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28 メイねえさま、好きです。
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僕の名前は、セス・バイス・シュタット・アインハルト。
異母兄が結婚してツバァイ公爵家に入り婿したことにより、今では僕が将来有望な次期公爵家の相続人であり、今をときめく宰相閣下の異母弟となった。
そんな僕には好きな人がいる。
母の異母兄の一人娘で、名前はメイだ。
メイとの出会いはまだ僕が小さい頃に、母の招きで公爵家に遊びに来たメイに会った時に、起こったある事件がきっかけだった。
それまでの僕はあまり人にも関心がなく、ただ母に言われるままにたんたんと勉強をし、適当に剣を習い、毎日を過ごしていた。
そんな時、母に招かれたメイと彼女の父が公爵家を訪れたのだ。
一か月以上前から母はメイの父に会えると超ご機嫌だった。
逆に僕の父である公爵の機嫌はその日が近づくにつれ、だんだん不機嫌になっていった。
とても対照的だ。
そんなにイヤなら母に会うなと言ったらどうかと僕が父に提案すると、父は情けなさそうな顔で、そんなことを言えば母に捨てられるとぼそりと呟いた。
なんとも情けない限りだ。
でも、たしかに気性の激しい母なら、父を捨てるくらいのことは、簡単にやってのけそうだ。
僕は別に父が母に見捨てられてもなんともないが、その後の落ち込んだ父の面倒は、正直見たくない。
早々とそれをきっかけに愚痴をこぼす父を適当にあしらって、僕は部屋に戻った。
メイとメイの父が訪ねて来てくれた当日、母はいつも以上に念入りにめかしこんで、異母兄を出迎えた。
父はというと母の策略で王城に呼びつけられている。
どうやら母は王妃様とも懇意のようだ。
さすがの父も王からの要請には逆らえず、しぶしぶ屋敷をあとにして、今朝、王城に出向いて行った。
僕はさほど興味がなかったが、母の意見に従い、メイを出迎えた。
はっきりいって公爵家の次男とメイドの娘だ。
身分差からいっても、僕が出迎えるのは、いささかやり過ぎではないかと当時は思っていた。
なので僕の態度はかなり不遜だった。
「はじめまして、今日はよろしくたのむ。」
しかしメイもメイの父も、そんな僕に何も言わなかった。
母だけは鬼のような形相で、そんな僕の態度を見ていた。
「お義兄様、私のしつけがなっていなくて、大変申し訳ありません。」
母は真っ赤になってメイの父に謝っていた。
『僕の態度の何がダメなのだろうか?』
当時の僕には、そんなことも全くわからなかった。
メイの父と僕の母は居間でお茶にするようだ。
僕はそれに付き合いたくなくて、母の勧めもあり、メイと二人、庭園で遊ぶことになった。
遊ぶと言っても、男の子と女の子ではやる遊びが違う。
でも僕の方が身分が上なんだから、メイが合わせるのが当たり前だ。
そう思った僕は、屋敷の使用人に模擬用の剣を二本持ってこさせた。
僕はメイにそれを渡す。
メイはそれをためらうこともなく、受け取った。
すぐに僕は偉そうにメイに命令した。
「そのまま剣を構えていろ。」
メイは剣を二・三回振ると、いかにも扱い慣れた様子で剣を構えた。
僕はメイが構えると、同時に剣を振り下ろした。
途端に、僕の剣がメイに弾かれる。
「なっ・・・なんで僕の剣を弾く。僕は構えろと命令したはずだぞ。」
僕はメイに偉そうに説教した。
するとメイは不思議そうな顔で
「セス様。賊に襲われた時、賊に待てと命令しても、相手は待ってくれません。」
メイは僕に真面目に説教している。
なんて偉そうな使用人なんだ。
僕は思わず、真っ赤な顔で怒鳴りつけてしまった。
「そんなことは、わかってる。」
「なら、構えただけでは練習になりません。やはり今のようにするべきでは?」
「くそっ、じゃ、後悔するなよ。」
僕は遠慮なくメイに斬りかかった。
メイは僕の斬り込みを右に左にいなすと、最後に峰打ちで軽く僕の剣を払った。
僕は技量の差に唖然とした。
「なんで使用人のくせに僕より強いんだ。」
「でも私、父様には一度も勝てたことがありません。」
メイは真面目に僕の質問に答える。
それってなんだ。
比べる基準が間違っていないか?
大人と子供なら、大人に負けるのは当たり前ではないのか?
