転生してもオタクはなおりません。

69.封印のための訓練。

　バン。
　ドッシャーン。
　バッコン。

　”白の宮殿”にある訓練室からは毎日遅くまで明かりが灯り、聞きなれない音が響き続けた。

　毎日聞きなれない音が響く訓練室とは逆に　花子はなこは足が痺れるのもなんのその一心不乱に静寂が周囲を支配する中ただひたすらに文字を書き続けていた。

　そんなふうに花子はなこが過ごしているのとは正反対に大海おおみとの特訓を受けていたキサラギとムツキは何度か倒れたようで花子はなこの部屋に訪れないときがあった。
　どんな特訓をしているのかその内容を知らない花子はなこだったがあのキサラギとムツキが倒れるほどきついものとは一体なんなのか非常に気になっていた。
　気になっていたが尋ねるのも憚られそのまま日々がすぎてしまい気が付いたら封印日の前日になっていた。

「花子はなこ様、何日も休んでしまい申し訳ありません。」
　本当に申し訳ない表情をした二人がお茶を持ってソファーで休憩していた花子はなこの元にやってきた。

「大丈夫よ。私も書くのが大変でまったく外にでなかったから問題ないわ。それより一体どんな訓練を受けていたの。」
「それは・・・なんと説明すればよいのか。」
　ムツキとキサラギが思案気に手を当てて考え込んだ。
「そうですね。」
　二人がなんとか説明しようとしているところに指導を終えた大海おおみが入って来た。
「気を感じる訓練よ。」
「お祖母ばあ様。」
　花子はなこは思わず巫女服姿ながら汗一つかいていない大海おおみを見て唸った。

　うっすごい。
　ムツキとキサラギは汗だくで今にも倒れそうなのになんでこんなに違うの。

「どうぞ大海おおみ様。」
　大海おおみと一緒に入って来たツヴァイが傍にある茶器セットからお茶を入れるとテーブルに置いた。
「ありがとう。」
　大海おおみは湯気の立つカップを手に取るとコクリとそれを飲んだ。
「そういえばお祖母ばあ様。セバスさんをここずっと見ていないんですけど。」
「ああ彼ね。彼にはちょっと特別なメニューで訓練したから・・・。」
「特別って・・・。」
　花子はなこの手がカップを持ち上げようとして止まった。

　お祖母ばあ様、いったいどんな訓練をしたの。
　花子はなこが興味津々に口を開こうとしたときかなりやつれた表情をしたセバスが居間に入って来た。
「遅くなりました。」
「セバスさん。大丈夫ですか。」
「花子はなこ様、何と申し上げてよいやらわかりませんが大海おおみ様に出会わせてくれましたこと心より御礼を申し上げます。」
　セバスはそういうと花子はなこに深々とお辞儀をした。

　一体何。
　セバスさんに何があったの。

「あらあら。その様子なら出した課題は無事解決できたようね。」
「ぜひ大海おおみ様に成果を見ていただけたらと思っております。」
　セバスは大海おおみの前で深々と礼をした。
「まあ嬉しい限りですね。それではすぐに訓練場に行きましょうか。」
　大海おおみはカップをテーブルに置くと立ち上がった。

　花子はなこも気になってその成果を見ようと立ち上がったがなぜかそれは大海おおみに拒絶され、何も教えてもらえなかった。

　お祖母ばあ様、いったいどんな訓練をしたの。
　気になる。

　花子はなこは気になりながらも諦めて部屋に戻ったが明日用の札作成のため筆を走らせるが精神統一が出来ず何枚か書いた文字がにじんでしまいなかなか上手くいかなかった。