48 / 108
庶民の我々、ついに伯爵令嬢に会う。
しおりを挟む
タコのお刺身と亀の手とワカメ入り味噌汁。
そして筑前煮と白米のご飯が今夜のメニューだった。
私は自宅の夕食時、恒例のミーティングで竹細工職人はどうやって探すかを議題に上げた。
「竹細工の下請けを探すってどうする? またポスターを作って募集かける?
それか雑貨屋とか木工工房のような所を探す?」
「ひとまず、水筒と器のサンプルをいくつか俺が作るんで、それから同じ物を作れる人を探す……雑貨屋に行って聞いてみるか?
食器とか作ってる職人がどっかにいるから商品が店に並んでる訳だし」
「分かった、じゃあまずコウタはサンプル制作を頑張って」
「ああ、まず糸ノコギリとノミセットとかも買う」
「あーね、ギコギコやって切るやつね。頑張って」
「あ、思い出した。今回はタコをお刺身で食べてるけど、たこ焼き器みたいなのも買ってくれると嬉しい」
「あー、たこ焼き器か、安いのあればいいけど……あ、これでいいか」
コウタはスキルショップを開いてポチポチと購入していった。
そんな事をしていると、コンコンと、扉のノック音と、おーい! と言うリックさんの声が聞こえた。
コウタはさっき買った物を速攻でアイテムボックス内にしまい込んだ。
そして玄関に向かい、扉を開けてお客様を迎え入れる。
「らっしゃ~せ~! リックさん、今日はラウルさんをつけてくれてあざました!」
紗耶香ちゃんが一番にお出迎えの声をかけた。
「おう! ん? なんか良い匂いする」
「ちょうど夕飯を食べてたので、バンブーの情報料も払わないとだし、良ければ一緒にどうぞ」
私もおもてなしをしよう。
「やった! 飯時に間に合った! あ、お貴族様の件だが、やっぱりまた胡椒が欲しいらしいぞ」
「はい! 在庫を用意してきます!」
私は玄関から自室へ向かった。
そしてこっそりとスキルショップを開いて胡椒をひとまず30個仕入れた。
「ひとまず30個在庫ありました~~」
私は胡椒の小袋をトレイに乗せて、リビングに運び、舞い戻った。
リックさんはすでに食卓に着席していて、テーブルにはコウタがリックさんの目の前に料理を並べていた。
「おう、もう胡椒は揃っていたのか。
お貴族様だし、当然全部買い取るだろうけど、すまないが今は俺の方で金貨の持ち合わせが無い。
お前達、引っ越したばかりで忙しそうだったし、既に用意があると思ってなかった」
「あはは! そうでしたか!」
私は笑って誤魔化した。仕入れが爆速過ぎた。
胡椒はひとまず傍に置いた。
「今度お前達が貴族に直接納品に行って顔を売っとくか?
化粧品も売りたいんだろ?」
わ! ついに来た!
「ついに……貴族と会う時が来てしまったか」
「緊張する~~」
「でもせっかく綺麗目の服も買ったしね、気合い入れて行こう!」
私達三人は緊張しつつもやる気を見せた。
金の匂いには敏感なので。
「ところで、これ食っていいのか?」
「あ、どうぞ、どうぞ、これが煮物で、こっちがタコの刺身、ご飯と味噌汁です」
「煮物……美味いな」
シンプルに美味いよね。筑前煮。
「こっちのタコの刺身はこの黒い醤油をかけて食べて下さい」
「……良い歯応えと弾力」
元の世界で見た目からして悪魔みたいに見えるタコを食べる事を嫌がる外国人もいるけど、冒険者はそんな贅沢な食わず嫌いはあまりしないようだ、普通に食べてる。
オオコウモリがイケるならタコだって……多分イケる。
「汁物も貝から良い出汁が出てて、美味しいですよ」
コウタがせっせとリックさんに本日の料理を勧めている。
「本当だ、美味いよ、これ」
「そうでしょう。俺もそう思います」
ははは、自分達で作った物だけどね。
リックさんは満足そうに出された物を綺麗に完食した。
「じゃあ、お前達も、後日俺と一緒にスキア伯爵令嬢に会いに行くって事でいいな?」
ファイナルアンサー!
