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93 秋のきのこ狩り
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賢者の家に泊まってから、朝に目覚めた。
窓を開けて外の様子を見てみたら、森の木々も秋色に染まって来ているなと思った。
顔を洗ってから、俺は朝食の準備をした。
穏やかな秋の木漏れ陽の下で、庭のテーブルセットを囲み、男三人で朝食を食べた。
メニューは黒トリュフ入りのパスタ。
「ボナペティー! これは美味しい!」
俺は自分で自分作ったパスタの出来栄えに満足した。
「細かいチーズをふりかけると更に美味しいな」
「トリュフ入りなんて朝から豪勢だよね」
ジェラルドとカナタも気に入ってくれたみたいだ。
「ラッキーのおかげだな」
「ワフ!」
ラッキーの事もちゃんと褒めておくのを忘れない。
食後になるとジェラルドは森へ狩りに出かけた。
俺達は戦闘員じゃないのでひとまず留守番。
「家を買う? 翔太が自費で?」
賢者のキッチンで洗い物をしていたカナタがびっくりした顔でこちらを振り向いた。
俺の方は満月にまた日本に仕入れに戻るから買い物のリストアップをしつつカナタと雑談をしている。
「そうだ。日本でティッシュの在庫を大量に届けて貰うには日本の方にも広い家か倉庫がある家を持つ方がいいような気がしてな」
「それは確かに」
「でも結局異世界へはあのアパートの押し入れから移動しないといけないから、あんまり遠い場所だと移動時間がかかる」
「荷物は魔法の風呂敷に入れてしまえば少し遠くの土地の家を買って電車移動でもいいのでは?」
田舎のほうが土地も家も安いからな。
「ああ、それはそうだな。今度とにかく掘り出し物の良い物件がないか調べてみるさ」
「えちち本のおかげでお金に余裕あるならいっそ別荘地とかは? どうせ買うなら景色のイイとことかさ」
「なるほどな、温泉があるとこもいいな」
「夢が広がるねぇ」
「とにかく広さが必要なんだよな。次は涼しくなってる秋の販売だし、公園みたいな場所にテント立てて広い場所でやるかな、そういう希望もあったし」
「公園を使う許可は?」
「伯爵様に相談すればなんとかなると思う、何しろ伯爵領の領主だし」
「伯爵様が味方になってくれるなら強いね」
「カナタは日本でなにか欲しいものはあるか?」
「えーと、言いにくいけど、死ぬつもりで前の家の契約を切ってるから、ひとまずは仮住まいの場所?」
そうだった。鬱で死にそうだったんだ、カナタは。
こちらに来て驚くほど元気になってるけど。
夜も薬なしで寝れているし。
「あ~、そうだな、俺のアパートか近所に空き部屋があれば便利なんだが、俺が金は出せるし」
「なんか悪いな、何から何まで」
「仕入れの仕事を手伝ってくれてるから住居を支給されたと思えば良い。何しろ下着売り場に男丸出しの俺が何度も行くと嫌な気持ちになる女性客も多いだろうし」
「もちろん僕が女性の下着売り場に行くのはかまわないけど、翔太が広い一軒家を手に入れてしまえば色んな通販の荷物が玄関先に積み上がっても構わないかもしれないよ」
「あー、玄関前に広い屋根付きのスペースがあるといいな」
雑談をしたり昼寝しながらジェラルドの返りを待っていたらお昼過ぎになってた。
今は昼の一時くらいだ。
「いかん、森から聞こえる鳥の囀りとか聞いてるとリラックスして惰眠を貪ってしまった」
「お昼どうする?」
「秋らしく昼はキノコのタルティーヌで夜用には炊き込みご飯を用意しようか」
「ワフ!」
「あ、ジェラルドさんが狩りから戻ったみたいだ」
ラッキーの反応から窓の外を覗いたカナタがジェラルドを見つけたようだ。
「鹿が取れたぞ」
「わあ! 鹿とキノコのお土産だね!」
ジェラルドは鹿の他に食べられるキノコも見つけて来たようだった。
「秋ぃ~って感じでいいな」
「僕も異世界のキノコを覚えればキノコ狩りができるかなぁ」
ジェラルドはテーブルの上にキノコ入りのザルを置いていて、カナタはそれをしげしげと眺めている。
「なんだ、カナタはキノコ狩りがしたかったなら言えば連れて行って簡単なのは教えてやれたのに」
「本当? ジェラルドさん、ありがとうございます!」
「ジェラルド先生~キノコ狩りなら俺もやりたいです!」
「そうか、じゃあ食事の後に行くか」
「ジェラルドは狩りの後なのに休まなくていいのか?」
「鍛え方が違う」
「「な、なるほど~」」
昼下がりには三人で物知りエルフのジェラルドの教えを請いながらキノコ狩り。
赤や黄色の落葉を踏みながら、キノコを探していたら、俺は湿り気を帯びた川の側で岩にこびりつく変わった光を放つコケを見つけた。
「ジェラルド、この光るコケはなにか知ってる?」
「ああ、そのコケは魔法薬の素材になるからもらっていこう」
「魔法薬の素材!」
「ファンタジーだねぇ、面白い」
「カメラカメラ、撮影っと、あ、あそこにはキレイな花だ」
「白くてかわいい花だね。お土産に持って返ってあげたら?」
!!
