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77 焼きもろこしとお弁当
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寝る前におにぎり弁当くらいは作っておく。
具は明太子と、しそ昆布と、ツナマヨだ。
明太子は辛いのが好きなジェラルドのために入れるから、肉の好きなミレナのためにウインナーも焼いて入れておく。
それとついでに玉子焼き。
よし、できた。
魔法のカバンに入れたら夏でも痛まないから助かると思いつつ弁当を三つしまった。
そして寝る!!
* *
俺は早朝に起きて、ミレナを起こす為に彼女の部屋の扉をノックした。
コンコン!
「ミレナ、そろそろ出発時間だぞ、起きて支度しろ」
シーン……。
起きてくる気配が無い。しかた無い。
突撃! 寝起きドッキリ!
起きなかったら布団剥ぐって俺はあらかじめ予告しておいたからな!
ベッドに歩み寄り、体の上にかけてあるブランケットに手をかけた。
「おらあ! 起きろ!」
バサアッとブランケットを剥ぎ取ると、ファ~オ!!
何故かセクシーな下着姿のミレナが!!
「服を着ろ!!」
動揺しつつまたブランケットを戻す俺。
「見たわね……」
「見てない! 少ししか!」
「責任とりなさいよー」
棒読みでニヤニヤ笑うミレナ。
これは確信犯!!
「これは巧妙な罠! お前が俺に起こせって言ったんだぞ!」
「チッ、分かったわよ~」
恐ろしい女だ。
俺はさっさとミレナの部屋から逃げるように出た。
ミラとラッキーを連れて玄関まで走った。
外に出るとジェラルドはもう、ルルエの準備をしていてくれた。
「はぁ、はぁ、はぁっ」
「どうした、ショータ、そんなに息を切らせて」
「ちょっと孔明、いや、巧妙な罠が……」
「性悪狐が何かやらかしたか」
ジェラルドは外にいたのに全てを把握したって顔をした。
「お待たせ~、フンフン♪」
何食わぬ顔で鼻歌まじりに着替えて出てきたミレナ。
こ、こいつ……!
「よし、皆、行くぞ」
「ワフ!」
気を取り直し、俺達はトウモロコシ畑に向かってまだ暗いうちからルルエに乗って走った。
ミラは俺の肩の上、ラッキーは走る気がないのか、ミレナの背中に立って張り付いてるし、前足はミレナの肩の上だ。
「なんなのよ、この犬」
彼女もそうは言いつつも、振り落としはしないから、まあいいか。
次第に空が明るくなっていくのを、ルルエの背中から眺めつつ、お弁当を食べるのが楽しみだなぁ、などど考えたりもして、先頭を走るジェラルドを追いかけた。
ルルエが頑張ってくれて、朝の七時くらいにはトウモロコシ畑についた。
かなりの広さだ。
トウモロコシ畑の側にある放牧場も雄大だ。
朝の日差しを受け、農場を取り囲む木の柵までがフォトジェニックな物に見えてくる。
絵画のように美しい。
おしゃれ系のSNSでも映えるだろうと、俺は写真を撮った。
ミラを柵の上に座らせたりもして、ラッキーやジェラルドやミレナの写真も撮った。
少しばかりの撮影会の後に、
「おはようございます」
トウモロコシ畑の所有者の初老の男性と息子らしき青年が現れた。
俺は元気よく挨拶をした。
「おはようございます! ジェラルドの紹介できました! 今日はよろしくお願いします!」
「「よろしく」」
皆で挨拶をして、トウモロコシ収穫作業に入った。
頭には撮影カメラ、背中にカゴを背負う農民スタイルで。
しばらく真面目にトウモロコシをひたすら収穫した。
そして、
「お腹すいたぁ」
ミレナがそうつぶやいたから、俺はいい知らせをやる。
「フハハ、お弁当があるぞ」
「やったー!」
よほど腹が減っていたのか、子供みたいに歓びを表すミレナ。
こやつはたまに可愛い。
顔はいつでも可愛いけど。
キャンプセットのテーブルなどを設置していたらジェラルドがトウモロコシを浅いザルのような籠に数本入れて来た。
「トウモロコシもそのへんで食べていいって言ってたぞ」
「よし、バーベキューセットで焼こう!」
コンロや網を設置し、トウモロコシの皮を剥き、軸の部分にだけアルミホイルを巻き、炭火で焼いて行く。
テーブルには魔法のカバンから取り出した弁当が三つ並び、そしてラッキーのご飯も取り出す。
するとミラがラッキーのご飯を皿に盛ってあげていた。
お世話が好きなのかな?