メイは僕の考え中に、隣でブツブツ呟いている。
「父様以外になら結構簡単に勝てるのですが、何が悪いのでしょうか?」
はっ他の大人には勝てるって、メイの周りはどうなっているんだ。
僕が不思議に思っていると、どこからか悲鳴が上がる。
なにかあったようだ。
僕とメイは剣を持ったまま、その悲鳴が聞こえた場所に向かった。
不思議に思いながら、悲鳴が上がった場所を覗くと、信じられないことに野生のクマがそこにいた。
「なな・・・なんで、こんなところにクマがいるんだ。」
僕は思わず叫んでいた。
クマは僕たちに気がつくとジリジリと近づいて来た。
『まずい。このままでは殺される。逃げないと。』
逃げようとするが足が凍り付いたようになって動かない。
メイが僕を引っ張るが、どうにもこうにも、その場から動けなかった。
メイは諦めて僕から手を離した。
当然だろう。
誰が好き好んで他人の為に命を張る。
僕は目をつぶった。
もうクマに殺されると思った。
クマが立ち上がって鋭い爪を閃かせた。
その時、僕の前に誰かが立ちはだかった。
『大人が間に合ったのか。』
僕はそろそろと目を開けた。
しかしそこには、僕とあまり変わらない背丈の小柄なメイの背中が、目前にあった。
メイは震えながらもクマに斬りかかっていった。
でもいかんせん体型が違いすぎる。
そのうち剣も飛ばされ、丸腰になる。
今度こそ僕はメイに見放されると思った。
『もう、だめだ。』
それなのにメイは僕に覆い被さって、クマから僕を守ろうとした。
「メイよせ。ダメだ。」
僕たちの前に巨大なクマが立ちあがって襲ってきた。
もう本当に今度こそ、ダメだと思った。
その時、何故か僕たちに向け打ち下ろされそうとしたクマの巨大な手が消えた。
さらに、クマの首が血しぶきと共に飛んだ。
「お異母兄さま。さすがですわ。」
すかさずハートマークがいっぱい詰まった母の声が聞こえた。
「大丈夫か。けがはないか、二人とも。」
メイの父が剣をしまうと僕たちを助け起こした。
メイが僕から離れて、父親に抱き付く。
「うわーん、怖かったよぉー。」
さっきとはうって変って、泣き喚いているメイがいた。
あまりのことに僕は呆然として、その場で固まってしまった。
母が起き上がらない僕を心配して慌てて駆け寄ると、あちこち触ってから声をかけてきた。
「まさか、どこかケガをしたの、セス?」
「いえ、大丈夫です。なんともありません。驚いただけです。」
僕は母に助け起こされながらも、途中で我に返って自分で起き上がった。
そして、年相応に父親にしがみついて泣くメイを見た。
良く見るとメイは震えていた。
あんなに怖かったのに、メイは僕を庇ってくれたのだ。
僕の胸は、温かいものでいっぱいになった。
もっともっと修行して、今度は僕がメイを守って見せる。
その日は、そんな事件もあって、二人は早々と屋敷を去っていった。
僕と母は自ら玄関に出ると彼らを見送った。
「かあさま、僕は将来かならずメイをお嫁さんにするよ。」
母は目を大きく開けて僕を見た。
僕はとっておきの言葉を母に呟いた。
「かあさま。そうすれば、かあさまはメイの母になるから、メイのお父様にもっと近づけるんじゃないかな。」
母はハッとすると、満面の笑みを僕に向けた。
「そうね。メイがあなたでいいと言ったら、反対はしないわ。」
僕はその日から人が変わったように剣も勉強も、熱を入れて学んだ。
その後もメイに何度か会う機会があり、将来の為にメイの理想の人を聞いて見た。
メイの理想は父親だという。
僕は母にメイの父の若かりし頃の事を聞いて見た。
もちろん僕の父が留守の時にだ。
なぜかメイの父の話を僕の父の前で話すと、父の機嫌が急降下するのだ。
めんどくさいので、父が留守の時に母に聞いて見た。
母はうれしそうに話てくれた。
もともとメイの父と母は同じ屋敷に住んでいたそうだ。
その頃のメイの父は伯爵家の執事として、母と同じ屋敷で働いていたらしい。
その時はまだ、母もメイの父が自分の異母兄だということは知らなかったようだ。
母は若い時分から気性が激しく、メイの父を好きだと気付いた時は、まだ僕の父と婚約中だったらしい。
しかし僕の父は伯爵家の母より位の高い、公爵家の異母兄であるケインの母に見初められ、最初に彼女と結婚し、次に僕の母と婚姻した。
母も父を嫌っていたわけではないがメイの父の方が好きだったので、その機会に伯爵(いわゆる僕のおじい様)に、メイの父との結婚を願いでた。
伯爵はもちろん、メイの父が自分の息子だと知っていたので大慌てだ。
ようやく母にメイの父が異母兄であることを打ち明けた。
母は最初、ショックのあまり家出して、親友の屋敷に居候したそうだ。
さすがの母も異母兄では結婚できなかったようだ。
