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20 サロンとメガネ
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今日は昨日のドレス選びの疲れが出て非常にぐったりしたので、朝食を終えた後、庭で読書を楽しみながらゆっくりすることにした。
ちなみにケインは将軍もといお父様に呼ばれ、王城に行っている。
おかげで過度のスキンシップもないのでゆっくり考えごとも出来る。
今日は一日読書とついでに宰相である父をギャフンと言わせる方法を考えよう。
父の弱点はきっとセバスチャンに聞くのが一番なのだろうが、王都に戻ってきたせいで公爵家での執事長に復帰してしまいどうにも聞きづらい。
別荘にいるうちに聞いておけば良かったのだろうが今更だ。
何か弱みを探る方法・・・うーん、弱点・・。
魔獣の弱点なら魔法のメガネで見ればバッチリわかるんだけど、あれは・・・。
ちょっと待って。
あのメガネって、確か魔獣に限定されたものじゃなかったような・・・。
もしかして人間にも使えるのかも。
私は一旦、寝室に戻ってメガネを掛けるとメイに声をかけ庭に向かった。
庭に向かう途中に執事長とメイド長の二人とすれ違った。
私が庭にある東屋で座っていると、すぐにメイが紅茶とケーキを持って現れた。
「お待たせしました。お嬢様。」
私はメガネをかけたままメイを見た。
メイの姿を見るとメリンダの文字が浮かぶ。
『えっ、セバスチャンではなくメリンダなの?』
「どうかしましたか、お嬢様。」
私がメガネをしたまま、あまりにもマジマジとメイを見ていたので不審に思われたようだ。
「あのね、メイ。」
「はい、お嬢様。」
メイは紅茶を入れながら私を見る。
「変なこと聞くけど。 メイが一番苦手に思っている人って、誰?」
メイは紅茶を私に出しながら真剣に考えると、
「そうですね。やはり母でしょうか。」
「えっ、セバスチャンではなくてメリンダなの。」
「はい、父はどちらかというと最後は結構、私が娘のせいか甘いのですが料理にしろ何にしろ、厳しいのは母の方なので苦手なのは母ですね。」
「それじゃ、この屋敷の執事長の苦手な人ってメイド長かしら。」
メイはクスリと笑うと、
「きっと、そうでしょうね。たまに奥様であるメイド長に叱られている執事長を見かけますから。」
『知らなかった。執事長とメイド長って結婚してたんだ。』
「じゃ、メイド長の苦手な人って料理長かしら?」
メイはしばらく考えてでから口を開いた。
「うーん、申し訳ありません。そこまで親しくありませんので、今度、他のメイドに聞いてみます。」
私はメイに聞いておいてもらえるようにお願いすると、一人にしてもらった。
確かにメガネでその人物の苦手、もとい弱点となる人はわかるが、名前だけではその人の背景がわからないし、本当にどこまで役に立つか検討もつかない。
でもなんの情報もないよりはマシなのだろうか。
私がうなりながら考えていると、メイが庭に戻ってきた。
メイド長の苦手な人がわかったのだろうか?
