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1話: 気が付けば知らない場所にいた

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 私、高遠奏は修学旅行に行くはずだった。
 荷物をまとめて、学校のグランドに集合。

 その途中、コンビニに寄って、幼馴染の男子高生とクラスメイトのギャルの紗耶香ちゃんに会った。

 お菓子何買った? とか、たわいも無い話をした女子高生の私。
 普通のマンガアニメゲーム好きの17歳。

 高校二年生の秋。
 修学旅行の行き先はハワイに行くはずだった。
 なのに、何故こんな事に。
 コンビニから出た瞬間、目の前が一瞬暗くなって、気がつけば森!

「ちょ、奏、どういう事だよ」
「私に聞いてどうするのよ、知るわけないじゃない、馬鹿コウタ」
「マジありえないんですけど~~!! ここどこ!? ……みたいな」

「我々はコンビニを出た、なぜか、知らない場所に出た。時空が歪んで別世界に来た。ファイナルアンサ──!?」

「だから私に答えを求めないで、コウタ。私も混乱してる。地球か異世界か、はたまた神隠し」

「カナデっち、さりげ、アタシらが今まで生きてた日本消えたっぽい?」

「そ、その考えは怖すぎるし、悲し過ぎるから、我々が何故か別の世界に移動したんじゃないかな。
だって街中のコンビニにいたはずが、ここ森じゃん? 目の前森だよ! ラノベでよく見る展開!」

「俺もそこそこ異世界転生や転移物のマンガ読んでたけど、森スタートは無いわ、酷いわ。
目が覚めたら可愛いメイドに囲まれて過ごす侯爵嫡男だった。とかのが絶対良いわ」

「私だって貴族スタートの方が生活水準レベルの話ならまだしもだけど、政略結婚は嫌だわ。
──いや、そんな事話してる場合か!?」

「スマホも繋がらないんですケド! めたくそ圏外」

「皆、ひとまず落ち着いて、そ、装備を確認しようぜ」

「皆、学生服よ、見て分かるでしょ、コウタ。バッグの中に多少の着替えは有るけど」

「サヤはブレザーとスカート。アタシ死ぬ前にセーラー服も着とけば良かった、別の学校に行った友達がさー、セーラー服だったから、クリパでさー、カラオケで集まった時に、制服交換して撮影会しよって話してたんだけどー」

「し、死ぬ前って、諦めるにはまだ早いんじゃ?」

 私達は考えたくない事実、状況に直面してる。

「だって、さりげアタシら、コンビニ前にいたはずが急に遭難してない? 今いるの森か山の中じゃん?」

 ガサッ。

「「「ひっ!!」」」
「な、何か近くで動いた!? 動物!?」

「クマとかだったら死ぬ気がするわ」
「まず、ここはどこの森なんだよ! 頼む! 地球であれ! 第一村人はどこだ!?」

「てか、さっきの何の音!?」
「知らんけど、タヌキレベルだったら良いよね、みたいな」

「そ、そうだね。きっとタヌキだよ。
とりあえず人を、人里を探そうよ、助けてくれる人を探そう」

 警察でも、自衛隊でも良いから助けて欲しい。

「誰かいませんかーー!? 助けて下さい──っ! 迷子です──!」

 急にコウタが救助を求めて叫んだけれど、

 ……。
 返事は無し! そんな気はした!!

「道が分からないが、こういう場合は山なら稜線に向かい、高い位置から景色を見渡す、それか、水場を辿るとワンチャン人里や集落に着くか、沢に出て崖っぷちで死」

「崖から落ちるのは嫌だけど、でも水は必要だよね、私、今手持ちの水はペットボトル一本有るけど」
「アタシもコンビニで買った水、一本なら有る」
「俺は手持ち水分はスポドリ一本」
「水とスポドリあるのは良いね」

 水分は大事。

「いざという時は武器になるものが、俺、実はある。お前らは?」
「あ、私も折り畳み傘とカッターナイフならあるわ」
「カナデっち、カッターナイフはなんで持ってんの?」

「親戚の漫画家さんがアナログ原稿の人で、土曜とかたまに泊まりでアシスタントして小金を稼がせて貰っていたので、旅行鞄に入れっぱだった」
「え!? 凄いじゃん! 漫画家の知り合いいるとか!」

「その作家さん、未だにデジタルじゃないんだ。逆に凄い」
「そのおかげでカッターナイフがあるのよ、てか、コウタの武器って何よ」

「俺はサバイバル番組好きでさ、憧れのサバイバーモデルのナイフ出たから買っちゃった。ほら、ハワイは怖い人いるかもしれんから、護身用」

「コウタ、それ、銃刀法違反だし、空港で金属探知機が絶対鳴るわ」
「忘れてた! 金属探知機! てか、お前もカッターナイフやばいじゃん!」

「わ、私はお菓子開けるとかお土産のTシャツ買ったらすぐに値札取るのに使えるとか、何か言い訳立つかもだし、100円カッターくらい没収されても捨ててもたいして痛くないけど、サバイバルナイフはダメじゃん」

「う、かっこいいから友達に自慢したくて」

 アホ!!


