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108 伯爵家からの手紙と情報収集
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結婚の報告まですることになった。
ジェラルドはいいとしても日本にいる両親にはどうすれば……。
うーん、やっぱ異世界に嫁ができたとか言えるはずもないか。
頭がおかしくなったと思われる。
* *
宴の後にミレナの家に泊まった。
カナタと一緒に客室だ。
しかし朝になって目が覚めたらなんか手足にモフモフふわふわな感触がある。
……え? まさかな? 犬のラッキーだよな?
と、思いつつ目を開けたら、やはりラッキーだったが、片方はラッキーでもう片方はミレナだった!!
横で寝てた!
何してんだ! まだ式は挙げてないぞ!!
そういや結婚式はどうなるんだ?
こそっと海の見える教会とかに移動して挙げるのかそれともミレナの両親のいるこの山里で?
結婚するとわかっていたなら日本で綺麗なドレス買って来たのに。
ふと、窓の外に嘴でコンコンいってる伝書鳥がいた。
俺のぴーちゃんではない。
窓を開けて鳥を招き入れたら手紙は伯爵家からだった。
「うみゅぅ~~」
「ワフ……」
猫みたいな声を出すミレナとラッキーが反応した。そしてカナタも起きてしまった。
「おはよう、皆」
「あ、おはよう、翔太……と、ミレナさん!?」
「こやつは何時の間にか潜りこんでいた、寝てたから何もしてないからな!」
カナタに弁明する俺だったが、ミレナはそれをスルーして、
「その手紙誰からぁ?」
寝ぼけた声で訊いてきた。
「伯爵様からだ、今から読む。えーと、我が国に聖者が降臨したのは大変喜ばしい。
そして聖国からのスパイらしき者達の件は搜索して捕まえるつもりだし、国から厳重に抗議を入れておくと、それから、何か物は仕入れて来たのに店が開かないの辛いから……こっちに受け取りの人間を寄こそうとしている!?
それか聖者を護衛する為に護衛騎士を送るからなるべく早くもどって来てほしい?」
「品物を将太が店で売らないなら買い取りに人を派遣するか逆に護衛よこすから戻って来いってこと?」
「そのようだ」
カナタの問いに俺は頷いた。
「えー、それでショータはどうするの?」
「ここに騎士が来るのはちょい物々しいよなぁ、村の人に迷惑かけたくないし、頑張って自力で帰るかな」
「翔太、ミレナさんとの結婚式はどうするの?」
「まだ指輪とドレスも用意できてないし、婚約期間って事でよくないか?」
「昨日既に婚姻届書いたじゃん!」
カナタがツッコミを入れてきた。
「まだ役所的なとこには提出してないだろ? この世界だとその書類はどこに出すんだ?」
「教会の神父に渡して承認されたら正式に結婚になるわ」
「この村にも教会はあるのか?」
「山から降りないとないわ」
「ミレナは結婚式はどこで挙げたいとか希望はあるのか?」
「綺麗なとこがいいわ」
「じゃあやはり海の見える教会とか?」
「海近くなら春とか夏ぅ」
「あ、今は秋だしな、じゃあ式は初夏あたりでいいか」
「うんーー」
今すぐ式を挙げると駄々こねなくてよかった。
気が変わったら婚約破棄! とか言ってくるかもしれん。
「ひとまず明日には家に帰ってみるか、今日はミレナも少しは故郷でゆっくりしたいだろうし、ここに滞在させて貰おう」
「明日には帰るんだね。分かった」
カナタとミレナにはそう伝えて了承を得た。
明日帰るように旅立ちますと伯爵様に手紙を書いて伝書鳥に返事を持たせた。
そしてひとまず俺は聖者というものについて勉強する事にした。
「ミレナ、聖女や聖者について詳しい人、この村にいるか?」
「村の最長老に聞けばいいわ」
そんなわけで朝食後にはミレナとミラと一緒に長老の家に向かった。
カナタはミレナの家の家事を手伝うようだから置いてきた。
長老の家に着いたらいかにも長老って感じの白くなった長いお髭の狐族のおじいちゃんが出てきた。
「ふむ、ワシに聖女と聖者について聞きたいとな」
「はい、聖者や聖女が国にいると、上とか下が決まるってどういう事ですか?」
「瘴気が大地から吹き出すとそれを浄化出来るのは聖女か聖者のみ。ゆえに関税とかを上げたり下げたり出来るんじゃよ。お助けくださいとすがる方は大抵の要求をのまないといけなくなるからのう」
「相手の足元を見るわけですね。でもそれって聖者のイメージも悪くなりますよね?」
「わざわざ大切な聖女や聖者を他国に派遣するからと、国王が言ってるだけで聖女とか聖者がそういう金銭的な対価を望む訳じゃないからそれはなかろうて」
「色々世知辛いですね。そんなに瘴気って湧き出すものなのですか?」
「ああ、瘴気のせいで荒れ地や砂漠化した土地はわりとあるんじゃよ」
いや、待てよ、俺に浄化してみろって言われたら困るが!