「お嬢様、大変です。王女様から個人的にサロンで開かれるお茶会への招待状が来ました。」
「そう、招待。へっ・・・・しょうたい。 なんでぇ、私が呼ばれるの。王女様と親かったことなんか一度もないのに。」
私は飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。
「あのー、お嬢様。非常に申し上げにくいのですが、うわさでは王女様はケイン様にだいぶ熱を上げていたようで、ですので、たぶん・・・。」
メイは途中で言いよどむ。
「そのケイン様と結婚する私を心良く思っていないので、呼びつけたって言いたいの。」
私はメイを見た。
メイはこくんと頷いた。
『なんて面倒なことになったの。もとを正せば、その王女様の実母である王妃様が事の発端でしょうに。』
「それで招待された日って何時なの?」
「二日後です。」
「ふつか!!」
「はい、二日です。」
「なんでそんなに急なの。」
『メイに当たってもしょうがない。まずは王女様の個人情報収集ね。それと、・・・。』
「メイ、メリンダはいつ王都に戻って来るのかしら。」
「予定では遅くとも明日の夕方には王都に戻ってきますので、二日後に持っていくデザートについては問題ありません。」
私はメイの返事に安堵した。
招待された側は必ず何かを持参する。
メリンダのデザートなら王都いや王国一だ。
これで持参品は問題ないが今まで王女様と親しくなかったので、王女様の個人情報がまったくわからない。
「メイ。」
私はメイに王女様の情報を調べてくれるように頼む。
メイはうなづくと直ぐに庭から出て行った。
あとは、メイが集めてくれる王女様の情報を見て、対策を練るしかない。
今日こそは、父をギャフンと言わせる方法を考えるはずが、何でこんなことになったんだろうか。
父をギャフンと言わせる道はまだまだ遠い。
メイと屋敷のメイドさん達、仕立屋、メリンダの奮闘により、私は無事、王女様に招待されたお茶会の準備を終えることが出来た。
そして、今、馬車に乗って王都に向かっている。
それもなぜか、ケイン様のお膝の上に座りながら。
「あのー。そのー。お願いですから膝の上から、降ろしていただけないでしょうか。」
その時、道のガタツキに馬車の車輪が跳ね、大きく座席が揺れた。
「どわっ。」
私は思わず、ケイン様にすがり付いていた。
「揺れて危ないですから。やっぱりこのままの方がいいですよ。それにレイチェルの顔に傷がつくと大変ですからね。メガネは私が持っていましょう。」
ケインは私が掛けていたメガネを取るとメガネのフレームでついた後にキスをして、にっこり笑う。
『えっ、私の鼻の頭に温かい唇の感触が・・・・・。
うっ、ダメェーーーーだめよ、レイチェル。
それ以上考えると私は溶けてなくなってしまう。』
私がそう自分に言い聞かせていると、さっきより私を抱きしめる力が強くなった。
「疲れているようならこのまま眠ってしまっても大丈夫ですよ。しっかり支えていますから。」
私は思わず顔を上げてケインを見た。
そこには天使のように美麗な顔が微笑んでいた。
『顔上げられませぇーん。このまま顔を見続けたら泡になって消えちゃう。』
私はケインの胸に顔を埋めたまま硬直していた。
そのうち、またもや馬車の揺れに心地良くなって昨日の疲れもあってか、ねむっていた。
馬車が王城に着くとケインは私を起こさず、そのまま抱いて王女様のサロンに運んでくれた。
その間、王城にいた貴族たちはケインが私を抱きながら運ぶ姿を見せつけられる。
「レイチェル、着きましたよ。」
ケインは腕の中の私に声をかけた。
「うーん。」
私はケインの腕の中で目を開けた。
目を開けた途端にケインのドアップ顔が私を襲った。
私は目を見開いたまま固まった。
『なんでこんな美しいものが私の目の前にあるの!!!』
「まだ眠いようなら、このまま抱いて座りましょうか?」
ケインは優しく囁いた。
『このまま?』
私は自分の今の状況をみた。
ケインの腕に抱かれた状態で王女様の取り巻き達に凝視されていた。
『イヤー。 何でこんなことになっているの?』
「いえ、まったく大丈夫です。」
私は力いっぱい、ケインに腕の中から降ろしてもらえるように目線で訴えた。
ケインはいかにも残念そうに私を降ろすと、
「レイチェル、帰るころに迎えに来ますからゆっくり楽しんで下さい。
そうそう、一人で先に帰ってはダメですよ。」
そう言って、その場で微笑んだ。
『周りの貴族令嬢達の嫉妬光線で私の背中に穴が空きそうです。』
私は怖くて後ろを振り向けなかった。
