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28.今学期は可不可でした。
しおりを挟む 花子はヘロヘロになりながらもリハビリから帰って来た実母とそれに付き添ってニコニコ顔の実父と一緒に食事を終えると歴史もとい"貴族の礼儀作法"の予習をするために自室に戻った。
花子が自室に戻って先程の分厚い本で予習をしようとすると一緒に部屋に入って来たムツキから黒い塊を渡された。
「マリア様いえマリア先生よりの伝言です。それに魔力を流せば予習が出来るのでそれを毎日行うようにとのことです。」
花子は疑問符を盛大に頭に浮かべながらもその黒い塊に魔力を流した。
すると黒い塊は見る見るうちに等身大の人形になり、その等身大の人形は白髪の黒い礼服を着た執事になって自室の風景もどこかの王宮になっていた。
「ほえー。何、これ。凄い。」
花子が感心している間に執事から質問が浴びせられた。
「この場合はどうするのが正解でしょうか?」
「えっ・・・えっとですね。」
モタモタしているうちにビリッと手に電気が走った。
「正解は・・・。」
長々とした説明と一緒に模範解答の動作が示された。
花子が素直に模範解答と同じ動作をすると執事からお褒めの言葉が呟かれた。
結局、花子は真夜中過ぎまで同じことを繰り返した。
最後は絶え間なく注ぎ続けていた魔力と精神的疲労でその場で意識を失った。
ムツキは疲れて倒れた花子をベッドに寝かせると呪文を唱えて執事と王宮の背景を元の黒い塊に戻した。
それにしても我が主の魔力量には驚かされる。
等身大の人形があれほど人間そっくりになったのも周囲の景色が王宮そのものに変化したのも始めて見た。
異母兄のブラウン様の時はもう少しアラアラな感じの背景と等身大の人形も人形とすぐに見分けがつくものだった。
ムツキはニマニマしながら黒い塊を花子様の机の上に置くと部屋をあとにした。
「お疲れ様です。花子様。おやすみなさい。」
「ごめんなさい。わかりません。もう無理でーす。」
花子はそういうともう一度上掛けの中に潜り込んだ。
バサッ。
バシッ!
花子は後頭部の打撃にガバッと体を起こした。
「へっ?」
「いつまで寝てるつもりなの花子。もう大学の講義に間に合わなくなるわよ。早く食事していきなさい。ブランはもうとっくに出かけたわよ。」
「へっ・・・朝?あれ。」
花子はどうやら”貴族の礼儀作法”の復習をしているうちに寝てしまったようで朝になっていた。
嫌だ、行きたくない。
そう叫ぼうとしているうちに実母に食堂に追い立てられた。
そして、気がついたら大学の魔法学の授業を終え、ムツキに先導されていつの間にか数学の授業も終わっていて、花子の目の前にはカイトが陣取って魔道具造りのウンチクを聞かされていた。
そこに前回と同じようにレーナが現れカイトを追い立てた。
「もうそんな時間か。それじゃまた来週、魔道具造りを語り合おうね。」
「あらあら、余裕だわね。昨日出された課題は終わったのかしら。」
レーナは花子の表情を見ながら嬉しそうにネチネチと嫌味を言っているうちに始業の鐘が鳴ったので諦めてスッと立ち上がると昨日と同じ席に座った。
ちょうどレーナが席に座った瞬間に右手に鞭を持って銀縁メガネをかけた白髪の教師が教室に入って来た。
「皆様、おはようございます。では本日の授業を始めます。」
白髪の教師は右手に持っ鞭をビシッと鳴らすと今日は歴史の授業を始めた。
授業時間の七割以上を使って長々と真面目に歴史の授業をした後、昨日と同じように突然生徒を指しては質問をしていった。
今日は昨日と違って全て”貴族の礼儀”に対する問題だった。
あちゃー。
今日も”貴族の礼儀作法”なの。
花子が苦手教科なのでイヤーな表情でいると前に座っていたレーナが立ち上がると白髪の教師から出された問題を見事に解いて周囲から大絶賛を受けていた。
暫く”ブラボー”だの”素晴らしい”といったレーナへの称賛の後、花子にも問題がだれた。
内容は昨日の分厚い本には一行も書かれていなかったものだった。
ああ、やっぱり。
レーナと白髪の教師の二人が口を開かない花子にニヤニヤ笑いを向け、ざまあみろという表情したのに気づいた。
その様子に気づいたので彼女たちの表情がそれ以上嬉しさのあまり崩壊する前に花子はその意地の悪い質問に対する回答を口にした。
一瞬呆けた表情の二人に対し花子はしてやったりの気分で大満足だった。
そのうち昨日と同じように終業の鐘が鳴って白髪の教師は花子に対しての回答をする前に教室から去って行った。
ふと隣を見るとレーナが物凄ーく不満そうな表情で花子を見てから彼女も何も言わずにいなくなった。
「お見事です。」
ムツキが満足顔で花子を褒め称えた。
少しこそばゆいが嬉しかった。
これで少しは”貴族の礼儀作法”の授業も楽しくなりそうだ。
花子はその日からまた空いている時間はマリア先生にがっつりしごかれながら大学に通い続けた。
その成果はどうだったかというと本当だったら全ての授業をトップの成績で終えて今学期を終了することが出来るはずだったがキンソン家の妨害があったせいか歴史という名の”貴族の礼儀作法”は”可”に終わった。
その”可”も白髪の教師が出席する夜会に出て、実践できれば貰えるという曰く付きのものだった。
