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17 水の都、セイランヌへ

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 壁尻ちゃんが今度は触手ちゃんになっていたので俺はナタを奮って絡みついた植物の蔓を斬った。
 毎度おかしな目に遭っているな。

「あ、ありがとう、助かったわ」
「じゃあ俺たちはもう行くから」


 俺は魔法の鞄にナタをしまいながらそう言ったら狐ちゃんが興味を示してきた。


「どこに? 仕事?」
「旅行」
「前回の戦いでよほど稼いだみたいね? 旅行ってどこよ」

 まあね、お嬢様が金貨くれたし。俺は意気揚々と答えた。

「水の都! セイ……なんとかってとこだ」
「セイランヌですって!? まさか男二人で結婚でもするの!?」
「「しないが」」

 ジェラルドと俺のセリフが被った。


「別に見栄えするとこみたいだし、恋人同士や新婚さん以外が観光に行ってもいいだろうよ」

 俺がそう言うと、

「お、男二人で行くとこじゃないから、女の子の私がついてってあげるわ!」
「何、君暇なの?」


 こんな急に旅行に同行する女の子いる!?


「そんな事あなたに言われるとはね!」


 ミレナは自分の所属してた冒険者パーティーが解散して寂しいのかな? 仕方ないな。


「ジェラルド、俺は構わないけど、どうする?」
「勝手についてくる分には構わないが、旅費は自分で出せよ」


 女の子でも奢りませんとあらかじめ断るクールなジェラルド。


「分かってるわよ」

 ミレナの顔がぱあっと華やいだ。奢り無しでもだいぶ嬉しいみたいだ。
 まさかこの塩対応のジェラルドに惚れている? 顔が良すぎるから有り得なくもない。


 * *


 荷馬車に揺られ、ついに海に到着! 異世界の海も青くて綺麗だな!
 春風を感じながらウキウキと桟橋を歩く俺達。わりと大きな船が見える。
 せっかくなのでスマホで撮影した。


「ショータ着いたぞ、船着場だ」
「やった! この船に乗って水の都に行くんだな」

「そうだぞ」
「白い海鳥がいっぱい!」


 はしゃいで手を伸ばしつつジャンプするミレナにジェラルドがクールに言った。


「おい、手を伸ばすな、狐。狩ってる場合じゃないぞ」
「べ、別に狩ろうとしてない」


 本当か? 本能が疼いているように見えた。


 俺達はしばし異世界の船旅を満喫して、ついに水の都に到着した。
 青い空、青い海、おしゃれな西洋風の街並み、沢山の小舟、あれがゴンドラってやつか!
 あー映える!!

「水の都といえば、シーフードよ!」
「そういや海があるんだから、そうなるか」


 俺はミレナの言葉に頷いた。


「俺はエビが食いたいな」


 ジェラルドはエビが食いたいらしい。


「エビいいな! そんで俺はビール飲みたい、あ、エールって言うのかな?」
「お酒なら、あそこの店で海を見ながら食事もできるじゃない」


 ミレナが指差した先には雰囲気のいいレストランがあったので、そこに行った。

 レストランでエビとタコとブロッコリーのパスタがあったのでエールと一緒に注文してみた。
 ちなみにコッチではパスタをパアスタと言うらしい。
 異世界にも麺料理、あったんだな!! 
 味はやや薄味だったから、こそっと自前の調味料をふりかけた。


「何それ?」
「調味料、かけると美味しくなる」

「じゃあ私のにもかけて」
「俺にも」
「オッケー」

 俺は二人のパアスタにも赤いキャップの万能系調味料をふりかけた。


「確かに美味しくなった」


 ジェラルドの目がいつにも増して輝いてる。


「本当ね、その調味料を売ってよ人間」
「俺にはショータという名前があるんだよ、ミレナ」
「それ、売ってよ、ショータ」
「今度仕入れが出来たらちょっと分けるくらいなら考えておく」
「むー」 


 などと言いつつ、俺達は海鮮パスタを美味しく改造して食った。
 エールはぬるかったが、雰囲気効果で美味しく感じた。


 食後に街を少し散策。街ゆく人は確かにカップル的な人が多く見えた。
 あ、あのアーチ状の橋と鐘楼も映え。
 すかさずカメラで撮影。


「さて、そろそろ本命のゴンドラに乗ろうか、ショータ」
「おう! あ! 見てくれジェラルド! 美人なうさぎ獣人の船頭さんがあそこにいるぞ!」
「ふうん、ラビ族の女船頭か、構わないぞ」
「何よ、私の方が綺麗でかわいいのに」

 お? やきもちか? 狐ちゃん。

 俺達がゴンドラに乗ろうと桟橋に向かう途中で花売りの少女達が四人も駆け寄って来た。
 
「お花買いませんか!?」
「綺麗なお姉さんにお花を贈ると嬉しいと思います!」
「綺麗なエルフのお兄さんにお花を贈ってみては!?」
「お花安いですよ!」

 怒涛の勢いでプレゼンしてくる。何故か俺に向かって。
 しかし、確かに銀貨一枚で一籠全部買えるなら悪くない。

「じゃあ一籠全部貰おうか」
「あなたそんな無駄使いしていいの?」「そうだぞ、ショータ」
「無駄とは限らんさ」


 二人の心配をよそに、俺は四人の少女達から花を籠丸ごと買った。
 少女たちは一気に売れて嬉しそうに礼を言って去って行った。

「私、知らないからねー」
「元はとってみせる! 船頭さん、そのゴンドラを花で飾ってもいいですか? 
降りる前にちゃんと回収していきますので!」
「いいですよ!」

 よし! 俺は大急ぎでゴンドラに盛りだくさんの花を飾って華やかにした。


「見ろよ! この最高に映える船!」
「まあ、これは見事な花の船ね! あなたセンスいいじゃない!」
「確かに美しいな」

「さあ、撮影するから、ジェラルド乗ってくれ!」
 

 インス◯で見た! 花で飾られた綺麗な船! あれをいつか真似して写真を撮りたかったんだよ!


「ちょっと、そこは女の私じゃないの?」
「もちろん撮影可なら二人とも乗ればいい」
「サツエイがなにかわからないけど、乗るわ!」

 カメラの存在を知らないミレナだったが、乗るならOKって事だよな。
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