転生してもオタクはなおりません。

しゃもん

文字の大きさ
上 下
81 / 83

81.真実の目と自分の心

しおりを挟む
 花子はなこは開場後、フレッドと異母兄ブラウンに付き添われて一般展示会場とは別に設けられた上級貴族用の展示会場にやって来た。
 そこには先ほど一緒に式典をした公爵夫妻がにこやかな笑顔を浮かべながら他の人々と歓談していた。
 公爵夫妻は花子はなこたちに気が付くとすぐに笑顔をむけてくれた。
 花子はなこ異母兄ブラウンに促されて公爵夫妻に近づくとすかさず彼らに今回の春画寄贈の件を褒められた。
「まあ、あなたが大海おおみむすめなのね。懐かしいわ。」
 大変ふくよかな公爵夫人は昔を懐かしむようにむっちりとした頬に手を添えるとしげしげと花子はなこを見つめた。

 大海おおみって呼ぶっていうことはもしかしてお祖母ばあ様の知り合い?
 花子はなこがそう思って公爵夫人に視線を向けると夫人はもう一度彼女を見てから懐かしむように昔話を始めた。
 要約すると昔お祖母ばあ様がこちらの学校にいたときからの知り合いで色々なことを競い合っていたそうだ。
「そうよ。その中でも一番思い出に残っているのはやっぱり最後の舞踏会のパートナー対決かしら。あれはミートをめぐっての(公爵夫人!)・・・。」
 花子はなこと公爵夫人の会話に今回の展示会主催者の中心人物であるミート館長がいきなり割り込んできた。
「あらミート。お久しぶりね。」
「ご無沙汰しております。本日はお越しくださりありがとうございます。」
 ミート館長はにこやかな笑顔で夫人に挨拶しながらも小声で彼女に呟いた。

「先ほどから公爵が物凄い顔で私を睨んでいるのでどうかそれ以上の話はここではご容赦を。」

「あらあらまあまあ。」
 夫人はいつの間にか隣でグラスを手に持ちながら苦虫を嚙み潰したような表情で彼女の隣で話を聞いている夫に視線を戻すといたずらっ子のような表情を浮かべたかと思うとすぐに花子はなこたちとの会話を切り上げると公爵の腕を引っぱって彼らから離れて行った。

「まったく困った方だ。」
 ミート館長も心なしか昔を懐かしむような表情をした後、再度花子はなこに今回の寄贈の件についてお礼を言われた。

 それから、ミート館長はおもむろに視線を大勢の人間が群がっている今回の一番の目玉である春画に視線を向けるとあの作品をどう思うかと花子はなこに聞いてきた。

「あの作品?」
「ええ、”永遠の愛”と書かれた春画です。」
 花子はなこが貴族用の展示場で一番注目を集めている春画に視線を向けた。
 そのまま花子はなこが遠目から作品を見ていると急にその作品に違和感を覚えた。

 なんでだろ。
 そう思考しながらその春画を見てすぐに違和感に気が付いた。

 なるほど。

「あの絵だけ髪色が他の作品と違うんですね。」
「えっ。」
花子はなこの隣で同じように春画に視線を向けていたフレッドは驚きのあまり声を上げた。
髪色が違って見えているって?
同じに見えるんだけど?

 フレッドが上げた声を気にする暇もなく花子はなこの視線の先では動かないはずの春画が3D映像のように浮き上がてくると肉感的な女性の姿が花子はなこの祖母である大海おおみに代わり、その女性に覆いかぶさるようにしている男はなんと目の前にいるミート館長に見えた。

 思わずギョッとして二度見すると今度は春画がそのまま妖しい上下運動をし始めて最後はなぜか二人は剣に貫ら抜かれて血まみれになって動きを止めた。

 ひょえーホラーだ!
 春画のくせになぜにホラー?

 あまりのことにその場に固まっている花子はなこの隣でミート館長は先ほどの驚いた表情とは違う顔を浮かべるとその人々から注目されている春画の説明を始めた。

「あの春画は別名”真実の目”とも言われています。」

 ”真実の目”ってどういう意味ですか。

 花子はなこの心の声が聞こえたのかミート館長はそのままその絵の説明を続けてくれた。
「なぜ別名に”真実の目”と言われているのかといいますとみる人によってあの春画はその人に関係のある真実を映し出すと言われているからです。」

「「真実!」」
 なぜか花子はなこの隣にいるフレッドが真っ赤な顔で春画を凝視しながらボソリと呟いていた。

 真実っていやいや。
 それならお祖母ばあ様が血まみれになる説明はわかるけど一緒にミート館長が血まみれになるのはおかしいから。
 あの”開かずの間”での事件にミート館長はいなかったんだから、やっぱり単なる噂よ。

 もうそれにしても視線を向けるといくら真っ赤に血塗られていても裸のお祖母ばあ様とこっちもまっ裸のミート館長に見えるとか恥ずかしすぎでしょ。

 もう見るのやめよ。

 これ以上見ていると持ってるグラスを恥ずかしさのあまり砕きそうだ。

 それからすぐに真っ赤な顔をした花子はなこを心配した異母兄ブラウンに連れられ彼女は会場を後にした。

 さすが私のお異母兄ブラウン様。
 この会場から連れ出してくれてありがとう。

 そしてもう二度とこの手の会場には絶対にいかない。

 花子はなこは固く心に誓った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

完結)余りもの同士、仲よくしましょう

オリハルコン陸
恋愛
婚約者に振られた。 「運命の人」に出会ってしまったのだと。 正式な書状により婚約は解消された…。 婚約者に振られた女が、同じく婚約者に振られた男と婚約して幸せになるお話。 ◇ ◇ ◇ (ほとんど本編に出てこない)登場人物名 ミシュリア(ミシュ): 主人公 ジェイソン・オーキッド(ジェイ): 主人公の新しい婚約者

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

処理中です...