メイの父も、異母妹として母の事を気にかけてくれたようだが、さすがに一人の女性としては見れないと言われたそうだ。
母曰く、メイの父が言ってくれれば、禁断の○○愛も受け入れたのにと、のたまっていた。
我が母、恐るべし。
話は戻るが、そんなこんなで色々聞くと、メイの父はいまでもそうだが、容姿端麗、異性にももて、剣の腕も際立って強く、優しく素晴らしい人とのことだ。
僕も母似のお蔭で容姿は合格だろう。
剣の腕は今現在、めきめき上達中だ。
そのうちメイより強くなって見せる。
異性にモテるかどうかは、今後頑張っていくしかないがなんとかなるだろう。
僕の優秀な頭脳を持ってすれば、すぐに解決できるはずだ。
そう思って僕がメイの為に頑張っていた時、メイが仕える主家である公爵家の公爵夫人が反体制派の旗印として狙われているとの情報が入った。
この情報は、公爵本人から王家の王妃と仲の良い僕の母とメイの両親、メイ、そして当事者である公爵夫人が知らされた。
僕はこの話をたまたま僕の家で開かれたお茶会の席で盗み聞きした。
最初は六人の間で話されていた密談だったが、あまり良い案が浮かばず。
最後はメイがなんでか、公爵夫人の為に囮になる案まで浮上していた。
僕は盗み聞ぎしながらも焦った。
このままではメイが危険な目にあってしまう。
僕は自分の優秀な知能をフル回転して、メイの危険を回避する案を出した。
お茶会の席に僕が突如として乱入したので、母も王妃も周り中が良い顔をしなかった。
そこで僕が公爵夫人の偽処刑案を出すとあまりにも奇想天外の案に周りの大人が全員、唖然としていた。
僕に言わせれば、旗印の本人さえいなければ、問題ない事件のはずだから、何で唖然として表所になり、なおかつその案を実行するのに渋るのかを理解出来なかった。
でもよく聞くと、どうも宰相である公爵家を潰さずに処刑する理由が必要らしい。
ならばと、僕は公爵夫人が未成年者である僕に手を出したことにすれば、どうかと提案した。
実際はそうでなくても、そう言う噂で十分なはずだ。
王妃は僕のこの奇想天外な案をいたく、気に入ってくれた。
なので、すぐにこれを実行に移すと言い出した。
最後は将軍である父に王妃から話を通してくれた。
王家の騎士である父とはいえ、最初はこの案に猛反対したらしい。
しかし、王妃と王の説得に最後は折れたようだ。
母は僕の案にメイの父が申し訳なさそうに謝ると、ご機嫌で許可していた。
内容は聞いていないが、何かメイの父におねだりしたようだ。
僕は僕で、王妃様に将来、僕が身分の低いメイと結婚する時に彼女が困らない様、後見人になってくれるように根回しした。
ただし、王妃様には身分の低いものとしか言わなかった。
まだメイ本人にも告白していないのに、名前を王妃様に明かすわけにはいかない。
王妃様は何も聞かずに頷いてくれた。
もっとも僕の出したこの作戦は結局、まわりまわって、メイとあの憎らしいブライアンとを出合せるきっかけになってしまった。
後から考えるとこれは僕の人生での最大の失敗だった。
なぜなら、この事件が発端となり、メイが主人であるレイチェルと王都から地方の別荘に行った時に、魔獣豚事件が起き、僕の異母兄であるケインと彼女の主人が結婚することで、メイとブライアンにつながりが出来てしまったからだ。
まだそれだけだったならよかったのだが、その時、レイチェルを守るために行った反王政派勢力の殲滅で、宮廷の派閥争いに敗れた人間がなんとメイを襲うことになってしまったのだ。
この時は、たまたま偶然に居合わせたブライアンがメイを助けた。
きっとメイは自分を助けたブライアンをヒーローのように思ってしまったのだ。
僕もあの時、すぐにメイのもとに向かったのだが、小部屋でブライアンと彼女が二人きりでいたことで逆上して、つい叫んでしまった。
おかげで、偶然通路に居合わせた、うわさ好きの貴婦人にその場面を目撃されてしまう。
噂は瞬く間に広がって、メイは宮廷でブライアンの愛人ではないかと、囁かれるようになってしまった。
僕としたことが痛恨のミスだ。
このままではメイの名誉に傷がついてしまう。
メイの為にも緊急になんとかしなくては。
一番いい案は、メイが僕と結婚することだが、僕が成人するまでにあと数日、必要だ。
それにまさかこんなに早く、メイに求婚することになるとは思っていなかったので、いろいろ準備不足の感がいなめない。
ここはやはり、大人である母を説得し、緊急にメイと婚約することが一番だと思われた。
僕が早速、メイに求婚する準備をしながらそこかに行った母が戻って来るのを待っていると、外出していた母が帰宅と同時に、なぜか父と僕を居間に呼びつけた。
僕もメイのことで用事があったので、すぐに行くと母が満面の笑顔で待ち構えていた。
なんだ、この満面の笑顔は?
