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新居でおもてなし。
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「ついに引っ越したようだが、これからも市場で商売をするのか?」
ラウルさんが市場の店舗まで様子見に来てくれた。
「昔食堂やってた店舗付きの家だったので、お掃除などが終えたら冬や雨の日は主にそっちでやるつもりです。ごく稀に市場に出店もあるかもしれませんけど、秋の間は多分市場にいます」
「掃除か、手伝いに行こうか?」
「え、お忙しいのでは!?」
「時間の方は大丈夫だ、何しろ命の恩人の家だからな、多少は手伝おうと思っている」
もう森で護衛もしてもらっていますよ!
「ウチ、男手一人しかいないんでぇ~、正直助かりマス!」
「さ、紗耶香ちゃん!」
串焼きの串を刺していた紗耶香ちゃんが急に会話に混ざって来た。
「分かった、ひと仕事終えてから引っ越し先に手伝いに行く」
「あ、ありがとうございます」
「ラウルさん、あざーす!」
「ラウルさんは義理がたいな」
ラウルさんは串焼きを5本とハンバーガー五個を買って行った。
今日はリックさんはお見えにならなかった。
忙しいのだろう。
胡椒の事も頼んでるし。
* *
「うえ~~い! しごおわ!」
「本日の営業は終了致しました。なお、冬営業は自宅側の店舗で行う予定です。
何卒よろしくお願いいたします」
「まあ、冬は仕方ないな。寒いしな」
「ご理解いただき、誠にありがとうございます」
ハイテンションな紗耶香ちゃんと違い、お店に流れるアナウンスの如き、真面目なコウタの喋り。
「コータ君のアナウンス、何かウケル」
「お客様、結構優しいね」
「冬はお客さんも市場通いは辛いからかなぁ?」
「何にせよ、気合いが足りんって怒られずに助かった。よし、片付けて撤収!」
*
私達は仕事帰りに市場で雑貨や食材などを買い足し、乗り合い馬車で帰路につく。
「あれ? 庭に誰かいる」
夕焼けの中、庭に数個放置してある木箱を椅子代わりに座っている二人の成人男性が見えた。
「あ、リックさんとラウルさんだ! まさか、掃除の手伝いに!?」
「お~~! 帰って来た!」
リックさんが元気よく手を振って声をかけてくれた。
「お二人共、すみません、今日来られるとは、待ちましたか?」
「胡椒の売り上げを持って来たんだよ、金額わりとでかいから早く渡したくてな」
やった! リックさんに預けていた胡椒が貴族に売れたんだ!
「ああ、わざわざすみません、ありがとうございます!」
「あざす!」
「ありがとうございます!」
そう言えば、この世界、銀行的なものはあるのかな?
「なかなか良い家だな」
ラウルさんに褒められた。
「はい、リックさんの紹介です、とりあえず中へどうぞ。
まだ最低限しか掃除できてませんけど」
コウタが二人を家に招いた。
私もお茶とお茶菓子でも出そうと、紗耶香ちゃんに何がいいか聞いてみた。
「お菓子とお茶は何が良いと思う?」
「本人達に甘いのと塩味、どっちが良いか聞けば良いんじゃね?」
と、シンプルな答えが返ってきた。
確かに。
「お菓子だと、甘いのと塩味、どちらが良いですか?」
「うーん、今日は歩き回ってちょい疲れたから塩?」
「俺も」
「かしこまりました」
私は一旦席を外し、塩味のポテトチップスと醤油味のお煎餅を購入した。
お茶は、緑茶とコーラの二種にした。
「へえ、見事な緑色……綺麗なお茶だな」
リックさんはまず緑茶を手に取って見てる。
「こっちの黒いのは大丈夫なのか? 泡も立ってる」
「その黒いの、コーラって言って、マジ美味なんで、飲んでみると良いですよぉ」
そう言いつつ、これらは安全ですよのアピールで我々も同じ物を飲む。
それを見て、彼らも飲み物に口をつけた。
「炭酸なので、口の中で先日のサイダーみたいにシュワシュワします」
「本当だ、美味い」
ラウルさんは私と同じコーラを飲み、醤油煎餅を手に取った。
「この、緑色のお茶もさっぱりした味で芋を薄く切って揚げたやつもパリパリで美味いな」
「リック、この黒い飲み物も甘いけど美味いぞ。しょっぱいお菓子も」
「……本当だ、どっちも甘いし、美味い。あ、そうだ、売り上げ金」
リックさんは鞄から金貨の入った袋を出して来て、確認しろとテーブルにどさりと置いた。
「あ、そうだったわ」
私はおもてなしに夢中になっていて、胡椒の売り上げを忘れてた。
……ゴクリ。思わず生唾飲んだ。
「何しろ人前でこんな金貨いっぱいの袋は出せないだろう? だから家まで持って来た」
「「ありがとうございます!」」
「あざまし!」
袋からジャラジャラと金貨が出て来る。 ワーオ!!