花子は溜息を吐きながらも成績表を持ってムツキと一緒に自宅に戻った。
花子が自室に戻って先程の分厚い本で予習をしようとすると一緒に部屋に入って来たムツキから黒い塊を渡された。
「マリア様いえマリア先生よりの伝言です。それに魔力を流せば予習が出来るのでそれを毎日行うようにとのことです。」
花子は疑問符を盛大に頭に浮かべながらもその黒い塊に魔力を流した。
すると黒い塊は見る見るうちに等身大の人形になり、その等身大の人形は白髪の黒い礼服を着た執事になって自室の風景もどこかの王宮になっていた。
「ほえー。何、これ。凄い。」
花子が感心している間に執事から質問が浴びせられた。
「この場合はどうするのが正解でしょうか?」
「えっ・・・えっとですね。」
モタモタしているうちにビリッと手に電気が走った。
「正解は・・・。」
長々とした説明と一緒に模範解答の動作が示された。
花子が素直に模範解答と同じ動作をすると執事からお褒めの言葉が呟かれた。
結局、花子は真夜中過ぎまで同じことを繰り返した。
最後は絶え間なく注ぎ続けていた魔力と精神的疲労でその場で意識を失った。
ムツキは疲れて倒れた花子をベッドに寝かせると呪文を唱えて執事と王宮の背景を元の黒い塊に戻した。
それにしても我が主の魔力量には驚かされる。
等身大の人形があれほど人間そっくりになったのも周囲の景色が王宮そのものに変化したのも始めて見た。
異母兄のブラウン様の時はもう少しアラアラな感じの背景と等身大の人形も人形とすぐに見分けがつくものだった。
ムツキはニマニマしながら黒い塊を花子様の机の上に置くと部屋をあとにした。
「お疲れ様です。花子様。おやすみなさい。」
「ごめんなさい。わかりません。もう無理でーす。」
花子はそういうともう一度上掛けの中に潜り込んだ。
バサッ。
バシッ!
花子は後頭部の打撃にガバッと体を起こした。
「へっ?」
「いつまで寝てるつもりなの花子。もう大学の講義に間に合わなくなるわよ。早く食事していきなさい。ブランはもうとっくに出かけたわよ。」
「へっ・・・朝?あれ。」
花子はどうやら”貴族の礼儀作法”の復習をしているうちに寝てしまったようで朝になっていた。
嫌だ、行きたくない。
そう叫ぼうとしているうちに実母に食堂に追い立てられた。
そして、気がついたら大学の魔法学の授業を終え、ムツキに先導されていつの間にか数学の授業も終わっていて、花子の目の前にはカイトが陣取って魔道具造りのウンチクを聞かされていた。
そこに前回と同じようにレーナが現れカイトを追い立てた。
「もうそんな時間か。それじゃまた来週、魔道具造りを語り合おうね。」
「あらあら、余裕だわね。昨日出された課題は終わったのかしら。」
レーナは花子の表情を見ながら嬉しそうにネチネチと嫌味を言っているうちに始業の鐘が鳴ったので諦めてスッと立ち上がると昨日と同じ席に座った。
ちょうどレーナが席に座った瞬間に右手に鞭を持って銀縁メガネをかけた白髪の教師が教室に入って来た。
「皆様、おはようございます。では本日の授業を始めます。」
白髪の教師は右手に持っ鞭をビシッと鳴らすと今日は歴史の授業を始めた。
授業時間の七割以上を使って長々と真面目に歴史の授業をした後、昨日と同じように突然生徒を指しては質問をしていった。
今日は昨日と違って全て”貴族の礼儀”に対する問題だった。
あちゃー。
今日も”貴族の礼儀作法”なの。
花子が苦手教科なのでイヤーな表情でいると前に座っていたレーナが立ち上がると白髪の教師から出された問題を見事に解いて周囲から大絶賛を受けていた。
暫く”ブラボー”だの”素晴らしい”といったレーナへの称賛の後、花子にも問題がだれた。
内容は昨日の分厚い本には一行も書かれていなかったものだった。
ああ、やっぱり。
レーナと白髪の教師の二人が口を開かない花子にニヤニヤ笑いを向け、ざまあみろという表情したのに気づいた。
その様子に気づいたので彼女たちの表情がそれ以上嬉しさのあまり崩壊する前に花子はその意地の悪い質問に対する回答を口にした。
一瞬呆けた表情の二人に対し花子はしてやったりの気分で大満足だった。
そのうち昨日と同じように終業の鐘が鳴って白髪の教師は花子に対しての回答をする前に教室から去って行った。
ふと隣を見るとレーナが物凄ーく不満そうな表情で花子を見てから彼女も何も言わずにいなくなった。
「お見事です。」
ムツキが満足顔で花子を褒め称えた。
少しこそばゆいが嬉しかった。
これで少しは”貴族の礼儀作法”の授業も楽しくなりそうだ。
花子はその日からまた空いている時間はマリア先生にがっつりしごかれながら大学に通い続けた。
その成果はどうだったかというと本当だったら全ての授業をトップの成績で終えて今学期を終了することが出来るはずだったがキンソン家の妨害があったせいか歴史という名の”貴族の礼儀作法”は”可”に終わった。
その”可”も白髪の教師が出席する夜会に出て、実践できれば貰えるという曰く付きのものだった。
花子は溜息を吐きながらも成績表を持ってムツキと一緒に自宅に戻った。
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