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81.真実の目と自分の心
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花子は開場後、フレッドと異母兄に付き添われて一般展示会場とは別に設けられた上級貴族用の展示会場にやって来た。
そこには先ほど一緒に式典をした公爵夫妻がにこやかな笑顔を浮かべながら他の人々と歓談していた。
公爵夫妻は花子たちに気が付くとすぐに笑顔をむけてくれた。
花子が異母兄に促されて公爵夫妻に近づくとすかさず彼らに今回の春画寄贈の件を褒められた。
「まあ、あなたが大海の孫なのね。懐かしいわ。」
大変ふくよかな公爵夫人は昔を懐かしむようにむっちりとした頬に手を添えるとしげしげと花子を見つめた。
大海って呼ぶっていうことはもしかしてお祖母様の知り合い?
花子がそう思って公爵夫人に視線を向けると夫人はもう一度彼女を見てから懐かしむように昔話を始めた。
要約すると昔お祖母様がこちらの学校にいたときからの知り合いで色々なことを競い合っていたそうだ。
「そうよ。その中でも一番思い出に残っているのはやっぱり最後の舞踏会のパートナー対決かしら。あれはミートをめぐっての(公爵夫人!)・・・。」
花子と公爵夫人の会話に今回の展示会主催者の中心人物であるミート館長がいきなり割り込んできた。
「あらミート。お久しぶりね。」
「ご無沙汰しております。本日はお越しくださりありがとうございます。」
ミート館長はにこやかな笑顔で夫人に挨拶しながらも小声で彼女に呟いた。
「先ほどから公爵が物凄い顔で私を睨んでいるのでどうかそれ以上の話はここではご容赦を。」
「あらあらまあまあ。」
夫人はいつの間にか隣でグラスを手に持ちながら苦虫を嚙み潰したような表情で彼女の隣で話を聞いている夫に視線を戻すといたずらっ子のような表情を浮かべたかと思うとすぐに花子たちとの会話を切り上げると公爵の腕を引っぱって彼らから離れて行った。
「まったく困った方だ。」
ミート館長も心なしか昔を懐かしむような表情をした後、再度花子に今回の寄贈の件についてお礼を言われた。
それから、ミート館長はおもむろに視線を大勢の人間が群がっている今回の一番の目玉である春画に視線を向けるとあの作品をどう思うかと花子に聞いてきた。
「あの作品?」
「ええ、”永遠の愛”と書かれた春画です。」
花子が貴族用の展示場で一番注目を集めている春画に視線を向けた。
そのまま花子が遠目から作品を見ていると急にその作品に違和感を覚えた。
なんでだろ。
そう思考しながらその春画を見てすぐに違和感に気が付いた。
なるほど。
「あの絵だけ髪色が他の作品と違うんですね。」
「えっ。」
花子の隣で同じように春画に視線を向けていたフレッドは驚きのあまり声を上げた。
髪色が違って見えているって?
同じに見えるんだけど?
フレッドが上げた声を気にする暇もなく花子の視線の先では動かないはずの春画が3D映像のように浮き上がてくると肉感的な女性の姿が花子の祖母である大海に代わり、その女性に覆いかぶさるようにしている男はなんと目の前にいるミート館長に見えた。
思わずギョッとして二度見すると今度は春画がそのまま妖しい上下運動をし始めて最後はなぜか二人は剣に貫ら抜かれて血まみれになって動きを止めた。
ひょえーホラーだ!
春画のくせになぜにホラー?
あまりのことにその場に固まっている花子の隣でミート館長は先ほどの驚いた表情とは違う顔を浮かべるとその人々から注目されている春画の説明を始めた。
「あの春画は別名”真実の目”とも言われています。」
”真実の目”ってどういう意味ですか。
花子の心の声が聞こえたのかミート館長はそのままその絵の説明を続けてくれた。
「なぜ別名に”真実の目”と言われているのかといいますとみる人によってあの春画はその人に関係のある真実を映し出すと言われているからです。」
「「真実!」」
なぜか花子の隣にいるフレッドが真っ赤な顔で春画を凝視しながらボソリと呟いていた。
真実っていやいや。
それならお祖母様が血まみれになる説明はわかるけど一緒にミート館長が血まみれになるのはおかしいから。
あの”開かずの間”での事件にミート館長はいなかったんだから、やっぱり単なる噂よ。
もうそれにしても視線を向けるといくら真っ赤に血塗られていても裸のお祖母様とこっちもまっ裸のミート館長に見えるとか恥ずかしすぎでしょ。
もう見るのやめよ。
これ以上見ていると持ってるグラスを恥ずかしさのあまり砕きそうだ。
それからすぐに真っ赤な顔をした花子を心配した異母兄に連れられ彼女は会場を後にした。
さすが私のお異母兄様。
この会場から連れ出してくれてありがとう。
そしてもう二度とこの手の会場には絶対にいかない。
花子は固く心に誓った。
そこには先ほど一緒に式典をした公爵夫妻がにこやかな笑顔を浮かべながら他の人々と歓談していた。
公爵夫妻は花子たちに気が付くとすぐに笑顔をむけてくれた。
花子が異母兄に促されて公爵夫妻に近づくとすかさず彼らに今回の春画寄贈の件を褒められた。
「まあ、あなたが大海の孫なのね。懐かしいわ。」
大変ふくよかな公爵夫人は昔を懐かしむようにむっちりとした頬に手を添えるとしげしげと花子を見つめた。
大海って呼ぶっていうことはもしかしてお祖母様の知り合い?
