俺って何故か押入れから異世界へ行き来ができるっぽい!〜 商人であり聖者でもある男の異世界を巡る日々 〜

長船凪

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90 爽やかな休日

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 俺は三人に月に一度の給料を手渡した。
 仕事開けの翌日の朝、今日はワクワクの給料日だ!


「「「ありがとう」」」

 三人からの感謝の言葉も貰って偉くなったみたいだ。


「さて、カナタはどこか行ってみたい所はあるか?」


 俺はひとまずカナタに希望を訊いてみた。


「ええと、とりあえず生活に必要な食材を買うところとか、移動手段の……」

「あ! ルルエを買い足さないとな! じゃあひとまず市場と馬車乗り場を案内するよ」
「ルルエは俺が買い足しておく」
「ありがとうジェラルド!」

「……じゃあ、私は手狭になるからルルエの小屋を解体して大きく作りなおしておくわ」
「あ! ミレナ、待ってくれ! 小屋の解体は!」

「なんでよ、ルルエを増やすんでしょ」
「小屋を建てるとこを撮影したい!」
「もー、何なのよ」
「とりあえず、僕、今日は近場の徒歩移動でいいから、ミレナさんも時間があれば一緒に」

 カナタのフレンドリーなお誘いにミレナの顔が急に明るくなった。


「仕方ないから付き合ってあげるわ!」

 一緒に行きたいなら最初からそう言えばいいのに。


「ルルエ小屋は俺が横壁だけ壊しておく、そもそも屋根のないようところでもルルエは生活できるから、つなぐとこだけあれば数日はいけるからな」


 ジェラルドの提案にのり、諸々了承して、俺達は休日を満喫するために出かけることにした。

 ミラはトートバッグに入れて、ラッキーは散歩がてら歩いて行けるので連れていく。


「フェリちゃんは連れて行かなくて大丈夫?」


 優しいカナタがフェリの心配をしている。


「まだ疲れて寝てるからそっとしておこうかと、ミラは俺の用心棒だから基本的には同行なんだ」


 例外として花街の時は置いていくけど!


「そうなんだ」
「フェリは俺が森の家に連れて行って数日寝かせておこう、あちらは魔力が豊富にあるから」

「ありがとうジェラルド。フェリをよろしく」
「ああ」


 俺はカナタとミレナを連れて、まずは市場に向かった。

 ズラリと並ぶ市場のお店。
 お客さんも沢山いるし、いらっしゃい安いよ~!などの呼び声も賑やかな市場だ。

「わー、お店が沢山ある! 新鮮な果物の香りがする!」

 新鮮で鮮やかな果物や野菜が並んでるだけでもテンションが上がるよな、分かるぞ、カナタよ。


「あ、二人にお小遣いを渡しておくよ」

 俺は魔法のカバンからじゃらりとコインの入った巾着袋を二人に手渡す。

「やった、ありがと♪」
「え、お賃金もらったばかりなのに、悪いね。あと、紙と小銭じゃないんだね」


 こちらの財布はコインだからポケットに入れるとだいぶ嵩張るのだった。


「あ、そうか、じゃあカナタはこの麻のバッグを、ひとまず使うか?」

 魔法のカバンからこちらの世界でもそう浮かない感じの麻のバッグを取り出した俺だったが。

「今、翔太はミラちゃん入りのトートバッグとカバン二つ持ちじゃないか、そのどちらか僕が持つよ」

「魔法のカバンは本人登録あるから、じゃあひとまずこのトートバッグを使ってくれ。この麻のカバンも畳めば入る。
 そんでカナタ用の魔法のカバンを買いに行こう!」 


「あ!」

 ミレナが小さく声を漏らすと、ミラがトートバッグから抜け出して俺の肩の上に移動した。

「お、お前がそこでいいならいいけどな」
「はい、視界良好です」

 ドールを肩に乗せてまち歩きをする変なおじさんが爆誕する。

 まずは魔道具屋に向かった。

 三角屋根の可愛い店だ。壁には蔦がはっていて、趣がある。

 店内には不思議な光を放つ神秘的な道具が色々ある。
 ファンタジー世界って感じだ。


「わあ、おしゃれなランプだね! 翔太、これって魔法のランプ?」
「あー、それは魔石で動くから魔法のランプと言えなくもないような」

「手頃な値段の亜空間収納のカバンはこれよ」
 ミレナが二つの色違いのバッグを手にして見せてくれた。
「茶色か緑色かどちらの色が好きかで選べばいい」

「無難に茶色にしようかな、色が服に合わせやすそうだし」
「お客様、お決まりですか? 少し値段は上がりますがこちらに赤や黄色のもございますよ」
「こちらの茶色のにします」

「はい、ではこれは魔法のカバンなので盗難防止の為に血の登録を行います。指先が少しチクッとするだけですので、こちらに」
「はい」

 無事に登録を済ませた。
 支払いにカナタが自分の給料から出そうとしたので俺が止めて支払った。

「給料日後だからまだお金あったのに」
「いいんだよ、これは俺からの引っ越し祝いだ」

 異世界へデビュー、引っ越し記念だ。


「それなら僕が同居してくれる皆に蕎麦を振るまうべきかな」

「じゃあ麺のそばの代わりにそば粉でできたガレットでも奢ってくれ、安価で市場かどこかにある」
「あはは、いいよ」

 俺達はカバンを入手し、店を出て、その後にカナタに馬車の停留所を案内していたら、


「空が秋っぽくなってるわ」

 ミレナがそう言うので空を見上げた。

「うろこ雲だ」
「ほんとだー」
「あ、ねえ、あそこにガレット屋があるわよ」

 確かに小さな屋台のガレット屋があった。

「じゃあそこで、僕が奢るよ」


 穏やかでさわやかな休日になりそうだ。

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