「わー! 金貨がいっぱい! テンアゲ!」
「本当~~!!」
「だが、これから家の支払いも有る」
「あ、そうだった」
金貨の枚数をしっかり数えてから、お支払い。
「ではこれから家の代金分をまた返します」
「おう。じゃあこれ、家の元の所有者に渡しとく」
「金の受け取りに本人が来なくて良かったんですか?」
私はけっこうな大金のやり取りなのでドキドキしながら聞いた。
「老人なんで移動がキツイんだろう、取引き代行は信頼して任せてくれてる」
「ああ、そう言えば老夫婦の家でしたね」
「じゃあ、夕飯前にちょっと店舗の掃除を手伝うぞ」
「俺はすまんがすぐに金を渡しに行って来る。またな!」
リックさんはお金を渡しに行く為にまた出て行った。
「リックさん、もう暗くなるのに何も今から行かなくても」
「リックの流儀的に、取引きは迅速に。って事なんだろう」
ラウルさんはお外がどんどん暗くなるのに掃除を手伝ってくれる。
「今日はもう遅いので、ここで夕食を食べて、泊まって行って下さい、リビングに布団敷けますから」
私がそう言うと、コウタが口を開いた。
「俺のゲストルームは一応二人寝れるぞ。まだベッドが二つあるから」
「じゃあ、コウタと同じ部屋にやっかいになるか」
「はい」
え、ラウルさんとコウタが同室でお泊まりとか、羨ましい!
──いや、でも、ラウルさんと私だと緊張して寝れなくなるか……。
ラウルさんが市場の店舗まで様子見に来てくれた。
「昔食堂やってた店舗付きの家だったので、お掃除などが終えたら冬や雨の日は主にそっちでやるつもりです。ごく稀に市場に出店もあるかもしれませんけど、秋の間は多分市場にいます」
「掃除か、手伝いに行こうか?」
「え、お忙しいのでは!?」
「時間の方は大丈夫だ、何しろ命の恩人の家だからな、多少は手伝おうと思っている」
もう森で護衛もしてもらっていますよ!
「ウチ、男手一人しかいないんでぇ~、正直助かりマス!」
「さ、紗耶香ちゃん!」
串焼きの串を刺していた紗耶香ちゃんが急に会話に混ざって来た。
「分かった、ひと仕事終えてから引っ越し先に手伝いに行く」
「あ、ありがとうございます」
「ラウルさん、あざーす!」
「ラウルさんは義理がたいな」
ラウルさんは串焼きを5本とハンバーガー五個を買って行った。
今日はリックさんはお見えにならなかった。
忙しいのだろう。
胡椒の事も頼んでるし。
* *
「うえ~~い! しごおわ!」
「本日の営業は終了致しました。なお、冬営業は自宅側の店舗で行う予定です。
何卒よろしくお願いいたします」
「まあ、冬は仕方ないな。寒いしな」
「ご理解いただき、誠にありがとうございます」
ハイテンションな紗耶香ちゃんと違い、お店に流れるアナウンスの如き、真面目なコウタの喋り。
「コータ君のアナウンス、何かウケル」
「お客様、結構優しいね」
「冬はお客さんも市場通いは辛いからかなぁ?」
「何にせよ、気合いが足りんって怒られずに助かった。よし、片付けて撤収!」
*
私達は仕事帰りに市場で雑貨や食材などを買い足し、乗り合い馬車で帰路につく。
「あれ? 庭に誰かいる」
夕焼けの中、庭に数個放置してある木箱を椅子代わりに座っている二人の成人男性が見えた。
「あ、リックさんとラウルさんだ! まさか、掃除の手伝いに!?」
「お~~! 帰って来た!」
リックさんが元気よく手を振って声をかけてくれた。
「お二人共、すみません、今日来られるとは、待ちましたか?」
「胡椒の売り上げを持って来たんだよ、金額わりとでかいから早く渡したくてな」
やった! リックさんに預けていた胡椒が貴族に売れたんだ!