父も不穏なものを感じたらしく、かなり緊張している。
「なにかあったのか?」
父が問うと母はこぼれるような笑顔で答えてくれた。
「うふふふふ、喜んで。私たちに娘が出来るのよ。」
「えっ、娘????」
父が首を傾げている。
「僕に妹ができたのですか?まさか、その年で妊娠したと。」
「まさか、そうなのか?」
父が大慌てで聞いている。
「いやあね、まさか。さすがにそれはないわよ。セスにお姉さまが出来るのよ。」
「姉ですか???」
妹ならまだしも、なんでいきなり姉が出来るんだ。
「まさか、父の隠し子ですか?」
父が真っ青になって否定している。
「そんな、身に覚えはない。」
「「??????????」」
父と僕は疑問符いっぱいで母の顔を見た。
「それはね。養女をもらうことになったの。」
「「養女!!!」」
「そっ、養女よ。」
「いったいどなたの?」
僕は母に尋ねた。
「うふふふ、なんとセバスチャン兄様の娘さんよ。」
「なっ、セバスチャンの娘だと。」
父は怒鳴った。
「メイを!!!」
僕は驚愕のあまり叫んでいた。
「「なんでまた、そんなことに。」」
「メイがブライアンと結婚するのに身分が必要だから、私がメイを養女にすることにしたの。」
「なっ、メイがブライアンと結婚なんて、いつ決まったんですか?」
僕は母に噛みつかんばかりに迫った。
「ほんの数日前だと思うわ。」
母の言葉に僕は呆然としてしまった。
メイが結婚する。
それも僕以外の相手と。
そんなことがあるわけがない。
「冗談じゃないぞ。セバスチャンの娘を養女になど出来ん。」
父の一言に母のこめかみに青筋がたった。
「なんですって、今なんとおっしゃったんですか。」
「セバスチャンの娘を養女になど、せんといったんだ。」
母が般若のようになって父を振り返った。
「理由を聞いても。」
「身分の低いものを養女になど出来ん。」
父がもう一度、突っぱねた。
「メイは身分が低くても、私の姪ですわ。
それじゃ私が単なる伯爵家の娘だから、あなたは数十年前に私を捨てて、ケインの母と結婚したんですね。」
母はよよと泣き崩れた。
「いや、待て。そんなことはない。」
慌てて、父は母を宥める。
「それに、これはケインにも頼まれたことなのに。」
母が異母兄の名前を出す。
「なに、ケインに頼まれたことだと。」
父の耳がピクピク動いている。
「それは・・・。」
「メイは確かにセバスチャン兄様の娘ですが、わ・た・しの姪でもあるんです。」
母様は、さらに畳かけた。
「うっ、たしかに。」
「あ・な・た。」
母様がにっこり微笑んだ。
「わかった。」
結局、父は母には勝てなかった。
イエスと言わされた後、母に”あなたってやっぱり頼りになるわ”とほめそやされると、もうその気になっている。
僕が唖然としているうちに話は決まってしまい、数日後にはメイがこの家にやってくる事になっていた。
なんでこんなことに、なってしまったんだろうか。
メイが次にこの家に来るときは、僕のお嫁さんになるはずだったのに、僕の姉となってしまった。
数日後には手続きが済んで、メイが養女となって伯爵家に引っ越してきた。
「セス、ねえセス、私の話はつまらなかった?」
どうやら僕は考えごとをしていて、メイの話をまともに聞いていなかったようだ。
「いえ、そんなことは・・・。」
僕は笑ってごまかそうとした。
メイはいぶかって、
「ごめんなさい。やっぱりセス様かなにか、他の呼び名の方が良ければ言って下さい。身分の低い私がいくら、おばさまが許したからって・・・。」
僕はメイの言葉を遮った。
「そんなことはありませんよ。ただその・・・、そうメイが僕の姉になるなんて思わなかったので、少し戸惑っているだけですよ。」
「そうなの。私は今まで一人っ子だったから、素敵な弟が出来てとってもうれしわ。」
メイはそう言って、うれしそうに微笑んだ。
僕は、メイの幸せそうな顔を眩しそうに見た。
メイが来る前に、母には何度も、好きな人の幸せに力を尽くすのが”愛するということよ”と何度も言われた。
確かに僕はメイが大好きだ。
たとえ、メイが僕以外の人と結婚してしまっても、それは変わらない。
幸い、ブライアンはメイよりだいぶ年上だ。
最初は事故に見せかけて、消してしまおうかと思ったのだが、メイの結婚式でそれを示唆すると、メイは信じられないことに、ブライアンの後を追って逝くと断言する。
