【完結】猫化の呪い持ちを隠して嫁がされたのに何故か溺愛されています!

長船凪

文字の大きさ
上 下
11 / 52

11 夢の中の図書館

しおりを挟む
 旦那様が困窮中の男爵領に支援金と小麦を送ってくださるし、農薬に必要な竜種の血液までも送ってくださると聞いてマリカ嬢は安堵した顔で帰る事になりました。


「帰りの路銀と用心棒代だけ渡しておきますね。
 不安なのでちゃんと帰路では護衛を雇って下さい。
でも大金を持たせるとやはり帰り道が怖いので、そちらの領地の銀行に送金ということになるそうです」


「はい! エリアナ様、何から何までありがとうございます!」
「お、お金を出してくださるのは旦那様なので私は何も」
「エリアナ様が我が領地を気にかけてくださったおかげですわ!」

 ほとんど自領の為にもなるかもしれないと言う理由で伺っただけですのに。
 でもこれで公爵家に友好的な領地が増えるならいいことなので、訂正するのはやめておきましょう。


「ご無事にお帰りを」
「はい!」

 お互いに笑顔でお別れしました。


「エリアナ、帰りに神殿に寄って行こうかと思うのだが」
「はい、旦那様」
「じゃあ兄上、姉上、俺は先に帰ることにしますから」

「ケビンは銀行の手続きと小麦と血液の送る手配を頼む」
「ええ……兄上、それ俺の仕事ですか?」
「すみません、ケビン様! 私がやります!」

 私がそう言うなり背後で冷たい気配が立ち昇る!
 ちなみに私の後ろには旦那様が立っていますが。

「いいえ! やはり兄上、私がやらせていただきます! これも勉強と人助け!」

「最初からそう言え」


 旦那様が、睨みを効かせてケビン様を走らせました。
 私のせいでケビン様にはとんだとばっちりのような……。
 何かこんど詰め合わせを考えないと!


 それにしても馬車に乗り込んで、今は神殿へ向かっておりますが、寄付でもなさるのでしょうか?
 と、思っていましたが、


「大神官に面会を」


 と、旦那様がいきなりお偉い方を指名されました。


 しばらくして大神官のおられる場所に通されました。
 そこは祭壇のある個室でした。
 先端に大きな水晶玉がついた杖が祀られるように置かれてるのが印象的です。

 大神官様は白く長いお髭のおじいさ……いえ、70代くらいの男性でした。
 側には年若い巫女と神官も側仕え的におられるようです。


「小公爵様、ようこそおいでくださいました。さて、本日はどのようなご用件ですかな?」

「その前に人払いを頼む」
「左様で」

 すぐに大神官様が目配せすると側仕えの神官達は退室しましたが、お茶のたぐいは呼ばなくても既にテーブルの上に置いてありました。


「大神官よ、とても大事なことなので絶対に他言無用で頼む」
「承知しております」

「彼女の、妻のエリアナには特別な権能があるように思えるが、彼女はどうやら家で隠されるように生きていて、洗礼式も受けてないようなのだ」

 隠されるように生きていたのは事実です。
 でも私が洗礼式をも受けさせてもらえてないのをよくご存知で……。


「なるほど、では今からですと多少略式となってしまいますが洗礼式をさせていだだきます」

 え!? 今から!? 急に!


「ああ、頼む」
「では、奥様、そこの丸い魔法陣付きの絨毯の上に膝を付いて祈りの為に両手を組んでください」
「は、はい」


 私が丸い絨毯の上に膝をつくと、聖水を手にした大神官様が私の前髪をかきわけ、おでこを出したと思えば額に聖水をポタリと垂らしました。


 その後、水晶付きの杖を手にして私の額にかざし、何かの祝詞のようなものを唱えました。
 それから……目を閉じてなにかを探っているようです。

「青い……青い螺旋……長く……深い……本……巻き物……本棚……文字、おびただしい数の情報……ああっ……これは……っ!」

 かっと大神様が、目を見開いたと思えば……ガクッと突然ひざから床にくずおれました!


「大神官!?」
「だ、大神官様! 大丈夫ですか!?」

 慌てて大神官様を支える私達。

「アカシック……ビブリオテーク……」

 大神官様は掠れる声絞り出したそれはアカシックという聞き慣れぬ単語。

「アカシック? なんだって?」

「ぜ、前世から未来までのおびただしい情報が記録されている天上の図書館や人生の書などとも言われているもの。星、人類すべての歴史の出来事についての情報が網羅された貴重な図書館を見れる特殊な権能です。あまりの事に……腰を抜かしました、面目ない」

「ええ? 私の夢の中の図書館てそんなに……」
「そんなに凄いものだったとは」
「夢の中の図書館と申されましたな、夫人にはすべての本の情報が見れるのですか?」

「いいえ、立ち入り禁止の区域はあります。天使様が、司書のような事をされていて、厳重に結界を貼られた扉付きの部屋があり、そこはあまりに凶悪で危険な武器の情報があるので閲覧禁止だとおおせになりました」

「なるほど」
「よかった、危険な情報が閲覧禁止で。でもそれだけでも王族に知られたらえらいことだ、絶対にそばに置いて取り込もうとするだろう」

 え!?
 そんなに……。

「わ、私が見ているのは主に物語や料理の本とか農作物の本なのですが」
「そうなのか」
「ええ、無害そうなものや面白そうなものを」

「ともかく夫人の権能の事は確かに人に言わない方がよろしいですね。戦争の情報などを無理やり見てこいなどという欲にまみれた権力者に囚われると、非常にやっかいな事になります」

「気をつけます……」

 私はゾクリとして身を震わせた。


「今日はこれからタウンハウスに一度寄るが、領地に帰ったら公爵家内にある図書室へ案内しよう。害虫の件など、どこから知った知識と聞かれたら公爵家の図書室と答えておくんだ」
「は、はい、分かりました」


 嘘にはなりますが、それが無難ですね。










しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

処理中です...