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第一章 魔法が生きる世界
海辺にて
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【海辺にて】
浜辺に近づくにつれ、海からの風が強くなってきた。
危うく制帽を飛ばされかけ、頭を抑えながら進むこととなった。
「うひゃー、思ったより寒いなルイス!」
一応周辺の見回りを終え、ちょっとした休息という名目のもと、海辺へとやってきたルイスたち。
真正面からくる風に耐えながらも、その青々とした光景に目を奪われる。
「やっぱり綺麗っすね、海!」
無邪気にも目をキラキラと輝かせるカイは、身に着けていた靴を脱ぎ捨て、真っ先に海へと駆け出した。
「な、カイお前・・・!
くそぉ、こんたところ隊長たちに見つかったら拳骨じゃすまねぇぞ・・・」
と言いつつ、いつの間にやらちゃっかり裸足になっているキリク。
そして、思いのほかサラサラな砂浜を足の裏で味わいつつ、一気に走り出してしまった。
「うおぉぉ、冷てぇ!!海水マジで冷てぇわ!」
大柄な男がまるで子どものようにはしゃぎまくる様子を、ルイスはしばらく眺めていた。
そして自身も、少しずつ海に近づき、袖を肘の辺りまでまくった。
まるで海の質感を確かめるように、指先だけをちょんっと海水につけた。
ーーうん、悪くない。この街の様子だと、近くの海にも悪影響だとと思ったが、この海に宿る魔素は自分の魔力と合っているようだーー
「おいカイ!水かけんじゃねぇよ!!」
「え~、だってキリク先輩があまりにも無防備なんすもん。」
ギャーギャーと騒ぐ二人を一瞥し、ルイスはゆっくりと指先を水面から離した。
それに続くように、プクプクと水の塊がルイスの手に集まっていく。
そしてそれは、ひとつの大きな球体となった。
「・・・濡れてしまえ」
そう呟くのと同時に、水の球体はルイスの手から離れ、ものすごいスピードでキリクとカイのほうへ向かって行った。
「!!やべっ」
いち早く魔力を察知したキリクは、とっさに腰に挿してあった剣を抜き、水の球体をガードした。
そのお陰か、水による被害は最小限に留まった。
「・・・っ、てめぇルイス!!よくもやりやがったなぁ!!
・・・・・・くそ、水がこんだけあるとこっちが不利だな」
同意を求めるため、チラッと隣に立つカイに視線を送った。
しかし・・・・・・
「・・・・・・あ、あれ?カイ、なんでそんなに濡れて・・・・・・」
「・・・・・・」
まるで頭から水を被ったかのようにずぶ濡れのカイに一瞬ギョッとしたが、その原因が自分であると気づいた。
・・・どうやら、キリクの刀によって弾かれた水が全てカイの方へ行ってしまったらしい。
「す、すまんカイ!これは、わざとじゃなくてだな・・・」
慌てて謝罪を口にするが、ピクリとも動かないカイをキリクは怪訝そうに見つめる。
ヒタヒタと毛先から雫を垂らし、ギギギッとまるでロボットのようにこちらに顔を向けるカイ。
彼はいつも通り、ニッコーと笑顔を見せた。
「分かってるっすよ。キリク先輩はそんな事するような人しないっすから。
・・・けれど」
バチバチッと、カイの腕から指先にかけて電流が流れた。
「ルイス先輩~、魔力の気道をかえたっすね?
キリク先輩がこうすると予想して、わざと僕の方に水がかかるよう仕向けたんでしょ?」
カイの言葉に、キリクはえっ・・・と目をパチクリさせた。
・・・いやいや、確かにルイスはカイのこと毛嫌いしているが、そこまで・・・
「ちょうどいいやルイス先輩、ここで一度決着つけません?・・・どちらが隊長の隣に相応しいか・・・・・・」
「・・・・・・」
何を言っているのかイマイチよく分からないキリクだが、カイが本気でルイスに決闘を申し込んでいるのは分かる。
・・・その証拠に、バチバチとカイの周辺に火花が弾いてしかたない。
「・・・・・隊長の事はどうでもいいけど、いいよ。
相手してあげる」
★★★
《作者の一言》
次の投稿は、今週中になると思います。
浜辺に近づくにつれ、海からの風が強くなってきた。
危うく制帽を飛ばされかけ、頭を抑えながら進むこととなった。
「うひゃー、思ったより寒いなルイス!」
一応周辺の見回りを終え、ちょっとした休息という名目のもと、海辺へとやってきたルイスたち。
真正面からくる風に耐えながらも、その青々とした光景に目を奪われる。
「やっぱり綺麗っすね、海!」
無邪気にも目をキラキラと輝かせるカイは、身に着けていた靴を脱ぎ捨て、真っ先に海へと駆け出した。
「な、カイお前・・・!