やさしいメイの事だから本当に実行しないとも限らない。
ここしばらくはブライアンにメイを預け、その間に僕は自分をもっと磨いて、すぐにブライアンより僕の方が素晴らしいことを示してやる。
メイねえさま、待ってて下さい。
僕はすぐに、もっと素晴らしい男になって、年寄りブライアンからメイねえさまを奪って、僕のお嫁さんにして見せます。
メイねえさま、大好きです。
異母兄が結婚してツバァイ公爵家に入り婿したことにより、今では僕が将来有望な次期公爵家の相続人であり、今をときめく宰相閣下の異母弟となった。
そんな僕には好きな人がいる。
母の異母兄の一人娘で、名前はメイだ。
メイとの出会いはまだ僕が小さい頃に、母の招きで公爵家に遊びに来たメイに会った時に、起こったある事件がきっかけだった。
それまでの僕はあまり人にも関心がなく、ただ母に言われるままにたんたんと勉強をし、適当に剣を習い、毎日を過ごしていた。
そんな時、母に招かれたメイと彼女の父が公爵家を訪れたのだ。
一か月以上前から母はメイの父に会えると超ご機嫌だった。
逆に僕の父である公爵の機嫌はその日が近づくにつれ、だんだん不機嫌になっていった。
とても対照的だ。
そんなにイヤなら母に会うなと言ったらどうかと僕が父に提案すると、父は情けなさそうな顔で、そんなことを言えば母に捨てられるとぼそりと呟いた。
なんとも情けない限りだ。
でも、たしかに気性の激しい母なら、父を捨てるくらいのことは、簡単にやってのけそうだ。
僕は別に父が母に見捨てられてもなんともないが、その後の落ち込んだ父の面倒は、正直見たくない。
早々とそれをきっかけに愚痴をこぼす父を適当にあしらって、僕は部屋に戻った。
メイとメイの父が訪ねて来てくれた当日、母はいつも以上に念入りにめかしこんで、異母兄を出迎えた。
父はというと母の策略で王城に呼びつけられている。
どうやら母は王妃様とも懇意のようだ。
さすがの父も王からの要請には逆らえず、しぶしぶ屋敷をあとにして、今朝、王城に出向いて行った。
僕はさほど興味がなかったが、母の意見に従い、メイを出迎えた。
はっきりいって公爵家の次男とメイドの娘だ。
身分差からいっても、僕が出迎えるのは、いささかやり過ぎではないかと当時は思っていた。
なので僕の態度はかなり不遜だった。
「はじめまして、今日はよろしくたのむ。」
しかしメイもメイの父も、そんな僕に何も言わなかった。
母だけは鬼のような形相で、そんな僕の態度を見ていた。
「お義兄様、私のしつけがなっていなくて、大変申し訳ありません。」
母は真っ赤になってメイの父に謝っていた。
『僕の態度の何がダメなのだろうか?』
当時の僕には、そんなことも全くわからなかった。
メイの父と僕の母は居間でお茶にするようだ。
僕はそれに付き合いたくなくて、母の勧めもあり、メイと二人、庭園で遊ぶことになった。
遊ぶと言っても、男の子と女の子ではやる遊びが違う。
でも僕の方が身分が上なんだから、メイが合わせるのが当たり前だ。
そう思った僕は、屋敷の使用人に模擬用の剣を二本持ってこさせた。
僕はメイにそれを渡す。
メイはそれをためらうこともなく、受け取った。
すぐに僕は偉そうにメイに命令した。
「そのまま剣を構えていろ。」
メイは剣を二・三回振ると、いかにも扱い慣れた様子で剣を構えた。
僕はメイが構えると、同時に剣を振り下ろした。
途端に、僕の剣がメイに弾かれる。
「なっ・・・なんで僕の剣を弾く。僕は構えろと命令したはずだぞ。」
僕はメイに偉そうに説教した。
するとメイは不思議そうな顔で
「セス様。賊に襲われた時、賊に待てと命令しても、相手は待ってくれません。」
メイは僕に真面目に説教している。
なんて偉そうな使用人なんだ。
僕は思わず、真っ赤な顔で怒鳴りつけてしまった。
「そんなことは、わかってる。」
「なら、構えただけでは練習になりません。やはり今のようにするべきでは?」
「くそっ、じゃ、後悔するなよ。」
僕は遠慮なくメイに斬りかかった。
メイは僕の斬り込みを右に左にいなすと、最後に峰打ちで軽く僕の剣を払った。
僕は技量の差に唖然とした。
「なんで使用人のくせに僕より強いんだ。」
「でも私、父様には一度も勝てたことがありません。」
メイは真面目に僕の質問に答える。
それってなんだ。
比べる基準が間違っていないか?
大人と子供なら、大人に負けるのは当たり前ではないのか?