「ああ、わざわざすみません、ありがとうございます!」
「あざす!」
「ありがとうございます!」
そう言えば、この世界、銀行的なものはあるのかな?
「なかなか良い家だな」
ラウルさんに褒められた。
「はい、リックさんの紹介です、とりあえず中へどうぞ。
まだ最低限しか掃除できてませんけど」
コウタが二人を家に招いた。
私もお茶とお茶菓子でも出そうと、紗耶香ちゃんに何がいいか聞いてみた。
「お菓子とお茶は何が良いと思う?」
「本人達に甘いのと塩味、どっちが良いか聞けば良いんじゃね?」
と、シンプルな答えが返ってきた。
確かに。
「お菓子だと、甘いのと塩味、どちらが良いですか?」
「うーん、今日は歩き回ってちょい疲れたから塩?」
「俺も」
「かしこまりました」
私は一旦席を外し、塩味のポテトチップスと醤油味のお煎餅を購入した。
お茶は、緑茶とコーラの二種にした。
「へえ、見事な緑色……綺麗なお茶だな」
リックさんはまず緑茶を手に取って見てる。
「こっちの黒いのは大丈夫なのか? 泡も立ってる」
「その黒いの、コーラって言って、マジ美味なんで、飲んでみると良いですよぉ」
そう言いつつ、これらは安全ですよのアピールで我々も同じ物を飲む。
それを見て、彼らも飲み物に口をつけた。
「炭酸なので、口の中で先日のサイダーみたいにシュワシュワします」
「本当だ、美味い」
ラウルさんは私と同じコーラを飲み、醤油煎餅を手に取った。
「この、緑色のお茶もさっぱりした味で芋を薄く切って揚げたやつもパリパリで美味いな」
「リック、この黒い飲み物も甘いけど美味いぞ。しょっぱいお菓子も」
「……本当だ、どっちも甘いし、美味い。あ、そうだ、売り上げ金」
リックさんは鞄から金貨の入った袋を出して来て、確認しろとテーブルにどさりと置いた。
「あ、そうだったわ」
私はおもてなしに夢中になっていて、胡椒の売り上げを忘れてた。
……ゴクリ。思わず生唾飲んだ。
「何しろ人前でこんな金貨いっぱいの袋は出せないだろう? だから家まで持って来た」
「「ありがとうございます!」」
「あざまし!」
袋からジャラジャラと金貨が出て来る。 ワーオ!!
「わー! 金貨がいっぱい! テンアゲ!」
「本当~~!!」
「だが、これから家の支払いも有る」
「あ、そうだった」
金貨の枚数をしっかり数えてから、お支払い。
「ではこれから家の代金分をまた返します」
「おう。じゃあこれ、家の元の所有者に渡しとく」
「金の受け取りに本人が来なくて良かったんですか?」
私はけっこうな大金のやり取りなのでドキドキしながら聞いた。
「老人なんで移動がキツイんだろう、取引き代行は信頼して任せてくれてる」
「ああ、そう言えば老夫婦の家でしたね」
「じゃあ、夕飯前にちょっと店舗の掃除を手伝うぞ」
「俺はすまんがすぐに金を渡しに行って来る。またな!」
リックさんはお金を渡しに行く為にまた出て行った。
「リックさん、もう暗くなるのに何も今から行かなくても」
「リックの流儀的に、取引きは迅速に。って事なんだろう」
ラウルさんはお外がどんどん暗くなるのに掃除を手伝ってくれる。
「今日はもう遅いので、ここで夕食を食べて、泊まって行って下さい、リビングに布団敷けますから」
私がそう言うと、コウタが口を開いた。
「俺のゲストルームは一応二人寝れるぞ。まだベッドが二つあるから」
「じゃあ、コウタと同じ部屋にやっかいになるか」
「はい」
え、ラウルさんとコウタが同室でお泊まりとか、羨ましい!
──いや、でも、ラウルさんと私だと緊張して寝れなくなるか……。
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