花子がそう思って公爵夫人に視線を向けると夫人はもう一度彼女を見てから懐かしむように昔話を始めた。
要約すると昔お祖母様がこちらの学校にいたときからの知り合いで色々なことを競い合っていたそうだ。
「そうよ。その中でも一番思い出に残っているのはやっぱり最後の舞踏会のパートナー対決かしら。あれはミートをめぐっての(公爵夫人!)・・・。」
花子と公爵夫人の会話に今回の展示会主催者の中心人物であるミート館長がいきなり割り込んできた。
「あらミート。お久しぶりね。」
「ご無沙汰しております。本日はお越しくださりありがとうございます。」
ミート館長はにこやかな笑顔で夫人に挨拶しながらも小声で彼女に呟いた。
「先ほどから公爵が物凄い顔で私を睨んでいるのでどうかそれ以上の話はここではご容赦を。」
「あらあらまあまあ。」
夫人はいつの間にか隣でグラスを手に持ちながら苦虫を嚙み潰したような表情で彼女の隣で話を聞いている夫に視線を戻すといたずらっ子のような表情を浮かべたかと思うとすぐに花子たちとの会話を切り上げると公爵の腕を引っぱって彼らから離れて行った。
「まったく困った方だ。」
ミート館長も心なしか昔を懐かしむような表情をした後、再度花子に今回の寄贈の件についてお礼を言われた。
それから、ミート館長はおもむろに視線を大勢の人間が群がっている今回の一番の目玉である春画に視線を向けるとあの作品をどう思うかと花子に聞いてきた。
「あの作品?」
「ええ、”永遠の愛”と書かれた春画です。」
花子が貴族用の展示場で一番注目を集めている春画に視線を向けた。
そのまま花子が遠目から作品を見ていると急にその作品に違和感を覚えた。
なんでだろ。
そう思考しながらその春画を見てすぐに違和感に気が付いた。
なるほど。
「あの絵だけ髪色が他の作品と違うんですね。」
「えっ。」
花子の隣で同じように春画に視線を向けていたフレッドは驚きのあまり声を上げた。
髪色が違って見えているって?
同じに見えるんだけど?
フレッドが上げた声を気にする暇もなく花子の視線の先では動かないはずの春画が3D映像のように浮き上がてくると肉感的な女性の姿が花子の祖母である大海に代わり、その女性に覆いかぶさるようにしている男はなんと目の前にいるミート館長に見えた。
思わずギョッとして二度見すると今度は春画がそのまま妖しい上下運動をし始めて最後はなぜか二人は剣に貫ら抜かれて血まみれになって動きを止めた。
ひょえーホラーだ!
春画のくせになぜにホラー?
あまりのことにその場に固まっている花子の隣でミート館長は先ほどの驚いた表情とは違う顔を浮かべるとその人々から注目されている春画の説明を始めた。
「あの春画は別名”真実の目”とも言われています。」
”真実の目”ってどういう意味ですか。
花子の心の声が聞こえたのかミート館長はそのままその絵の説明を続けてくれた。
「なぜ別名に”真実の目”と言われているのかといいますとみる人によってあの春画はその人に関係のある真実を映し出すと言われているからです。」
「「真実!」」
なぜか花子の隣にいるフレッドが真っ赤な顔で春画を凝視しながらボソリと呟いていた。
真実っていやいや。
それならお祖母様が血まみれになる説明はわかるけど一緒にミート館長が血まみれになるのはおかしいから。
あの”開かずの間”での事件にミート館長はいなかったんだから、やっぱり単なる噂よ。
もうそれにしても視線を向けるといくら真っ赤に血塗られていても裸のお祖母様とこっちもまっ裸のミート館長に見えるとか恥ずかしすぎでしょ。
もう見るのやめよ。
これ以上見ていると持ってるグラスを恥ずかしさのあまり砕きそうだ。
それからすぐに真っ赤な顔をした花子を心配した異母兄に連れられ彼女は会場を後にした。
さすが私のお異母兄様。
この会場から連れ出してくれてありがとう。
そしてもう二度とこの手の会場には絶対にいかない。
花子は固く心に誓った。
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