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42.決勝戦は嫉妬の香り(前編)
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花子は決勝戦の当日に祖母から和紙で丁寧に包まれた手紙を受け取った。
「お祖母様。これは?」
「会場に行くまでの乗り物の中で読みなさい。」
お祖母様はそれだけ言うと実母と実父が乗っている乗り物に乗り込んで行ってしまった。
花子もお祖母様からもらった手紙を持って乗り物に乗り込んだ。
すぐに乗り物は試合会場に向かった。
花子は乗り物の中でごくりと唾を飲み込むと意を決して手紙を開いた。
そこには数行の短い文字が書かれていた。
1.対戦相手を殺すなかれ。
それは分かっている。
わかっているので昨日の第一戦から相手を殺さないように魔力を極力押さえて戦ってきたのだ。
それに勝ち進む条件の中に”不殺の文字”も書かれていた。
2.油断するな。
もちろん油断はしない。
どんな相手にも真剣に向き合っている。
心の中にで手紙に書かれていることにいちいちブツブツと呟いていると手紙は急に青白い炎を上げて燃え尽きてしまう。
そして最後のひとかけらが燃え上がった時に花子の心の中に先程別れたお祖母様の声が聞こえた。
3.全力で相手を潰しなさい。
そう心の中には聞こえた。
えっそれって、第一条に反するんじゃない?
どういう事?
色々なことが頭を過ぎった。
全力を出せば相手を殺してしまう。
それじゃ留年になっちゃうし、ほどほどじゃきっと決勝戦だから優勝することは難しい。
なら・・・どういう意味なの、これ?
花子はお祖母様がくれた手紙の内容を思い出しては首を傾げた。
花子が答えを出せないうちに乗り物は試合会場に着いてしまい、結局そのまま控え室でパートナーと合流してすぐに決勝戦の会場である海岸近くの広い砂地に立っていた。
今日の決勝戦の相手はこの国の第一皇子だ。
信じられないことだがこの第一皇子。
見れば見れるほど八百万神社の蔵にしまってあったお祖父様の若い時にとても似ていた。
うそー。
いや似ているを通り越してそっくりだ。
もしかしてこの第一皇子は実母の異母姉弟。
えっということはこの人と私って叔父と姪ってこと。
あーなんだか・・・やだなぁー。
花子が相手をじっと見ながらそんなことを考えているうちに試合が開始された。
相手のパートナーが剣を抜くとそれに魔力を纏わせて振り抜いた。
物凄い勢いで振り抜かれた魔力を帯びた風が海岸沿いにある砂を巻き込んでそれが轟々と音を立てながら花子たちに襲いかかって来た。
花子は落ち着いて盾という漢字を思い描いて、それに魔力を流した。
すぐに青銅色の盾が二人の前に立ち塞がって砂嵐を防いだ。
その直後にドーンという鈍い音がして盾が真っ二つに割れ、そこに竜の形をした水の塊が雪崩込んできた。
花子は氷壁という漢字にヒョウヘキと重ね掛けしてそれを防いだ。
竜の形をした水が消えた先には文字が書かれた和紙を右手に構え、左手で印を切っている皇子の姿があった。
お前は第一皇子なのに陰陽師か!
思わずそんな言葉が浮かんだがそれどころではない。
次々に湧き上がる海水で作られた竜に二人は襲いかかられた。
花子は襲いかかって来る海竜を凍らせながらなるほどと思った。
お祖母様が全力で相手を潰せとはもしかしてこういう状態を想定していたから?
でも全力だと危ないんじゃない?
チラッとそんなことを考えているうちにだんだんと相手の魔力に圧されていた。
まずい。
これ以上、後ろに下がると場外になる。
場外!
よし。
一か八か。
負けるくらいならやってみよう!
花子は相手と同じように海水に向け、竜という漢字にリュウというカタカナ、それに”りゅう”というひらがなを加えてそのすべてに魔力を流し、それを合わせて相手に放った。
慌てた様子の第一皇子が先程、花子がやったように盾を作り出していた。
しかし威力が違い過ぎたようですぐに盾は破壊されないがじりじりと場外まで押されていた。
よし、もう場外・・・。
という間際にパートナーが放った剣の威圧が海水で作った竜の胴体を薙ぎ払った。
おいおい。
剣の風圧で薙ぎ払うとかどんだけ人外なのよ!
このパートナーさんは人間?
