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第三章
28.戦役免除と罠(2)
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メグは王都に戻るとすぐに戦役免除のために動き出した。
戦役免除の特例事項でメグが該当するのは婚姻だけだった。
婚姻すれば少子化で困っているこの王国である。
離婚しない限り、二度と戦争に駆り出されることはない。
あのアホ元聖女が作った法だというのが気に入らないが今はそんなことも言っていられない。
とにかく誰でもいいから結婚相手を見つけて、この書類にサインをもらわなければ。
メグの魔力をもってすれば魔法で誰にでもサインはさせられるが今の商売に理解がある人物ではないと色々と後から面倒くさいことになりそうだ。
さて、誰にしたものか?
メグは婚姻届けの欄に自分の署名だけして考え込んでいると、珍しく屋敷にホソイが訪ねてきた。
「メグ様。こちらにお通ししてもよろしいでしょうか?」
メグの屋敷で働いている使用人が扉の外から執務中の彼女に同意を求めてきた。
「そうね。通して頂戴。」
「畏まりました。」
しばらくすると扉をノックする音がした。
「入っていいわよ。」
「お久しぶりです、メグ様。」
「何か用かしら?」
メグは書類を見たままホソイを見もせずに返事を返した。
「その態度。覚えていませんね。約束を!」
「ヤクソク?」
「私を王都の男娼館の支配人にしてくれるという約束です。」
「ああ、あれ。でもまだ全部のヤクソクが済んでいないはずよね。」
「全部って何を言ってるんですか。無事王都に戻って来れて、仕事に勤しんでいるじゃありませんか。」
「また何か問題が起これば徴兵されるのよ。おちおち仕事に没頭出来ないじゃない!」
メグはホソイを見てはっと気が付いた。
ちょっと待って。
「ホソイって確かまだ独身よね。」
「いきなり何を言い出すんですか?」
「結婚していたかしら?」
メグはテーブルにサインが終わった書類を積むとじっとホソイを見た。
「一度結婚して離婚しましたので今は独身・・・。」
メグはホソイの前に書類を突き付けた。
「これにサインをして頂戴。」
「急に何言いだすんですか?」
ホソイは突き付けられた書類を手に取るとじっくりと読み込んだ。
「お互いに干渉しない契約結婚!」
ホソイの顔を見るとメグは満面の笑みでこたえた。
「いい条件でしょ。」
ホソイはやれやれと肩をすくめると書類をメグに付き返した。
「いい条件なのはメグ様にとってですよね。」
「あら、心外ね。お互いに干渉しないのだもの男の愛人でもなんでも作って遊べばいいじゃない。私は今以上に商売に励めるし、問題点はないわ。」
「ありまくりでしょ。お互い干渉するしないの前に女と結婚するなんて嫌ですよ。それに元聖女の法案で一夫一妻制で男であろうが性別関係なく浮気はご法度ですよ。」
「うっ・・・あいつなんて法律を作っているのよ。ホント私の邪魔ばかりするわよね。どうしてくれよう。」
メグは唸りながらも最初から用意していた”王都の男娼館”への移動書をホソイに投げ渡した。
ホソイはメグから投げ渡された書類にサッと目を通すとそれを懐にしまって席を立った。
すぐに退室するのに扉の近くに行くとふと立ち止まってメグに何かの紙を投げ渡してきた。
メグはホソイが投げ渡してきたカードを受け取るとすぐに封を切った。
「招待状?」
メグの手には金の縁取りがされたカードが握られていた。
「大旦那様からの伝言です。従業員を脅して婚姻をするのではなく、自分の魅力で伴侶を探して来いとのことです。」
「ちょ・・・冗談でしょ。私は脅してないわよ。提案しただけよ。」
「私でなければ脅していると思われますよ。」
ホソイはそういうとパタンと扉を閉めた。
「はぁー。嫌な養父ねえ。私の行動とかはすでにお見通しなのね。」
メグは招待状をポンと机の上に放った。
「さて、当日のパートナーとかどうすればいいのか。なんかめんどくさいわね。婚活するにしてもその場に行くパートナーを何とかしなけりゃいけないし。」
メグの懸念はこの後、軍馬を無断で私用で使ったと城からの請求書を持って訪ねてきたレイに、王宮で開かれる今回のパーティーへのパートナーに誘われたことで解決した。
戦役免除の特例事項でメグが該当するのは婚姻だけだった。
婚姻すれば少子化で困っているこの王国である。
離婚しない限り、二度と戦争に駆り出されることはない。
あのアホ元聖女が作った法だというのが気に入らないが今はそんなことも言っていられない。
とにかく誰でもいいから結婚相手を見つけて、この書類にサインをもらわなければ。
メグの魔力をもってすれば魔法で誰にでもサインはさせられるが今の商売に理解がある人物ではないと色々と後から面倒くさいことになりそうだ。
さて、誰にしたものか?
