魔法が生きる世界で

やっさん

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第一章 魔法が生きる世界

新入隊員②

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【新入隊員②】



バーーン!!!



壊れんばかりの勢いでどびらが開いた。

ルイスとキリクはギョッとした顔でそちらに視線を送る。


「遅れてごめんなさいっす!!
カイ二等兵、只今参上致しました!!!」


元気で明るい声が部屋に響き渡る。

その声だけで一気に二度くらい気温が上がったようだ。

真夏に咲く、向日葵を思わせる黄色い髪。幼さを残したクリっとしたオレンジの瞳。そして口の中から覗く鋭い八重歯を含め、猫を思わせる小柄な少年。


「待っていたよカイ、ようこそ我が黒竜へ」
「はいっす!」


カイという少年は、ニカッと八重歯を覗かせ笑った。


(マジかよ、コイツが新入隊員・・・)


キリクはただただ、呆気にとられていた。

新入隊員が黒龍に入るというだけで驚きなのに、その彼がまだ幼さを残す少年とは・・・。


(体系的にルイスとそう変わらねぇじゃん!
・・・いや、少しルイスの方が高いか??)


しかし、人は見た目によらない・・・それを教えてくれたのは他でもない、ルイスなのだ。

特別高くもない身長に細身の身体。
そんな彼を小馬鹿にして喧嘩をふっかけた輩がどんな目に遭ったのか・・・想像がつくだろう。

カイがひょこひょこと執務室へ足を踏み入れると、あっと目を輝かせた。


「グレン隊長!お久しぶりっす!!」
「・・・おう」


新入隊員とグレンの間で交わされた短い会話。
しかし、このカイという少年が只者ではないと証明するには十分なやり取りであった。


「黒龍の隊士以外は近づこうとしないグレン相手に・・・大した子だよ」


イクトが感心した様子でカイとグレンの様子を眺めた。

月影軍の中でグレンは、隊士達の憧れのであり、かつ尊敬される存在でもある。
しかし、同時に最も恐れられている存在でもあるため、なかなか気軽に彼に近づく者はいない。


「・・・それよりお前、後ろの先輩隊士に挨拶しろ。これからお前が世話んなる奴らだ。
おいキリク、ルイス!!」
「ルイス・・・」


グレンが大声で二人の名前を叫んだのと同時に、ようやくカイも彼等の存在に気づいたようだった。

そしてなにより、バチッと視線が重なってしまったのが・・・


「・・・あなたがルイスさんっすか?」
「・・・・・・そうだけど」


さっきまでの無邪気な笑顔はどこえやら。
カイはパッと表情を消すと、無遠慮にルイスの顔をじぃぃーと見つめた。


(なんだ、コイツ?)


ルイスは思わず眉をひそめる。

居心地が悪い・・・敵意を向けられているわけではないが、かといってグレンに向けていたような尊敬の眼差しでもない。

ただただ値踏みされているような、何か探られているような・・・


「ルイス、キリク、お前たちを呼んだのは他でもねぇ。お前ら二人は今日からしばらくコイツの世話係だ。」
「・・・へ?」
「・・・・・・」


ルイスはカイから視線を外し、壁に寄りかかるグレンを睨みつけた


どういう風の吹き回しだ。
顔も広く、かつ人に好かれやすいキリクならまだしも、何故自分が新入隊員の面倒を見なければならないのか。


(それに・・・)


ルイスはもう一度カイに視線を戻した。


(・・・アイツ、あまり好きじゃない)


今はルイスへの探索(?)を中止し、この広くて豪華な執務室に興味深々の様子。
まるで珍しい物でも見つけた子どものようだ。


「不満たっぷりな顔だね」
「当たり前じゃないですか!だって黒竜に入ってくる奴ら、ろくな性格してないし!」


力、能力・・・黒龍の隊士に共通するのは、この二つだけではない。

戦闘において、敵に対する執着。
そして、それを楽しむ狂気性。
狙った獲物は逃がさない・・・それが彼ら黒龍のモットー。
ほかの部隊での常識が、特に戦場では通じることは無い。

とはいえ、ある程度の限度は百も承知なわけで、暴れすぎて戦力外になるよりは、ギリギリのところで抑えてやろうじゃないかという考えだ。


「だからこそ、君たちに任せたいんだよ。
なにせ新入隊員でここに入ってきたんだ、クセが強いのは仕方がない」
「言っとくが、拒否権はないぞ」


黒龍の隊長、副隊長に言われてしまえば、もう従うしか道はない。

キリクはガクッと肩を落とすと、微動だにしないルイスの頭をポンポンと叩いた。


「・・・これも社会勉強だな、ルイス」
「・・・・・・」


クセのありすぎる新入隊員・・・その彼の面倒を見ることになったルイス。
しかし、例え上司2人の頼み・・・もとい命令であれ、ルイスの心の中は収まることはない。


「異論はねぇな
じゃぁ各自解散だ」


異論はおろか、質問さえも言う隙を与えず、グレンは執務室から出ていった。


「さ、僕にはまだ仕事が残っているからね。君たちも残りの休日を楽しんで」


まるで流れるように自分たちの前から姿を消していく二人。


「よろしくっす!キリクさん、そして・・・ルイスさん」






















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