メイは僕の考え中に、隣でブツブツ呟いている。
「父様以外になら結構簡単に勝てるのですが、何が悪いのでしょうか?」
はっ他の大人には勝てるって、メイの周りはどうなっているんだ。
僕が不思議に思っていると、どこからか悲鳴が上がる。
なにかあったようだ。
僕とメイは剣を持ったまま、その悲鳴が聞こえた場所に向かった。
不思議に思いながら、悲鳴が上がった場所を覗くと、信じられないことに野生のクマがそこにいた。
「なな・・・なんで、こんなところにクマがいるんだ。」
僕は思わず叫んでいた。
クマは僕たちに気がつくとジリジリと近づいて来た。
『まずい。このままでは殺される。逃げないと。』
逃げようとするが足が凍り付いたようになって動かない。
メイが僕を引っ張るが、どうにもこうにも、その場から動けなかった。
メイは諦めて僕から手を離した。
当然だろう。
誰が好き好んで他人の為に命を張る。
僕は目をつぶった。
もうクマに殺されると思った。
クマが立ち上がって鋭い爪を閃かせた。
その時、僕の前に誰かが立ちはだかった。
『大人が間に合ったのか。』
僕はそろそろと目を開けた。
しかしそこには、僕とあまり変わらない背丈の小柄なメイの背中が、目前にあった。
メイは震えながらもクマに斬りかかっていった。
でもいかんせん体型が違いすぎる。
そのうち剣も飛ばされ、丸腰になる。
今度こそ僕はメイに見放されると思った。
『もう、だめだ。』
それなのにメイは僕に覆い被さって、クマから僕を守ろうとした。
「メイよせ。ダメだ。」
僕たちの前に巨大なクマが立ちあがって襲ってきた。
もう本当に今度こそ、ダメだと思った。
その時、何故か僕たちに向け打ち下ろされそうとしたクマの巨大な手が消えた。
さらに、クマの首が血しぶきと共に飛んだ。
「お異母兄さま。さすがですわ。」
すかさずハートマークがいっぱい詰まった母の声が聞こえた。
「大丈夫か。けがはないか、二人とも。」
メイの父が剣をしまうと僕たちを助け起こした。
メイが僕から離れて、父親に抱き付く。
「うわーん、怖かったよぉー。」
さっきとはうって変って、泣き喚いているメイがいた。
あまりのことに僕は呆然として、その場で固まってしまった。
母が起き上がらない僕を心配して慌てて駆け寄ると、あちこち触ってから声をかけてきた。
「まさか、どこかケガをしたの、セス?」
「いえ、大丈夫です。なんともありません。驚いただけです。」
僕は母に助け起こされながらも、途中で我に返って自分で起き上がった。
そして、年相応に父親にしがみついて泣くメイを見た。
良く見るとメイは震えていた。
あんなに怖かったのに、メイは僕を庇ってくれたのだ。
僕の胸は、温かいものでいっぱいになった。
もっともっと修行して、今度は僕がメイを守って見せる。
その日は、そんな事件もあって、二人は早々と屋敷を去っていった。
僕と母は自ら玄関に出ると彼らを見送った。
「かあさま、僕は将来かならずメイをお嫁さんにするよ。」
母は目を大きく開けて僕を見た。
僕はとっておきの言葉を母に呟いた。
「かあさま。そうすれば、かあさまはメイの母になるから、メイのお父様にもっと近づけるんじゃないかな。」
母はハッとすると、満面の笑みを僕に向けた。
「そうね。メイがあなたでいいと言ったら、反対はしないわ。」
僕はその日から人が変わったように剣も勉強も、熱を入れて学んだ。
その後もメイに何度か会う機会があり、将来の為にメイの理想の人を聞いて見た。
メイの理想は父親だという。
僕は母にメイの父の若かりし頃の事を聞いて見た。
もちろん僕の父が留守の時にだ。
なぜかメイの父の話を僕の父の前で話すと、父の機嫌が急降下するのだ。
めんどくさいので、父が留守の時に母に聞いて見た。
母はうれしそうに話てくれた。
もともとメイの父と母は同じ屋敷に住んでいたそうだ。
その頃のメイの父は伯爵家の執事として、母と同じ屋敷で働いていたらしい。
その時はまだ、母もメイの父が自分の異母兄だということは知らなかったようだ。
母は若い時分から気性が激しく、メイの父を好きだと気付いた時は、まだ僕の父と婚約中だったらしい。
しかし僕の父は伯爵家の母より位の高い、公爵家の異母兄であるケインの母に見初められ、最初に彼女と結婚し、次に僕の母と婚姻した。
母も父を嫌っていたわけではないがメイの父の方が好きだったので、その機会に伯爵(いわゆる僕のおじい様)に、メイの父との結婚を願いでた。
伯爵はもちろん、メイの父が自分の息子だと知っていたので大慌てだ。
ようやく母にメイの父が異母兄であることを打ち明けた。
母は最初、ショックのあまり家出して、親友の屋敷に居候したそうだ。
さすがの母も異母兄では結婚できなかったようだ。