メグは婚姻届けの欄に自分の署名だけして考え込んでいると、珍しく屋敷にホソイが訪ねてきた。
「メグ様。こちらにお通ししてもよろしいでしょうか?」
メグの屋敷で働いている使用人が扉の外から執務中の彼女に同意を求めてきた。
「そうね。通して頂戴。」
「畏まりました。」
しばらくすると扉をノックする音がした。
「入っていいわよ。」
「お久しぶりです、メグ様。」
「何か用かしら?」
メグは書類を見たままホソイを見もせずに返事を返した。
「その態度。覚えていませんね。約束を!」
「ヤクソク?」
「私を王都の男娼館の支配人にしてくれるという約束です。」
「ああ、あれ。でもまだ全部のヤクソクが済んでいないはずよね。」
「全部って何を言ってるんですか。無事王都に戻って来れて、仕事に勤しんでいるじゃありませんか。」
「また何か問題が起これば徴兵されるのよ。おちおち仕事に没頭出来ないじゃない!」
メグはホソイを見てはっと気が付いた。
ちょっと待って。
「ホソイって確かまだ独身よね。」
「いきなり何を言い出すんですか?」
「結婚していたかしら?」
メグはテーブルにサインが終わった書類を積むとじっとホソイを見た。
「一度結婚して離婚しましたので今は独身・・・。」
メグはホソイの前に書類を突き付けた。
「これにサインをして頂戴。」
「急に何言いだすんですか?」
ホソイは突き付けられた書類を手に取るとじっくりと読み込んだ。
「お互いに干渉しない契約結婚!」
ホソイの顔を見るとメグは満面の笑みでこたえた。
「いい条件でしょ。」
ホソイはやれやれと肩をすくめると書類をメグに付き返した。
「いい条件なのはメグ様にとってですよね。」
「あら、心外ね。お互いに干渉しないのだもの男の愛人でもなんでも作って遊べばいいじゃない。私は今以上に商売に励めるし、問題点はないわ。」
「ありまくりでしょ。お互い干渉するしないの前に女と結婚するなんて嫌ですよ。それに元聖女の法案で一夫一妻制で男であろうが性別関係なく浮気はご法度ですよ。」
「うっ・・・あいつなんて法律を作っているのよ。ホント私の邪魔ばかりするわよね。どうしてくれよう。」
メグは唸りながらも最初から用意していた”王都の男娼館”への移動書をホソイに投げ渡した。
ホソイはメグから投げ渡された書類にサッと目を通すとそれを懐にしまって席を立った。
すぐに退室するのに扉の近くに行くとふと立ち止まってメグに何かの紙を投げ渡してきた。
メグはホソイが投げ渡してきたカードを受け取るとすぐに封を切った。
「招待状?」
メグの手には金の縁取りがされたカードが握られていた。
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「ちょ・・・冗談でしょ。私は脅してないわよ。提案しただけよ。」
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「はぁー。嫌な養父ねえ。私の行動とかはすでにお見通しなのね。」
メグは招待状をポンと机の上に放った。
「さて、当日のパートナーとかどうすればいいのか。なんかめんどくさいわね。婚活するにしてもその場に行くパートナーを何とかしなけりゃいけないし。」
メグの懸念はこの後、軍馬を無断で私用で使ったと城からの請求書を持って訪ねてきたレイに、王宮で開かれる今回のパーティーへのパートナーに誘われたことで解決した。
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