「コータ君、アホ過ぎるけど、今の状況じゃ助かるんじゃね?
アタシなんて何も武器無いし、ウケる」

 紗耶香ちゃん、ウケる所では無いぞ。

「そうね、コウタ、私達を守ってくれるよね、この場所で唯一の男子だし、頼りにしてるわ、サバイバル好きが本領発揮出来ると信じて」
「万が一、獣が出たらヨロ」

「う、マジでプレッシャー! ナイフなんてまだ木を削るのと魚捌くくらいしかした事ない」
「え? コータ君、魚捌けるんだ!? マジ凄くない!?」
「獣も捌ける?」

 一応、念のため、聞いてみた。

「い、いざとなれば。やってやるさ」
「ヒュー!」

 紗耶香ちゃんは口笛が吹けないのか、口でヒューと言った。
 ちょっと可愛い。
 いや、顔はそもそも可愛い、てか綺麗だ。
 オタクな私にも優しいギャル。
 天然記念物レベル。

「登る? 下る? これが登山で遭難なら体力温存で現場から動かず救助を待つのも手だけど、ここは意味が分からない所だから、救助は期待できん」

「まず水源を探そうよ」
「じゃあ耳を澄ませ、水音はしないか?」
「……」

 ギャア、ギャア。
 ピー。
 聞こえたのはそんな音。

「鳥っぽいのの鳴く声しか分からないわ」
「アタシも分かんない~~」

「じゃあ、勘で動くしか無い。どんな結果になっても、恨みっこなしでな。
棒を倒した方向に行くけどいいか?」

「ぶっちゃけどこに行けばいいか分からないから、それで良いわ」
「うん、もう運を天に任せるしかないっしょ」


 私達は棒の倒れた方向に進んだ。

「マジ荷物重くね?」

 この荷物で山歩きマジしんどい。
 デカめの斜めがけスポーツバッグみたいなのを持っている。
 山道をスーツケースじゃないだけマシかな。
 でもあれなら椅子になるかな。

「重い。でもほぼ着替えだけど、今の私の全財産だし、捨てて行けない」
「だよな、この先着替えが買える状況か分からないし、寒くなるなら重ね着もいるだろうし」


 重い荷物を持って、頑張って私達は歩いた。
 そして、偶然にも水場についた。


「川だ!」
「マジ棒倒しの奇跡じゃん、水場発見するとか」
「ひとまず! 水だ! 水の側にいれば水は確保できる。水の流れる方向へ行って人里を探すか?」

「川下ね、暗くなる前に移動やめないと危ないけど、野宿は辛いわよね」
「アタシ食べ物はお菓子しか無いけど、この川で魚とか漁れると思う?」

 紗耶香ちゃんはその辺に荷物を置き、川を覗き込んで言った。
 私とコウタもひとまず荷物を下ろした。

「コウタ、棒とナイフくくり付けてモリの代わりに魚突けたりしない?」
「試してみてもいいが、魚影あるか?」

 水は綺麗だけど、近くには見えない……。

「とりま、私らは何すればいい?」
「シェルターも作りたいけど、とりあえずは薪を探してくれ、乾いた木の枝」
「火! そうか、夜は火が無いと寒いし、虫が怖いよね」
「あー、サヤ、虫苦手だわ、やばい」

 周囲を見渡すが、森なので、いくらでも虫はいる。
 蟻とか、なんかカナブンみたいなやつとか。

「私も虫は苦手」
「貴重なタンパク源です」
「じゃあコウタは虫が食えるの?」
「いざとなれば蝉とバッタくらいなら、食ってもいい。味がエビに似てるって聞いた」

「え──!! 流石に虫食はハードル高いわ、私達女子高生だし、ね、
「君達、飢え死とどっちがマシかって状況だぞ」
「マジしんどいんですけど~~」

 神様、我々に魚を、食べ物を授けたまえ!

「私、ハンバーガーが食べたい……」

 ファーストフードが今めちゃくちゃ恋しくて私は思わずそうつぶやいた。

「「マジそれな」」

 二人も同意した。

 コウタはナイフを棒にくくり付けて槍みたいに改造している。
 紐は靴紐を使ってる。

「コウタ、靴紐片方無くなって大丈夫? すっぽ抜けない? 予備の髪ゴムの紐あるし、使って結ぶなら渡すよ」

 私は普段は髪を頭の後ろで結んでいるので、予備を持ってる。


「ありがとう、急に走る事もあるだろうから、貸してくれると助かる」


 私はまだ輪っかになる前の黒いゴム紐をコウタに渡した。

 紗耶香ちゃんと薪探しに戻る。

「私ら予定通り修学旅行なら、今頃は機内食食ってる頃じゃない」
「そういや歩き続けて、もう昼」

 まず、薪を見つけなきゃだけど、寝る場所に屋根くらい欲しい。

「カナデっち、薪ってぶっちゃけどんくらいいるの?」
「よく分からないけど、一晩保つくらいかな?」
「どれくらいあればいいか分かなくない?」
「それはキャンプの達人では無いから詳しくは分からないけど、なるべく多めがいいよね」

「なんで急にこんな所に来ちゃったのか、マジ不明なんだけど~~」

 マジそれな! である。
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