微笑ましい。
新鮮だし、何もつけずに焼いて食べても美味しいだろうが、せっかくなのでバターしょうゆもハケで塗ってから、遠火でじっくり焼いていく。
その間におにぎり弁当を食べる。
「今日のおにぎり美味しいな、わざわざ寝る前に作ってくれたのか」
「まあね、こういうとこで食う弁当は最高だし」
「フフ、卵焼きも美味しいわ。美味しいお弁当のご褒美をあげましょうか?」
尻尾をふりふりしつつ、流し目でそんな事を言ってくるミレナ。
また罠か!?
「な、なんか怖いから、辞退する」
「ヘタレ~。ところでおにぎりの具は全部違うの? これはツナマヨみたい」
良かった、軽くヘタレとディスられただけで話題が変わった!
「俺のは明太子だ」
「ツナマヨと明太子としそ昆布の三種だよ」
ややして、
「ヤバイ香りしてきたなぁ、たまらん」
「バターの仕業ね」
「香ばしい香りだ」
ついにいい感じにとうもろこしの焼き目がついた頃に、実食!
「めっちゃ甘くて美味しい!」
「採れたてはやはり格別だな」
「流石に美味しいわね」
ラッキーは自分のご飯を食べ終えてから、背中にミラを乗せて農園を楽しげに走り回った。
「き、騎乗スタイル!」
俺は慌ててカメラを向けた。
「元気ねー」
「ラッキーも広いとこで走り回って楽しそうだな」
俺はジェラルドのセリフを聞きつつ、改めてラッキーはやはり犬なんだな。
などと思ったりした。
~~~~ ここからは錬金術師のお話 ~~~~(錬金術師視点)
私は今日、オークションの為にエリクサーを持って開場に向かった。
主催側に出品物を預けるためだ。
受付の男が私に懐疑的な目を向けつつも、オークションの支配人を呼んだ。
その支配人と直接話しをすることにした。
「エリクサーですって? 錬金術師殿はそんな物を一体どこから?」
私はひとまず、一本だけエリクサーを出した。
「預かっただけですが、物がものだけに出どころは伏せたいのです。本物の鑑定はそちらにある魔法の眼鏡でできますでしょう?」
「とりあえず鑑定は当然いたしますが、物がものだけにどこゆらいの物か、少しは情報をくださらないとこちらも困ります」
ち、そうきたか。
でも当然とも言えるわね。
「支配人! このエリクサー! 本物と出ました!」
鑑定係が興奮して結果を伝えた。
「ど、どちら様から預かりましたか? ヒントだけでも」
「精神性が、聖者に近い方からですわ」
「聖者!?」
「聖者の精神に近いのです。何しろこれを出してお金にしたい理由が、貧しい子供達が命がけの仕事をする時に健康を害さないよう、守るための道具作りの資金にするとおっしゃったの」
「子供達…は、自分の子供ではなく?」
「そうです。赤の他人の子供達の為にエリクサーを出す人なんて、そうはいません。
普通はこのような宝物があれば王侯貴族に献上し、爵位や土地や自分の立身出世の為に使うじゃないですか」
「それは、確かに聖者の精神、なんという慈愛の心……」
支配人はエリクサーを見つめながら震えだした。
「あ、支配人! そういえば先日、酒場で聞いた話しですがね、船乗りの手か足かを蘇らせた奇跡を起こした聖者が現れたとか!
その時は酔っぱらいの戯言かと思いましたが、まさかそれって!」
受け付けが興奮しつつ、そんな情報まで付け加えてくれた。
「なるほど、聖者ゆらいのエリクサーか! これはいい値段がつくでしょう!」
私は聖者とは断言していない、聖者と精神性が近いと言っただけで。
勝手に相手が思い込んだだけ。
「実はエリクサーはあと六本ありますが、値段を上げたいので小出しにしたいのです」
「な、まだあるんですか!?」
「はい、厳重に保管してくださいね」
「も、もちろんですとも、信用に関わりますから! ところで聖者様はどちらにおられるのでしょうか?」
「お答えできません、静かに目立たぬようにしていたいらしくて私にこれを託されたので」
「どのみち聖者が現れたと知れば、聖国が探す為に騒ぎ出すと思いますが」
「そ、その時はその時ですわ」
具は明太子と、しそ昆布と、ツナマヨだ。
明太子は辛いのが好きなジェラルドのために入れるから、肉の好きなミレナのためにウインナーも焼いて入れておく。
それとついでに玉子焼き。
よし、できた。
魔法のカバンに入れたら夏でも痛まないから助かると思いつつ弁当を三つしまった。
そして寝る!!
