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98話: 帰宅とお風呂

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 途中、赤星に寄って、クリスをお迎えに行ってから、ようやく私達は家に帰って来た。

 ただいま! お家!

 今回はコウタの両親も連れて来た。
 二人に持ち家は無かったようだし、コウタも一緒にいたいだろうからね。

「さしあたって、私の使ってた元老夫婦の寝室をコウタの両親のお二人にお貸ししようかと」

「「え!?」」

 コウタの両親の驚きが仲良くハモった。


「そしたらカナデは、どこで寝るんだ?」

「今はガラクタ倉庫になってる屋根裏部屋を整理と掃除してから使うかな?って思ってるけど、さしあたっては離れのベッドがあるからそこで私は寝ようかと」

「いえ、オレが離れに行きマス、カナデ様はそのままで、主の部屋はご両親とも入ると思いマス」

「えー、話の腰を折ってすまないが、とりあえず、俺は離れに忘れて来た少しの荷物を持って帰る事にする」


 ラウルさんがやや気まずそうに挙手しつつそう言った。
 しまった、お待たせしてた!


「ラウルさん! 今回も大変お世話になりました! こちらは成功報酬となっております! 後日落ち着いたら生還パーティーをしますので! また遊びにでも来てください!」

「ああ、ありがとう」

 私は急いで冒険者のラウルさんに後払い分の成功報酬を渡した。

 報酬の入った袋を手に、ラウルさんは忘れ物の荷物を取りに行き、私はアイテムボックス内で預かった分もまとめて返却した。

 あ、当然騎士達や魔法使いの同行者の荷物は、神殿に着いた時には返却している。

 騎士達には突然の任務でスケジュール調整が大変だっただろうと、お土産におやつも渡した。
 おやつはコーヒークリーム入のブッセだ。
 スキルショップで買っておいたやつ。

 *

 話し合いの結果、今回はコウタと両親が離れで寝ると言う事になった。
 あそこがベッドが多いし、カーテンの仕切りもついているから。


 異世界で石化して離れ離れになっていたら、いきなり大きくなってる息子に、お母さんも戸惑うだろうから仕切りは欲しいよね。
 コウタはもう小さくないのだし。

 という訳で、寝る前にはリビングで親子で、わりと遅くまで今までの事を語らう気がしたので、そっとしておく事にした。

 つもる話があるだろう。


「あ、バタバタしてて忘れてた! 私、自室でステータス確認してくる!」

「カナデっち、子供部屋においでよ! サヤもレベルアップ気になるし、クリスもそばにいたそうだよ」

 気がつくとクリスが私の服の裾をそっと掴んでいる。
 やはり子供はご飯を作ってくれる存在に懐くのかもしれない。


「分かった。今回は本当に本当に、二人とも、ありがとうな。
……また後で」

 神妙な顔をしてお礼を言うコウタ。
 私と紗耶香ちゃんは親指をグッとして、いいって事よ! の意を伝えた。
 

 紗耶香ちゃんとクリスの部屋になっている元子供部屋に三人で移動した。
 ライ君は馬の様子を見て来ると庭に行った。


「あ、私、クレリックのレベルが上がってて、バジリスク討伐報酬に錬金で使える新しい錬金レシピが!」
「え!? 何? 何のレシピ?」 

「魔石で動く魔道レンジ、電子レンジの魔石版!」
「やった! 完成したらレンチンレシピ出来るじゃん!」
「だね! 多分食堂の仕事にも役に立つよ」

 紗耶香ちゃんと私はレンジに色めき立つ。
 クリスはレンジの意味が分からないだろうけど、私達が嬉しそうなので、なんか笑顔だった。

「そう言えばムラマサは、明日でいいかな」
「そうだね、コータ君も今日は家族とお話したいだろうし」



 子供部屋から一旦出た私達はリビングに顔を出してコウタに言った。

「コウタ、私達四人で風呂屋に行って来るよ」
「そうか、分かった」


 私と紗耶香ちゃんとライ君とクリスとで、お風呂屋に行くことにしたのだ。

 人が増えてお風呂の順番待ちが長くなりそうだから。

 馬小屋にいるライ君に一緒に風呂屋に行こうと声をかけた。
 御者だし。

 馬車を走らせながら、道中に私は質問した。


「ライ君は一人で男湯大丈夫?」
「何も問題アリマセン、もう慣れてイマス」


 コウタと何度も来てるから大丈夫なのね。

 風呂屋に到着し、馬車から降りた。

 風呂屋の入口をくぐると一日の汚れと疲れを取りに来た主婦などが沢山いて、命がけの戦場から日常に戻って来たなあ、ってほっとしたりした。

「あ! 風呂で思い出したけど、赤ちゃんの涙入の秘薬は石化して一年以内のものじゃないと効果無いって、ギルドで情報共有してた方がいいよね?」

 紗耶香ちゃんが風呂屋の脱衣所で、急にそう言った。

「あ、そうだね」


 あの時一瞬コウタの顔、絶望で真っ青になったし、震えてたもんね。
 洗い場でクリスの体を洗ってあげる。

「あわ、あわ!」

 スキルショップで、買った石鹸はよく泡立つし、良い香りがするので、クリスも喜んでいる。

「あら、いい石鹸ね?」

 などと周りの御婦人が声をかけてくれたので、紗耶香ちゃんがうちで扱ってる商品の石鹸です。
 と、セールストークをはじめた。
 仕事熱心だ、えらい。
 
 しかし、こうして顧客が増えていくのだな。


「ああ~、生き返る」


 浴槽の温かいお湯に浸かって、癒やされていく。

 風呂屋から帰ると、リビングでお母さんだけいて、先に風呂に入ったのか、暖炉の前で髪を乾かしていた。


「浩太の為に、危険な森まで突き合ってくれてすみません、そして、本当にありがとうございます」


 そんなお礼を改めて言われた。


「いえ、いえ、こちらも欲しいアイテムもゲットできましたし!」
「そうです、アタシ達も経験値入ったんで!」


 私と紗耶香ちゃんはそれぞれ得たものがあると主張した。


「ところで旦那さんとコータ君は?」
「一緒にお風呂に」
「あら! 久しぶりにあった息子の成長ぶりに驚くでしょうね!」


 私がそう言うと、

「もう驚き過ぎて、私は逆に冷静になってしまいました」

 コウタのお母さんの、真希さんはそんな事を笑いながら言った。
 ちなみにお父さんの名前は片桐悠人さんと言うらしいわ。
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