「試練の洞窟に放り込むより分かりやすい判定方法があるんじゃないですか」
「聖女も聖者も覚醒前だと浄化出来る前に瘴気に触れると常人のように死ぬことがある、あれは毒の固まりのようなものだからのう」
洞窟内でも出られなければどのみち死んでるが、覚醒……とな。
「覚醒ってどうやってするんですか?」
「人それぞれらしいがだいたい大切なものが死にかけると救いたくて覚醒するらしいぞい」
それわざと故郷の村とかを焼かれそうで怖いな。
「あ、聖者って結婚しても大丈夫なものですか?」
「聖女は処女でないといけないらしいが聖者は問題ないぞい」
謎の不公平! でも男の聖者は結婚できるって、よかった。
「長老様、本日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました」
「ほっほ、なんのなんの」
長老様にお話を聞かせてもらったお礼に柔らかいパンと美味しいジャムを渡し、俺とミレナはミレナの家に戻った。
カナタも家事手伝いを終えて客室に戻ってきた。
「やばいな、例の帳面に浄化出来る杖とかなんか道具を願うべきか」
「早く描いておきなさいよ、また地獄のような判定されたら困るでしょ」
「杖だと雰囲気は出るけど、それを奪われたり折れたりすると困るんじゃないかな? あと荷物になるような」
「あー、そうか、指輪とかのがいいかも」
それは確かにカナタの言うとおりだな。
「翔太、それなら指輪を誰かに奪われないようにね、杖よりは壊れにくい気はするけど」
「ああ」
浄化の指輪はちゃんと帳面に描けたけど五ページを消費した。
しかも使いすぎると崩壊するらしい。注意事項の説明書きが紙に浮き出てきたのだ。
気をつけて使おう。
ちなみに俺のいない間は店が開かない理由が伯爵様から方々へ伝わり、聖国のスパイのせいとか聖者が自国に現れたとかで、耳の早い貴族王族は大騒ぎになったそうだ。
ジェラルドはいいとしても日本にいる両親にはどうすれば……。
うーん、やっぱ異世界に嫁ができたとか言えるはずもないか。
頭がおかしくなったと思われる。
* *
宴の後にミレナの家に泊まった。
カナタと一緒に客室だ。
しかし朝になって目が覚めたらなんか手足にモフモフふわふわな感触がある。
……え? まさかな? 犬のラッキーだよな?
と、思いつつ目を開けたら、やはりラッキーだったが、片方はラッキーでもう片方はミレナだった!!
横で寝てた!
何してんだ! まだ式は挙げてないぞ!!
そういや結婚式はどうなるんだ?
こそっと海の見える教会とかに移動して挙げるのかそれともミレナの両親のいるこの山里で?
結婚するとわかっていたなら日本で綺麗なドレス買って来たのに。
ふと、窓の外に嘴でコンコンいってる伝書鳥がいた。
俺のぴーちゃんではない。
窓を開けて鳥を招き入れたら手紙は伯爵家からだった。
「うみゅぅ~~」
「ワフ……」
猫みたいな声を出すミレナとラッキーが反応した。そしてカナタも起きてしまった。
「おはよう、皆」
「あ、おはよう、翔太……と、ミレナさん!?」
「こやつは何時の間にか潜りこんでいた、寝てたから何もしてないからな!」
カナタに弁明する俺だったが、ミレナはそれをスルーして、
「その手紙誰からぁ?」
寝ぼけた声で訊いてきた。
「伯爵様からだ、今から読む。えーと、我が国に聖者が降臨したのは大変喜ばしい。
そして聖国からのスパイらしき者達の件は搜索して捕まえるつもりだし、国から厳重に抗議を入れておくと、それから、何か物は仕入れて来たのに店が開かないの辛いから……こっちに受け取りの人間を寄こそうとしている!?