「そうだな、キノコと花と炊き込みご飯はいまここにいないミレナにもあげよう」
窓を開けて外の様子を見てみたら、森の木々も秋色に染まって来ているなと思った。
顔を洗ってから、俺は朝食の準備をした。
穏やかな秋の木漏れ陽の下で、庭のテーブルセットを囲み、男三人で朝食を食べた。
メニューは黒トリュフ入りのパスタ。
「ボナペティー! これは美味しい!」
俺は自分で自分作ったパスタの出来栄えに満足した。
「細かいチーズをふりかけると更に美味しいな」
「トリュフ入りなんて朝から豪勢だよね」
ジェラルドとカナタも気に入ってくれたみたいだ。
「ラッキーのおかげだな」
「ワフ!」
ラッキーの事もちゃんと褒めておくのを忘れない。
食後になるとジェラルドは森へ狩りに出かけた。
俺達は戦闘員じゃないのでひとまず留守番。
「家を買う? 翔太が自費で?」
賢者のキッチンで洗い物をしていたカナタがびっくりした顔でこちらを振り向いた。
俺の方は満月にまた日本に仕入れに戻るから買い物のリストアップをしつつカナタと雑談をしている。
「そうだ。日本でティッシュの在庫を大量に届けて貰うには日本の方にも広い家か倉庫がある家を持つ方がいいような気がしてな」
「それは確かに」
「でも結局異世界へはあのアパートの押し入れから移動しないといけないから、あんまり遠い場所だと移動時間がかかる」
「荷物は魔法の風呂敷に入れてしまえば少し遠くの土地の家を買って電車移動でもいいのでは?」
田舎のほうが土地も家も安いからな。
「ああ、それはそうだな。今度とにかく掘り出し物の良い物件がないか調べてみるさ」
「えちち本のおかげでお金に余裕あるならいっそ別荘地とかは? どうせ買うなら景色のイイとことかさ」
「なるほどな、温泉があるとこもいいな」
「夢が広がるねぇ」
「とにかく広さが必要なんだよな。次は涼しくなってる秋の販売だし、公園みたいな場所にテント立てて広い場所でやるかな、そういう希望もあったし」
「公園を使う許可は?」
「伯爵様に相談すればなんとかなると思う、何しろ伯爵領の領主だし」
「伯爵様が味方になってくれるなら強いね」
「カナタは日本でなにか欲しいものはあるか?」
「えーと、言いにくいけど、死ぬつもりで前の家の契約を切ってるから、ひとまずは仮住まいの場所?」
そうだった。鬱で死にそうだったんだ、カナタは。
こちらに来て驚くほど元気になってるけど。
夜も薬なしで寝れているし。
「あ~、そうだな、俺のアパートか近所に空き部屋があれば便利なんだが、俺が金は出せるし」
「なんか悪いな、何から何まで」
「仕入れの仕事を手伝ってくれてるから住居を支給されたと思えば良い。何しろ下着売り場に男丸出しの俺が何度も行くと嫌な気持ちになる女性客も多いだろうし」
「もちろん僕が女性の下着売り場に行くのはかまわないけど、翔太が広い一軒家を手に入れてしまえば色んな通販の荷物が玄関先に積み上がっても構わないかもしれないよ」
「あー、玄関前に広い屋根付きのスペースがあるといいな」
雑談をしたり昼寝しながらジェラルドの返りを待っていたらお昼過ぎになってた。
今は昼の一時くらいだ。
「いかん、森から聞こえる鳥の囀りとか聞いてるとリラックスして惰眠を貪ってしまった」
「お昼どうする?」
「秋らしく昼はキノコのタルティーヌで夜用には炊き込みご飯を用意しようか」
「ワフ!」
「あ、ジェラルドさんが狩りから戻ったみたいだ」
ラッキーの反応から窓の外を覗いたカナタがジェラルドを見つけたようだ。
「鹿が取れたぞ」
「わあ! 鹿とキノコのお土産だね!」
ジェラルドは鹿の他に食べられるキノコも見つけて来たようだった。
「秋ぃ~って感じでいいな」
「僕も異世界のキノコを覚えればキノコ狩りができるかなぁ」
ジェラルドはテーブルの上にキノコ入りのザルを置いていて、カナタはそれをしげしげと眺めている。
「なんだ、カナタはキノコ狩りがしたかったなら言えば連れて行って簡単なのは教えてやれたのに」
「本当? ジェラルドさん、ありがとうございます!」
「ジェラルド先生~キノコ狩りなら俺もやりたいです!」
「そうか、じゃあ食事の後に行くか」
「ジェラルドは狩りの後なのに休まなくていいのか?」
「鍛え方が違う」
「「な、なるほど~」」
昼下がりには三人で物知りエルフのジェラルドの教えを請いながらキノコ狩り。
赤や黄色の落葉を踏みながら、キノコを探していたら、俺は湿り気を帯びた川の側で岩にこびりつく変わった光を放つコケを見つけた。
「ジェラルド、この光るコケはなにか知ってる?」
「ああ、そのコケは魔法薬の素材になるからもらっていこう」
「魔法薬の素材!」
「ファンタジーだねぇ、面白い」
「カメラカメラ、撮影っと、あ、あそこにはキレイな花だ」
「白くてかわいい花だね。お土産に持って返ってあげたら?」
!!
「そうだな、キノコと花と炊き込みご飯はいまここにいないミレナにもあげよう」
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