上 下
73 / 108

不思議な老人

しおりを挟む
「本格的な冬前になんとか小屋が完成したわね」

 完成したばかりの小屋を見てる私と紗耶香ちゃんとコウタ。

「二段ベッドもできたね、おめ~~」

 紗耶香ちゃんがおめでとうと言っても、ここで寝る予定の子供達は今、竹の食器を作ってる職人の所に見学に行っている。

「里親探しの方はどう?」
「もちろんやってる。まともな親を選ぶ為に慎重にな」
「そうだね、まずはトライアル期間を設けてその家に合うかちゃんと調べて虐める家族とかいないか調べないと」

「ああ、猫の里親探しでもトライアル期間ってあったな、そういえば。
農家から一人男の子が欲しいって来てるが、やっぱり働き手が欲しいんだろうな」

「そうさのう、でも時代的にもそれは普通でしょ。
仕事の手伝いして欲しいと思われてても、行った先で可愛がられないとは限らないわ。
某赤毛の三つ編みの少女のように」
「そうさのう……あそこ使用人にもちゃんとお茶の時間におやつも出してくれるんだよな」

「女の子のクリスちゃんには里親見つかるまでに私が膨らんだ袖の服を贈ってもいいわ」
「じゃあサヤは靴と、教会に通う時用の帽子とバスケットをあげよかな~~」

 小屋から出たら、冷たい風が吹いた。
 寒っ。

「あ~~ヒートテック欲しい~~」

 何故ならば、本格的な冬が怖いから~~。

「マジであっちの衣料品も買わせて欲しいよね~~」
「まあ、無いものねだりしててもな、子供達もそろそろ帰ってくる時間だ」
「ご飯、ご飯」
「あ、今日のご飯は何~~?」

 メニューは大抵食材仕入れ担当の私が決めてる。

「ビーフシチューだよ~~」
「やった~~! 肉だ~~!」

 たわいない事で、子供のように喜びを表す紗耶香ちゃんはかわいい。

「あ、帰って来た」

 ライ君の操る馬車が敷地に入って来た。

「ただいま~~!」
「ただいま帰りまシタ」
「お帰りなさい」
「みんな、お帰り~~!」

「お帰り! お前達男子の寝床が出来たぞ!」
「わーい!」
「やった~~!」
「中に入って見てもいい?」
「もちろんいいぞ」

 子供達がわらわらと集まって来て、嬉しそうに小屋を見る。
 二段ベッドに登ったりしてるのを私達は小さな窓から眺めた。
 あんまり広い小屋じゃないから全員入るのキツいのね。

 さて、子供達が新しい自分達の寝床を確かめている間に食事の用意。
 下準備はしてある。

 もうスキルショップで買ったシチューの素を入れて簡単に煮込めばすぐに完成する。
 私達と一緒に母屋で寝る女の子のクリスは小屋を一瞬だけ見て、キッチンに来て口を開いた。

「クリス、お手伝いする」
「ありがとう。じゃあテーブルを布巾で拭いてくれる?」
「うん!」
「サヤは~~、応援する~~」
「こら~~」

 パンを焼いているコウタが笑いながら紗耶香ちゃんを叱るふりをする。

「あはは。嘘でーす。サヤはサラダ作るね~~。このツナとコーンとレタスを使っていい?」
「いいよ~~」

やがて焼き立てパンのいい香りとビーフシチューの香る素敵な食卓を囲んで、皆で夕食。

「ご飯の後はちゃんと後片付けを手伝うんだぞ」
「「はーい」」

 里子に行った先で愛される子になる為に、ある程度の躾は必要だ。
 子供達は言えばちゃんと皿洗いなどをしてくれる。
 この調子なら、みないい子ですので~~と、紹介できるだろう。

 私達はいずれ危険なバジリスクの森へ行くから、その前には皆の里親を見つけてあげたい。
 全員が生きて帰れる保証は無いから……。


 * * *

 日々、修行をしながら、時は過ぎて、冬を迎えた。

 レベルアップ目指して、強くなる為の修行が忙しくて、食堂開店の目処がなかなか立たない、そんな中、ある日突然、一人の老人が食堂の店舗の方に来た。
 私は掃除の最中だった。
 
 そのお爺さんは、顔色は悪く、雨に濡れて震えていた。
 
「申し訳ない、一晩泊めていただけないだろうか?」

 私は明らかに違和感を感じた。
 宿屋に行けばいいのに、何故わざわざまだ開いてもいない食堂へ?

 とはいえ、具合の悪そうな老人を追い出す訳にもいかないし、私は日本にいた頃に見た、とある昔話を思い出していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

異世界召喚に巻き込まれたエステティシャンはスキル【手】と【種】でスローライフを満喫します

白雪の雫
ファンタジー
以前に投稿した話をベースにしたもので主人公の名前と年齢が変わっています。 エステティックで働いている霧沢 奈緒美(24)は、擦れ違った数人の女子高生と共に何の前触れもなく異世界に召喚された。 そんな奈緒美に付与されたスキルは【手】と【種】 異世界人と言えば全属性の魔法が使えるとか、どんな傷をも治せるといったスキルが付与されるのが当然なので「使えねぇスキル」と国のトップ達から判断された奈緒美は宮殿から追い出されてしまう。 だが、この【手】と【種】というスキル、使いようによっては非常にチートなものだった。 設定はガバガバ+矛盾がある+ご都合主義+深く考えたら負けである事だけは先に言っておきます。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

ボケ猫
ファンタジー
日々、異世界などの妄想をする、アラフォーのテツ。 ある日突然、この世界のシステムが、魔法やレベルのある世界へと変化。 夢にまで見たシステムに大喜びのテツ。 そんな中、アラフォーのおっさんがレベルを上げながら家族とともに新しい世界を生きていく。 そして、世界変化の一因であろう異世界人の転移者との出会い。 新しい世界で、新たな出会い、関係を構築していこうとする物語・・・のはず・・。

25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい

こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。 社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。 頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。 オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。 ※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...