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23 猫化

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 宝石をいくつか購入し、押し花アートは接着剤が乾くのを待ちます。

 そして問題の夜になります。
 夕方には早々に食事とお風呂を終えて、何故か旦那様まで私の寝室に来ました。

「どうして旦那様までここに?」
「ふ、不測の事態がおきたら、夫の俺がエリアナを守らないといけないしな!」

 よく考えたらそもそもこの部屋は私の部屋でもありますが、同時に夫婦の寝室でもあるので追い出すわけにもいけませんね……。

 でも旦那様のお顔に猫耳か尻尾に触りたいと書いてあります。
 目が輝いているんです。

 全く仕方ないですね。
 まだ妻としての役割も全うできていませんので……耳や尻尾くらいは……。

 私は天蓋付きベッドの上で、寝る体勢をとりました。
 旦那様は当然のように私の隣で寝るつもりのようです。


「わかりました、おやすみなさい」
「ああ」

 ベッドサイドの小さな魔道具のライトのみで、他の照明は着けていませんが、窓からは満月の光が差し込みます。

「うっ!!」
「エリアナ?」

 私は急に全身が軋むように痛くなって……思わず呻いてしまい、それから……体が猫の姿に!!

「ニァアアアッ!」
「なにっ!?」

 こ、今回は何故か猫耳と尻尾だけではなく、全身が猫になりました!
 人間サイズのネグリジェの中から抜け出した小さな体はまさしく猫!
 何故!? 呪いが悪化したの!?
 一体どうして!?

 あまりの事態に騒ぎ立てる私ですが、口から出てる言葉はニャーニャーという猫の鳴き声で、ぶっちゃけ旦那様には伝わりません!!


「だ、大丈夫だ、エリアナ! 落ち着け!」

 旦那様が猫の私を抱きしめ、宥めるように背中をよしよしと撫でてくれますが、でも不安です!

「ウニャア! ニァアアァン!」
「心配するな、もし、元に戻れずとも見捨てたりしない! 一生大事にするから!」

 元に戻れないのはイヤー!!

「ニャーッ! フニャーッ!」

 伝わらない言葉を叫ぶ私!

「三食昼寝付き生活を保証する! いや、すまない、多分また朝になれば元に戻れるとも!」

「ニァア……」

 本当にこのままだったらどうしよう、ちゃんと朝には人間に戻れるでしょうか……。
 恐怖で体が震えていたら、コンコンとふいに響いたノック音。

「姉上! 夜分に失礼します! 俺としたことがお土産を渡し忘れてしまい!」

 ケビン様がズカズカと部屋に入ってきました!

「ケビン!」
「あ、兄上! そ、その腕の中の白銀の猫は……まさか!?」

 ああっ! ケビン様にも見られました!

「エリアナだ……」
「完っ全な猫じゃないですかっ!」

 と、言いつつお土産の袋をさっとテーブルに置いて、すごい早さでこちらに近寄ってくるケビン様。

「というかお前、お土産を渡し忘れた程度でこんな夜に夫婦の寝室に来るなど、どうかしてるぞ!」
「それについては謝りますが、俺にも抱っこさせてください! 撫で撫でしたい!」
「何を言う! 私の妻を撫で撫でしたいなどと!」

「今は完全な猫ではありませんか!」


「でも私の妻だぞ!」
「せ、せめてにゃんこの手だけでも触らせてください!! 握手!! 握手だけでも!」

 このようにしばらく兄弟で揉めていましたが、

「あー、まったく、しつこいな、手だけだぞ!」

 旦那様はしぶしぶ手だけなら触れる事を許されたようです。

 私も、騒いでもどうにもならない事を悟り、旦那様に抱っこされたまま、小動物との触れ合いに飢えている気の毒なケビン様に猫の手を差し出しました。


「ああっ、柔らかい! 肉球…肉球だ、……プニプニ最高……」

 と、幸せそうな顔で言うなり、ケビン様は我々のベッドに突っ伏し、気絶しました!

「ケビン!? おい、お前夫婦の寝室で寝るな! コラ!」

 けれど旦那様は私を抱く腕を離そうとはせず、あろうことがベッドに突っ伏したケビン様の頭を足で蹴落とそうとなさってます!


「ニャーッ! ニャーッ!」


 裸足であってもそれはあんまりですよ! と、猫語で抗議したら何故かそれは正しく伝わったのか、

「チ、仕方ないな」

 と、言ってから呼び鈴を鳴らして使用人を呼びました。
 するとすぐに執事が1人やって来て、


「ゴードへルフ様、いかがなさいましたか?」

 と、神妙な顔でお伺いを立ててきました。

「ケビンをここから担ぎ出し、本人の寝室に運べ」
「あっ! ケビン坊ちゃま!」

「何故こんなところで……しかもゴードヘルフ様の抱いておられるその猫は一体!?」

「何も見なかったふりをするんだ。いや、朝になってもまだ彼女が猫のままなら神官か巫女を呼ぶのだ……」
「!! か、かしこまりました!」

 それですべてを悟った風な賢い執事は頭を下げました。

「頼んだぞ」


 執事はケビン様を担いで部屋を出て行き、その後にメイドも1人顔を出しました。


「ゴードヘルフ様、何かご用命はおありですか?」
「ドアを閉めて戻ってくれ、それだけでいい」
「は、はい! かしこまりました!」

 執事はケビン様を担いでいて、ドアを閉められなかったので代わりにメイドがドアを閉め、去って行きました。

 旦那様は仰向けになって私を自分の胸の上に乗せ、私の背を優しく撫でています。


「大丈夫、大丈夫だからな……エリアナ」

 何度も何度も大丈夫だと優しく言ってくださいました。

 さっきまで興奮状態だったのに旦那様のぬくもりを感じていたら、猛烈に眠くなってきました。

 そして眠りに落ちると夢の中で図書館に行けました。
 しかもこちらでは人間の姿で助かりました。

 何故、呪いが強まったのか、私は自分について調べてみることにしました。
 ずっと自らの情報の閲覧は怖くて、見れずにいたのですが……ここまでくると背に腹は代えられないです。


 本によれば、夢の図書館で貴重な情報を得るたび私は魔力を消費し、呪いへの抵抗力が下がっていると書いてありました!


 な、なんですって!!
 無限に無料で閲覧できてると思ったら、魔力を消費していたとは知りませんでした!

 あ、そういえば、夢を見たあとは体がなんとなく怠かったことがあります。
 あれは……魔力を消費していたから!?

 でも、新しい情報を見れた喜びが勝っていたので、体の多少の怠さは今まで気にならなかったのです。

 そ、そうだ、呪いの解呪方法は……。
 私が本のページをめくると、ページが急に白紙になり、閲覧不可という文字だけ浮き出て来ました。


「閲覧不可!?」

 びっくりして、私は震える手で本棚に本を戻しました。

 何故……。
 己の呪いの解き方は閲覧不可なのでしょう……。








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