その時、立ち去りかけたケインが急に戻って来ると、
「レイチェル、馬車の中で預かったメガネを返すのを忘れていました。」
そう言うと私の顎に手を掛けて顔をあげさせると、私にメガネをかけてくれた。
そして、そのままそっと私の額に口づけた。
「「「「きゃー、ケイン様がぁーーーーーーー。」」」」
背中で周りの貴族令嬢たちの悲鳴が聞こえる。
ケインはその声に顔を上げると、
「王女様、レイチェルをよろしくお願いします。」
そう一言いうと今度こそサロンから去って行った。
『ケイン様、私も一緒に連れてってほしい気持ちなんですが。』
私はケインの後姿を見送ってから勇気を振り絞って、前を向いた。
その途端、今まで顔を真っ赤にして恥じらっていた令嬢たちの顔が憎々しげに私を睨む。
『えーと、こんな状態を想定していなかったので、私は一体どうしたらいいのでしょうか?』
ちなみにケインは将軍もといお父様に呼ばれ、王城に行っている。
おかげで過度のスキンシップもないのでゆっくり考えごとも出来る。
今日は一日読書とついでに宰相である父をギャフンと言わせる方法を考えよう。
父の弱点はきっとセバスチャンに聞くのが一番なのだろうが、王都に戻ってきたせいで公爵家での執事長に復帰してしまいどうにも聞きづらい。
別荘にいるうちに聞いておけば良かったのだろうが今更だ。
何か弱みを探る方法・・・うーん、弱点・・。
魔獣の弱点なら魔法のメガネで見ればバッチリわかるんだけど、あれは・・・。
ちょっと待って。
あのメガネって、確か魔獣に限定されたものじゃなかったような・・・。
もしかして人間にも使えるのかも。
私は一旦、寝室に戻ってメガネを掛けるとメイに声をかけ庭に向かった。
庭に向かう途中に執事長とメイド長の二人とすれ違った。
私が庭にある東屋で座っていると、すぐにメイが紅茶とケーキを持って現れた。
「お待たせしました。お嬢様。」
私はメガネをかけたままメイを見た。
メイの姿を見るとメリンダの文字が浮かぶ。
『えっ、セバスチャンではなくメリンダなの?』
「どうかしましたか、お嬢様。」
私がメガネをしたまま、あまりにもマジマジとメイを見ていたので不審に思われたようだ。
「あのね、メイ。」
「はい、お嬢様。」
メイは紅茶を入れながら私を見る。
「変なこと聞くけど。 メイが一番苦手に思っている人って、誰?」
メイは紅茶を私に出しながら真剣に考えると、
「そうですね。やはり母でしょうか。」
「えっ、セバスチャンではなくてメリンダなの。」
「はい、父はどちらかというと最後は結構、私が娘のせいか甘いのですが料理にしろ何にしろ、厳しいのは母の方なので苦手なのは母ですね。」
「それじゃ、この屋敷の執事長の苦手な人ってメイド長かしら。」
メイはクスリと笑うと、
「きっと、そうでしょうね。たまに奥様であるメイド長に叱られている執事長を見かけますから。」
『知らなかった。執事長とメイド長って結婚してたんだ。』
「じゃ、メイド長の苦手な人って料理長かしら?」
メイはしばらく考えてでから口を開いた。
「うーん、申し訳ありません。そこまで親しくありませんので、今度、他のメイドに聞いてみます。」
私はメイに聞いておいてもらえるようにお願いすると、一人にしてもらった。
確かにメガネでその人物の苦手、もとい弱点となる人はわかるが、名前だけではその人の背景がわからないし、本当にどこまで役に立つか検討もつかない。
でもなんの情報もないよりはマシなのだろうか。
私がうなりながら考えていると、メイが庭に戻ってきた。
メイド長の苦手な人がわかったのだろうか?
「お嬢様、大変です。王女様から個人的にサロンで開かれるお茶会への招待状が来ました。」
「そう、招待。へっ・・・・しょうたい。 なんでぇ、私が呼ばれるの。王女様と親かったことなんか一度もないのに。」
私は飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。
「あのー、お嬢様。非常に申し上げにくいのですが、うわさでは王女様はケイン様にだいぶ熱を上げていたようで、ですので、たぶん・・・。」
メイは途中で言いよどむ。
「そのケイン様と結婚する私を心良く思っていないので、呼びつけたって言いたいの。」
私はメイを見た。
メイはこくんと頷いた。
『なんて面倒なことになったの。もとを正せば、その王女様の実母である王妃様が事の発端でしょうに。』
「それで招待された日って何時なの?」
「二日後です。」
「ふつか!!」
「はい、二日です。」
「なんでそんなに急なの。」