それか聖者を護衛する為に護衛騎士を送るからなるべく早くもどって来てほしい?」
「品物を将太が店で売らないなら買い取りに人を派遣するか逆に護衛よこすから戻って来いってこと?」
「そのようだ」
カナタの問いに俺は頷いた。
「えー、それでショータはどうするの?」
「ここに騎士が来るのはちょい物々しいよなぁ、村の人に迷惑かけたくないし、頑張って自力で帰るかな」
「翔太、ミレナさんとの結婚式はどうするの?」
「まだ指輪とドレスも用意できてないし、婚約期間って事でよくないか?」
「昨日既に婚姻届書いたじゃん!」
カナタがツッコミを入れてきた。
「まだ役所的なとこには提出してないだろ? この世界だとその書類はどこに出すんだ?」
「教会の神父に渡して承認されたら正式に結婚になるわ」
「この村にも教会はあるのか?」
「山から降りないとないわ」
「ミレナは結婚式はどこで挙げたいとか希望はあるのか?」
「綺麗なとこがいいわ」
「じゃあやはり海の見える教会とか?」
「海近くなら春とか夏ぅ」
「あ、今は秋だしな、じゃあ式は初夏あたりでいいか」
「うんーー」
今すぐ式を挙げると駄々こねなくてよかった。
気が変わったら婚約破棄! とか言ってくるかもしれん。
「ひとまず明日には家に帰ってみるか、今日はミレナも少しは故郷でゆっくりしたいだろうし、ここに滞在させて貰おう」
「明日には帰るんだね。分かった」
カナタとミレナにはそう伝えて了承を得た。
明日帰るように旅立ちますと伯爵様に手紙を書いて伝書鳥に返事を持たせた。
そしてひとまず俺は聖者というものについて勉強する事にした。
「ミレナ、聖女や聖者について詳しい人、この村にいるか?」
「村の最長老に聞けばいいわ」
そんなわけで朝食後にはミレナとミラと一緒に長老の家に向かった。
カナタはミレナの家の家事を手伝うようだから置いてきた。
長老の家に着いたらいかにも長老って感じの白くなった長いお髭の狐族のおじいちゃんが出てきた。
「ふむ、ワシに聖女と聖者について聞きたいとな」
「はい、聖者や聖女が国にいると、上とか下が決まるってどういう事ですか?」
「瘴気が大地から吹き出すとそれを浄化出来るのは聖女か聖者のみ。ゆえに関税とかを上げたり下げたり出来るんじゃよ。お助けくださいとすがる方は大抵の要求をのまないといけなくなるからのう」
「相手の足元を見るわけですね。でもそれって聖者のイメージも悪くなりますよね?」
「わざわざ大切な聖女や聖者を他国に派遣するからと、国王が言ってるだけで聖女とか聖者がそういう金銭的な対価を望む訳じゃないからそれはなかろうて」
「色々世知辛いですね。そんなに瘴気って湧き出すものなのですか?」
「ああ、瘴気のせいで荒れ地や砂漠化した土地はわりとあるんじゃよ」
いや、待てよ、俺に浄化してみろって言われたら困るが!
「試練の洞窟に放り込むより分かりやすい判定方法があるんじゃないですか」
「聖女も聖者も覚醒前だと浄化出来る前に瘴気に触れると常人のように死ぬことがある、あれは毒の固まりのようなものだからのう」
洞窟内でも出られなければどのみち死んでるが、覚醒……とな。
「覚醒ってどうやってするんですか?」
「人それぞれらしいがだいたい大切なものが死にかけると救いたくて覚醒するらしいぞい」
それわざと故郷の村とかを焼かれそうで怖いな。
「あ、聖者って結婚しても大丈夫なものですか?」
「聖女は処女でないといけないらしいが聖者は問題ないぞい」
謎の不公平! でも男の聖者は結婚できるって、よかった。
「長老様、本日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました」
「ほっほ、なんのなんの」
長老様にお話を聞かせてもらったお礼に柔らかいパンと美味しいジャムを渡し、俺とミレナはミレナの家に戻った。
カナタも家事手伝いを終えて客室に戻ってきた。
「やばいな、例の帳面に浄化出来る杖とかなんか道具を願うべきか」
「早く描いておきなさいよ、また地獄のような判定されたら困るでしょ」
「杖だと雰囲気は出るけど、それを奪われたり折れたりすると困るんじゃないかな? あと荷物になるような」
「あー、そうか、指輪とかのがいいかも」
それは確かにカナタの言うとおりだな。
「翔太、それなら指輪を誰かに奪われないようにね、杖よりは壊れにくい気はするけど」
「ああ」
浄化の指輪はちゃんと帳面に描けたけど五ページを消費した。
しかも使いすぎると崩壊するらしい。注意事項の説明書きが紙に浮き出てきたのだ。
気をつけて使おう。
ちなみに俺のいない間は店が開かない理由が伯爵様から方々へ伝わり、聖国のスパイのせいとか聖者が自国に現れたとかで、耳の早い貴族王族は大騒ぎになったそうだ。
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