メイの父も、異母妹として母の事を気にかけてくれたようだが、さすがに一人の女性としては見れないと言われたそうだ。
母曰く、メイの父が言ってくれれば、禁断の○○愛も受け入れたのにと、のたまっていた。
我が母、恐るべし。
話は戻るが、そんなこんなで色々聞くと、メイの父はいまでもそうだが、容姿端麗、異性にももて、剣の腕も際立って強く、優しく素晴らしい人とのことだ。
僕も母似のお蔭で容姿は合格だろう。
剣の腕は今現在、めきめき上達中だ。
そのうちメイより強くなって見せる。
異性にモテるかどうかは、今後頑張っていくしかないがなんとかなるだろう。
僕の優秀な頭脳を持ってすれば、すぐに解決できるはずだ。
そう思って僕がメイの為に頑張っていた時、メイが仕える主家である公爵家の公爵夫人が反体制派の旗印として狙われているとの情報が入った。
この情報は、公爵本人から王家の王妃と仲の良い僕の母とメイの両親、メイ、そして当事者である公爵夫人が知らされた。
僕はこの話をたまたま僕の家で開かれたお茶会の席で盗み聞きした。
最初は六人の間で話されていた密談だったが、あまり良い案が浮かばず。
最後はメイがなんでか、公爵夫人の為に囮になる案まで浮上していた。
僕は盗み聞ぎしながらも焦った。
このままではメイが危険な目にあってしまう。
僕は自分の優秀な知能をフル回転して、メイの危険を回避する案を出した。
お茶会の席に僕が突如として乱入したので、母も王妃も周り中が良い顔をしなかった。
そこで僕が公爵夫人の偽処刑案を出すとあまりにも奇想天外の案に周りの大人が全員、唖然としていた。
僕に言わせれば、旗印の本人さえいなければ、問題ない事件のはずだから、何で唖然として表所になり、なおかつその案を実行するのに渋るのかを理解出来なかった。
でもよく聞くと、どうも宰相である公爵家を潰さずに処刑する理由が必要らしい。
ならばと、僕は公爵夫人が未成年者である僕に手を出したことにすれば、どうかと提案した。
実際はそうでなくても、そう言う噂で十分なはずだ。
王妃は僕のこの奇想天外な案をいたく、気に入ってくれた。
なので、すぐにこれを実行に移すと言い出した。
最後は将軍である父に王妃から話を通してくれた。
王家の騎士である父とはいえ、最初はこの案に猛反対したらしい。
しかし、王妃と王の説得に最後は折れたようだ。
母は僕の案にメイの父が申し訳なさそうに謝ると、ご機嫌で許可していた。
内容は聞いていないが、何かメイの父におねだりしたようだ。
僕は僕で、王妃様に将来、僕が身分の低いメイと結婚する時に彼女が困らない様、後見人になってくれるように根回しした。
ただし、王妃様には身分の低いものとしか言わなかった。
まだメイ本人にも告白していないのに、名前を王妃様に明かすわけにはいかない。
王妃様は何も聞かずに頷いてくれた。
もっとも僕の出したこの作戦は結局、まわりまわって、メイとあの憎らしいブライアンとを出合せるきっかけになってしまった。
後から考えるとこれは僕の人生での最大の失敗だった。
なぜなら、この事件が発端となり、メイが主人であるレイチェルと王都から地方の別荘に行った時に、魔獣豚事件が起き、僕の異母兄であるケインと彼女の主人が結婚することで、メイとブライアンにつながりが出来てしまったからだ。
まだそれだけだったならよかったのだが、その時、レイチェルを守るために行った反王政派勢力の殲滅で、宮廷の派閥争いに敗れた人間がなんとメイを襲うことになってしまったのだ。
この時は、たまたま偶然に居合わせたブライアンがメイを助けた。
きっとメイは自分を助けたブライアンをヒーローのように思ってしまったのだ。
僕もあの時、すぐにメイのもとに向かったのだが、小部屋でブライアンと彼女が二人きりでいたことで逆上して、つい叫んでしまった。
おかげで、偶然通路に居合わせた、うわさ好きの貴婦人にその場面を目撃されてしまう。
噂は瞬く間に広がって、メイは宮廷でブライアンの愛人ではないかと、囁かれるようになってしまった。
僕としたことが痛恨のミスだ。
このままではメイの名誉に傷がついてしまう。
メイの為にも緊急になんとかしなくては。
一番いい案は、メイが僕と結婚することだが、僕が成人するまでにあと数日、必要だ。
それにまさかこんなに早く、メイに求婚することになるとは思っていなかったので、いろいろ準備不足の感がいなめない。
ここはやはり、大人である母を説得し、緊急にメイと婚約することが一番だと思われた。
僕が早速、メイに求婚する準備をしながらそこかに行った母が戻って来るのを待っていると、外出していた母が帰宅と同時に、なぜか父と僕を居間に呼びつけた。
僕もメイのことで用事があったので、すぐに行くと母が満面の笑顔で待ち構えていた。
なんだ、この満面の笑顔は?
