20 / 52
20 初夏のピーチメルバ
しおりを挟む
夢の中の図書館では早速私と同じ世界、同じ大地の事柄、主に植物や食材について書かれている棚の前に来ました。
ずらりと並ぶ背表紙を見渡し、淡く光ってる気がする本を手に取りました。
このように光って見える本が大抵、その時に探し求めている本だったりします。
これは経験則です。
私は本を大事に抱えてテーブル席に向かい、椅子に座り、慎重にページをめくっていきます。
お米発見! 味噌と醤油も発見しました!!
やりました!!
龍の形をした島国にあるようです!
この島は縦に長いですね。
でも、極東の島ですか、私、行けますかね?
例の小切手があれば船も手配できるとは思いますが。
あ、念の為、船酔い防止の薬草も調べておきましよう。
とっても強いクリストロ公爵家は魔物退治が主な仕事で、社交はあまりいらないという話ですから、船旅に出てもいいですよね。
たまに皇室から横槍入りますけど、基本的にはいらないはず。
そう、おっしゃっていました。
冒険もしてみたいと思っていましたし!
反対されなければ行ってみたいです。
あ、船酔い防止の薬草も見つけました。
これでなんとかなりそうです。
そして、本の中に書いてあった内容を脳内で繰り返し呟いていたら、目が覚めました。
慌てて忘れないうちに日記にメモを書きます。
ヒイズル国。お米の名産地がトウホークという地にあり、醤油がクローダチクゼンという地にあり、味噌がナガーノという土地のようです。
でもミヤコという所に王、この国ではミカドと言う偉い人が住んているので、そこに行けば全て揃うようです。
目指すはミヤコです。
侵略じゃなくて買い物に来ただけですと言えば入国を許されるでしょうか?
何を手土産にすればミカドが喜ぶのか、それも調べて来ればよかったです。
あ、そうそう、酔い止めにはアメートロフとかいう薬草が効くそうです。
朝食の時間にお義父様に船旅をしてもいいか相談……してみます。
もちろん旦那様にもお手紙を書きます。
とはいえ、まだ早朝です。
逸る気持ちが抑えられず、落ち着かない私は新しいフルーツをバルコニーのいつものところにセットしてから、庭園に散歩に出ました。
朝日を浴びて、下生えの緑も綺麗に輝いています。
気持ちの良い朝で、できれば旦那様と一緒に散歩したい……などと考えていると、偶然にも庭に実っている桃を収穫に来たと言う奥様と遭遇し、誘われたのでご一緒しました。
私は背が低いのでドキドキしながら脚立に乗ります。
でもお母様が脚立をしっかり支えてくださっています。
お優しいです。
収穫したのは小ぶりの可愛いらしい桃です。
甘い香りが本当に素敵。
桃を入れたカゴを腕にひっかけて、庭を通り抜ける間、地を覆うクローバーの花の側では蜜蜂が飛び交っているのを見かけます。
せっせと蜜を探しているのでしょう……蜜蜂さん、お庭にお花があって良かったですね。
朝食の場では、意を決して私はお義父様とお義母様に食材探しの旅に出たいと申し出ました。
とても驚かれました。
素材を商人に頼んで取り寄せたほうが安全ではないか? と、もっともなことを言われました。
「ともかく、エリアナ。
旅の件は安全とは言えないから、君の夫であるゴードヘルフが帰って来てから、改めて相談してみなさい」
「はい、そもそも旦那様にはお手紙を書くつもりでしたが、わかりました」
◆ ◆ ◆
お昼のデザートには朝に収穫した桃を使い、桃の冷たいおやつのピーチメルバを作ることにしましたので、また厨房に突撃しました。
料理長に相談です。
「え? 桃のコンポートにバニラアイスを添えるのですか?」
「はい、ピーチメルバというスイーツです」
「ピーチメルバ……メモをとってもよろしいですか?」
「はい、レシピはお教えしますが、門外不出でお願いしますね。レシピは必要な時に、売ろうと思えば売れますので」
「かしこまりました!」
バニラアイスを器に盛り、アイスの上に桃のコンポートをのせる。
そして仕上げにラズベリーピューレのソースを桃の表面にかけ完成!
「ああ、これは……素晴らしい、初夏にふさわしいデザート! 職場がここで本当に良かった! 若奥様は幸運の女神のようです」
それは言い過ぎです。
「ええ、料理長、自分もここで料理人をやっていて良かったです!」
「ほんとに! 香りも素敵です!」
でも試食した料理人達にも好評で良かったです。
さて、サロンでお義父様とお義母様と待ち合わせをしていましたので、ティータイムにピーチメルバをお出ししました。
「まあ、これ、見た目も香りもいいし、とても美味しいわ! 冷たいアイスと桃が絶妙に合うわね」
「これは……御婦人達のお茶会にでも出したら大人気だろうな」
「でもあまり社交はしませんから」
「エリアナがしたければやってもかまわないよ」
うーん、でも、料理が良くても私はちんちくりんのままですし……。
物笑いの種になりそうな……。
「また料理人を交換してくれと言われたら困りますし」
「そ、それは、確かに」
「あ、でもどうしても欲しい物や食材がある領地が存在したら、交易をスムーズに行うためにも仲良くすべきとは思いました。それと逆に、特に悪くもないのに天災に見舞われ、飢饉で助けを求めている、あのウーリュ家の領地とか」
「そう言えばそこから公爵家に感謝状が届いていたよ、金と食料を送ったから」
お義父様が今、思い出したと執事に合図をし、素早くトレイに乗せて持ってきてくれたので手紙を受け取りました。
「良かったですねぇ、マリカ嬢もとても健気な方でしたし」
さて、ウーリュ家からの手紙を読んで、これから私も旦那様にお手紙を送ることにします。
ずらりと並ぶ背表紙を見渡し、淡く光ってる気がする本を手に取りました。
このように光って見える本が大抵、その時に探し求めている本だったりします。
これは経験則です。
私は本を大事に抱えてテーブル席に向かい、椅子に座り、慎重にページをめくっていきます。
お米発見! 味噌と醤油も発見しました!!
