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48 タラサ

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「タラサ行きの方はここで下船となまーす!」

 数日間波に揺られ、ついに昼頃、島に着いた。ここか!
 まるでパプアニューギニア島みたいにキレイな島だった。


 そして高さ三メートルくらいある白い骨が海の中に続いているのが見えた。
 まるで大きな恐竜の骨格標本みたいな。


 船乗りが船から島を繋ぐ橋を下ろす。
 俺は下船しながらジェラルドに話しかけた。


「ジェラルド、あの骨は?」
「あの海龍の骨のトンネルを通って行けば海中の海底都市に行ける」
「隙間だらけの骨だけど!? あれだと水が入るのでは?」

「よく見ろ、結界魔法で水は骨の内部には入っていない」
「結界魔法!」

 確かに見えない壁で覆われたように骨の内部は水がない。

「あの海龍のアギトが入口ね」

 それは巨大な龍の口だった。

「そうだ、海底都市に攻め込むつもりの悪者はあの海龍のアギトに噛み砕かれる」
「そんなギミックまであるとは、あ、春画を描くようなスケベなおじさんは噛みますとかないよな?」 

「スケベなだけでは噛まれないと思うが、犯罪を犯すつもりがないなら」
「な、なるほど」

 かなりの緊張感をもたらす入口だ。
 もちろん犯罪は侵すつもりはないが、歓楽街の褐色美女のえちち映像は撮りたいんだが。

 ジェラルドが俺の隣で声を潜め、耳元で話しかけた。

「歓楽街ならば島の方にあるぞ……」
「よ、よかった、でもとりあえず海底神殿でミラの魔力の充電をせねば……」

「何こそこそしてるのよ」

 ミレナに突っ込まれた!

「なんでもない! 食事は島の方が良いのかな?」
「海を見ながらそこのレストランとかで食べたら良くないかしら?」
「そうだな、じゃあレストランに」 
「ショータがそれでいいなら俺もいいぞ」
 

 俺達はオーシャンビューの白い外観のレストランに来た。
 青い空と青い海に映える。

 思わず撮影もした。

 三人でウッドデッキのテーブル席についた。
 適当に焼魚のセットみたいな物を注文した。
 スープもついてる。

 皿の上に葉っぱのお皿! それに赤い焼魚が乗ってきた!


「ひゅー! タイの塩焼きだ! 美味そう!」
「美味しい、高そうなお味だわ」


 鯛だからじゃね!? 


「ショータ、このエビのスープ美味いぞ」
「あー、ほんとだ。海鮮のいい出汁が出てる」


 レストランで美味しい食事をいただいた。
 店の側の魚屋でキンメダイを購入し魔法のカバンに入れた。
 生姜と一緒に今度煮付けにでもして食おうかな。

「さて、いよいよアギトを通るぞ」

 スケベな本を描いてるせいで神の怒りに触れて噛まれないかドキドキする。
 真実の口に手を突っ込むより怖いぞ。
 お口が大きいから。

 俺はミラを抱っこしつつ早足でアギトをくぐった。いや、もはや下だけ見ながら小走りだった。

「ショータのびびり~」

 ミレナに背後から煽られるが、どうでもいい!
 アギトを無事に通過した!

 今はお口から先の骨ゾーン!
 歩く速度を落としたら二人が追いついてきた。


「ハァ、ハァ、無駄にドキドキしたぞ」
「だからスケベなくらいで噛まれないって」

 ジェラルドも苦笑してる。

「あ」
「なんだ!? ミレナ!」
「ほら、骨の外側、海とお魚! キレイよ!」
「!! ほんとだ」


 顔を上げると熱帯系にいそうな色鮮やかな魚が群れをなして泳いでた!


「見ろ、ショータ、あの岩の向こう」
「うん?」

 俺はジェラルドの指差す方向を見た、すると、


「人魚だ」
「すげえ! 本物!?」
「水中で平然としてるから本物よ」


 緑色の髪の美しい人魚がいた!
 凄い! ファンタジー映画みたいだ!
 感動だ! そしてカメラで撮影。

 しかし貝殻のブラってガチなんだな。
 でも痛くないのかな? 
 貝なら透けないだろうが布の方がいいと思うよ。


「あれってもしかして人魚姫?」
「姫は金髪でティアラをしてるからあれは姫ではない」


 この海には人魚の姫っているんだ!
 すげー!!

「あ、乗り物いたぞ」
「え?」
「あの柔らかそうなやつなの?」

 体の長いウミウシみたいな形の白い触手持ちの 生物が骨の中に数匹いた。わりとキレイ。
 スギノハウミウシにちょい似てる。


「歩くのが辛い人はあれに乗って行くんだ」
「乗ろう」


 俺はおじさんなので即決だった。


「大丈夫なの、あれ? 潰れない?」

 ミレナは不審げな眼差しで不思議生物を見てる。

「狐はケツがでかくて心配なのか? わりと丈夫だから心配するな」
「そ、そこまででかくないわよ!」
「以前壁にハマってたよな」
「記憶を失え! すぐに忘れなさい!」

「ははは、とりあえず行こうぜ」

 俺は二人を仲裁しながらウミウシ(仮)に乗ってみた。
 ぽよんとした弾力があった。


「お、これはなかなか柔らかくていい」
「ふーん、痛くはないわね」
「それでガロッポと言って足でこいつの腹を軽く叩けば早く移動する」
「マジか」


「ガロッポ!」

 ジェラルドはウミウシの腹を軽く叩いた。
 するとウミウシ?は水中を泳ぐようにササーッと移動した。



「あれ、マジで早い! ガロッポ!」
「ちょと、待ってよ! ガロッポ!」


 マジで掛け声と共に腹を軽く叩くと快速のバスみたいに走ってくれた。

「早ーい!」

 ミレナも思わず歓声をあげた。

「確かに早いな!」

 長い骨の中を進む。周囲がどんどん暗くなってきた。


「しかしジェラルド、この骨の通路は長すぎないか!?」
「長いのはいくつもの海龍の骨を繋ぎ合わせてあるからだ! でももうすぐ門が見えるぞ!」
「あ! ほんとだ! すげえ!」

「あれが海底都市ね!」
「そう、あれがタラサだ!」

 ドーム状に透明な壁に包まれた海底都市と門が見えた!!

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