* *
俺は早朝に起きて、ミレナを起こす為に彼女の部屋の扉をノックした。
コンコン!
「ミレナ、そろそろ出発時間だぞ、起きて支度しろ」
シーン……。
起きてくる気配が無い。しかた無い。
突撃! 寝起きドッキリ!
起きなかったら布団剥ぐって俺はあらかじめ予告しておいたからな!
ベッドに歩み寄り、体の上にかけてあるブランケットに手をかけた。
「おらあ! 起きろ!」
バサアッとブランケットを剥ぎ取ると、ファ~オ!!
何故かセクシーな下着姿のミレナが!!
「服を着ろ!!」
動揺しつつまたブランケットを戻す俺。
「見たわね……」
「見てない! 少ししか!」
「責任とりなさいよー」
棒読みでニヤニヤ笑うミレナ。
これは確信犯!!
「これは巧妙な罠! お前が俺に起こせって言ったんだぞ!」
「チッ、分かったわよ~」
恐ろしい女だ。
俺はさっさとミレナの部屋から逃げるように出た。
ミラとラッキーを連れて玄関まで走った。
外に出るとジェラルドはもう、ルルエの準備をしていてくれた。
「はぁ、はぁ、はぁっ」
「どうした、ショータ、そんなに息を切らせて」
「ちょっと孔明、いや、巧妙な罠が……」
「性悪狐が何かやらかしたか」
ジェラルドは外にいたのに全てを把握したって顔をした。
「お待たせ~、フンフン♪」
何食わぬ顔で鼻歌まじりに着替えて出てきたミレナ。
こ、こいつ……!
「よし、皆、行くぞ」
「ワフ!」
気を取り直し、俺達はトウモロコシ畑に向かってまだ暗いうちからルルエに乗って走った。
ミラは俺の肩の上、ラッキーは走る気がないのか、ミレナの背中に立って張り付いてるし、前足はミレナの肩の上だ。
「なんなのよ、この犬」
彼女もそうは言いつつも、振り落としはしないから、まあいいか。
次第に空が明るくなっていくのを、ルルエの背中から眺めつつ、お弁当を食べるのが楽しみだなぁ、などど考えたりもして、先頭を走るジェラルドを追いかけた。
ルルエが頑張ってくれて、朝の七時くらいにはトウモロコシ畑についた。
かなりの広さだ。
トウモロコシ畑の側にある放牧場も雄大だ。
朝の日差しを受け、農場を取り囲む木の柵までがフォトジェニックな物に見えてくる。
絵画のように美しい。
おしゃれ系のSNSでも映えるだろうと、俺は写真を撮った。
ミラを柵の上に座らせたりもして、ラッキーやジェラルドやミレナの写真も撮った。
少しばかりの撮影会の後に、
「おはようございます」
トウモロコシ畑の所有者の初老の男性と息子らしき青年が現れた。
俺は元気よく挨拶をした。
「おはようございます! ジェラルドの紹介できました! 今日はよろしくお願いします!」
「「よろしく」」
皆で挨拶をして、トウモロコシ収穫作業に入った。
頭には撮影カメラ、背中にカゴを背負う農民スタイルで。
しばらく真面目にトウモロコシをひたすら収穫した。
そして、
「お腹すいたぁ」
ミレナがそうつぶやいたから、俺はいい知らせをやる。
「フハハ、お弁当があるぞ」
「やったー!」
よほど腹が減っていたのか、子供みたいに歓びを表すミレナ。
こやつはたまに可愛い。
顔はいつでも可愛いけど。
キャンプセットのテーブルなどを設置していたらジェラルドがトウモロコシを浅いザルのような籠に数本入れて来た。
「トウモロコシもそのへんで食べていいって言ってたぞ」
「よし、バーベキューセットで焼こう!」
コンロや網を設置し、トウモロコシの皮を剥き、軸の部分にだけアルミホイルを巻き、炭火で焼いて行く。
テーブルには魔法のカバンから取り出した弁当が三つ並び、そしてラッキーのご飯も取り出す。
するとミラがラッキーのご飯を皿に盛ってあげていた。
お世話が好きなのかな?
