上 下
25 / 108

お弁当。

しおりを挟む
「武器屋だ。スリングショットがある。
これなら戦闘訓練受けてない女の子でも使えるのでは? 
球もそのへんの石拾っておけばなんとかなる」

 いつものように市場へ来たコウタが足を向けたのは武器屋で、そこでY字型のスリングショットを見つけた。
 お髭の親父さんが店主だ。

 スリングショットの他にもナイフからショートソードにロングソード、弓矢。
 木製の台の上に色々並べてある。


「いわゆるパチンコとか言われる武器ね。漫画で見たことあるわ」
「銀貨3枚であんまり高く無いし、買っても良いんじゃね?
サヤ達、接近戦ヤバイし、それならそこそこ距離を取れるんだろうし?」

 決が出た。

「これ下さい」
「毎度~~」

 お買い上げした。

「お、お前達、今日は飯屋だよな?」
「あ、いつも食い物屋の時来てくれるお客さん。そうですよ」

武器屋の前にいたら冒険者のお兄さんが声をかけて来たので、私が応えた。

「お前達のとこの売り物の食べ物を、箱に詰められるか? 箱代はあんまり高くなきゃ払うし。
出先の森で食いたいんだが」

「え、ああ、じゃあ、お弁当にするんですね、箱を仕入れて来ますよ」

 私は箱を仕入れる事にした。

「すまんな」

「そんな訳で二人とも、箱を買おうよ。汁とか漏れないやつ」

 お得意様は大事にしないと。

「カナデっち、大丈夫? こっちでそんなん高くならない? 100均無いよ」
「内側に油紙を敷くとかさ、外装は蔦で編んだような物でも良くない?」
「曲げワッパの弁当箱みたいなのが有ればいいけどな」

「こっちは紙が高級品な世界よね。紙箱が買えない。
てか、曲げワッパ系、逆に元の世界では高いやつじゃない? 
工場大量生産でなく、手仕事で作るから二千円くらいはする」

「しかし曲げワッパ系、逆にこっちで安い可能性はあるぞ」
「とりま、雑貨ゾーンを見てみようよ、さりげ見るの楽しそう」
「そうだね」

 そんな訳でしばらく箱物を扱う雑貨屋を市場内で探すと、見つけた。

「あった! ワッパ系、銅貨5枚くらいだし、買える」
「風情あるじゃん! じゃあ五個くらいいっとく?」
「そうね、備え有れば憂いなし。私の好きな漫画の主人公もこれ系に味噌詰めて持ち歩いてた気がするし、自分用にも欲しいな」

「オソマ……」
「違う! ウン◯じゃない! あれは味噌!」

 私はコウタの呟きに秒で反応し、思わずツッコんだ。

「あはは! ごめんごめん。ちょっと言いたかっただけだ」
「ナニ? オソマって、ウ◯コの事?」
「ほら、コウタのせいで紗耶香ちゃんが変な言葉覚えちゃったじゃん~~」

「スマンスマン。とりあえず、店主さん! この箱五個下さい」
「あいよ」

 コウタは強引に話題を切り替えるようにワッパ系弁当箱を五個買った。

「桶とかオヒツっぽいのや酒樽がこっちに有るなら、ワッパ弁当箱も有ると思ったんだよ」

 そう言えばそれらは商人さんの家にもあった。
 栗ご飯の残りもオヒツに入れてアイテムボックス内に入れてある。

「ああ、どれも木材が曲線で結合出来てるよね」
「てかさ、串焼きの肉とハンバーガーを詰める訳? チョイスが変くない?」
「串焼きの肉を串に刺さずに、栗ご飯と詰めてあげれば良くない?」

「特製弁当か、奏、漬け物系か彩りになりそうなオカズをスキルで買えるか?」
「いいよ、どっか目立たない所で買おうか」
「テントの中に布で目隠しの仕切りを作って、そこで……」
「分かった」

 コウタは急いでテントの設営をして、私は巻きスカートディスプレイ様に用意した着物用ハンガーラック的な……衣桁(いこう)のような物を目隠しに使う。
 その裏でコソコソとお買い物。



「ね、二人とも、ほうれん草のおひたしと白菜の漬物、どっちがいい?」
「色味的に選ぶなら緑色のほうれん草じゃね? あとプチトマトとかもかわたん」
 紗耶香ちゃんは女の子だから、彩りに赤も入れたいようだ。

「選べない、両方! 白菜は自分達用でも良い。
それと、俺、急激にベーコンとほうれん草のソテー食いたくなった!」

「あれ、なんでかすごく美味しいよね、ベーコンとほうれん草のソテー。
じゃあほうれん草とベーコンを仕入れる。あ、粒コーンもいる?」

「カナデっち、コーンは彩りが綺麗だからいっとこうよ」

 もはや己の食べたい物をリクエストしている気がするけど、まあいいか。


 *

 私はほうれん草を鍋で茹でて、ほうれん草とベーコンとコーンを炒めた。
 コウタは肉とハンバーグを焼く。
 紗耶香ちゃんはパンに焼けたハンバーグとレタスを挟んだり、油紙に包んだりする作業。

 ちなみに串焼き用の肉は家で既に刺して来ている。
 今日もお客様は沢山来てくれている。大変だけどありがたい。

 *

 お弁当が出来上がった頃にちょうど良く冒険者のお兄さんが店に来た。

「どうぞ、本日のお得意様限定メニュー、お弁当です。中身は栗ご飯と焼き肉、ほうれん草とベーコンとコーンのソテーとなっております。
箱代込みで銀貨三枚ですが、大丈夫ですか?」

「ああ、スッゲー美味しそうだな。
弁当箱はまた洗えば使えるから大丈夫だ、ありがとう。
わがまま言ってすまんな」

「いいえ、またのお越しを!」
「あざす!」
「ありがとうございました!」

 私達はお客様を送り出した。

「カナデっち、結局白菜の漬物は自分達用?」
「そう。私達のお昼ご飯、栗ご飯の残りと白菜の漬物、ほうれん草とベーコンとコーンのソテー」

「サヤ、ほうれん草のやつ、早く食べたい」
「そうだね、昼のピークを過ぎたら食べようね」
「それまで、ちょっと我慢な」

 ようやく昼のピークを過ぎ、準備中の札を置いて、私達の休憩時間。

「ああ、やっぱほうれん草とベーコンのソテー、美味いなあ」

 コウタはしみじみと言った。

「多分、塩胡椒の力だよ」

 私はクールに言ったが、確かに凝った料理じゃないけど美味しいなあと思ってる。

「塩胡椒ぱない」

 紗耶香ちゃんも本日のランチの味がお気にめして、ゴキゲンのようだった。
しおりを挟む
感想 113

あなたにおすすめの小説

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

きっと幸せな異世界生活

スノウ
ファンタジー
   神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。  そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。  時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。  異世界レメイアの女神メティスアメルの導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?  毎日12時頃に投稿します。   ─────────────────  いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

処理中です...