『メイに当たってもしょうがない。まずは王女様の個人情報収集ね。それと、・・・。』
「メイ、メリンダはいつ王都に戻って来るのかしら。」
「予定では遅くとも明日の夕方には王都に戻ってきますので、二日後に持っていくデザートについては問題ありません。」
私はメイの返事に安堵した。
招待された側は必ず何かを持参する。
メリンダのデザートなら王都いや王国一だ。
これで持参品は問題ないが今まで王女様と親しくなかったので、王女様の個人情報がまったくわからない。
「メイ。」
私はメイに王女様の情報を調べてくれるように頼む。
メイはうなづくと直ぐに庭から出て行った。
あとは、メイが集めてくれる王女様の情報を見て、対策を練るしかない。
今日こそは、父をギャフンと言わせる方法を考えるはずが、何でこんなことになったんだろうか。
父をギャフンと言わせる道はまだまだ遠い。
メイと屋敷のメイドさん達、仕立屋、メリンダの奮闘により、私は無事、王女様に招待されたお茶会の準備を終えることが出来た。
そして、今、馬車に乗って王都に向かっている。
それもなぜか、ケイン様のお膝の上に座りながら。
「あのー。そのー。お願いですから膝の上から、降ろしていただけないでしょうか。」
その時、道のガタツキに馬車の車輪が跳ね、大きく座席が揺れた。
「どわっ。」
私は思わず、ケイン様にすがり付いていた。
「揺れて危ないですから。やっぱりこのままの方がいいですよ。それにレイチェルの顔に傷がつくと大変ですからね。メガネは私が持っていましょう。」
ケインは私が掛けていたメガネを取るとメガネのフレームでついた後にキスをして、にっこり笑う。
『えっ、私の鼻の頭に温かい唇の感触が・・・・・。
うっ、ダメェーーーーだめよ、レイチェル。
それ以上考えると私は溶けてなくなってしまう。』
私がそう自分に言い聞かせていると、さっきより私を抱きしめる力が強くなった。
「疲れているようならこのまま眠ってしまっても大丈夫ですよ。しっかり支えていますから。」
私は思わず顔を上げてケインを見た。
そこには天使のように美麗な顔が微笑んでいた。
『顔上げられませぇーん。このまま顔を見続けたら泡になって消えちゃう。』
私はケインの胸に顔を埋めたまま硬直していた。
そのうち、またもや馬車の揺れに心地良くなって昨日の疲れもあってか、ねむっていた。
馬車が王城に着くとケインは私を起こさず、そのまま抱いて王女様のサロンに運んでくれた。
その間、王城にいた貴族たちはケインが私を抱きながら運ぶ姿を見せつけられる。
「レイチェル、着きましたよ。」
ケインは腕の中の私に声をかけた。
「うーん。」
私はケインの腕の中で目を開けた。
目を開けた途端にケインのドアップ顔が私を襲った。
私は目を見開いたまま固まった。
『なんでこんな美しいものが私の目の前にあるの!!!』
「まだ眠いようなら、このまま抱いて座りましょうか?」
ケインは優しく囁いた。
『このまま?』
私は自分の今の状況をみた。
ケインの腕に抱かれた状態で王女様の取り巻き達に凝視されていた。
『イヤー。 何でこんなことになっているの?』
「いえ、まったく大丈夫です。」
私は力いっぱい、ケインに腕の中から降ろしてもらえるように目線で訴えた。
ケインはいかにも残念そうに私を降ろすと、
「レイチェル、帰るころに迎えに来ますからゆっくり楽しんで下さい。
そうそう、一人で先に帰ってはダメですよ。」
そう言って、その場で微笑んだ。
『周りの貴族令嬢達の嫉妬光線で私の背中に穴が空きそうです。』
私は怖くて後ろを振り向けなかった。
その時、立ち去りかけたケインが急に戻って来ると、
「レイチェル、馬車の中で預かったメガネを返すのを忘れていました。」
そう言うと私の顎に手を掛けて顔をあげさせると、私にメガネをかけてくれた。
そして、そのままそっと私の額に口づけた。
「「「「きゃー、ケイン様がぁーーーーーーー。」」」」
背中で周りの貴族令嬢たちの悲鳴が聞こえる。
ケインはその声に顔を上げると、
「王女様、レイチェルをよろしくお願いします。」
そう一言いうと今度こそサロンから去って行った。
『ケイン様、私も一緒に連れてってほしい気持ちなんですが。』
私はケインの後姿を見送ってから勇気を振り絞って、前を向いた。
その途端、今まで顔を真っ赤にして恥じらっていた令嬢たちの顔が憎々しげに私を睨む。
『えーと、こんな状態を想定していなかったので、私は一体どうしたらいいのでしょうか?』
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