微笑ましい。
新鮮だし、何もつけずに焼いて食べても美味しいだろうが、せっかくなのでバターしょうゆもハケで塗ってから、遠火でじっくり焼いていく。
その間におにぎり弁当を食べる。
「今日のおにぎり美味しいな、わざわざ寝る前に作ってくれたのか」
「まあね、こういうとこで食う弁当は最高だし」
「フフ、卵焼きも美味しいわ。美味しいお弁当のご褒美をあげましょうか?」
尻尾をふりふりしつつ、流し目でそんな事を言ってくるミレナ。
また罠か!?
「な、なんか怖いから、辞退する」
「ヘタレ~。ところでおにぎりの具は全部違うの? これはツナマヨみたい」
良かった、軽くヘタレとディスられただけで話題が変わった!
「俺のは明太子だ」
「ツナマヨと明太子としそ昆布の三種だよ」
ややして、
「ヤバイ香りしてきたなぁ、たまらん」
「バターの仕業ね」
「香ばしい香りだ」
ついにいい感じにとうもろこしの焼き目がついた頃に、実食!
「めっちゃ甘くて美味しい!」
「採れたてはやはり格別だな」
「流石に美味しいわね」
ラッキーは自分のご飯を食べ終えてから、背中にミラを乗せて農園を楽しげに走り回った。
「き、騎乗スタイル!」
俺は慌ててカメラを向けた。
「元気ねー」
「ラッキーも広いとこで走り回って楽しそうだな」
俺はジェラルドのセリフを聞きつつ、改めてラッキーはやはり犬なんだな。
などと思ったりした。
~~~~ ここからは錬金術師のお話 ~~~~(錬金術師視点)
私は今日、オークションの為にエリクサーを持って開場に向かった。
主催側に出品物を預けるためだ。
受付の男が私に懐疑的な目を向けつつも、オークションの支配人を呼んだ。
その支配人と直接話しをすることにした。
「エリクサーですって? 錬金術師殿はそんな物を一体どこから?」
私はひとまず、一本だけエリクサーを出した。
「預かっただけですが、物がものだけに出どころは伏せたいのです。本物の鑑定はそちらにある魔法の眼鏡でできますでしょう?」
「とりあえず鑑定は当然いたしますが、物がものだけにどこゆらいの物か、少しは情報をくださらないとこちらも困ります」
ち、そうきたか。
でも当然とも言えるわね。
「支配人! このエリクサー! 本物と出ました!」
鑑定係が興奮して結果を伝えた。
「ど、どちら様から預かりましたか? ヒントだけでも」
「精神性が、聖者に近い方からですわ」
「聖者!?」
「聖者の精神に近いのです。何しろこれを出してお金にしたい理由が、貧しい子供達が命がけの仕事をする時に健康を害さないよう、守るための道具作りの資金にするとおっしゃったの」
「子供達…は、自分の子供ではなく?」
「そうです。赤の他人の子供達の為にエリクサーを出す人なんて、そうはいません。
普通はこのような宝物があれば王侯貴族に献上し、爵位や土地や自分の立身出世の為に使うじゃないですか」
「それは、確かに聖者の精神、なんという慈愛の心……」
支配人はエリクサーを見つめながら震えだした。
「あ、支配人! そういえば先日、酒場で聞いた話しですがね、船乗りの手か足かを蘇らせた奇跡を起こした聖者が現れたとか!
その時は酔っぱらいの戯言かと思いましたが、まさかそれって!」
受け付けが興奮しつつ、そんな情報まで付け加えてくれた。
「なるほど、聖者ゆらいのエリクサーか! これはいい値段がつくでしょう!」
私は聖者とは断言していない、聖者と精神性が近いと言っただけで。
勝手に相手が思い込んだだけ。
「実はエリクサーはあと六本ありますが、値段を上げたいので小出しにしたいのです」
「な、まだあるんですか!?」
「はい、厳重に保管してくださいね」
「も、もちろんですとも、信用に関わりますから! ところで聖者様はどちらにおられるのでしょうか?」
「お答えできません、静かに目立たぬようにしていたいらしくて私にこれを託されたので」
「どのみち聖者が現れたと知れば、聖国が探す為に騒ぎ出すと思いますが」
「そ、その時はその時ですわ」
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