父も不穏なものを感じたらしく、かなり緊張している。
「なにかあったのか?」
父が問うと母はこぼれるような笑顔で答えてくれた。
「うふふふふ、喜んで。私たちに娘が出来るのよ。」
「えっ、娘????」
父が首を傾げている。
「僕に妹ができたのですか?まさか、その年で妊娠したと。」
「まさか、そうなのか?」
父が大慌てで聞いている。
「いやあね、まさか。さすがにそれはないわよ。セスにお姉さまが出来るのよ。」
「姉ですか???」
妹ならまだしも、なんでいきなり姉が出来るんだ。
「まさか、父の隠し子ですか?」
父が真っ青になって否定している。
「そんな、身に覚えはない。」
「「??????????」」
父と僕は疑問符いっぱいで母の顔を見た。
「それはね。養女をもらうことになったの。」
「「養女!!!」」
「そっ、養女よ。」
「いったいどなたの?」
僕は母に尋ねた。
「うふふふ、なんとセバスチャン兄様の娘さんよ。」
「なっ、セバスチャンの娘だと。」
父は怒鳴った。
「メイを!!!」
僕は驚愕のあまり叫んでいた。
「「なんでまた、そんなことに。」」
「メイがブライアンと結婚するのに身分が必要だから、私がメイを養女にすることにしたの。」
「なっ、メイがブライアンと結婚なんて、いつ決まったんですか?」
僕は母に噛みつかんばかりに迫った。
「ほんの数日前だと思うわ。」
母の言葉に僕は呆然としてしまった。
メイが結婚する。
それも僕以外の相手と。
そんなことがあるわけがない。
「冗談じゃないぞ。セバスチャンの娘を養女になど出来ん。」
父の一言に母のこめかみに青筋がたった。
「なんですって、今なんとおっしゃったんですか。」
「セバスチャンの娘を養女になど、せんといったんだ。」
母が般若のようになって父を振り返った。
「理由を聞いても。」
「身分の低いものを養女になど出来ん。」
父がもう一度、突っぱねた。
「メイは身分が低くても、私の姪ですわ。
それじゃ私が単なる伯爵家の娘だから、あなたは数十年前に私を捨てて、ケインの母と結婚したんですね。」
母はよよと泣き崩れた。
「いや、待て。そんなことはない。」
慌てて、父は母を宥める。
「それに、これはケインにも頼まれたことなのに。」
母が異母兄の名前を出す。
「なに、ケインに頼まれたことだと。」
父の耳がピクピク動いている。
「それは・・・。」
「メイは確かにセバスチャン兄様の娘ですが、わ・た・しの姪でもあるんです。」
母様は、さらに畳かけた。
「うっ、たしかに。」
「あ・な・た。」
母様がにっこり微笑んだ。
「わかった。」
結局、父は母には勝てなかった。
イエスと言わされた後、母に”あなたってやっぱり頼りになるわ”とほめそやされると、もうその気になっている。
僕が唖然としているうちに話は決まってしまい、数日後にはメイがこの家にやってくる事になっていた。
なんでこんなことに、なってしまったんだろうか。
メイが次にこの家に来るときは、僕のお嫁さんになるはずだったのに、僕の姉となってしまった。
数日後には手続きが済んで、メイが養女となって伯爵家に引っ越してきた。
「セス、ねえセス、私の話はつまらなかった?」
どうやら僕は考えごとをしていて、メイの話をまともに聞いていなかったようだ。
「いえ、そんなことは・・・。」
僕は笑ってごまかそうとした。
メイはいぶかって、
「ごめんなさい。やっぱりセス様かなにか、他の呼び名の方が良ければ言って下さい。身分の低い私がいくら、おばさまが許したからって・・・。」
僕はメイの言葉を遮った。
「そんなことはありませんよ。ただその・・・、そうメイが僕の姉になるなんて思わなかったので、少し戸惑っているだけですよ。」
「そうなの。私は今まで一人っ子だったから、素敵な弟が出来てとってもうれしわ。」
メイはそう言って、うれしそうに微笑んだ。
僕は、メイの幸せそうな顔を眩しそうに見た。
メイが来る前に、母には何度も、好きな人の幸せに力を尽くすのが”愛するということよ”と何度も言われた。
確かに僕はメイが大好きだ。
たとえ、メイが僕以外の人と結婚してしまっても、それは変わらない。
幸い、ブライアンはメイよりだいぶ年上だ。
最初は事故に見せかけて、消してしまおうかと思ったのだが、メイの結婚式でそれを示唆すると、メイは信じられないことに、ブライアンの後を追って逝くと断言する。
やさしいメイの事だから本当に実行しないとも限らない。
ここしばらくはブライアンにメイを預け、その間に僕は自分をもっと磨いて、すぐにブライアンより僕の方が素晴らしいことを示してやる。
メイねえさま、待ってて下さい。
僕はすぐに、もっと素晴らしい男になって、年寄りブライアンからメイねえさまを奪って、僕のお嫁さんにして見せます。
メイねえさま、大好きです。
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