「はい」
「了解しました」
「りょ……いえ、分かりました」
後日我々もとうとう自ら貴族の屋敷に胡椒を届けに行くって事で話はまとまって、リックさんは帰っていった。
私はリビングのテーブルの上に、海での戦利品の羽根とカッターナイフを並べた。
「カナデっち、カッターナイフで何するの?」
「例の海鳥の白い羽根で羽根ペンをね、先っぽを加工しないと字が細く綺麗に書けないから」
「あーね。なる。
サヤは羽根飾り用にリボンや造花が欲しいな。
こっちにも造花って有るのかな」
「貴族がいるなら普通にあると思ったけど、どうなんだろ?
あ、ついに貴族に会うんだった。
敬語ですわよ、サヤ嬢」
「ええ、もちろん気をつけますわよ。
お貴族様に無礼があってはこの首が飛んでしまいますもの。
ホホホ。
うわ、怖」
冗談っぽくそんな事を言いつつも、その時に備えて、紗耶香ちゃんは風呂上がりの素肌に乳液を塗りこんで念入りにケアしている。
もちろん貴族に売り込む為に、売り物用の化粧品もしっかりと準備した。
* *
貴族のお嬢様に会う日が来た。当日、家の前まで馬車の迎えが来てくれて、親切だった。
しばらく馬車に揺られ、我々は伯爵家に到着した。
流石伯爵家! お屋敷がでかい! 豪華で立派!
本物のメイドや執事がいる!
感動だわ~~。
「こちらでお待ちください」
私達はメイドさんに通されたお部屋で、行儀よくお嬢様が来るのを待つ。
ややして執事が扉を開き、伯爵令嬢登場! うわ! 美人!
「初めまして。当方、商人をやっております。コウタと申します。
以後、よろしくお願いいたします」
コウタが先に挨拶してくれた、私もしっかりしなきゃ!
「スキア伯爵令嬢にご挨拶申しあげます。
私の個人名は奏と申します。
我々は屋号も暫定的によろず屋と名乗っております若輩者ですが、よろしくお願いいたします」
「初めまして、本日はお招きありがとうございます。
名をサヤと申します。
お会いできて光栄でございます」
「よろず屋の皆さん、今日は招待に応じて下さってありがとう。
あまり硬くならずに、気楽に接してちょうだい」
そうもいかんやろ!
でも気さくな雰囲気の伯爵令嬢で良かった!
そして筑前煮と白米のご飯が今夜のメニューだった。
私は自宅の夕食時、恒例のミーティングで竹細工職人はどうやって探すかを議題に上げた。
「竹細工の下請けを探すってどうする? またポスターを作って募集かける?
それか雑貨屋とか木工工房のような所を探す?」
「ひとまず、水筒と器のサンプルをいくつか俺が作るんで、それから同じ物を作れる人を探す……雑貨屋に行って聞いてみるか?
食器とか作ってる職人がどっかにいるから商品が店に並んでる訳だし」
「分かった、じゃあまずコウタはサンプル制作を頑張って」
「ああ、まず糸ノコギリとノミセットとかも買う」
「あーね、ギコギコやって切るやつね。頑張って」
「あ、思い出した。今回はタコをお刺身で食べてるけど、たこ焼き器みたいなのも買ってくれると嬉しい」
「あー、たこ焼き器か、安いのあればいいけど……あ、これでいいか」
コウタはスキルショップを開いてポチポチと購入していった。
そんな事をしていると、コンコンと、扉のノック音と、おーい! と言うリックさんの声が聞こえた。
コウタはさっき買った物を速攻でアイテムボックス内にしまい込んだ。
そして玄関に向かい、扉を開けてお客様を迎え入れる。
「らっしゃ~せ~! リックさん、今日はラウルさんをつけてくれてあざました!」
紗耶香ちゃんが一番にお出迎えの声をかけた。
「おう! ん? なんか良い匂いする」
「ちょうど夕飯を食べてたので、バンブーの情報料も払わないとだし、良ければ一緒にどうぞ」
私もおもてなしをしよう。
「やった! 飯時に間に合った! あ、お貴族様の件だが、やっぱりまた胡椒が欲しいらしいぞ」
「はい! 在庫を用意してきます!」
私は玄関から自室へ向かった。
そしてこっそりとスキルショップを開いて胡椒をひとまず30個仕入れた。
「ひとまず30個在庫ありました~~」
私は胡椒の小袋をトレイに乗せて、リビングに運び、舞い戻った。
リックさんはすでに食卓に着席していて、テーブルにはコウタがリックさんの目の前に料理を並べていた。
「おう、もう胡椒は揃っていたのか。
お貴族様だし、当然全部買い取るだろうけど、すまないが今は俺の方で金貨の持ち合わせが無い。
お前達、引っ越したばかりで忙しそうだったし、既に用意があると思ってなかった」
「あはは! そうでしたか!」
私は笑って誤魔化した。仕入れが爆速過ぎた。
胡椒はひとまず傍に置いた。
「今度お前達が貴族に直接納品に行って顔を売っとくか?