くそぉ、こんたところ隊長たちに見つかったら拳骨じゃすまねぇぞ・・・」
と言いつつ、いつの間にやらちゃっかり裸足になっているキリク。
そして、思いのほかサラサラな砂浜を足の裏で味わいつつ、一気に走り出してしまった。
「うおぉぉ、冷てぇ!!海水マジで冷てぇわ!」
大柄な男がまるで子どものようにはしゃぎまくる様子を、ルイスはしばらく眺めていた。
そして自身も、少しずつ海に近づき、袖を肘の辺りまでまくった。
まるで海の質感を確かめるように、指先だけをちょんっと海水につけた。
ーーうん、悪くない。この街の様子だと、近くの海にも悪影響だとと思ったが、この海に宿る魔素は自分の魔力と合っているようだーー
「おいカイ!水かけんじゃねぇよ!!」
「え~、だってキリク先輩があまりにも無防備なんすもん。」
ギャーギャーと騒ぐ二人を一瞥し、ルイスはゆっくりと指先を水面から離した。
それに続くように、プクプクと水の塊がルイスの手に集まっていく。
そしてそれは、ひとつの大きな球体となった。
「・・・濡れてしまえ」
そう呟くのと同時に、水の球体はルイスの手から離れ、ものすごいスピードでキリクとカイのほうへ向かって行った。
「!!やべっ」
いち早く魔力を察知したキリクは、とっさに腰に挿してあった剣を抜き、水の球体をガードした。
そのお陰か、水による被害は最小限に留まった。
「・・・っ、てめぇルイス!!よくもやりやがったなぁ!!
・・・・・・くそ、水がこんだけあるとこっちが不利だな」
同意を求めるため、チラッと隣に立つカイに視線を送った。
しかし・・・・・・
「・・・・・・あ、あれ?カイ、なんでそんなに濡れて・・・・・・」
「・・・・・・」
まるで頭から水を被ったかのようにずぶ濡れのカイに一瞬ギョッとしたが、その原因が自分であると気づいた。
・・・どうやら、キリクの刀によって弾かれた水が全てカイの方へ行ってしまったらしい。
「す、すまんカイ!これは、わざとじゃなくてだな・・・」
慌てて謝罪を口にするが、ピクリとも動かないカイをキリクは怪訝そうに見つめる。
ヒタヒタと毛先から雫を垂らし、ギギギッとまるでロボットのようにこちらに顔を向けるカイ。
彼はいつも通り、ニッコーと笑顔を見せた。
「分かってるっすよ。キリク先輩はそんな事するような人しないっすから。
・・・けれど」
バチバチッと、カイの腕から指先にかけて電流が流れた。
「ルイス先輩~、魔力の気道をかえたっすね?
キリク先輩がこうすると予想して、わざと僕の方に水がかかるよう仕向けたんでしょ?」
カイの言葉に、キリクはえっ・・・と目をパチクリさせた。
・・・いやいや、確かにルイスはカイのこと毛嫌いしているが、そこまで・・・
「ちょうどいいやルイス先輩、ここで一度決着つけません?・・・どちらが隊長の隣に相応しいか・・・・・・」
「・・・・・・」
何を言っているのかイマイチよく分からないキリクだが、カイが本気でルイスに決闘を申し込んでいるのは分かる。
・・・その証拠に、バチバチとカイの周辺に火花が弾いてしかたない。
「・・・・・隊長の事はどうでもいいけど、いいよ。
相手してあげる」
★★★
《作者の一言》
次の投稿は、今週中になると思います。
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