人のことは言えないはずの花子がそんな思考を展開しているうちに移動した第一皇子からカマイタチを放たれた。
花子の反応は遅かったが彼女のパートナーがそれを先程の第一皇子のパートナーと同じように剣の風圧で消し去った。
「ほう。お主のパートナーもなかなかやるな。」
呑気な第一皇子とは別方向から拳が向かって来た。
花子はそれを氷の壁で防いでその拳ごと氷の中に閉じ込めた。
ピ・・・ピキピキピキピキ・・・ピッキーン。
第一皇子のパートナーの彫像が出来上がって全員がそちらに気を捕られた瞬間に第一皇子が動いた。
しかしすでにそれを予見していた花子のパートナーの動きの方が早かった。
フレッドの拳が第一皇子の鳩尾に決まり、決勝戦は花子たちの優勝で終わった。
「お祖母様。これは?」
「会場に行くまでの乗り物の中で読みなさい。」
お祖母様はそれだけ言うと実母と実父が乗っている乗り物に乗り込んで行ってしまった。
花子もお祖母様からもらった手紙を持って乗り物に乗り込んだ。
すぐに乗り物は試合会場に向かった。
花子は乗り物の中でごくりと唾を飲み込むと意を決して手紙を開いた。
そこには数行の短い文字が書かれていた。
1.対戦相手を殺すなかれ。
それは分かっている。
わかっているので昨日の第一戦から相手を殺さないように魔力を極力押さえて戦ってきたのだ。
それに勝ち進む条件の中に”不殺の文字”も書かれていた。
2.油断するな。
もちろん油断はしない。
どんな相手にも真剣に向き合っている。
心の中にで手紙に書かれていることにいちいちブツブツと呟いていると手紙は急に青白い炎を上げて燃え尽きてしまう。
そして最後のひとかけらが燃え上がった時に花子の心の中に先程別れたお祖母様の声が聞こえた。
3.全力で相手を潰しなさい。
そう心の中には聞こえた。
えっそれって、第一条に反するんじゃない?
どういう事?
色々なことが頭を過ぎった。
全力を出せば相手を殺してしまう。
それじゃ留年になっちゃうし、ほどほどじゃきっと決勝戦だから優勝することは難しい。
なら・・・どういう意味なの、これ?
花子はお祖母様がくれた手紙の内容を思い出しては首を傾げた。
花子が答えを出せないうちに乗り物は試合会場に着いてしまい、結局そのまま控え室でパートナーと合流してすぐに決勝戦の会場である海岸近くの広い砂地に立っていた。
今日の決勝戦の相手はこの国の第一皇子だ。
信じられないことだがこの第一皇子。
見れば見れるほど八百万神社の蔵にしまってあったお祖父様の若い時にとても似ていた。
うそー。
いや似ているを通り越してそっくりだ。
もしかしてこの第一皇子は実母の異母姉弟。
えっということはこの人と私って叔父と姪ってこと。
あーなんだか・・・やだなぁー。
花子が相手をじっと見ながらそんなことを考えているうちに試合が開始された。
相手のパートナーが剣を抜くとそれに魔力を纏わせて振り抜いた。
物凄い勢いで振り抜かれた魔力を帯びた風が海岸沿いにある砂を巻き込んでそれが轟々と音を立てながら花子たちに襲いかかって来た。
花子は落ち着いて盾という漢字を思い描いて、それに魔力を流した。
すぐに青銅色の盾が二人の前に立ち塞がって砂嵐を防いだ。
その直後にドーンという鈍い音がして盾が真っ二つに割れ、そこに竜の形をした水の塊が雪崩込んできた。
花子は氷壁という漢字にヒョウヘキと重ね掛けしてそれを防いだ。
竜の形をした水が消えた先には文字が書かれた和紙を右手に構え、左手で印を切っている皇子の姿があった。
お前は第一皇子なのに陰陽師か!
思わずそんな言葉が浮かんだがそれどころではない。
次々に湧き上がる海水で作られた竜に二人は襲いかかられた。
花子は襲いかかって来る海竜を凍らせながらなるほどと思った。
お祖母様が全力で相手を潰せとはもしかしてこういう状態を想定していたから?
でも全力だと危ないんじゃない?
チラッとそんなことを考えているうちにだんだんと相手の魔力に圧されていた。
まずい。
これ以上、後ろに下がると場外になる。
場外!
よし。
一か八か。
負けるくらいならやってみよう!
花子は相手と同じように海水に向け、竜という漢字にリュウというカタカナ、それに”りゅう”というひらがなを加えてそのすべてに魔力を流し、それを合わせて相手に放った。
慌てた様子の第一皇子が先程、花子がやったように盾を作り出していた。
しかし威力が違い過ぎたようですぐに盾は破壊されないがじりじりと場外まで押されていた。
よし、もう場外・・・。
という間際にパートナーが放った剣の威圧が海水で作った竜の胴体を薙ぎ払った。
おいおい。
剣の風圧で薙ぎ払うとかどんだけ人外なのよ!
このパートナーさんは人間?
人のことは言えないはずの花子がそんな思考を展開しているうちに移動した第一皇子からカマイタチを放たれた。
花子の反応は遅かったが彼女のパートナーがそれを先程の第一皇子のパートナーと同じように剣の風圧で消し去った。
「ほう。お主のパートナーもなかなかやるな。」
呑気な第一皇子とは別方向から拳が向かって来た。
花子はそれを氷の壁で防いでその拳ごと氷の中に閉じ込めた。
ピ・・・ピキピキピキピキ・・・ピッキーン。
第一皇子のパートナーの彫像が出来上がって全員がそちらに気を捕られた瞬間に第一皇子が動いた。
しかしすでにそれを予見していた花子のパートナーの動きの方が早かった。
フレッドの拳が第一皇子の鳩尾に決まり、決勝戦は花子たちの優勝で終わった。
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