やりました!!
龍の形をした島国にあるようです!
この島は縦に長いですね。
でも、極東の島ですか、私、行けますかね?
例の小切手があれば船も手配できるとは思いますが。
あ、念の為、船酔い防止の薬草も調べておきましよう。
とっても強いクリストロ公爵家は魔物退治が主な仕事で、社交はあまりいらないという話ですから、船旅に出てもいいですよね。
たまに皇室から横槍入りますけど、基本的にはいらないはず。
そう、おっしゃっていました。
冒険もしてみたいと思っていましたし!
反対されなければ行ってみたいです。
あ、船酔い防止の薬草も見つけました。
これでなんとかなりそうです。
そして、本の中に書いてあった内容を脳内で繰り返し呟いていたら、目が覚めました。
慌てて忘れないうちに日記にメモを書きます。
ヒイズル国。お米の名産地がトウホークという地にあり、醤油がクローダチクゼンという地にあり、味噌がナガーノという土地のようです。
でもミヤコという所に王、この国ではミカドと言う偉い人が住んているので、そこに行けば全て揃うようです。
目指すはミヤコです。
侵略じゃなくて買い物に来ただけですと言えば入国を許されるでしょうか?
何を手土産にすればミカドが喜ぶのか、それも調べて来ればよかったです。
あ、そうそう、酔い止めにはアメートロフとかいう薬草が効くそうです。
朝食の時間にお義父様に船旅をしてもいいか相談……してみます。
もちろん旦那様にもお手紙を書きます。
とはいえ、まだ早朝です。
逸る気持ちが抑えられず、落ち着かない私は新しいフルーツをバルコニーのいつものところにセットしてから、庭園に散歩に出ました。
朝日を浴びて、下生えの緑も綺麗に輝いています。
気持ちの良い朝で、できれば旦那様と一緒に散歩したい……などと考えていると、偶然にも庭に実っている桃を収穫に来たと言う奥様と遭遇し、誘われたのでご一緒しました。
私は背が低いのでドキドキしながら脚立に乗ります。
でもお母様が脚立をしっかり支えてくださっています。
お優しいです。
収穫したのは小ぶりの可愛いらしい桃です。
甘い香りが本当に素敵。
桃を入れたカゴを腕にひっかけて、庭を通り抜ける間、地を覆うクローバーの花の側では蜜蜂が飛び交っているのを見かけます。
せっせと蜜を探しているのでしょう……蜜蜂さん、お庭にお花があって良かったですね。
朝食の場では、意を決して私はお義父様とお義母様に食材探しの旅に出たいと申し出ました。
とても驚かれました。
素材を商人に頼んで取り寄せたほうが安全ではないか? と、もっともなことを言われました。
「ともかく、エリアナ。
旅の件は安全とは言えないから、君の夫であるゴードヘルフが帰って来てから、改めて相談してみなさい」
「はい、そもそも旦那様にはお手紙を書くつもりでしたが、わかりました」
◆ ◆ ◆
お昼のデザートには朝に収穫した桃を使い、桃の冷たいおやつのピーチメルバを作ることにしましたので、また厨房に突撃しました。
料理長に相談です。
「え? 桃のコンポートにバニラアイスを添えるのですか?」
「はい、ピーチメルバというスイーツです」
「ピーチメルバ……メモをとってもよろしいですか?」
「はい、レシピはお教えしますが、門外不出でお願いしますね。レシピは必要な時に、売ろうと思えば売れますので」
「かしこまりました!」
バニラアイスを器に盛り、アイスの上に桃のコンポートをのせる。
そして仕上げにラズベリーピューレのソースを桃の表面にかけ完成!
「ああ、これは……素晴らしい、初夏にふさわしいデザート! 職場がここで本当に良かった! 若奥様は幸運の女神のようです」
それは言い過ぎです。
「ええ、料理長、自分もここで料理人をやっていて良かったです!」
「ほんとに! 香りも素敵です!」
でも試食した料理人達にも好評で良かったです。
さて、サロンでお義父様とお義母様と待ち合わせをしていましたので、ティータイムにピーチメルバをお出ししました。
「まあ、これ、見た目も香りもいいし、とても美味しいわ! 冷たいアイスと桃が絶妙に合うわね」
「これは……御婦人達のお茶会にでも出したら大人気だろうな」
「でもあまり社交はしませんから」
「エリアナがしたければやってもかまわないよ」
うーん、でも、料理が良くても私はちんちくりんのままですし……。
物笑いの種になりそうな……。
「また料理人を交換してくれと言われたら困りますし」
「そ、それは、確かに」
「あ、でもどうしても欲しい物や食材がある領地が存在したら、交易をスムーズに行うためにも仲良くすべきとは思いました。それと逆に、特に悪くもないのに天災に見舞われ、飢饉で助けを求めている、あのウーリュ家の領地とか」
「そう言えばそこから公爵家に感謝状が届いていたよ、金と食料を送ったから」
お義父様が今、思い出したと執事に合図をし、素早くトレイに乗せて持ってきてくれたので手紙を受け取りました。
「良かったですねぇ、マリカ嬢もとても健気な方でしたし」
さて、ウーリュ家からの手紙を読んで、これから私も旦那様にお手紙を送ることにします。
75
お気に入りに追加
459
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

今日は私の結婚式
豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。
彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる