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ミステリアスな魔道具店。

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帰り道に歩きながら紗耶香ちゃんが見つけたどんぐりの殻を剥いて食べてみた。
生食可能らしいので。

「このどんぐり、普通にピーナッツみたいに美味しいじゃん」
「いいおやつになる、得したな」
「本当だ、紗耶香ちゃん、お手柄~~。私なんか草刈っただけよ」

 草!

「そういやカナデっち、家帰ってからあの草で椅子作るの?」

「休憩所用の椅子が中古で安く有れば、草は焚き付け用にしてもいいんだけどね。
商人さんの家からよそに移るなら、多分魔道具の冷蔵庫やオーブンとか生活用品を買い直す必要があるし、店で品物を見るだけ見て、めぼしだけ付けてても良いかも」

 じゃあ帰宅前に魔道具屋に寄るかって意見にまとまった。


 森を抜けて、私達はそのままリックさん達の案内で魔道具屋を教えて貰い、魔道具屋に到着。

 かつてネットの写真で見たエジプトのモザイクランプ店みたいに幻想的な雰囲気が有る。

 魔道具屋は電気の代わりに魔石を動力とした不思議な道具が沢山あって、ファンタジー好きにはワクワクする場所だった。

 魔石で灯りを灯すランタンも沢山有る。

 差し当たって欲しいのは冷蔵庫や冷凍庫だ。
 アイテムボックス内に入れたら食材などは腐らないにしても、冷やして使いたい物はある。

 冷蔵庫にコンロ、オーブンなどを見て値段等を確認した。
 

「良いお値段だけど、胡椒が沢山売れたらイケルよね」


 私は胡椒が金貨になる様を想像して言った。


「そう言えば、俺達が今いるこの地って貴族の領地って事ですか」
「そうだ、今まで知らなかったのか、ここはスキア伯爵領だぞ」


 コウタの言葉にリックさんがやや呆れながら言った。

 私は異世界だなあって思ってて、国名がバルド国って情報だけ入れて、誰の領地とかって言うを気にしていなかった。
 最初の村は第一村人情報でビニゴ村とか言ってたのは覚えているんだけど。

 紗耶香ちゃんがしれっと冷蔵庫などの値段をメモる代わりに値札の写真をスマホで撮影してた。


「これでおけまる」


 OKって意味ね。

「水木さん、念の為、万が一、貴族の方と話す時は、頑張って敬語を使ってくれる?
俺達しかいない普段はいつもの口調でいいけど、不敬罪で無礼打ちは嫌だろう?」

「コウタ、大丈夫よ、紗耶香ちゃんは女優よ、良いとこの令嬢の役! って言っておけば……大丈夫ですわよね?」


 私は後半芝居かがった口調で紗耶香ちゃんに問いかけた。

「おほほ! よくってよ!」

 のってきた。

「随分高飛車なお嬢様だ、出来れば礼儀正しい清楚可憐系のお嬢様で頼みます」
「それならまずは~~綺麗目のドレスとか着せてくれないと~~」
「う、形から入るタイプか」

「まあ、リックさんルートで胡椒が売れたら綺麗目ワンピースくらい買えるでしょ。
あるいはブラウスは制服のがあるし、丈の長いエレガントなスカートとか、いい感じに合わせられるの今度探してみよ」

「りょ」

「じゃあ、今回は森での護衛とこの店の案内、ありがとうございました」
「お祭りの時は何時頃、迎えに行けば良い? 緑の屋根の商人の家だよな」
「えっと、昼ちょっと前あたりで」
「分かった」

 そういえばお祭りデートがあった!
 11時くらいならお祭の屋台でお昼ご飯に出来て良いかなって思った。

「胡椒の受け渡しもお前達が今住んでるとこでいいのか?」

 リックがコウタの方を見て言った。
 三人の中で唯一の男子なので代表者だと思ってるんだろう。
 別に良いけど。

「そうですね、そんなに重い物でもないので、リックさんが大丈夫なら今の家で」
「了解した。とりあえず伯爵令嬢に面会申請をして話をつけておくし、引っ越し先も俺とラウルで探しておく」

「「何から何まですみません、ありがとうございます」」

 私とコウタのセリフが見事に被った。

「あざす!」

「リックは人の世話焼くのが好きだから気にするな」
「はは、お互い様なんだよなあ」

 ラウルさんはわざわざ病人のお友達を心配してお見舞いに行くような人なんだよね。
 感染る病気かもしれないのに。

 徳が積めそうな優しい人達だなぁ。


 * 

 商人さんの家に帰宅してから、私は家の前のウッドデッキの上で葦っぽい植物をアイテムボックスからわさっと取り出し、椅子を試作品でひとまず一個作ってみたりした。

 魔道具屋には寄ったけど、中古の家具屋に寄るのを忘れたのだ。

「まあまあの出来では? ちゃんと座れるし、痛く無いし」
「サヤも座ってみてもいい?」
「どうぞ、マドモアゼル」
「なかなかの出来ですわね」

「ドレスが無くてもお嬢様ごっこが出来るじゃ無いか」
「バレたわ。ウケる~~」

 コウタに聞きつけられた紗耶香ちゃんは楽しそうに笑った。
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