで揚げたのは料理人ですよ……。


「へー、こんな味だったのか、ローズヒップって」

「ローズヒップはビタミンが豊富なのでこれからの船旅にピッタリです。
 船上では新鮮な野菜やくだものが手に入りにくいので。ロビン様も素敵なお土産を、ありがとうございました」

「へー。氷結洞窟の比較的近くの村で売っててさ、肌にいいから女性に人気とか村人におすすめされたから買ったけど、そんな風も役に立つならよかったよ」

「ええ、たしかにお肌にもいいはずです、何しろビタミンですし、あ、マンゴーと桃は厨房にあったものを使いました」

「マンゴーは皇家からいただいたものよ」

 お義母様がサラリと言われた言葉に納得しました。

「そうだったのですね! なぜ南国の果物がここの厨房にあるのかと思ったら」

 皇室は各地から色んな貢物が届きますからね。
 おすそ分けをいただいたのかもしれません。

「皇室のためにも公爵家は魔物退治をせっせとしているからな、もちろん現地で被害に遭ってる武力のない平民を救うのが一番大事だからだが」

 お義父様の言葉に皆が頷きます。
 力ある者が力なき者を守る。
 そのために旦那様が度々出征されるんですよね。











しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

処理中です...