化粧品も売りたいんだろ?」
わ! ついに来た!
「ついに……貴族と会う時が来てしまったか」
「緊張する~~」
「でもせっかく綺麗目の服も買ったしね、気合い入れて行こう!」
私達三人は緊張しつつもやる気を見せた。
金の匂いには敏感なので。
「ところで、これ食っていいのか?」
「あ、どうぞ、どうぞ、これが煮物で、こっちがタコの刺身、ご飯と味噌汁です」
「煮物……美味いな」
シンプルに美味いよね。筑前煮。
「こっちのタコの刺身はこの黒い醤油をかけて食べて下さい」
「……良い歯応えと弾力」
元の世界で見た目からして悪魔みたいに見えるタコを食べる事を嫌がる外国人もいるけど、冒険者はそんな贅沢な食わず嫌いはあまりしないようだ、普通に食べてる。
オオコウモリがイケるならタコだって……多分イケる。
「汁物も貝から良い出汁が出てて、美味しいですよ」
コウタがせっせとリックさんに本日の料理を勧めている。
「本当だ、美味いよ、これ」
「そうでしょう。俺もそう思います」
ははは、自分達で作った物だけどね。
リックさんは満足そうに出された物を綺麗に完食した。
「じゃあ、お前達も、後日俺と一緒にスキア伯爵令嬢に会いに行くって事でいいな?」
ファイナルアンサー!
「はい」
「了解しました」
「りょ……いえ、分かりました」
後日我々もとうとう自ら貴族の屋敷に胡椒を届けに行くって事で話はまとまって、リックさんは帰っていった。
私はリビングのテーブルの上に、海での戦利品の羽根とカッターナイフを並べた。
「カナデっち、カッターナイフで何するの?」
「例の海鳥の白い羽根で羽根ペンをね、先っぽを加工しないと字が細く綺麗に書けないから」
「あーね。なる。
サヤは羽根飾り用にリボンや造花が欲しいな。
こっちにも造花って有るのかな」
「貴族がいるなら普通にあると思ったけど、どうなんだろ?
あ、ついに貴族に会うんだった。
敬語ですわよ、サヤ嬢」
「ええ、もちろん気をつけますわよ。
お貴族様に無礼があってはこの首が飛んでしまいますもの。
ホホホ。
うわ、怖」
冗談っぽくそんな事を言いつつも、その時に備えて、紗耶香ちゃんは風呂上がりの素肌に乳液を塗りこんで念入りにケアしている。
もちろん貴族に売り込む為に、売り物用の化粧品もしっかりと準備した。
* *
貴族のお嬢様に会う日が来た。当日、家の前まで馬車の迎えが来てくれて、親切だった。
しばらく馬車に揺られ、我々は伯爵家に到着した。
流石伯爵家! お屋敷がでかい! 豪華で立派!
本物のメイドや執事がいる!
感動だわ~~。
「こちらでお待ちください」
私達はメイドさんに通されたお部屋で、行儀よくお嬢様が来るのを待つ。
ややして執事が扉を開き、伯爵令嬢登場! うわ! 美人!
「初めまして。当方、商人をやっております。コウタと申します。
以後、よろしくお願いいたします」
コウタが先に挨拶してくれた、私もしっかりしなきゃ!
「スキア伯爵令嬢にご挨拶申しあげます。
私の個人名は奏と申します。
我々は屋号も暫定的によろず屋と名乗っております若輩者ですが、よろしくお願いいたします」
「初めまして、本日はお招きありがとうございます。
名をサヤと申します。
お会いできて光栄でございます」
「よろず屋の皆さん、今日は招待に応じて下さってありがとう。
あまり硬くならずに、気楽に接してちょうだい」
そうもいかんやろ!
でも気さくな雰囲気の伯爵令嬢で良かった!
51
お気に入りに追加
441
あなたにおすすめの小説
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ
ボケ猫
ファンタジー
日々、異世界などの妄想をする、アラフォーのテツ。
ある日突然、この世界のシステムが、魔法やレベルのある世界へと変化。
夢にまで見たシステムに大喜びのテツ。
そんな中、アラフォーのおっさんがレベルを上げながら家族とともに新しい世界を生きていく。
そして、世界変化の一因であろう異世界人の転移者との出会い。
新しい世界で、新たな出会い、関係を構築していこうとする物語・・・のはず・・。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる