上 下
23 / 108

休日。

しおりを挟む
「休日だ────っ!!」

 休日だと急に元気になるコウタ。
 服屋の後、一日飯屋をやって、本日、ついに休日が来たのだ。


「イエーイ!!」

 紗耶香ちゃんもテンション高い。

「おはよう世界」

 私は窓を開けて朝一の新鮮な空気を入れた。

「奏もそうとう嬉しいんだな、世界に挨拶かよ」

 地味に浮かれているのがバレた。

「今日は何する?」
「まず、朝飯だ。メニューはナメコそっくりなヌルコのお味噌汁に、だし巻き卵、白飯に焼き鮭」

「ウケる。やっと変な名前のキノコ出て来た」
「朝からかなりご機嫌な朝食出て来た」

「一応聞くが、味噌汁で一番好きな具材は?」
「私はワカメと豆腐。次にアオサ」
「サヤもワカメと豆腐かな~~」
「分かった、今回はヌルコの収穫がたまたまあったから入れたけど、次は豆腐とワカメな。奏のスキルなら買えるだろう」

「分かった、今度買っておく。コウタが朝から料理してくれたから、お昼はなんか私が作ろうか?」

「休日だし、外に出るなら買い食いでも良いぞ。買い物がしたかったんだろ?」
「そうだった! 買い物したかった!」

「美味しいパン屋とかないかな? 
こっちのが硬いパンばっかりならいっそコータ君が買って来てくれたパイみたいなやつの方がいいかもね」

「ねー、さりげ山の方、紅葉してんね?」

 窓から見える山の色は、確かに黄色や赤に色付いている。

「紅葉見ながらお弁当食べるのも悪くないな」
「山のちょい手前の林くらいなら魔物も出ないかも」

「街でピクニックバスケットに入れていける食べ物探そうか。
無ければサンドイッチでも作れば良いし」

「そだね」
「ああ」


 私の提案に二人とも了承してくれたので、早速お出かけをする。

 私達は徒歩で家の近くにあった公園内を通る。


「あ、ここでも少し紅葉見れるね」
「なかなかいい感じの公園が近くにあったんだな」


 いつもの市場ではなく、今日は家の近くにある公園に来た。

 藁のような物で出来たレンタル椅子がある。

 それを銅貨1枚で貸してる人がいて、借りて座りつつ、詩人が朝から詩を詠んでいたり、王都のニュース等を話する人がいて、そういうのを聞いているみたい。

 ほーん、TVが無い世界だからああいうのがあるんだ。

 紗耶香ちゃんが屋台に目を止めた。

「あ、あの屋台、煙が上がってる。あれ、食べ物屋っぽい」
「見てみるか」

 近くに行ってみた。

「ソーセージとパンを売ってるっぽい、あれを挟めばホットドッグになるじゃん、買おうよ」

「じゃ、あそこのお店は紗耶香ちゃんが行くと良いよ」
「おけ」

 紗耶香ちゃんが小走りで買いに行った。
 私は路上でゴザを敷いて野菜売りをしてるおばあちゃんを見つけた。

「ね、あそこの路上のお店、おばあちゃんがレタス売ってる。
リーフレタスっぽいからホットドッグに良さそう。
私はレタスを買って来るね」

「ああ」

 私はコウタに断って、ホットドッグ用のレタスを買いに行った。

 私と紗耶香ちゃんは買い物を終え、もう一度コウタの元に集まった。
 コウタは椅子を借りずに立ったまま、噺家のお話を聴いていたようだった。


「ところで二人とも、ケチャップは既にあるけど、マスタードはいる? 
スキルで買った方がいい?」
「俺はマスタードは無くてもいけるから、節約で諦めてもいい」
「サヤもケチャマヨが有ればマスタードは無くても良いよ」

「じゃあ、今回は節約でマスタードなしね。で、どうする? このまま公園でささやかな紅葉見る? 林まで行く?」

「せっかくだし、林まで行こうよ。またキノコくらい見つかるかもだし」
「そうだな、せっかく鑑定眼が有るんだし」

 私達はひとまずパンとソーセージとレタスをバスケットに入れて、林へ向かった。

「お! よもぎっぽい見た目の薬草発見!」
「どんな効能?」
「切り傷とか止血に使えるんだって。殺菌作用も有り。摘んで行こう」


「あ、こっちは胃腸の働きを助ける薬草だって! 胃薬じゃん! 
せっかくだし、摘んでいこ」

 ふと、私はトゲトゲした見覚えのある植物が落ちてるのを発見した。

「って、あれ、どう見ても栗では!? 拾おう!」
「やったねカナデっち! ちょい遠出した甲斐があった」

「栗ご飯と焼き栗どっちが良いかな?」

 コウタが栗を靴で踏み、ナイフを使って栗の中身だけを取り出しながら訊いて来た。

「両方でいいじゃない!」
「そうだな! じゃあ沢山拾おう!」
「りょ! てか、あのゴミ拾いで使う、あのでかいトングみたいなの欲しい」

 栗はトゲトゲしてるから、確かに紗耶香ちゃんの言うとおり、トングが欲しい。

「ゴミ拾いトングは安いのが150円位で買えるから、3つ買っとくか? 
服や化粧品がちゃんと売れたし」

「そうだね」

 コウタはスキルでゴミ拾いトングを購入して、我々はせっせと栗拾いと薬草摘みを頑張った。

 そこには収穫の喜びがあった。

「食べ物はホットドッグがあるけど、飲み物はどうする?」
「牛乳を温めて飲むのはどうだ? 栄養も有るし、けっこう腹持ちしそうだ」
「いいね」
「サヤもそれで良いよ」

 コウタはアイテムボックスから焼き鳥用に買ったバーベキューセットを出して、網の上で片手鍋を使い、ホットミルクを作った。

 私はアイテムボックスから敷き布を出して敷き、その上で紗耶香ちゃんとホットドッグを作った。

 コウタは商人さんの家から木製のコップとお皿もアイテムボックスに入れて持って来ていた。

「ちょっとの間、借りておこう、自分達用の食器は今度市場で買えばいい」
「おけ」
「木製の器って何気に可愛いよね」
「逆にね、SNSのオシャンな写真でもよく見たし」

 木製食器には金属や陶器より、見た目に温かみがある気がする。


 私達は紅葉を見ながら、まずホットミルクを味わった。
 優しい甘さでほっとする味だ。
 次にホットドッグをそれぞれ一本ずつ食べた。

 ミルクも飲んだおかげで、お腹はなかなかに満たされた。

 栗は殻を剥く必要が有るので、家に帰ってから処理する事にした。
しおりを挟む
感想 113

あなたにおすすめの小説

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

令和日本では五十代、異世界では十代、この二つの人生を生きていきます。

越路遼介
ファンタジー
篠永俊樹、五十四歳は三十年以上務めた消防士を早期退職し、日本一周の旅に出た。失敗の人生を振り返っていた彼は東尋坊で不思議な老爺と出会い、歳の離れた友人となる。老爺はその後に他界するも、俊樹に手紙を残してあった。老爺は言った。『儂はセイラシアという世界で魔王で、勇者に討たれたあと魔王の記憶を持ったまま日本に転生した』と。信じがたい思いを秘めつつ俊樹は手紙にあった通り、老爺の自宅物置の扉に合言葉と同時に開けると、そこには見たこともない大草原が広がっていた。

処理中です...